乾いた金属音が甲子園にこだまする。4万7000の観衆はどよめき、歓声と悲鳴が交錯した。
一回一死、真鍋の中前打を合図に早実打線が火を噴いた。3番・安田の死球に続き、4番・小野田が中前適時打。深沢の左中間3点適時二塁打など、打者一巡(13人)8長短打で7点を奪った。
3安打3打点の小野田は「4番は大事なところで打たなくてはいけないけど、自分でもビックリです」と声が弾んだ。
五回は、なんと先頭から5者連続安打の11安打。止まらない打線が、大会史上3位となる1イニング12点をがっちり奪って試合を決めた。
1回戦(9日)の倉敷商(岡山)戦では、わずか4安打2点で辛勝。和泉実監督(48)は、この日の試合前に「引きつけて自分のスイングで打て」と指示。コンパクトに振り抜くことで、記録的な猛爆を呼び込んだ。
猛攻の原動力となった小野田だが、1年時から鈴木と並ぶエースだった。しかし、制球難に陥り今春から野手に転向した。そんな苦悩を知る和泉監督も「上位打線が引っ張り、4番の彼(小野田)が打ったから打線がつながった。よくやってくれた」と目を細めた。
小野田と“コンビ”を組む、3番・安田も4安打4打点。こちらはなんと3日前に急性胃腸炎で入院。「吐きましたし、食事もほとんど食べられませんでした」という状態で前日退院したばかりだったが、気迫でバットを振り抜いた。
3回戦(17日・第2試合)では、関東一との“東京対決”で8強入りをかけて激突する。
「あと1勝すればベスト8に入れる。気持ちを切り替えて臨みたい」と先発の鈴木。昨夏の覇者を圧倒した打線が、2006年以来4年ぶりの全国制覇に向けて、甲子園を熱くする。(広岡浩二)