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[21022] 【ネタ・完結】日本色々昔話【複数の昔話を混ぜて、ネタと電波で味付けしてみました】
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:12
昔々あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。
その日もお爺さんは山へ、お婆さんは川へ向かいました。

山に入ったおじいさんは鉈を片手に背負った籠に生活に必要なモノを採って入れながらだんだんと山の奥へ向かっていきました。
すると、目の前の藪から熊が出てきました。
普通の人間なら荷物を投げ捨て必死に逃げるような状況でした。
しかし、このお爺さんは普通ではありませんでした。
そのまま熊に立ち向かったのです。
お爺さんは村の皆にいい土産が出来たと笑い、籠を降ろして熊に向かっていきました。
そしてお爺さんは熊と死闘を繰り広げ、見事熊を倒してしまいました。

お爺さんは仕留めた熊を持って帰れるよう準備をしていました。
すると今度は赤いちゃんちゃんこを着た子供が出てきました。
その子供はお爺さんが仕留めた熊を見て、俺の馬に何をしたぁ!と叫びました。
その言葉を聞いたお爺さんは、目の前の少年が可哀想でたまらなくなりました。
熊を馬という目の前の少年が不憫でならなかったのです。
少年は怒りに任せてお爺さんに向かっていきました。
それはまるで、熊の突進のようでした。
しかし、本物の熊に勝ったお爺さんには通用しませんでした。
少年の渾身の一撃はひらりとかわされ、そのまま首に鉈の峰による一撃をもらうと、あっさり気絶してしまいました。

お爺さんは困りました。
普段の荷物に加え熊を持って帰らなければならず、少年を担ぐ余裕がなかったからです。
放置していくわけにもいかず、仕方なくお爺さんは少年が目覚めるのを待ちました。

しばらくして、少年は目を覚ましました。
頭に血がのぼっていきなり飛び掛ってきた先ほどとは違い、どうやら落ち着いているようでした。
少年は金太郎と名乗りました。
金太郎は山の中で一人で暮らしているのことでした。
金太郎は何を思ったか、顔を赤くしてお爺さんに弟子入りを頼みました。
落ち着いているように見えたのはただの錯覚でした。

お爺さんはまたまた困りました。
ぶっちゃけ起きてても寝てても面倒な子供だ、とか思っていました。
手荷物が一杯だったお爺さんは仕方なくとりあえず同行することを許可し、いくらか荷物を持たせました。
金太郎が熊を見つめる目が多少気になりましたが、無視して村へ戻ることにしました。
いい加減戻らないと、日が暮れて夜の山に取り残されることになるからです。

そのままポツポツと会話をしながら山を降りていくと、途中の竹林から光が漏れてきました。
気になった二人は竹林に行くと、その中の一本が金色の光を放っていました。
お爺さんは明かり代わりになると思いその竹を切ることにしました。
お爺さんは持ち帰るのに邪魔にならないよう光を放つ竹を節の部分で綺麗に切断しました。
そうして切った光る竹を拾ったお爺さんがおもむろに中を覗いて見ると、その中ではとても小さな美しい少女が眠っていました。
お爺さんの心に長らく忘れていた父性がよみがえってきました。
お爺さんは壊れやすいものを扱うように慎重に少女を胸に抱くと山を降りていきました。








[21022] 日本色々昔話 2話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/10 11:28
一方お婆さんは川で釣りをしていました。
すると川の上流のほうから何かが流れて来るのが見えました。
お婆さんがそれを良く見ると、それは大きな桃でした。
お婆さんは近所の人におすそ分け出来ると考え、その桃を川から揚げるために川の中へと入って行きました。
だんだんと流れてくる桃を見ていると、その桃の前を小さなお椀が流れていました。
そこには大きな桃なんか目じゃないくらいの不思議な光景がありました。
お椀には小人が入っていたのです。

しかし、ほほえましい光景はそこにはありませんでした。
その小人は後ろから迫り来る死神といってもいい大きな桃から逃れようと小さな櫂を必死に使って前へ前へと漕いでいました。
大人からすれば膝下くらいの水深でも、その小人が溺れるのには十分な深さです。
当然小人も必死にもなります。
すると小人は前方にいるお婆さんに気づきました。
小人は助かったと櫂を漕ぐことを忘れました。
そして次の瞬間。
小人が乗っているお椀は桃にぶつかり、小人ともども川の中へと沈んでいきました。

お婆さんは放っておけず、小人を川の中から助けました。
そして小人を助けると、最初の目的通り桃を川から揚げました。
岸に上がると小人は助かったことに安堵したのか、それとも疲労によってか、はたまたすぐ横にあった巨大な桃を見たせいか、そのまま気絶してしまいました。
お婆さんはその小人に大きな桃、そして釣り上げた魚をもって普段より早く村へと戻っていきました。


お婆さんはまだ夕方とは言えない時間に村に戻ってきました。
お婆さんは家に戻ると、綺麗な巾を小人を布団代わりに敷いてそこへ小人を寝かせました。
とってきた大きな桃はそのまま隣の親子へ渡してしまいました。
お婆さんは小人が桃を見た瞬間顔が引きつったことにちゃんと気づいていたからです。
そのまま釣ってきた魚をさばいて夕飯の用意をしながら小人が目を覚ますのを待ちました。

すると魘されていた小人が桃が、桃がぁぁぁぁぁと言って飛び起きました。
その声にお婆さんは小人を見ると、小人はよほど怖い夢を見たのか顔を真っ青にしていました。
悪夢で錯乱していた小人が落ち着いた頃、小人は自分を助けたお婆さんの存在に気づきました。
小人はお婆さんに深々とお礼を言いました。
身体は小さくても礼儀正しい小人でした。

小人は自分のことをスクナと名乗りました。
スクナから話を聞いてみると、スクナは川の上流で子供に手を貸してもらいお椀に乗って川を下ってきたとの事でした。
しかし、途中別の支流から大きな桃が流れてきて、そこから命がけの川くだりになってしまったと話してくれました。
お婆さんがこれからどうするかと聞くと、恩返しをしたいと言いました。
身体は小さくても本当によく出来た小人でした。
お婆さんはスクナにお爺さんが帰ってきたら相談してみましょう、と言い二人はお爺さんの帰りを待つことにしました。








[21022] 日本色々昔話 3話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/10 11:29
日が傾き、皆が家々に帰る頃になってようやくお爺さんは村へと帰ってきました。
すると村はお爺さんが採ってきた熊のせいでちょっとした騒ぎになりました。
お爺さんは熊を集まってきた村の若い衆に任せると、自分は金太郎を連れてお婆さんの待つ家へ向かいました。
お爺さんは胸に抱いた小さな女の子を早くお婆さんに見せびらかしたかったのです。
しかし、お爺さんが家に着くとそこには衝撃の展開が待っていました。
なぜならそこにはすでに小人がいて、お婆さんと仲良く話をしていたからです。
ちょっと残念に思いましたが、さすがは長年連れ添った私の妻。やることがそっくりだと前向きに捉えることにしました。

ところで少女はお爺さんが家についてもいまだに眠ったままでした。
お爺さんはお婆さんがスクナにしたように、眠ったままの少女を綺麗な布の上に寝かせてあげました。
そしてお爺さんとお婆さんはその少女が眠りから覚めるまでの間、金太郎のことやスクナのことを話しました。
そこで眠ったままの少女はひとまず置いておいて、スクナと金太郎のことをどうするか決めました。
話し合った結果、スクナはこの家で面倒を見ることにし、金太郎は明日働き手を欲しがっている農家と相談して預けることになりました。
小人となんて暮らすのは当然始めてなので、金太郎にまで目が行かないと考えたからです。
しかしこれでは金太郎があまりに可哀想なので、お爺さんは金太郎の弟子入りを許可してあげました。

そんな中、ようやく少女が眠りから覚めました。
少女はかぐやと名乗りました。
そのあまりの可憐さに、スクナは一目で恋に落ちてしまいました。
お爺さんたちはどうして竹の中にいたのかかぐやに尋ねてみました。
しかし、かぐやは何も覚えていませんでした。
そこでお爺さんとお婆さんは同じ大きさのスクナも居ることだからと一緒に暮らさないかと尋ねました。
そもそも二人は最初から少女に帰る家がなければ少女と一緒に暮らすつもりでした。
お爺さんとお婆さんの誘いにかぐやはとても喜び、そうして四人は一緒に暮らすことになりました。


久々の大勢での夕食を終え片づけをしていた頃、隣の家からすごい叫び声が村中に響きました。
お爺さんはすばやく鉈を手にとり、隣の家へと向かいました。
家では突然の出来事にお婆さんと金太郎が固まっている中、スクナはその手にもった串を剣のように構え、カグヤを庇っていました。
たとえ小さくて持っている物がかっこ悪くても、そこには立派な武士が確かにいました。
そんなスクナに庇われているかぐやはの目は、つり橋効果のせいかまるで恋に落ちた乙女のようでした。

お爺さんを含めた近所の人が叫び声があがった家にの前に集まりました。
そして合図と共に、お爺さんを含めた数名がその家へと飛び込んでいきました。
しかし中には口から泡を吹きながら失神している夫婦と、ガタガタと震えながら二つに割れた桃のほうを指差す兄弟しかいませんでした。
お爺さんは警戒しながら桃の方に近づくと、ちょうど桃の陰になるところにこの家にはいるはずの無い赤ん坊がいました。
しかも、その赤ん坊はどういうわけか桃の果汁まみれでした。

不思議に思ったじいさんは取りあえず赤ん坊を一緒に来た村の人間に渡すと兄弟から話を聞きだすことにしました。
すると、兄弟は桃を食べようとしたら中から赤ん坊が飛び出してきた、というのです。
とんでもない内容にお爺さんだけでなく一緒に聞いていた村人達も唖然としました。
その中の幾人かは相当怖い思いをして心が弱ってしまったんだろう、と考えました。
また別の幾人かは自分の子供の教育はちゃんとしよう、と考えました。
みんな兄弟の言うことを信じていなかったのです。

しかし、お爺さんは違いました。
いや、昨日までのお爺さんなら他の村人と一緒で信じなかったかもしれません。
でも今日お爺さんは竹の中から少女を見つける、という摩訶不思議な体験をしていました。
さらには家にはもう一人小人がいました。
それため、子供たちの話を信じることにしたのです。

しかし結局のところ、子供の言うことが真実かどうかという問題より、赤ん坊が実際にいるということが問題でした。
誰かが育てなければいけません。
そこで急遽村中の人間が集まり、叫び声の説明に加えこの赤ん坊を誰が預かるかという話し合いが始まりました。
村中の人間が集まったのでお爺さんはちょうどよいとばかりに金太郎のことも話し合いに出しました。

話し合いは長引きました。
働き手が欲しい農家の家同士で金太郎争奪戦が始まり、赤ん坊は誕生の仕方が怪しかったので押し付け合戦が始まったからです。
そして3時間ほど過ぎた頃、ようやく話がまとまりました。

結局金太郎は猟師の家が預かることになりました。
どの農家が引き取っても角が立つため、それなら全く違う職種で、ということになりました。
赤ん坊のほうは村全体で協力して育てることになりました。
個人に全てを押し付けるのは忍びなかったからです。

そうしてようやく皆が自分の家々に戻っていきました。
お爺さんも家に戻ると、小人の二人はすでに眠っていました。
その隣でお婆さんに詳しいことを話し、明日は二人の小人のことを村人に紹介することにして眠りにつきました。








[21022] 日本色々昔話 4話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/11 17:18
それから1年が過ぎ、2年が過ぎ、数年が過ぎました。
あるときスクナは大変な事に気づきました。
かぐやが少しずつ大きくなってきているのです。

スクナは焦りました。
自分と同じ大きさであり、今ではお互いに想いを通じ合わせているのに、このままではかぐやの気持ちが変わってしまうかもしれないと思ったのです。
しかし、有効な打開策はありませんでした。
スクナが悩んでいる間にも年月は過ぎ、かぐやは毎日少しずつ大きくなっていきました。
いつの間にか出会ったばかりの頃はスクナよりも小さかったかぐやの背丈が、いつしかスクナと同じになり、とうとう見上げるようになってしまいました。
スクナはこのままではいつかかぐやの恋人ではなく、ただのマスコットのようになるのではないかと日々恐々として過ごしていました。

そんなある日、スクナは面白い話を聞きました。
ここからずっと東に行った海に面した国のお城に小さなものを大きくするという不思議な小槌があったという話でした。
その小槌の名前は「打ち出の小槌」といいました。
その話を詳しく聞いてみると、ずっとお殿様が大切に保管していた小槌が一月前に鬼に襲われ時に奪われた、ということでした。

その話を聞いてスクナは決心しました。
その小槌を鬼から奪おうと。
そしてその小槌を自分に使い、かぐやと同じ大きさになって求婚しようと。
しかし小人のスクナでは鬼がいるところに行くだけでも大変です。
いつかの命がけの川くだりのようなことは二度と御免と思ったので、世話になっているお爺さんに相談することになりました。

相談した結果、旅には随分と大きくがっしりとした体型になった金太郎と、桃から生まれた赤ん坊である桃太郎が一緒に行くことになりました。
桃太郎はまだ幼かったですが、さすがは桃生まれと言っていいのか、不思議な力があったため今回の旅の仲間に選ばれました。
桃太郎の力とは動物たちの言葉がわかる、というものでした。
この力があれば全く知らないところに行っても道に迷って行き倒れにはならないだろう、という配慮からでした。

そして旅に行く前にお爺さんはく三人を連れて都に行き、旅装を整えてあげました。
実はお爺さんは山へ行くと度々光る竹を見つけており、売れば一財産のその竹を村中に配った後は殆ど売らずに蓄えていたので、かなり余裕があったのです。
そうして竹を換金して得たお金で必要なな旅装を用意していくと、お爺さんは最後には馬を一頭買いました。
その馬は荷物を運ぶために買いましたが、荷物だけでなくまだ幼い桃太郎が乗っても平気なよう立派な馬にしました。
そして旅の準備を万端にし、良く晴れた朝、スクナと金太郎と桃太郎は村を出発しました。


村を出て数日。山間にある村へと着きました。
三人は村で一休みをするとともにこれから行く場所などについて村の人から話を聞くことにしました。
すると、この村で起きた事件と、恐ろしい噂話がきけました。
事件のほうは村で暮らしていた大変仲のいい老夫婦の夫が殺され、奥さんは何の痕跡も残さずに姿を消してしまったというのです。
村の住民だけでなく役人まで出てきて調べたのにも関わらず、結局迷宮入りしてしまったと言うのです。
もう一つの噂話は、山に住み着いていたいたずら狸にウサギが残虐非道な行為をし、溺死に追いやったというものでした。
ウサギは狸の背中に大やけどを負わし、さらにはそこへからしをを塗りこみ、最後は泥舟に狸をのせ溺死させたというのです。
そのウサギの恐ろしい行いのせいなのか、最近山から生き物が減ったようだと村の猟師たちは嘆いてました。
三人は途中でそのウサギにあったら話してみようと決め、次の日村を出発しました。








[21022] 日本色々昔話 5話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/11 17:19
村を出てしばらく山の中を行くと、一匹の亀がぺたぺた歩いていました。
ここは山の中なのに、目の前にいる亀は海亀でした。
海亀が山の中にいることにさすがに不思議に思った三人は、桃太郎に話をしてもらうこととしました。
すると村で噂になっていたウサギと競争しているというのです。
どうやら勝ったほうは山を出て行くらしいのですが、海亀にとってはそもそも山にいるほうがおかしいので、海亀には大してリスクはありませんでした。
しかしウサギはそのことに全く気づかずこの勝負を二つ返事で受けたというのです。
三人は実はこのウサギはバカではないかと思いました。

とにかくこのまま亀と一緒に行けば件のウサギに会えると思い、三人は亀と一緒に山道を進んでいきました。
しばらく行くと道の真ん中で腹を出して堂々と眠るウサギがいました。
本来捕食される側とは思えない態度です。
ウサギは亀だけでなく金太郎や大きい馬が近づいても全然起きませんでした。
大きな耳は飾りなのでしょうか、完全に野生を捨ててきています。
腹を出して寝ているウサギを尻目に亀はゴールしました。

さすがにこのままでは、と思った三人はウサギを起こしました。
ウサギは最初ぼけっとしていましたが、亀がゴール地点にいるのを見るといきなり怒り出しました。
ウサギは散々文句を言った後、亀に突撃していきました。
完全に逆切れです。
しかし切れているようで手には狸に使ったのであろうからしが大量に入った瓶を抱えていました。
ウサギは瓶に手を突っ込んで、からしまみれにした手で亀の顔を狙って殴りかかっていきました。
プッツンしてる割にはえげつない攻撃を選択するウサギでした。

それは当たったら二重三重のダメージを与える凶悪な一撃でした。
しかし、亀はそれまでののっそりとした動きからは想像できない軽やかな動きでサッサッとウサギの攻撃をかわしました。
ウサギは次第に業を煮やし、とうとう両手をからしまみれにして次々と攻撃を繰り出しました。
しかし、それでも亀には当たりませんでした。
まるで宙に舞う木の葉のようにヒラリヒラリとかわしていました。
というか、亀は普通に飛んでました。
三人はその事実に気づいた瞬間頭が真っ白になりました。
そして、あまりの摩訶不思議な光景に最近の海亀って空も飛べるんだ~と遠い目をしながら現実逃避を始めてしまいました。

そんなイっちゃった三人はともかく、がむしゃらに殴りかかっていたウサギの体力が底をつきとうとう動かなくなりました。
亀はそんなウサギを見てにやりと笑っていました。
そしてそんなウサギの尻尾を口で咥えると、亀は空へと舞い上がっていきました。
亀がだんだんと高度を上げていくと、次第に高さからの恐怖でウサギが叫び声を上げ始めました。
しかし亀はそんなことを気にせず晴れやかな顔をしながらさらに高度を上げていきました。
そして、亀はおもむろに口に咥えていたウサギの尻尾を離しました。
ウサギも大概でしたが、この海亀もなかなかでした。
嫌な悲鳴が山に響きました。

しばらくすると、亀が降りてきました。
三人はウサギの事は突っ込まずにスルーすることにしました。
亀とあらためて話をしてみると、亀は東の海から来ていたのがわかりました。
そこは三人が目指しているお城がある場所でもありました。
亀の人格(亀格?)は正直きついものでしたが、亀と一緒に行けば道に迷うことはないと思い一緒に行こうと尋ねたところ断られてしまいました。
別れることになった亀ですが、亀は三人にここからの行き方を教えてくれました。

最後に亀はまた会ったらよろしく、と言って、空を飛んで去っていきました。
三人は出来るなら二度と関わりたくはないと思いました。
しかし目的地がこの亀の住処のすぐそばという事実に軽く絶望を感じました。








[21022] 日本色々昔話 6話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/12 18:31
亀の説明通りに東へ東へと歩みを進めていると、お城が見えてきました。
亀の説明にあった途中にある城下町に着いたようでした。
三人は畑や田んぼの間の道を通り街へ向かっていると、不思議な光景を目撃しました。
何故か畑から犬と一緒に小判を収穫している優しそうな顔をしたお爺さんがいたのです。
故郷の村で度々光る竹を採ってくるお爺さんのことを棚にあげて、三人はありえないから、と思いました。

しかしそれはさておき、街に着いた三人は旅の疲れを癒すために早速宿を探す事にしました。
そうして見つけた宿で他の旅人にこれから行く先々の事を聞いて回りました。
すると前に降った雨で東の街道を土砂が覆い、その土砂をどかすまではここから直接東に向かうのは無理との事でした。
回り道をしたほうがいいか聞いてみると、今からなら復旧を待ったほうが早いと言われました。
三人はこの城下町でしばらく過ごすことにしました。
この旅始まって以来の長い逗留になりそうでした。

次の日、当面の旅の疲れを癒した三人は、来る途中で見た小判を収穫していたお爺さんと犬に会いに行くことにしました。
単純に何があったのか興味がわいたのです。
昨日来た道を戻っていると、探していた犬を見つけました。
しかし、その隣にいるのは昨日の優しそうなお爺さんではなく、醜い顔を怒りの形相にした別のお爺さんでした。
そして三人が見ている前で、その醜いお爺さんは手にもった棒で犬を叩きはじめました。

三人が慌てて駆けつけると、醜いお爺さんは逃げていきました。
何度も叩かれた犬は、すでにボロボロでした。
すると騒ぎに気づいた昨日のお爺さんが家から走ってきました。
お爺さんはボロボロになった犬を前に力なく膝をつくと、犬を抱きしめました。
その犬はお爺さんに向かって一声鳴くと、その腕の中で息を引き取りました。
その最後の言葉を桃太郎がお爺さんに伝えると、お爺さんはとうとう泣き出してしましました。

あまりのことに怒りに燃える金太郎が醜いお爺さんを懲らしめに行こうとすると、犬を抱いたままのお爺さんに止められました。
お爺さんは復讐なんて無意味なことなどする必要はないといったのです。
今回の事で一番怒っているだろう人に諭された金太郎は、その心のうちを察し怒りを静めました。
その後お爺さんとお爺さんの奥さんを含めた五人で亡くなった犬、シロのための墓を作ることにしました。
お墓は立派な木の根元にしました。
泣き疲れているお爺さんやお婆さんの代わりに金太郎はお墓を掘ってあげました。
墓を掘ってもらっている間ずっとシロを抱いていたお爺さんとお婆さんは金太郎に礼を言うと、シロの亡き骸をお墓へに横たえました。
そうしてシロの埋葬を終え、三人は宿へと帰っていきました。








[21022] 日本色々昔話 7話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/12 18:37
それから三日経ちました。
そろそろ土砂の除去が終わりそうだという話がちらほら聞こえ始めた頃、三人のいる宿にシロの飼い主だったお爺さんがやってきました。
お爺さんは臼を作るのに協力してほしいと言いました。
三人はそれを了承すると、お爺さんの後をついていきました。
そして臼にするという木を見て三人は驚きました。
それはシロの墓標代わりとした木だったのです。
さすがに躊躇いました。
しかしお爺さんからシロが望んでいるから構わないと言われ、金太郎はその木を切り倒しました。

そして、臼作りが始まりました。
驚いたことにわずか数日で臼が完成しました。
こんな短期間で出来たのはひとえに金太郎の力によるものでした。
さっそく完成した臼で餅をついたところ、何故か黄金色に輝きだしました。
それを恐る恐る食べてみると、この世のものとは思えないようなすばらしい味がしました。
老夫婦これをシロの心と名づけ売ることにしました。

それは毎日すごい勢いで売れました。
金太郎達もそれを手伝いました。
しかしある日、それを見ていたシロを殺したお爺さんはその臼を盗んでしまいました。
お爺さんは何よりもシロの形見代わりのものが盗まれたということにショックを受けていました。
顔だけでなく心まで醜いお爺さんは一緒に暮らしているこれまた醜いお婆さんと共に餅をつきました。
しかし、何度やっても真っ黒で硬い石ころのような餅しか出来ませんでした。
ついには怒ったそのお爺さんは斧を持ってきて臼をバラバラにし、畑で燃やしてしまいました。
燃えている臼を見る心優しいお爺さんは嫌な人間に使われるくらいならいっそなくなったほうがいい、自分に必死に言い聞かせていました。
お爺さんは泣いていました。
そして燃え尽きたその臼の灰を集めると家に持ち帰り、無残な形になってしまったシロの形見と共に一晩を過ごしました。
次の日にお爺さんはその灰を自分の畑へと撒きはじめました。
お爺さんは畑に広く撒いてしまえばもう二度と奪われないと思ったのです
やがて灰の一部は風で舞い、ついには畑の周りに生えていた枯れ木にたどり着きました。
すると枯れていた木は急に元気を取り戻すと、花を咲かす季節でもないのに一斉にその花を咲かせました。
まるで天へと昇っていったシロの魂がお爺さんを慰めているようでした。

枯れ木に花が咲いたことはあっという間に街中で噂になり、ついにはお城のお殿様までやってきました。
お殿様は枯れ木に花を咲かせたものには褒美をとらすと言いました。
すると、醜いお爺さんと醜いお婆さんがやってきました。
二人は枯れ木が灰に触れた瞬間に木が元気を取り戻し花を咲かせたところを見ていたのです。
二人は灰をどんどん撒いていきました。
しかし、花は咲きませんでした。
その灰は適当に家の囲炉裏から持ってきただけの、ただの灰だったからです。

ただの灰ではダメなことを知らない二人はどんどん灰を撒きました。
しかし一向に咲かない木を見て、お殿様はついに怒り出しました。
その時風が吹きました。
お殿様は辺りに漂っていた灰によって真っ白になってしまいました。
怒りで顔を真っ赤にしたお殿様はその場で醜い二人の首をはねてしまいました。

そこへシロの灰を持ったお爺さんがやってきました。
お爺さんがその灰を撒くと、まるでそれまでの事が嘘のように花が咲き始めました。
お殿様はついさっきのことなど忘れ大変喜びました。
お殿様は褒美をとらすと言うと、お爺さんはその褒美を手伝ってくれた金太郎達に譲りたいと言いました。
その言葉にたいそう感激したお殿様はお爺さんに「花咲かじいさん」の称号を与え、以後家来に近い待遇を約束しました。
また金太郎達にはあぶみまで付いた立派な馬を一頭と、新しい旅装一式が渡されました。
そうしてスクナ達は村を出て初めて訪れた城下町を出発しました。

さてお爺さんがお殿様の前で咲かせた木は春に桃色の花を咲かす有名な木、桜でした。
その桜の花は二人の血を吸ってか、いつもより赤く鮮やかに見えました。



[21022] 日本色々昔話 8話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/13 19:56
城下町を出てしばらくすると雨が降ってきました。
今通っている道はがけ崩れもあった道ということもあり、前の城下町で手に入れた雨具で装備を固め早めにここを通り抜けることにしました。
しばらく馬を走らせていると、次第に雨が弱まわってきました。
三人は一息つけそうな場所を探していると、お地蔵さんがずらりと並んでいるところを見つけました。
三人は一休みのついでに旅の安全を祈願しようとお地蔵さんの前で馬から降りました。

しかしそこに七体あったお地蔵さんは先日の雨のせいか随分と汚れていて、しかもそのうちの一体は台座から落ちて倒れていました。
三人はお地蔵さんを綺麗にしてあげることにしました。
スクナと桃太郎がお地蔵さんを洗い、金太郎は倒れたお地蔵さんを元の場所へと戻しました。
綺麗になったお地蔵さんを前に三人はお祈りをしました。
そしていざ出発しようとしたところでまた雨がパラついてきました。
お地蔵さんを見るとちょうど上には遮るものはなく、雨ざらしになっていました。
可哀想に見えた三人は予備の笠をお地蔵さんにかぶせてそこを後にしました。

次第に雨が強くなってきました。
日も暮れてきたので三人は途中で見つけた無人のお堂で一晩を越すことにしました。
幸いお堂の周りは木が茂っており、馬もそれほど濡れずに一晩を過ごせそうでした。
お堂で眠りについていると、外からしゃらん、という音が聞こえてきました。
スクナと金太郎がその音に目を覚ますと、どうやら雨は止んでいるようでした。
二人は顔を見合わせていると、再び外からしゃらん、という音が聞こえてきました。
何故かその不思議な音は虫たちの声に遮られず、二人の耳にしっかりと響いてきました。

二人は何が起こるかわからないため桃太郎を起こすことにしました。
しかし、まだまだ幼い子供。全然起きる気配はしませんでした。
スクナと金太郎は音がだんだんと近づいて来ていることに気づきました。
なかなか起きない桃太郎を起こすのは一度諦めて、外の様子を確認することにしました。
お堂の門を少しだけ開けそこから覗いて見ると、とんでもない現象が起きていました。
いつの間に雲がなくなったのか、月明かりの中をお地蔵さんが様々な物を持ってこちらに近づいてきていました。

取りあえず敵意はなさそうだったのでお堂の外へと二人は出ました。
先ほどから響いているしゃらん、という音はお地蔵が持つ錫杖の音のようでした。
お地蔵さんをよく見ると、昼間綺麗にしてあげたお地蔵さん達でした。
証拠にかぶせてあげた笠をかぶっていました。
お地蔵さんは昼間のお礼なのか、スクナたちの前で止まるとそれぞれ持った剣や槍など様々な物を置いていこうとしました。
しかしまだ東を目指すスクナ達にはそれらは邪魔になるので、故郷の村の場所を教えそこへ届けてくれるよう頼んでみました。
するとこちらの意図が伝わったのか、しゃらん、という音を一度立てた後、七体のお地蔵さんは西へと向かっていきました。

姿が見えなくなってようやくスクナと金太郎は大きく息を吐きました。
二人はこれが夢だといいなぁと思っていました。
気になることがありすぎたのです。
特に石像のため動いていない錫杖から音が響いていたことが二人の精神を削っていました。
不思議生物にはある程度耐性がついた二人でしたが、さすがに今回のことは許容範囲を越えていました。
二人はさっさと忘れようと無理やり眠ることにしました。
このときになって二人は起きなかった桃太郎が少し羨ましく思えました。








[21022] 日本色々昔話 9話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/13 19:57
次の日の朝、外は昨日の雨が嘘のように晴れ渡っていました。
三人は朝食を食べ身支度を整えるとお堂の外に出ました。
お堂を出ると、お堂の横には笠をかぶったお地蔵さんが一体いました。
まるで昨日のことは夢ではないよと言っているようにスクナと金太郎は感じました。
何も知らない桃太郎はこんなところにお地蔵さんが居たっけ?と不思議な顔をしていました。
あまり摩訶不思議な現象を見すぎて常識を壊されたくなかった二人はお地蔵さんのことは無視をし、さっさと馬に乗りました。
そしてお地蔵さんを気にする桃太郎を急かして馬に乗せると、三人は再び東へと向かいました。

スクナと金太郎はこの旅始まって一番の問題に頭を悩ませてました。
というか、二人は今の状況にビビっていました。
どういうわけか、後ろを振り向くとお地蔵さんが一定の距離を開けた上で後をしっかりついてきているのです。
スクナ達三人のうち誰かが見ていると微動だにしませんが、一度目を離すとどうやってか差を詰めていてしっかりと後を付いてきていました。
最初は気づきませんでした。
しかしここは街と街を結ぶ街道。
利用者は三人だけではありませんでした。
スクナ達の後方では動き回るお地蔵さんを見て腰を抜かす人や叫び声をあげる人、錯乱する人などが出てました。
普通じゃない騒ぎになっていたので、スクナと金太郎はお地蔵さんに憑かれていることに気づきました。

いい加減この摩訶不思議現象から離れたくなったので、スクナと金太郎は一つ試してみることにしました。
スクナがお地蔵さんを見続け動きを止め、金太郎がスクナと桃太郎が乗っている馬を引っ張ってお地蔵さんを一気に突き放そうというものでした。
しばらく進み金太郎が後ろを振り返ると、お地蔵さんはもう見えませんでした。
スクナと金太郎は顔を見合わせ、摩訶不思議なお地蔵さんを見事無事に振り切ったことをお互いに褒め称えました。
これで俺たちの精神も一安心と二人が前を向くと、そこには件のお地蔵さんがいました。
こればっかりはさすがに二人も悲鳴を上げました。

お地蔵さんはただそこにあるだけでしたが、二人の背中は嫌な汗でびっしょりでした。
そんな中、桃太郎が一緒に行きたいのかと尋ねました。
そうすると、しゃらん、と一つ音を立てて頷いたように見えました。
相変わらず石でできた錫杖は全く動いていませんでした。

ここまできたら二人も覚悟を決めました。
ただその覚悟は殆ど諦めからきていましたが、とにかくお地蔵さんが同行するのを認めました。
そうしてスクナ一行に動くお地蔵さんという、周囲に混乱を運ぶ新しい仲間が加わりました。








[21022] 日本色々昔話 10話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/14 18:30
さらに東に進んでいくと、沢に出ました。
そこでは大勢のカニ達が涙を流していました。
こういうときは桃太郎の出番です。
何があったのか聞いてみました。
するとそのカニ達は一匹の猿に騙されたと嗚咽をまじえながら語りだしました。
ある日猿はカニ達が見つけたおにぎりと柿の種を交換持ちかけてきました。
最初は渋ったカニ達でしたが、交換してくれたら柿を取ってあげると言いました。
一つしかないおにぎりを分けるよりは皆で柿を食べるほうがいいと思ったカニ達は交換に応じました。
しかしその猿はおにぎりを食べた後もなかなか柿を採ってきてくれませんでした。
ようやく柿の木に登ったかと思えばカニ達が木に登れないのをいい事に、柿の木の上からまだ熟してもいない硬い柿を投げつけてきたそうです。
そのせいでカニの仲間達は怪我をしたり、中には死んでしまったカニもいたようでした。
その死んでしまったカニの中には、目の前で泣いている一匹のカニのお母さんもいたようです。
カニ達は泣きながら絶対に復讐してやると言いました。
怒りに燃えるカニは茹でたわけでもないのに甲羅が赤く見えました。
食事がまだの三人はそれがちょっと美味しそうに見えました。

三人は目の前のカニ達に復讐はよくないとは、言えませんでした。
シロの一件で思うところはありましたが、借り物の言葉ではこのカニ達は止まらないとわかってしまったからです。
復讐に燃えるカニ達はどうヤるか相談していました。
とにかく木の上など高いところにいられると手が出せないので、まずは地上に降ろす方法を考えました。
結果食い意地が張ったいやらしい猿は食べ物で釣るのが一番ということになりました。
カニ達は自分たちが身を隠せる場所に食べ物を置いて、のこのことやってきた猿が食べ物を手にとる瞬間いっせいに襲い掛かることにしました。
カニ達は自分達より全然大きい猿に立ち向かう以上、再びたくさんの仲間が傷ついたり死んでしまうことをちゃんと理解していましたが、彼らは止まろうとはしませんでした。

そうして次の日、それは決行されました。
猿がやってきました。
猿はお地蔵さんのお供えしてある沢山の柿を見つけました。
この柿は金太郎が木から採ってあげたもので、お地蔵さんも同行しているお地蔵さんです。
金太郎は乗り気ではなかったのですが、さすがに目の前のカニ達に手伝ってくれないのなら自分たちを茹でてそれをえさにする、と言われては断りきれませんでした。
ちなみにお地蔵さんは最初から乗り気のようでした。

猿は全く警戒せずその柿へと手を伸ばしました。
次の瞬間。
お供えされた柿の中から何本も鋏が飛び出し、一斉に猿の手や腕をその鋏で挟みました。
そして猿の背後に忍び寄っていたカニ達も一斉に猿の尻尾や足を鋏で挟みました。
猿はあまりの痛さにその場を転げ回りました。
猿が暴れるたびにカニたちはつぶされて死んでしまったり、鋏が折れたりして動けなくなりしました。
しかし、カニ達は犠牲になった仲間の屍を越えてどんどん猿に攻撃を仕掛けていきました。
それはまるで一匹の昆虫を集団で襲う蟻のようでした。
しばらくカニ料理は食べれそうにありませんでした。

やがて猿が動かなくなりました。
カニ達が離れると、猿は見るも無残な姿になって息絶えてました。
それを見たカニ達は勝どきを上げていました。
そうして一つの復讐劇は終わったのでした。








[21022] 日本色々昔話 11話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/14 18:31
村を出て様々なことに遭遇しながらついにスクナ達は目的の城下町にたどり着きました。
お地蔵さんは今回外で待ってもらってます。
万が一動いているお地蔵さんがが自分たちの仲間だとバレたら絶対に面倒なことになるからです。
いつものように宿を見つけ荷物と馬を預けると、小槌や鬼についての情報を集めることにしました。
どうやら鬼たちは海を渡った先にある小島をねぐらにしているという話でした。
また小槌を取り戻すために討伐隊が数度に渡って送り込まれたようですが、全て返り討ちになったことも聞けました。
つまり、小槌はいまだに鬼の手の中にあるということでした。
スクナはこれを喜びました。
相手は国宝級。お城の人たちに取り返された後ではさすがに諦めるしかなかったからです。

次の日の朝、三人は船を借りられないか浜に行きました。
しかし案の定、鬼の居る島に船を出してくれる人はいませんでした。
どうするか悩みながら浜辺を歩いていると、子供たちが何かを囲って騒いでいました。
子供達の中心ではどこかで見たような海亀がいました。
その海亀は子供達に蹴飛ばされたり棒で突付かれたりと苛められているようでした。

三人は助けるかどうか悩みました。
無論、亀でなく子供たちを、です。
ハッキリ言ってあの海亀なら子供くらい簡単に返り討ちに出来るはずだと思っていたのです。
しかし三人はあのトンでも亀とは正直もう関わりたくありませんでした。
でもあの亀がひょっとしたら例の海亀とは違うかも知れないという思いがあり、その場を離れられませんでした。
どうしようか悩んでいると、亀がこちらへと振り向きました。
亀と目が合いました。
その瞬間、その海亀は例の海亀だった事に気づきました。
そしてもう手遅れだろうとも思いました。
三人が諦めの境地に達していると、案の定亀は周りの子供達を一瞬で蹴散らすとこちらへと近づいてきました。
亀を苛めていた子供達には一生消えないだろう傷を心に負ったことは想像にかたくありませんでした。

こちらの想いとは裏腹に、亀は再会を喜んでいました。
そのまま亀と話をしていると、いつの間にか亀の家へ招待されていました。
それに気づいた三人が断る間もなく、亀によって海の中へ連れ込まれました。
それは不思議な現象でした。
海の中を歩いているはずなのに、三人は一切濡れもせず、呼吸もできました。
ここまで来るともう引き返すことも出来なかったので三人はそのまま亀の後ろをついていきました。

しばらく進むと、正面に大きな建物が見えてきました。
亀はそれを竜宮城と言い、自分の主が住んでいるところだと説明しました。
竜宮城の前まで行くと、そこには武装した門番がいました。
しかし門番は魚でした。
魚が鎧を着て槍を持っている映像はなかなかにシュールなものでした。
亀に案内されるまま、三人は竜宮城の中に入っていきました。
中では女官に扮した魚が出迎えてくれました。
三人の精神はガリガリと削られていきました。

そうしてさらに奥へと進むと、この竜宮城の主である乙姫様が三人を出迎えました。
乙姫様は上半身が人間で下半身が魚という、伝説上の生き物である人魚という生き物でした。
三人がさらに出てきた受け入れがたい現実と戦っていると、宴が始まりました。

三人の前で魚たちが音楽を奏で、踊りはじめました。
三人の席の前には鯛や平目といった魚の刺身が出されました。
しかし、とても食べる気にはなれませんでした。
目の前で鯛や平目といった刺身に使われている魚が踊っている中、それを食べれるほど三人の神経は太くありませんでした。

三人は刺身を食べないことを誤魔化すため、鬼について聞いてみました。
すると、鬼がいる島はここから歩いてすぐだとわかりました。
そこでスクナは身体の小ささを利用して偵察に行くことにしました。
スクナのこの提案は決して嘘ではないですが、ここに長居したくないという想いもありました。








[21022] 日本色々昔話 12話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/14 18:32
スクナは海亀の協力を得て、単身鬼が住処にしている島に忍び込みました。
鬼たちは宴をしているようでした。
スクナは身体の小ささを活かして例の小槌を探しました。
鬼の様子を窺うと、鬼たちは車座になって何かを見ているようでした。
その中央では大きなこぶを右の頬につけたお爺さんと、これまた同じくらいの大きさのこぶを左の頬につけたお爺さんが踊っていました。
しかしスクナにとってはどうでもいいことなので、さっさと小槌を探すことにしました。

鬼たちは宴に夢中なのか、全く気づかれる様子もなくあっさりと小槌を見つけました。
このまま持ち帰ろうとしたところで重大な事実に気づきました。
小槌はスクナにとっては大きすぎたのです。
仕方なく来た道を引き返し、浜辺で待っている亀のところに戻ることにしました。
途中、鬼たちがさらに大声をあげて笑い出しました。
気になって鬼たちの方を見ると、何故かこぶがなくなりすっきりした顔のお爺さんと、両頬にこぶをつけたお爺さんがいました。
しかしやはりスクナにとってはどうでもいいことなので、さっさと亀のところへと戻りました。

竜宮城に戻ったスクナは金太郎と桃太郎とどうするか相談しました。
正面から行くのは自殺行為なので、鬼たちの油断を待ってから侵入することになりました。
また乙姫様には小槌を手に入れたらすぐにこの地を離れることを伝えました。
そうすると乙姫様から玉手箱というものを渡されました。
その時何故か次にここへ来るまで絶対に開けてはなりませんと言われました。
精神に優しくないので二度と来る気はなかったので拒否しようとしましたが、乙姫様の目が怖かったので素直に受け取りました。

そうして海から鬼たちの様子窺っていると、一匹また一匹と鬼たちが眠りはじめました。
例のこぶのお爺さん達はいないようでした。
ついに最後まで起きていた鬼が眠りにつきました。
三人は島に上陸しました。
スクナの案内で小槌を含めた宝が置いてある場所へと向かいました。
そうしてついに、旅の目的であった打ち出の小槌を手に入れました。
ついでにいくつか目を引くお宝も持っていくことにし、代わりに嫌な予感しかしない玉手箱を置いていくことにしました。
最後まで鬼には見つかりませんでした。
三人はこうして島を後にしました。

城下町の宿についた頃には朝日が昇っていました。
宿についた三人はすぐさま旅支度をしました。
万が一鬼がこの街へと攻めてくると面倒だからです。
そうして三人は眠いのを我慢しながら城下町を後にしました。








[21022] 日本色々昔話 13話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:03
行きとは違い、帰り道はさくさく進みました。
城下町を出た直後は少々つらかったですが、今では皆元気でした。
結局スクナはまだ小さいままです。
城下町を出て落ち着いた頃に大きくしようとも考えたのですが、馬が足らなくなるため村につくまでは小さなままで過ごすことになりました。
あのお地蔵さんは今も後ろを付いてきます。
このお地蔵さんが居たところは台座しか残っていませんでした。
他の六体が今どこにいるのか疑問に思いましたが、怖い想像しか出来なかったので考えることはやめました。
また、行くところ行くところお地蔵さんが動いていたと騒がしかったのでさっさと故郷で一息つきたかったのです。
正直後ろをついてくるお地蔵さんのせいで何かあったら速攻で破壊しようとちょっと考えてました。

そうしてついに、故郷の村が見えてきました。
ついでにあまり見たくない物も見えました。
結局壊されずに後ろをついてきているお地蔵さんの仲間です。
しっかり六体、道の脇にいました。
旅を終えた最初の出迎えが摩訶不思議なお地蔵さんだったことにスクナと金太郎は密かにショックを受けてました。

村に着いた三人は早速スクナの家へと向かいました。
そこには普通の人の大きさにまでなったかぐやが居ました。
ついでにそのかぐやに求婚している野郎共も居ました。
取りあえずスクナたちはその野郎共を追い出し、かぐやに小槌を渡しました。
何か喚いていましたが、動いているお地蔵さんを見ると声を上げて逃げていきました。
かぐやはとても美しい女性になっていました。
そしてかぐやが小槌を数回振ると、スクナの身体は見事かぐやと同じ、普通の人と同じ大きさになりました。
スクナの念願がついにかないました。
しかし、スクナの想いはここで終わりではありません。
早速かぐやにプロポーズをしました。



かぐやに振られたスクナは真っ白に燃え尽きていました。
理由を聞いても悲しそうな顔をするだけで答えてくれないのが、またこたえました。
スクナは家に戻るとどうしてもかぐやと顔と合わせることになるので日が暮れても村をうろうろしてました。
正直このまま旅に出て、どこかのお城に仕官したほうがいいような気がしていました。
そんなことを考えていると、お爺さんがやってきました。
お爺さんは言いました。
一度振られたぐらいで諦めるなと。
せめて理由を聞き出してから諦めろと。
それを聞いたスクナは元気を出して、ようやく家へ戻る決心をしました。
たとえそれが空元気でも、元気が出たことには違いありませんでした。

スクナが家に帰ると、早速かぐやに話を聞きました。
しかし、それまで通りかぐやは答えてくれませんでした。
そこにお爺さんとお婆さんも声をかけました。
二人も最近のかぐやの様子がおかしいことに疑問を持っていたのです。
そうしてようやく、かぐやは家族に胸の内を語りだしました。

なかなかにぶっ飛んだ内容でした。
かぐやは月の姫で、罪を犯したので罰として地球にやってきたとの事でした。
刑期が終わった今、次の満月には月からの使者がやってきて、月に帰らなければならないといいました。
そしてそのことを最近になって思い出したと言うのです。
かぐやは言いました。
自分は月の人間。いずれは帰らなければならないため誰とも結ぶことは出来ないと。
しかしスクナは諦めませんでした。
かぐやがそれを口にしたときの顔がとても納得いっているものとは思えなかったのです。
スクナは問い詰めました。
ここに残りたくないのかと。
何度も何度も、必死に語り掛けました。
そうしてスクナは、かぐやがずっと言いたくなかった、心の奥に無理やりしまいこんでいた言葉をついにつむがせました。
スクナの思いは、通じたのです。








[21022] 日本色々昔話 14話
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:04
それからというもの、その村では月から来る使者を迎え撃つ準備が始まりました。
かぐやに求婚していた者達は悉くこれに参加しました。
たとえその恋が実らないとわかっていながら、誰も帰ることはしませんでした。
そしてその中には貴族で身分が高い者も混ざっていたために、自分の領地から兵士を連れてくる者までいました。
人が多く集まって来たため、何も無いような荒野に簡素ながらも砦が作られました。

満月が近づいてきたある日、集まった武士達の中で芸達者といえる者達がかぐやに呼ばれました。
そしてかぐやは集まった武士に特別な武具を渡しました。
それは笠地蔵がお礼としてくれたものや、鬼の所から持ってきた武具でした。
それらはすべて一つの例外もなく、まさしく神器よべるものでした。
それら一つ一つを、絶世の美女であるかぐやから直接渡された武士達の意気込みは否が応にも高まりました。

そして満月の日、月からの使者は雲に乗ってやってきました。
こちらが迎え撃つ準備をしていたのを見たからか、はたまた最初からそうだったのかはわかりませんが、使者の一団は軍隊といえる様相をしていました。
月の使者はかぐやのいる家の上空で止まると、まるで威嚇するかのように軍を左右に広げていきました。
そして高圧的な態度でかぐやを差し出すよう要求しました。
これに対しての回答は実にシンプルでした。
一本の矢が口上を述べていた使者の横を飛んでいったのです。
そうして戦いの火蓋は切って落とされました。

月の軍勢は上空。地の利は圧倒的に向こうが上なので、初手で出来る限り削る必要がありました。
まずは一斉に沢山の矢が空へと射掛けられました。
外したところで周囲には何もありません。皆、容赦なく矢を放ちました。
そして撃ち出した矢に向かってを「打ち出の小槌」が振られました。
すると矢の一部は空中で槍のような大きさになって月の軍勢に襲いかかりました。
不意をついた攻撃に、月の軍勢はばらばらと地上へ落ちていきました。
しかし次の瞬間、怒りに燃えた月の軍勢は反撃をしてきました。
まさしく地の利を活かし、一斉に矢を上空から射掛けてきたのです。
しかしその矢は地上で戦っている武士達に当たることはありませんでした。
異国の扇を持った一人の武士がそれを振ると、突風が吹き荒れ殆どの矢はあさっての方向へと飛んでいきました。
そして残った一部の矢はそのまま月の軍勢を襲ったのです。
それを受けた月の軍勢は目に見えて動揺しました。
彼らは地球の兵士をなめていたのです。
そしてその瞬間、地上から月の軍勢めがけて第二射が飛んでいきました。
今度は不意打ちでもないのに、動揺していた月の軍勢はまともにそれを受けてしまいました。

月の軍勢は地の利を捨てることにしました。
上空からの制圧を諦め地上に降りてきたのです。
それはかぐやを守る防衛隊にとってはありがたいことでした。
空に浮いている敵を射倒すには矢の数が全然足らなかったからです。
月の軍勢は地上に降りると次々に抜刀。
そして雄たけびを上げ、地上の武士へと向かっていきました。








[21022] 日本色々昔話 15話(最終話)
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:07
一人、また一人と人が傷つき、死んでいきました。
それは月の軍勢も、かぐやの防衛隊も変わりませんでした。
地上戦に移ってからは当初、月の軍勢が有利に事を運びました。
しかし、次第にかぐやの防衛隊が月の軍勢を押し始めました。
月の軍隊は今いる部隊が全部、それに対してかぐやの防衛隊はわずかながらも余裕がありました。
また、簡易とはいえ砦があったこともいい方向に働きました。
疲れてもまともに休むことの出来ない月の軍勢に対して、何度も前線にいる部隊を入れ替えては休ませることのできるかぐやの防衛隊。
戦いが長引いてくると、それが顕著に表れてきました。

やがて最後の月の兵士が倒れ、戦いは終わりました。
月の兵士はただの一人も相手に屈しようとせず、立派に戦い抜きました。
それは彼らと戦っていた武士達もその姿を褒め称えたくなる、立派な立ち振る舞いでした。
戦の勝利にかぐやの防衛隊が勝どきを上げると、やがて東の空から光が差してきました。
長い、長い夜の終わりです。
すると不思議な光景が目の前に広がりました。
月の兵士たちが光の粉になって消え始め、戦いで死んでいったはずの兵士たちが起き上がったのです。
それだけでなく、戦いで傷ついた体がまるで今までのことが夢だったように癒されていきました。

一向に砦から出てこないかぐや達が気になった兵士たちは砦へと向かいました。
兵士たちは砦の奥、スクナとかぐやいる部屋の前に着きました。
しかしそこには、泣き崩れる老夫婦がいました。
不安に思った兵士たちが扉を開けると、あまりの光景に皆膝をつきました。
部屋の中にいる二人は笑顔を浮かべながら手を取り合い、事切れていたのです。
その部屋には三枚の手紙が残されていました。
まだ書いてからそれほど時間が経っていないのか、急いで書いたためであろう多少乱れたその字は、まだ少し湿っていました。
一枚目には自分を育ててくれた老夫婦への感謝と、謝罪。
二枚目には自らを守るために立ち上がってくれた沢山の兵士たちに対する感謝と、謝罪。
そして三枚目には何故死を選んだかの説明と、自分たちの亡き骸について書かれてました。

三枚目にはこう書かれてました。
自分が地球で生きている限り満月のたびに月の軍勢は私を取り返しに来ると。
それを終わらせるために、私は自身の命と,、戦いで倒れた月の民の魂、そして愛するスクナの魂をも使って一つの術法を使ったと。
それは反魂の法。朝焼けの中、自身と、数多の魂を用いて望む者達を生き返らせる秘奥中の秘奥。
そして自らの亡き骸は月の民にも私の死がわかるよう、最も高き処でスクナとともに葬って欲しいと。

それを読んだ兵士たちは先ほどの奇跡をようやく理解しました。
かぐやの自分達に対する深い慈悲の心に感謝をし、またその意を示すためにすぐさまその「最も高き処」へと向かうことになりました。
それは険しい道のりでした。
しかし誰一人と音をあげず、その行進は止まることはありませんでした。
先頭のものが倒れれば二番目のものが、二番目のものが倒れれば三番目のものが引き継ぎ、前へ前へと進んでいきました。

彼らはついにたどり着きました。
そこはまさしく、その国で「最も高き処」でした。
彼らは簡易的な祭壇を作ると、その前にスクナとかぐやを並べまさした。
そして皆が別れを済ますと、ついに火がともされました。
炎が舞い上がり、煙が高く高くと上っていきます。
すると一人の武士が前へと出ました。
その武士は戦いで活躍した、神器を持った武士でした。
その武士はかぐやから貰い受けた武器を、その炎の中へと入れました。
するとここまで来た武士たちがかぐやから頂いたものを次々と炎の中へと入れていきました。

そうして、最後の一人が出てきました。
その人はかぐやに求婚をしていた者の一人でした。
彼はかぐやに想いを寄せた中では最も身分の高き者であり、それは同時にこの国で最も身分の高い、帝その人でした。
彼はかぐやから一つの薬を貰っていました。
それは不老不死の薬。
かぐやはその薬を、この国を治めるものへと渡していたのです。
しかしその薬は炎の中へと入れられました。
帝にとって、かぐやがいなくなってしまったこの世界では不老不死になっても嬉しくなかったのです。

炎は一晩中消えることなく高く高く燃え続けました。
武士たちはその周りを静に囲っていました。
そして夜が明けるころなって、炎は静かに消えてゆきました。
燃えていたところには何も残っていませんでした。
灰も、神器の残骸も、そして骨すらも。
まるでそこには最初からそこには何もなかったかのように。



やがて、その「最も高き処」はそれまでとは違う名前で呼ばれるようになりました。
「不死の山」と。
そこは後の世で、「富士山」と呼ばれる山でした。






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明日の夕方あたりにその他板へ移動しようと考えてます。



[21022] 各話の簡単な解説や没ネタ 最終話まで
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:09
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最初に

この作品は友人に見せていた携帯小説が大元です。
途中挫折したのを今回WEB用に加筆修正し、完結させました。
ここで出てくる初期というのは携帯時代のプロットのことです。

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1話~3話

まずは昔話で定番のお爺さんとお婆さんが登場。初期の段階ではかなりの超人設定。これでも随分おとなしくなった方なんだ……。
そして昔話から初登場は金太郎。しかし作者は金太郎については歌でしか内容を知らない。まぁ主役は彼じゃないので気にしない。
そしてヒロインのかぐや姫が登場。初期から変わらず相手も決定済み。
というか、大きくなる前のかぐや姫に惚れたら、その人は人としてヤバイと思うんだ。
しかしかぐや姫も殆ど竹取物語で覚えている。
そしてお婆さん側。
ヒロインは物語通りで普通に登場したのに主役である一寸法師はあんまりな登場のしかた。
これは作者が一寸法師を主人公にした割には正しい流れを知らないから。知っているのは川くだりの部分とクライマックスのみ。
桃太郎はさすがに覚えていたのでほぼそのまま。
結果、一寸法師の川くだりと桃の川流れを合わせたらこうなった。
そしてお爺さん側と合流。
初期の段階では金太郎は山に帰って老夫婦と桃太郎と小人二人の五人で暮らすつもりだった。
ただ桃太郎と小人を一緒には暮らせないだろうと思い桃太郎は別の家へ預けられることに(理由は↓に)。
結局本編では村全員で育てることになったけど。
一寸法師がかぐや姫に惚れるのは初期から変わらず。


以下没ネタみたいなもの


2話から3話で書かれた話。

お爺さんやお婆さんは久しぶりに大勢で食べた食事を大いに楽しみました。
するとお婆さんは裏の井戸から大きな桃を持ってきました。
それはお婆さんが川で拾ったものでした。
あまりの大きさに包丁を持ったお婆さんが切りどころを悩んでいると、桃が独りでに動きました。
瞬間、空気が凍りました。
皆、自分の目を疑いました。
そのまま桃を見つめていると、また動きました。
今度はさっきより大きく動いています。
お婆さんは悲鳴を上げて桃から離れました。
お爺さんや金太郎はそれぞれ家にあった鉈や斧をもって臨戦態勢です。
かぐやは顔を真っ青にしてスクナの腕の中にいました。
スクナは震えながらも必死になって腕の中のかぐやを守ろうとしていました。

すると、桃の頭頂部が盛り上がりました。
あまりの光景にのどがつまり、声もあがりません。
そして盛り上がった所から、小さな手が出てきました。
それを見た瞬間、お婆さんは口から泡を吹きながら白目を剥いて気絶しました。
そしてスクナの腕の中のかぐやも、声にならない悲鳴を上げ、気絶しました。
スクナは腕の中にいるかぐやを守るんだ、という意思だけで必死に立っていました。
お爺さんと金太郎は何が出てきてもこの家の人を守るんだという意思で、そこに立っていました。
やがて、二つ目の手が出てきました。
その手は最初の手とは逆に手のひらを向けて、桃を内側から押し広げようとしているようでした。
そしてぐちゅぐちゅという音を立てながら、桃が少しずつ割れてきました。
すると、中から何かが出てきました。
それは、頭でした。
それを見た瞬間、スクナと金太郎もとうとう気絶してしまいました。


書いてて収集がつかなくなったので没。しかもこれじゃあ昔話じゃなくてただのホラーだし。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

3話と4話の間にあった、初期の段階では書く予定だった村でのお話。

桃太郎はお爺さんとお婆さん、さらにスクナとかぐやに囲まれて健やかに育っていきました。
しかしある日、恐ろしいことが起こりました。
ハイハイが出来るようになった桃太郎が二人の小人を襲っているのです。
小人にとってすれば赤ん坊といえど巨人のようなものです。
逆に赤ん坊にとっては、二人の小人は魅力的なおもちゃに見えました。
二人にとっては広く感じる家の中を必死に逃げ回りました。
相手は赤ん坊。下手に反撃も出来ません。
やがて、二人は桃太郎に捕まってしまいました。
赤ん坊は二人をそのまま口へと……。


赤ん坊の習性を考えたらそもそも赤ん坊と小人を一緒に暮らすことが間違いと気づく。
結果本編のような形になった。


========================================

4話

一気にとんで数年後の話。
竹取物語のお爺さんは光る竹で財を成したけど、ここでは控えめ。
でもお金はそれなりに持っているだろうということで街に行って装備を買い揃えることに。
桃太郎につけた特殊能力はどうやって彼を連れて行くかを考えた結果。一応原作も参考にしている。いい感じに理由付け出来たので良かった。
馬を買ったのは大きくなった金太郎と子供の桃太郎では歩くスピードが違いすぎるから。
ちなみにワザと年齢がわからないようにしている。
桃太郎は設定で動物と話せるんだから問題ないだろうということで馬に乗ることに。
ちなみに初期では犬がついてきて、その上にスクナが乗っていた。けど桃太郎も足遅いよね、ということになって馬購入の流れへ。

本編ではかちかち山の前半部分を全てカット。
仲良し老夫婦登場→狸がお爺さんがいない間にお婆さん殺害→お婆さんに化ける狸→お婆さんをバラバラにしてナベで煮込む→お爺さんが帰ってくる
→お爺さんナベを美味しいといって全部食べる→食べきったお爺さんに中身を教える狸→お爺さんショック死→それを知ったウサギが復讐に行く

思い切り鬱展開なので没。
というか作者がこんな展開書きたくなかった。
それならばとコンセプト通りに人間の視点での物語へと作り変える。
結果ウサギが割を食うような形に。


========================================


5話

ウサギと亀にそった流れにして、ウサギはかちかち山からで亀は浦島太郎から、というのは初期から変わらなかったけど、ウサギの性格はかなり変えられた。
それに影響をうけて亀も性格に手が加えられている。
一番最初はウサギは負けたことを素直に認めて山を去っていく形だった。まぁその後鷹に襲われて死んでしまうという流れだったけど。
三回くらい書き直して本編の形に。


以下没ネタみたいなもの


ウサギは散々文句を言った後、亀に突撃していきました。
しかし、亀は予想外の動きをしました。
浮いたのです。
しかも、そのまま回転すると何故か火花を散らしながらウサギめがけて飛んでいきました。
それをまともに受けたウサギの身体は上下に……。


頭の中でCMでしか見たことのないガメラ(古い)とクリリンの気円斬(これもまた微妙に古い)が電波の力で合体した。
でもひどい内容なので没に。

他にも亀の台詞がネタとしていくつか思いつくが、これは会話文なしという物語なので没に


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6話~7話

話の元ネタである「はなさかじいさん」を殆ど取り込んだら1話で済まなくなった為に分割。
最初はあっさりと終わらせるためにシロを焼いた後の遺灰で済ます展開だった。しかし思ったよりパッとしなかったので結局こんな長くなった。
長くなった影響で色々な展開を考えた。例えば、
途中で醜いお爺さんが殺されるパターン(問題ありすぎ)。
そもそもシロが殺されないパターン(逆転の発想!でもこれでは物語が動かない)。
シロの幽霊が登場して醜いお爺さんに復讐するパターン(良さそうだったけど収集がつかなさそう)。
醜いお爺さんが持ってきた灰は一緒に住んでいたお婆さんを殺して燃やした灰。(気味が悪すぎ)

まぁ色々考えたけど、「桜の下には死体が……」みたいなことを書きたくなったので本編のような形に決定。


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8話~9話

笠地蔵は大筋は変わらなくても内容は二転三転した。
最初は雪を降らせるために万年雪のある山という設定だったが馬がいた事で断念。それに多分、スクナが凍死する。
また笠地蔵がお礼に来るとき二宮金次郎像の怪談話のように手足を使ってざっかざっかと歩くことも考えたけど却下。
何だろう。おかしいというよりキモい。
スクナたちが自分たちや周りを人間を差し置いて異常にビビっているのは相手が生物でないから、なんて裏設定がある。


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9話

どこからか新鮮な野菜を取り出し食事の準備を始めるお地蔵さん。

この一行を書いた瞬間そもそも身体が石像なんだから無理がありすぎるだろうということで却下。


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お地蔵さんがついてきたので出てきたネタ。

ある日町に入ったスクナ達はずっと後ろをついてきているお地蔵さんが誰に憑いているのか検証することにした。
やり方はいたって簡単。
三人がバラバラに動けばいいだけだ。
今までは桃太郎は子供でスクナは小人という状況で実行することが出来なかったがここは安全な町の中。
町中なら桃太郎を一人にしても問題なく、スクナは宿に残っていてもらえば問題は解決する。
そこですぐさま実行された。
ついでに旅の必需品や情報も持って帰ることにして桃太郎と金太郎は町へ出て行った。
スクナはお留守番である。

スクナの周りにはお地蔵さんは現れなかった。
桃太郎の周りにもお地蔵さんは現れなかった。
現れたのは、金太郎のところだった。
当然である。
付いてきた一体は地面に倒れていたところを金太郎に助けられた一体だからだ。
金太郎は……

この辺りまで書いて書くのをやめる。
理由はこの後の展開は一人称でないと面白くなさそうだから。


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10話

初期の展開予想から大幅にズレたので正直かなり強引になった「さるかに合戦」。
最初の段階ではスクナ達がカニと一緒に猿を懲らしめる話だったがシロの一件で無理なことに。
でも、桃太郎と金太郎がいれば猿の一匹くらいすぐにどうにかしそうなので良かったと前向きに捉えることにした。


以下没ネタみたいなもの

猿をおびき寄せるためにご飯を用意することにしました。
しかし、あまりにあからさまにすると猿が寄ってこないのではないかという声があがりました。
そこでスクナ達は不本意ながら後ろを付いてきているお地蔵に協力するよう声をかけました。
やがて昨日まではなかったはずのお地蔵さんの前にお供え物という形で食べ物が置かれました。
三人は正直こんなのできたら猿は相当アホだと思っていました。
しかし、猿は予想以上のアホでした。
昨日までなかったお地蔵さんの前に行くとその場でお供え物を食べ始めたのです。
カニたちは一斉に攻撃を仕掛けようとしました。
しかし驚くべき光景が目の前に広がりました。
お地蔵さんが、猿をその手に持った錫杖で突き上げたのです。


な、何だってー
その後は書いてる本人が戸惑うほどのカオスな展開に(楽しかったけど(笑))。
まぁ空気のスクナ達を他所にお地蔵さん無双が始まったとだけ言っておきます。
当然カニの復讐とかお地蔵さんのこととか色々収拾がつかなくなり没。


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当初10話と11話の間にあった話。実は一番最初の段階では猿は生きていた。

カニの復讐によりボロボロとなった猿を預かったスクナ一行。
すると桃太郎が急に馬を降り山道から外れていきました。
慌てて馬を近くの木につなげて桃太郎を追うとそこには一匹の鶴が猟師の罠にかかっていました。
スクナと金太郎にはわかりませんが鶴は必死に助けを求めてるようでした。
ここで鶴を助けてしまえばこの罠を仕掛けた猟師は困ることになるのでスクナと金太郎は助けようとはしませんでした。
しかし桃太郎は違いました。
鶴を助けたのです。
鶴は桃太郎に礼を言って空を飛んでいきました。
困ったことになったとスクナと金太郎が考えていると、桃太郎は猿を鶴がかかっていた罠へとかけました。
誰の影響か、以外に黒いことを平然とする桃太郎でした。
鶴と猿が釣り合うとは思いませんでしたが、鶴も助けれて面倒な猿も片付いた。おまけに猟師も困らない一石三鳥だ、と多少強引に思ってその場を去りました。


ここまで書いたがそこからの展開が書けなかったので没に。
恩返しに来てくれてもこの三人は現在絶賛旅の真っ最中なので原作通りの恩返しは不可能。
おまけに桃太郎がいるから速攻で正体がばれそう。
新たに旅の仲間を追加する気はなかったので丸ごと没。
実家に行けも二回目だし、行ってもらったところで大したエピソードも思いつかなかったというのもあったり。
これで猿も死亡エンドへ変更。


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11話~12話

物語はここから一気にラストへ向けて動き始めます。
最初の亀は弱かったので金太郎達が浦島太郎の変わりに助けるはずだったんですが、思い切り魔改造されたのでこんな形に。
スクナたちの常識がいい感じに壊されます。夢のある話なんですけどね。
それから鬼から小槌を奪うところ。
最初からスクナたちが正面きって鬼と戦うという選択肢は存在していませんでした。
彼らの目的は悪さをしている鬼をどうにかすることではなく、ただ打ち出の小槌を持ち帰るというのが目的でしたので。
しかし書きながら話が膨らんできたので、
鬼VS人間の軍VS竜宮城の部隊+暗躍するスクナ一行、な展開や、
スクナ一行が鬼を暗殺しまくったり、お地蔵さんが昔あった「仏ゾーン」ばりの活躍をする展開も考えました。
でも別に鬼との戦いが描きたかったわけではないので全て却下。


以下没ネタみたいなもの

亀と目が合いました。
目と目が合う~瞬~間気づ~いた~♪(千早ボイス)
何か電波が飛んできました。


本当の意味での電波なので当然却下。


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13話~15話

クライマックスです。RPGならまさに最終決戦というヤツです。
一応そのまま結ばれてハッピーエンドという予定もありましたけど、それまでに用意した伏線(大したものではないけど)が無駄になるので却下しました。
スクナには申し訳なかったですが、かぐやが自分のことを語る理由が弱かったので振られてもらいました。
また最初の戦いの場は村でしたが、それだと回りに被害が行くと気づいたので別のところへ行ってもらいました。
また決戦前や決戦は展開にいくつか考えがあって、
シロのお爺さんとお婆さんが炊き出しにきたり、どこからかカニが大量にやってきたり、例の海亀が登場したり、
お地蔵さんが大暴れする展開や、桃太郎が動物を操って大暴れする展開や、神器を持った金太郎が無双するとか色々考えました。
でも結局エンディングの方向性がスクナとかぐやお亡くなりで確定したので出来るだけシリアスにしたかったため昔話キャラは全て除外されました。
あと、作者は竹取物語が好きだというのもありました。

一応生存エンドも考えましたけど、月のお姫様って明言している以上何度も取り返しに来ると思ったので、日本人的思想でお亡くなりになって頂きました。

一番最後は富士山以外の神話とか伝承とかでまとめるのも良かったのですが(男女で二人だし)、竹取物語ならラストは富士山でしょ、ってことで今回のエンディングに。
まぁ私がその手の話をあまり詳しくなかったというのもありますけど(笑)



以上、解説でした。







[21022] あとがき【美味しかったですか?】
Name: レウィル◆ac21cb44 ID:a0af61f7
Date: 2010/08/15 21:12
こんにちは。
レウィルといいます。
今回は私の作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品は私の中にある記憶、ネタ、妄想、電波で出来ています。
決して元となった作品や特定の生き物等を貶めようとする意思は全くありません。
あくまでもネタです。
それでも不快に思った方は、申し訳ありません。
よかったと感じてくれた方がいれば、私も嬉しいです。

何かありましたら是非感想を書いていってください。

この物語はこれでお終いです。

最後にもう一度。
ここまで読んでいただきどうもありがとうございました。

使った作品
かぐや姫(竹取物語)
一寸法師
金太郎
桃太郎
かちかち山
ウサギと亀
浦島太郎
花さかじいさん
笠地蔵
さるかに合戦
こぶとりじいさん







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