脳内に豊富に存在する特定のたんぱく質が、うつ病を抑制する働きを持つ可能性があることを、群馬大と藤田保健衛生大、大阪大の共同研究グループが発見し、4日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に発表した。
群馬大によると、このたんぱく質は「SIRPα」と呼ばれ、これまではどのような役割を果たすのか判明していなかった。
研究グループが、SIRPαを持たないよう遺伝子操作したマウスと、正常なマウスを強制的に泳がせてストレスをかける実験を行った結果、SIRPαを持たないマウスは正常なマウスに比べ、うつ症状の指標とされる「無動状態」の時間が平均2割長くなった。
また、ストレスを受けたSIRPαからは、「リン酸化」と呼ばれる反応が生じていたことも確認された。リン酸化は、外部から受けた刺激を脳に伝える際に起きる。研究グループはこの結果などから、SIRPαがうつ病を抑制する何らかの作用を脳に及ぼしている可能性があると結論付けた。
群馬大生体調節研究所の的崎尚客員教授(生化学)は「うつ病の発症システムを解明する手がかりの一つとなることを期待している」と話した。【鳥井真平】
毎日新聞 2010年8月4日 10時06分