2010年7月11日 23時29分 更新:7月12日 1時22分
消費税増税が最大の争点となった参院選は、連立与党が過半数を大幅に割り込む大敗となり、「(消費税)増税を掲げると選挙に負けるというトラウマ」(菅直人首相)が民主党政権に重くのしかかることになった。同様に消費税増税を公約した自民党は議席を伸ばしたが、次期衆院選をにらみ民主党との対決姿勢を強めるとみられる。増税反対を明確にするみんなの党も躍進しており、菅首相の目指す「参院選後の消費税増税に向けた本格論議」入りは難しそうだ。
消費税の「トラウマ」は、今も政界に根深く残る。89年4月に消費税を導入した竹下登内閣は、リクルート事件も重なって支持率は1ケタ台に下落し、総辞職に追い込まれた。直後の参院選では消費税廃止を主張する社会党(当時)が躍進し、与野党逆転を許した。97年に税率を5%に引き上げた際も、自民党は翌年の参院選で大敗し、橋本龍太郎内閣は退陣した。
それでも菅首相が消費税を前面に打ち出して選挙戦に臨んだのは、先進国最悪の財政状況にある日本を「(深刻な財政危機に陥った)ギリシャのようにしてはならない」との危機感を抱いているためだ。消費税増税の方向で民主、自民党が足並みをそろえたことで、市場では「消費税論議が加速する」との見方も広がった。
だが、投票日が近づくにつれ、増税への国民の根強い反感が浮かび上がってくる。毎日新聞の世論調査では、菅政権発足直後の6月上旬、消費税引き上げに賛成が52%と過半数を占め、反対44%を上回った。ところが、参院選終盤の7月上旬には反対が53%に対し、賛成は44%と逆転した。菅首相が公示日直前、自民党の主張する税率10%への引き上げを「参考にする」と表明したことや、低所得者対策としての「軽減税率」「還付」についてあいまいな発言を繰り返したことも有権者の反発を買い、自民党と明暗を分ける一因となった。
参院で与党が過半数を占められない「ねじれ国会」で力を強めた野党側が、与党への揺さぶりを強めるのも必至。菅首相の呼びかける「超党派での消費税協議」について、自民党の谷垣禎一総裁は参加の可能性を示唆しながらも「まず、民主党がばらまき政策をざんげするのが先」と高いハードルを突きつけた。民主党内でも消費税増税を打ち出した執行部への批判が高まりそうで、財務省幹部は「与党内が混乱すれば消費税増税どころではなくなる」と懸念する。政権基盤の弱体化で、消費税以外の税制改正論議や予算編成作業が難航すれば、経済政策全般の停滞にもつながりかねない。【久田宏】