2010年7月10日 10時51分 更新:7月10日 12時11分
火を自由に使えず、野外生活をしていたとされる旧石器時代の人類(原人)の生活跡が、英国東部で見つかった。冬の最低気温が氷点下になる北緯52度の地点で「当時の人類は寒さを克服できないため北ヨーロッパには進出していなかった」との定説を塗り替えた。英科学誌「ネイチャー」に発表した。
大英博物館などのチームは英ノーフォーク州の海岸で、石器など原人が住んでいたとみられる跡を見つけた。詳しい調査で、99万~78万年前の間氷期(氷河期と氷河期の間)のものと推定された。
同時に発掘した昆虫の分析から、夏の気温は16~18度、冬は0~氷点下3度まで冷え込む気候と判明した。当時の人類は火をおこして利用する能力はないと考えられており、ここでも使用跡は発見されなかった。原人は洞窟(どうくつ)や岩かげに住み、毛皮をまとって植物や貝、草食動物などを食べていたとみられる。
人類の祖先は約600万年前、アフリカで誕生し、約200万~180万年前にアフリカを出て欧州やアジアに広がったと考えられている。だが、これまでに見つかった約100万年前の人類の遺跡はいずれも北緯45度(イタリア・ミラノ付近)より南。当時、英国は大陸と陸続きだったため、原人は歩いて北上したらしい。
佐藤宏之・東京大教授(先史考古学)は「この時期、厳しい寒さの中で生活していたことは人類の驚異的な能力を示している。従来の旧石器時代の人類のイメージをかなり大きく書き換える可能性がある」と話す。【斎藤広子】