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【国際】

ユーロファイター受注へ猛攻 ライセンス生産で強み

2010年8月8日 朝刊

英中部ウォートンにあるBAEの工場で組み立てられるユーロファイター=ジョナサン・ヒル撮影

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 英国防産業大手BAEシステムズが、日本の次期主力戦闘機(FX)用に、ユーロファイターの売り込みに力を入れている。英政府も、七月に訪日したヘイグ外相が岡田克也外相に同機の導入を求めた。日本政府は最有力候補だった米F22の購入を昨年、断念したが、米国はなおも米メーカーの他機種の採用を勧める。米国には日米安全保障関係などの強みがあるのに対し、BAEは「日本にとって多くの国と関係を構築する方が賢明なはずだ」と強調している。 (ヨーロッパ総局・有賀信彦)

 ユーロファイターは英独など欧州四カ国の企業が共同開発した。日本への販売活動はBAEが担当する。

 マーク・パーキンソン上級副社長は本紙に「対空、対地、どちらを目的にしても、柔軟に対応できるマルチ戦闘機だ。ミサイルなどの装備も日本側の要求に合わせたタイプを搭載できる」と説明。日本の防衛装備体系に順応できる技術水準を強調する。

 ライバルとなるのは米社製造の二機種。ゲーツ米国防長官はF35(ロッキード・マーチン社)を熱心に推薦。もう一方のFA18(ボーイング社)は技術的、価格的な競争力は劣るものの、日米関係の緊密さから、欧米の軍事関係者は導入の可能性が最も高いとみる。

 対抗するユーロファイターに有利な点はライセンス生産の条件。米国製は技術公開しないブラックボックス化が進んでいるためだ。同上級副社長は「三菱電機とはレーダー、IHIとはエンジンについて、どんなライセンス生産が可能かを話し合っている」と、提携内容について企業間で検討していることを明らかにした。

 同社は二〇〇五年に米軍用車両製造販売会社を買収、米国内で操業する事業所は五十に達していて、米国との結び付きも深い。ある軍事ジャーナリストは「仮に日本がユーロファイターを導入しても、米国の反発はさほど大きくない可能性がある。BAEはその点も考え、導入の可能性が十分あるとみているのかもしれない」と分析する。

 一方、売り込み支援の政治力は米国の方が上手。パーキンソン上級副社長は「日米関係に悪い影響を与えるつもりはない」と、両国関係の重要性も認める。だからこそ、アンディー・レイサム副社長は「日本の多くの政治家、官僚、業者に会ってユーロファイターを説明し、理解を深めてもらうしかない」と意気込む。

 ただ、日本では九月に予定される民主党代表選の後、内閣改造で防衛相が代わる可能性もある。「これまで説明してきたことを一からやり直さなければいけなくなるのでは」。同社関係者はそんな苦しい展開も想定している。

 英王立総合防衛安全保障研究所(RUSI)のアレクサンダー・ニール部長(アジア担当)は「FXはBAEにとってまたとないチャンスだが、日本にとってはリスクがある。ユーロファイター自体は日本にとって理想的なタイプの戦闘機だが、日本が日米同盟関係について議論するつもりがなければ、同機の採用はなかなか難しい」とみている。

 

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