コロ、コロ、コロ、コロ…。だれもが投ゴロで終了と思った瞬間、想定外の出来事が起きた。
3点差に迫られ、なお満塁。石川の打球をあわてて処理したクルーンが一塁に放ったのは、矢のような球ではなくボウリングのようなゴロ。その間、約1・7秒…。スローモーションのように、G党の悲鳴と横浜ファンの歓声が交錯する。小さく4度バウンドして、一塁のエドガーのミットに収まると、安堵(あんど)のどよめきと笑いが東京ドームにあふれた。
「思ったよりも石川の打球が強かった。ひざまずいてブロックをしたときに指をついてしまい、手に力が入らなくて…。また立って投げても間に合わないと思った。だから、思い切り転がすしかないと思ったんだ」
試合後、落ち着きを取り戻したクルーンは、照れ笑いを浮かべながらバナナ・オレを片手に自ら解説。横浜・村田には恥ずかしそうに「初めて見たでしょ?」と衝撃プレーを問いかけた。
5−0の快勝ムードに暗雲が漂い始めた九回、星野が村田に被弾し一死一塁で降板。クルーンも代打・カスティーヨの四球、代打・新沼の左前適時打で3点差とされた。さらに内川にも四球で満塁。一発を許せばあわや…という危機だった。
そんなクルーンの決死のプレーに、コロコロ送球を拾い上げたエドガーは「緊張したよ。転がっている時間は思ったよりも長かった。頼むから球がちゃんとミットに入ってくれ、と思ったよ。あんな経験は野球人生で初めてだね」と苦笑いだ。
とはいえ、自慢の打線が4本塁打で5点を奪いながら投手陣は相変わらずピリッとしない。ペットボトルの水をグイッとあおった原監督は「最終回はちょっとドタバタしましたがリズムは出てきましたね」と連勝に胸をなで下ろした。
“クルーン劇場”もすべてが必死にやった結果。どんな1勝でも、前向きにとらえて戦っていく。(阿見俊輔)