参院選:「敵失」で自民、窮地脱出 政権奪還は道筋見えず

2010年7月11日 23時43分 更新:7月12日 3時37分

候補者の当選確実が次々と伝えられ、笑顔を見せる自民党の谷垣禎一総裁=同党本部で2010年7月11日午後10時37分、小川昌宏撮影
候補者の当選確実が次々と伝えられ、笑顔を見せる自民党の谷垣禎一総裁=同党本部で2010年7月11日午後10時37分、小川昌宏撮影

 07年参院選と昨年の衆院選で惨敗し、「今回負けたら党がなくなる」(幹部)と危機感を抱いて臨んだ自民党は「改選第1党」を確保し、土俵際で踏みとどまった。谷垣禎一総裁は12日未明の記者会見で「一刻も早く(衆院を)解散して信を問うべきだ」と述べ、菅直人首相に早期の衆院解散・総選挙を迫った。民主党との政策協議には前提としてマニフェスト(政権公約)の撤回というハードルを突きつけ、攻勢を強める構えだ。

 谷垣氏は12日未明、党本部で記者会見し「(民主党)政権は数々の暴走、迷走があった。明確な有権者からの批判だ。自民党の再生は緒についた」と結果を評価した。「与党過半数割れ」という目標をクリアしたばかりか、50議席を超えたことで、谷垣氏にとっては任期の12年9月まで続投する見通しが開けたと言える。

 今回の参院選では、来年の統一地方選を控えて自民党の地方議員が活発に運動したのに加え、積極的な候補者公募も一定の成果を上げた。安倍晋三元首相以降、1年ごとに総裁が交代し党勢が衰えたことへの危機感が底流にあった。選挙前に中堅・若手議員の一部でくすぶっていた「谷垣降ろし」は収束した。

 ただ、今回の自民党の復調は、菅首相の消費税を巡る姿勢のぶれという「敵失」に助けられた面も否めない。参院選対策を優先した結果、衆院選の公認候補となる小選挙区支部長は3分の1が未定。毎日新聞の全国世論調査で自民党の支持率は10%台に低迷したままで、参院選での復調を次期衆院選での政権奪還につなげる道筋が確固としたものになっているわけではない。党勢回復の展望が開けなければ、谷垣執行部の刷新論が再燃するのは必至だ。

 そうした空気を読み取った谷垣氏は会見で「9月の党人事では若手の登用も考えなければならない」と述べ、世代交代論に配慮した党改革に取り組む考えを示した。

 自民党は一息ついたとはいえ、問題は今後の「野党暮らし」にどこまで耐えられるかだ。93年衆院選で下野した際は、当時の社会党、さきがけとの連立でわずか1年後に政権に復帰したが、衆院で116議席(副議長含む)にとどまる現在は状況がまったく違う。

 民主党との大連立には「菅首相サイド、小沢(一郎前幹事長)サイドのいずれから誘われても乗れない。次の衆院選で政権奪回を目指す。我慢のしどころだ」(首相経験者)との異論がある一方、ベテランを中心に小沢氏や亀井静香国民新党代表ら菅首相と距離を置く与党実力者との連携を模索する動きが出てくる可能性もある。谷垣氏は大連立の可能性を「ゼロだ」と明言したが、執行部のかじ取り次第では党内の亀裂が表面化しかねない。【中田卓二】

top
文字サイズ変更
この記事を印刷

PR情報

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド