防衛省は来年度予算の概算要求を見かけ上減らすため、在日米軍向けの「思いやり予算」や、過去の契約で支払いが決まっている経費など、同省がどうしても必要だと判断している予算の一部を、あえて要求から外す方針を固めた。外した分は、1兆円超の特別枠の使途を決める「政策コンテスト」にかける。重要な予算なら結局は復活が認められるという読みだが、政治主導で配分を決めるコンテストの趣旨を骨抜きにする動きだ。
菅内閣は、各省に対して来年度の概算要求で前年度比1割削減するよう指示。2010年度の防衛省の当初予算額は約4兆7900億円で、来年度予算の概算要求枠は4兆3450億円となった。
防衛省は11日に政務三役や局長級幹部、各幕僚長らによる防衛会議を開き、対応を協議。要求枠内に収めるため、(1)在日米軍駐留経費負担(思いやり予算=10年度は約1900億円)(2)艦船や航空機などを購入する際の契約で毎年の支払いが決まっている「歳出化経費」(同約1兆6800億円)(3)航空燃料などの「油購入費」(同約800億円)――の一部を削減して要求する方針を決めた。
いずれも、実際に削減するのは困難な「義務的経費」ばかりだ。思いやり予算は見直しに向けた日米協議の最中。一方的に削れば、日米関係に大きな影響が出る。歳出化経費は、削れば違約金を求められかねない。燃料が買えなければ自衛隊の訓練や活動がままならなくなる。
防衛省は概算要求から外すこれらの経費を、菅内閣が用意する1兆円超の特別枠の使途を決める政策コンテストに回す方針だ。だが、政策コンテストは、事業仕分けの手法を活用して成長分野や雇用確保に予算を回すのが狙い。思いやり予算などを対象とすることは想定していない。