2010年7月12日 0時15分 更新:7月12日 2時12分
民主党が与党として初めて迎えた国政選挙で、有権者が示したのは政権への不信感だった。「V字回復」とまで言われる高支持率で船出したものの、菅直人首相が口火を切った消費税引き上げに関する発言が揺れるたびに民意は離れていった。菅首相は自身の発言を「唐突な感じで国民に伝わった」と振り返ったが、改選第1党を自民党に奪われる敗北につながった。政権交代から1年もたたぬうちに、民主党は「ねじれ国会」という厳しい現実を突き付けられた。
「目標にかなり届かない結果に終わってしまった。原因の一つは消費税に触れたことが唐突な感じで国民に伝わった。十分な事前説明が不足していたことが大きな原因と私自身も思っています」
12日未明、民主党本部近くのホテル内の開票センターで、予定時刻より遅れて会見に臨んだ菅首相。冷静さをアピールするためか、表情を変えずに無念の思いを語った。背後にある候補者一覧の当選者につけられる赤いバラはまばらなまま。千葉景子法相(62)の名前にもバラはつけられずに終わった。
センター内は当初から重苦しい雰囲気。午後8時過ぎには、東京選挙区の蓮舫行政刷新担当相(42)や比例代表の新人、谷亮子氏(34)がいち早く当選を決めたとの速報が伝えられたが、テレビ中継に姿を現した党幹部も「非常に厳しい選挙になったのは事実」と苦しい胸中を吐露するセリフばかりが飛び出した。
「有権者にとって唐突感があったのは否めない」。安住淳選対委員長もテレビ中継で影響を認めざるを得なかった菅首相の消費税を巡る発言。公示直前に税率アップに言及し、選挙戦の焦点として急浮上。さらに、首相が税金還付の年収水準について、発言を変えたうえ、終盤には消費税に触れない時も。野党からは「発言のぶれだ」と格好の批判対象とされた。
苦戦が伝えられる中、首相は大阪での第一声を皮切りに、山梨や東北各県など自民と議席を争う1人区などを精力的に回り、支持を訴えた。公示後、従来は消極的だった報道陣による「ぶら下がり取材」について、「皆さんに、私の気持ちを伝えたいと思った」と選挙期間中は連日対応すると表明。メディア対応の方針も変えたが、挽回(ばんかい)できなかった。
改選組ながら応援に駆け回った蓮舫氏は11日午後8時過ぎ、東京都内で喜びの声を上げた。しかし、「まず消費税の議論を始めましょうという菅総理のメッセージが国民に正しく伝わらなかった」と険しい表情を浮かべる場面もあった。【曽田拓、百武信幸、伊藤一郎】