第8回

後編

ニコニコ動画から『するめいか』で漫画家デビュー、
注目の新人、ルーツインタビュー

アニメじゃ無理、漫画にしかできないことは積極的に取り入れたい

構成・文/梶本竜太 撮影/市村岬

題字/masi. 企画編集/アライユキコ

亀戸駅近辺。「この裏通りの空気が好きなんですよ」。

原作は原作として完結してていい。漫画とアニメで違うことをやっていきたい。シャイな笑顔な下から、だんだんクリエイタールーツの凄みが見えて来た。後編では、「するめいか」という作品に更に迫りたい!。




『王様はロバ』だけを読んでました


PROFILE


ルーツ

1988年生まれ、北海道出身。大学への進学を機に上京。08年2月、ニコニコ動画に投稿した「中二の頃作った黒歴史RPGを実況プレイするぜ」でゲーム実況プレイヤーとして注目される。09年4月よりwebマガジン幻冬舎「実況野郎B-TEAM」で漫画「するめいか」を連載。同年7月よりアニメ版を自主制作。11月、「コミックバーズ」でデビュー。「するめいか」は現在も連載中。初単行本となる『するめいか』1巻が幻冬舎コミックスより発売。アニメ版の3期も自主制作で展開中。日ハム、村上春樹の大ファン。

ブログ http://soituhasugeeya.blog47.fc2.com/

ツイッター http://twitter.com/JT_roots


梶本竜太(かじもと・りょうた)

1985年生まれ。北九州出身、漫画編集者志望。漫画に情熱を注いでおり、商業同人問わず幅広い知識を持っている。日経キャリワカ(現ビズカレッジ)の「僕らの仕事の現場から」でインタビューライターを経験。webマガジン「footra」で連載「マンガが一番 ゲームが二番」を担当。

ブログ http://blog.livedoor.jp/ryotamx0721/

ツイッター http://twitter.com/ryotamx


するめいか

「するめいか」
「コミックバーズ」で連載中。舞台は東京都江東区亀戸。アホ毛が特徴のサチ、眼帯をした毒舌の八千穂、頭に矢が刺さった「なのじゃ」言葉の楓たちの奇行に、ツッコミ役のミッちょんが振り回されるギャグ漫画。投稿した動画のおかげで銀河を統一したり、「ほたるいか」に乗っ取られそうになったり、ジュースを買いにアメリカまで行ったり……。エキセントリックな女子高生たちの日常が展開される。ルーツ曰く「京アニからもナックからもディズ二ーからも話が来ないから、自分でアニメ化する事にした」アニメ版もニコニコ動画で公開中。DVD版はコメンタリー付きで一期が二枚、二期が三枚「とらのあな」で発売中。描き下ろしも入った『するめいか』1巻は8月24日に発売。



「漫画以外で影響を受けた作品は?」「いろいろありますけど、『サウスパーク』は大きいと思います」


「いい顔が撮れた!」と満足のショット、「荒々しさ」を終始追求しているようでした。


──漫画を描き始めたのはいつ頃なんですか?

ルーツ ちゃんと描き始めたのは大学生に入ってです。2年の時にはしかが流行って、1ヶ月くらい休校になったんですよ。そのあいだ暇で、何故かがっつり漫画を描いて(笑)、週一で「週刊少年ワロス」(「2ちゃんねる」の「ニュース速報(VIP)板」有志によって設立されたweb漫画雑誌。投稿、閲覧共に無料)に投稿してってのを2、3ヶ月やってた。毎週8ページ描いてたんですよ。

──はしかで(笑)。なぜ漫画だったんでしょう?

ルーツ うーん、どうなんだろう、何でだろうな。その頃『みなみけ』(桜場コハル/講談社)をもらったんですよ友達に、「これ面白いよ」つって。それでこういうの描いてみようって思ったのかなあ。

──『みなみけ』は好きな漫画?

ルーツ そうですね。それ以来好きですね。でもたまたま『みなみけ』だったんだと思う。ほかのものがあれば、それをきっかけに描きはじめていた気もする。

──そうだ。好きな漫画作品は?。

ルーツ 『東京トイボックス』とか『大東京トイボックス』とか。他は『ドクシ―読師―』(樋口大輔/幻冬舎コミックス)とか『QUO VADIS〜クオ・ヴァディス〜』(原作:新谷かおる 作画:佐伯かよの/幻冬舎)とか好きなんですけど(笑)。あと「コミックバーズ」って雑誌が大好きで。毎月1冊は購読してます!

──じゃあ「コミックバーズ」以外でお願いしたいんですけど(笑)、影響を受けた漫画は?

ルーツ 生まれてはじめて漫画っておもしれーって思ったのは、昔「ジャンプ」に載ってた『王様はロバ』(なにわ小吉/集英社)ってギャグ漫画。

──巻末に載ってた。

ルーツ おじの家に「週刊少年ジャンプ」が積んであったんですよ。まだ小学校にも行ってなかった頃だから、他の漫画にはついていけなかったのもあって『王様はロバ』だけを読んでました。あと、人生で最初にコミックスを買ったのは『世紀末リーダー伝たけし!』(島袋光年/集英社)。小学中学校時代は『たけし』漬けの毎日。破れるまで読み返して。実家にまだあるんですけど、1番最初に買った『たけし』の10巻はページぼろぼろです。それを見て漫画ってすげえなあと思って。あと『清杉』。「月刊少年ガンガン」『清村くんと杉小路くんと』(土塚理弘/スクウェア・エニックス)って漫画があって、中学時代にすっげーハマりました。好きな漫画というか影響を受けたなってことだと、この3つですね。

──子どもの頃は北海道に住んでいたんですよね。

ルーツ はい。札幌はですね、冬は雪のせいで自転車に乗れないんですよ。冬に自転車に乗れるか乗れないかが、東京と札幌の一番の違いかなーって。札幌の中学生高校生は、自転車持ってないから行動範囲が凄く狭くて。だから僕は漫画を描き始めたんですよ。

──外に出ないから(笑)。何故東京の大学に?

ルーツ やっぱり東京に憧れがありました。若い頃東京に住んでたことがある父親から「東京での経験はよかったから、おまえも行ってみろやってみろ」と応援されたのもあって。

──初めて東京に来たときはどう思いました?

ルーツ 最初は毎日が祭りのように人が多くて疲れましたね。あと自転車に乗れないのが凄く大変で。何でかと言うと、北海道だと自転車って、目的地まで家からゴォーーンって行く乗り物で、ベルとか一切使わない。東京じゃベルを鳴らさないわけにはいかないじゃないですか、そういうのにすっげえ疲れて乗らなくなったんですよ。

――今も?

ルーツ 今はもうベル文化にも慣れました。ババババババって鳴らして蹴散らして突き進んでます、荒々しさを前面に出して、やってますから今は。あと何かイベントとか、集まりみたいなのは全部東京でやるじゃないですか。だからやっぱり東京に居ないときついなーみたいなのはありますね。 (岬が撮影しようとしてるのに気付き、荒々しい表情でおにぎりを頬張る)



担当さんとも音信不通になって


前編の反響の一部をツイッターから。ページのトップを飾った炎のルーツに衝撃が走った!

ashikure_U1 わろたw
5:20 AM Aug 1st webから

bamidot 目が覚めたらきてた!読んでもっかい寝る!
5:47 AM Aug 1st Saezuriから

higez ウェブ初公開・ルーツの素顔ですね!なかなかのイケメンなのに不審人物すぎる!(笑)萌えをめざしつつピントがずれてるルーツの作風が好きです(笑)
8:02 AM Aug 1st webから

denki8 後編も楽しみすぎるww
8:54 AM Aug 1st Keitai Webから

ume_nanminchamp 分銅さんでてるしw
8:59 AM Aug 1st webから

yonemitsu いわゆる流行りの四文字系、漫画「するめいか」8月24日発売! ルーツ先生 @JT_roots のフォトジェニックぶりにメロメローっ
11:33 AM Aug 1st webから

yuunagi するめいかの作者ルーツさんのインタビュー写真が素敵だ
8:54 PM Aug 1st Tweenから

大量の昔の原稿を見下ろして、ちょっと照れながらも解説してくれるルーツくん。背後の押入が葬り先の「闇」。


二つ目のファイルから「こっちにもあるんですよ」と原稿を取り出す。ルーツ家の闇を漁れば無限に原稿が出て来そう。いつか発表して欲しいな。



──webの「週刊少年ワロス」には「するめいか!?」という作品を1ページだけ載せてますけど、あれははしかの時に描いたもの?

ルーツ いや、はしかの時のはもっと古いです。「はしかの時に」っておかしな言葉ですけど(笑)。『するめいか!?』より1年くらい前かな、1年半くらい前かもしれない。

──では、はしか時代に遡ると、「ワロス」に掲載の「するめいか!?」はもっとたくさんある?

ルーツ そうですね、今部屋にありますよ。だいぶ闇に葬ったんですけど……。

──闇? もう出てこないんですか?

ルーツ いや、押入の奥に眠ってるだけです(笑)。(押入を開けてクリアケースを取り出して)これです。はしかで休校になったときに、8ページずつ1ヶ月2ヶ月くらい描いてた原稿です。

──ちゃんと原稿用紙に描いて。写植もしてるんですね。ん?

ルーツ 写植ではないです。この頃は、まだペイントソフトを使って写植できるってことを理解してなくて、わざわざ別紙に台詞をプリントして、原稿用紙に貼り込んでる(笑)。そういうレベルだったんですよ。

──凄いですね。柱で、他の「ワロス」の作品を宣伝してたり(笑)。

分銅 (原稿を覗きこんで)「『カリウド』「カリウド」に殺される……オニヤンマ薫子先生が描く猟奇ゲーム!? 20話位までたぶん更新中」。細かいネタを(笑)。

ルーツ ……良く作ったなあ、ほんと。暇な人だな(笑)。でもね、4話くらいまでは面白いんですけど、途中からもうなあなあでやってて面白くないんですよ。(別のケースを指して)こっちにもまだあるんですけど、だんだん面白くなくなっていって。

──これだけ描いて、雑誌に投稿しようとかは思わなかったんですか?

ルーツ ちょくちょく投稿してまして、2008年頃「月刊少年ガンガン」に2回掲載されました。「ガンガン」の(応募規定は)2ページで楽だったんですよすごい。だから試しに出したら1回目で載って、2回目も載って担当さんが付いて。

──おお!

ルーツ 「これいけんじゃね?」って思って、それから「先輩と後輩」とかを送ったんですけど全然駄目。担当さんとも音信不通になって(笑)。

──音信不通! 具体的なやりとりはあったんですか?

ルーツ 担当さんには『天体戦士サンレッド』(くぼたまこと/スクウェア・エニックス)と『日常』(あらゐけいいち/角川書店)を薦められました。『日常』のようなデフォルメされた絵で、『サンレッド』のような怪人が出る亀戸ローカル漫画、そう言うのを描けって言われて。まあでもどちらも面白いので勉強になったんですけど。



漫画にしかできないことは積極的に


大量の生原稿に興奮しつつ、手汗をかいていて手に取るのをためらう


「はしか時代」の原稿に描き込まれた柱。フォントもそれらしくいちいち凝ってます。


ルビへのこだわり
©ROOTS,GENTOSHA COMICS 2010


左上に注目
©ROOTS,GENTOSHA COMICS 2010


──『するめいか』の内容について少し詳しく聞かせてください。「バーズ」版7話のカメのボケが、10話でも使われているのが大好きです。こういう間隔を置いたネタの再利用を意図的にやっているのかが気になりました。

ルーツ そうですね。前に使ったボケを、天丼にすると面白いですから。

──こっちが忘れてるくらい後になって繰り返してくるのが面白くて。

ルーツ ありがとうございます。

──それから、例えばミッちょんがツッコミ入れてるけど読者的にはまだツッコミ足りないような感じがあったりするんですが。

ルーツ 足りないですか。

──いや、あえて、読者にツッコむ余地をもたせてるのかなと思って。たとえばB-TEAM版7話はミッちょんが殆ど突っ込んでいなかったり、9話「そうだね」のようにミッちょんがツッコミを放棄していたり。

ルーツ なるほど。基本的に「ここでこうツッコんだらすげえ面白いだろ」みたいにそんなに周到に狙ってはいないです。ネームの段階でまず思いつきで並べて、順番的におかしなところがあったら並び直して、みたいな感じの方が多いかな。

──その読み手とかが突っ込む余地を残してるようなところが、実況動画に繋がるところがあるかなって感じたんです。実況動画にはコメントがある。視聴者がツッコミ役で。そう言う「ツッコミ待ち」を漫画の方にも感じて、実況でのスタイルというか経験が出てるんじゃないかって。

ルーツ おぉーそうなんですか(笑)。活きてますね、じゃあ、はい。そう言う経験を活かしてます。

たろちん ほんとかよ!。

──あと、文字を活かすところも面白いですね。台詞のルビとか。例えば1話。「シルバニアファミリー」に「ままごと」とルビを振ってあるのには、笑いました。

ルーツ そういうのはかなり考えてますね。ルビで読み方を変えたり、ってのはアニメだと絶対出来ない。漫画にしかできないことは積極的に取り入れたいです

──背景やシャツの文字や言葉も遊んでますか?「アロマテイスト」なんてことば、どっから出て来るんだろうと(笑)。

ルーツ どうだろう? 深くは考えてないけど、細かいところでも笑いを取りに行こう、って姿勢ではいますね。

──つぎはストーリーづくりに関して。ストーリーを考える時に一貫したテーマやキーワードを考えていますか? バーズ版6話で言うと、導入に携帯電話が使われて、以後話の流れはまったく変わる、だけどオチは携帯電話に戻ってきて、あっと思うんですよね。

ルーツ ……考えているのかな? 全然関係無いオチにするよりは関係あるオチにする方が面白いですからね。 考えてやってるかな、うん、やってますね。

──最後のオチに持って行く前に、あえて脱線してみたり?

ルーツ あります。オチのためにわざと本筋から外れようとしたりなんかは結構考えてやってますね。

──なるほど。8ページ以上のストーリーを描きたいとは思いますか?

ルーツ うーん、どうなんですかね。今んところは8ページが一番やりやすいと。ガッと描き始めたら面白いギャグがボンボン思いついて、4ページくらいギャグだけで埋まるんですよ。で、5ページ目からこの流れからオチをどうしようかなっていう風に考えて描いている。ページ数増えたらそっからが長くなるんで出来るかどうかわからない感じです。

分銅 とにかく面白いと思ったものを全部詰め込むんだよね。ネームの打ち合わせでは、そこをがまんして、あえて引きを作るのも大切だってことも話します。最初はコマ割もあまり考えてなかったから。

ルーツ そうですね。見開きがどうとかあまり意識してなかった。分銅さんのおかげで「ページめくったら大ゴマでドーンと」とか考えるのが楽しくなりました。



喋ったら絶対面白い


インタビュー終わって外へ。撮影場所候補をああだこうだ出し合うB-TEAMの3人、ルーツ、たろちん、加藤。このあとRevin部長も遊びに来てくれた。


カメラマン岬の「あ、雨上がったのかな? っぽく」という要求に応えるサービス精神溢れるルーツ。



するめいか

「僕が住む前は、亀戸もたいしたことなかったんですよ。ここ4,5年で一気に増えて、おかげで家賃も上がって……」。家賃って住んでる間も上がるのか。





──ブログの「B-TEAM」最終回についての記事で、単行本を出すってのを目標にしてましたけど、次の目標はありますか?

ルーツ 次は2巻! あと風邪を引かない、身体を壊さずに夏を越そうみたいなのが(笑)。身体壊すと色々と遅れるので、壊さないで今年の夏を乗り切ろうと。去年の夏は一週間寝込んだので、今年は壊さないように、うがいして、毎日トマト食って。

──B-TEAMメンバーからは何かないですか?

たろちん 一人で漫画描いてて忙しいのに、アニメとか作って。大変じゃん。何でそんなにやれんの?

ルーツ まあ不安、だからだよ。会社員のやつらは週5で会社に勤めて頑張ってるんだから、俺もそれくらい頑張んなきゃいけない。家にいて、何かしてないと不安なんですよね、とにかく。

加藤 漫画を描くときに絶対にしちゃ行けないことみたいな、考えてることってある?

ルーツ いやー特にはないな。

加藤 本能で?

ルーツ 本能の赴くままに、決まりとか無いな。丁寧に描こうっちゅうのはまあ当たり前だけど。パクりはいけないよとかって言うくらいで。

加藤 陰獣(『HUNTER×HUNTER』に登場する)出て来たじゃん!

ルーツ 陰獣(笑)、あれはモブキャラだもん。ヴァン様とか描いてるけど、モブキャラだから。

たろちん ルーツは右脳の人だよね。天才肌なんだよ。

加藤 パ、パッて考える前に、身体が先に動くもんね。

たろちん だから僕は、なんだろ、江川達也じゃないけど、テレビとかで本人が喋っちゃうような漫画家になって欲しいんですよ。ルーツが喋ったら絶対面白いから、トークショーみたいなものを凄いやって欲しい。

分銅 それは初めて会ったときに、思いました。

たろちん ですよね。やっぱりそうですよね。本人が前に出ていった方がいい。

──それでは、最後の質問になるんですけれども、

ルーツ はい。あなたにとって。漫画とはなんですか?

──先読みされた(笑)、なんでしょう?

ルーツ 夢、ですかね……。はい、という感じで今日はインタビューやりましたけれども! えー皆さん僕のためにお集まり頂きお疲れ様でした。どうもありがとうございました!

──そして仕切られた!





次号予告


「亀戸は、下町情緒溢れるというか、着の身着のままで出掛けても構わないっていうのが凄くいい街」


8/29には『するめいか』(1巻)と、『大東京トイボックス』(6巻)の同時発売のを記念してのうめ×ルーツのトークイベントが開催されるので、こちらもお見逃しなく。

さて、次号は、9/1を一回お休みいただき、田島太陽のターン。ブックコーディネイターの内沼晋太郎さんに「出版の未来」についてがっつり聞いてきます。では9/15の更新をお楽しみに!


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