命なき物体しか愛せない辻神瑠子には、偏愛によってモノにヒトとしての姿形を与える九十九神化能力《AML》が備わっている。バスタオルの九十九神・タオ、工作ハサミの九十九神・サク、虫眼鏡の九十九神・マグニを同居人として、ヒトを嫌いモノを偏愛する毎日を送っていた。  ある日、異端管理局の交渉要員を名乗る能瀬詠彦が現れ、《AML》を消去するために『ヒトに恋をしろ』と要請する。そんな中、ルコはゴミ捨て場で一本のキセルを発見し、その日の夜、謎の和装男に呼び止められ逃げてくる。  管理局は強行策に出るが、ルコたちはこっそり自宅を脱出して逃避行を開始。しかし追っ手に捕まり絶体絶命の状況に陥った時、和装の男によってルコが連れ去られた。  《AML》で知らぬ間に九十九神化したキセル――呑助は、棄てられた骨董品仲間を同じように救って欲しいと頼み込み、ルコはそれを承諾する。  最後に一度だけ、と対面した3人の九十九神に冷たい決別宣言を下し、打ちのめされた九十九神たちを残して去っていくルコ。それでも、後悔する彼女は自分の中にある気持ちに気付き、九十九神たちも覚悟を決めて彼女の元へ向かう。  ゴミ集積場にやってきた呑助とルコは、骨董品たちの残骸を発見する。負の感情で暴走した《AML》により、その場に棄てられた他のモノたちが九十九神化、人間たちに復讐しようとルコたちに襲い掛かる。危ないところをタオたちに救われ、命令無視した能瀬も加えて九十九神たちを止めようとするが、それには《AML》の消失が必要だった。躊躇するルコもタオたちの言葉でモノへの愛を消し去り、3人諸共九十九神は消失する。  その後抜け殻状態だったルコに、能瀬は変わらずモノを愛せと言葉をかけ、再びモノに対する愛を取り戻したルコの元に、3人と呑助が帰ってくる。相変わらずモノフェチのヒト嫌いは治らないものの、ルコたちは変わりない暮らしを再開する。