2010年7月9日 11時38分 更新:7月9日 13時8分
【ワシントン斉藤信宏】米財務省は8日、半年に1回の外国為替報告書を議会に提出した。焦点となっていた中国の人民元については「依然として過小評価されている」と指摘したが、米議会で要求が強まっていた「為替操作国」の認定は見送った。ガイトナー米財務長官は「人民元の上昇が、どのくらいの速さでどの程度の幅まで進むかということが重要だ」との声明を発表。「今後も引き続き人民元相場の動きを注意深く監視していく」との方針を強調した。
報告書は本来、09年下半期を対象に4月中旬までに議会に提出される予定だったが、米政府が中国との外交関係に配慮し、6月下旬の主要20カ国・地域(G20)首脳会議後まで提出を延期していた。中国はG20首脳会議を目前にした先月19日、人民元相場の弾力化を発表。これまでに人民元は対ドルで0.73%上昇している。
報告書では、09年下半期から10年上半期までの期間中、「主要貿易相手国で為替操作による通商上の不当な利益を得ているとみられる国はなかった」と指摘。中国が「人民元相場を柔軟化させ、ドルとの連動を終了する」と発表したことを「大きな前進だ」と評価。「05~08年の間に人民元は対ドルで21.2%上昇しており、中国側の措置が市場の実勢に見合った相場形成につながるかどうかを判断するには、もう少し時間がかかる」として、早期の為替操作国認定に慎重な姿勢を示した。
米国内では、中国が人民元相場を対ドルで事実上固定してきたことが米国内の雇用に悪影響を与えているとの批判が根強い。報告書について米上院財政委員会のグラスリー筆頭理事(共和)は「中国が為替操作していることは誰でも知っている。大統領が(操作国)認定を避け続けるなら議会が行動する」との声明を発表した。
米財務省が包括通商・競争力法に基づき、貿易相手国の為替政策について、半年ごとに議会に提出する文書。「為替操作国」と認定した国に対しては、米政府が相場水準の是正に向けた協議を実施するとともに、貿易上の制裁措置を科すことも可能になる。