コンテンツの海外展開は「合作」もカギ――手塚プロダクション松谷社長に聞くnikkei TRENDYnet8月 2日(月) 11時46分配信 / エンターテインメント - エンタメ総合
【詳細画像または表】 そこで経済産業省は昨年に引き続き、秋に国内で開かれる統合的なコンテンツフェスティバルである「JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)」を7月初旬にフランス・パリノール ヴィルパント展示会会場で開かれた「JAPAN EXPO」(JE)に出展した。昨年から強化している海外展開の一環。日本のコンテンツの魅力を広くアピールするのが狙いだ。今年はブラジルや上海でもコ・フェスタを紹介した(関連記事:「コ・フェスタ IN 上海」リポートを別途掲載)。 今後日本はコンテツの海外展開をどう進めていけばいいのか――手塚プロダクション社長として手塚マンガの海外展開も促進、コ・フェスタ実行委員会副委員長も努める松谷孝征氏にJEの印象などを現地で聞いた。 ――今年11回目のJAPAN EXPO(JE)は入場者が年々増えている。 松谷孝征氏(以下、松谷):「JEは今年初めて見たが、以前から評判は聞いていた。昨年からコ・フェスタとしてもブースを出し始めたことはよいことだと思っている。日本にも色々なイベントがある。JEへの出展などから、海外の人が日本に来て、コ・フェスタのイベント全体を見てもらえるようになればいいのではないか。コ・フェスタを通じてBtoBの仕事が成立すればいいのはもちろんだが、大勢の人に日本の魅力を感じてもらい、日本を理解してもらうのが一番だ。多くの人に日本に来てもらえるようになれば、観光などを通しても経済効果があると思う。コ・フェスタの開催は今年4回目で経産省なども後押ししてくれているが、まだ認知度が足りない。そろそろイベントとして定着をさせたいと思っている。『コ・フェスタを開催している時期に日本に行くと面白いぞ』となってくれればと思う」 ――コ・フェスタをどのようにして定着させていくのか? 松谷:「まずPRが必要だ。今年は3月にブラジルで『コ・フェスタin ブラジル』を開催、6月には中国で開催中の上海万博で『コ・フェスタ IN 上海』を開くなどした。JEへの出展もPRにつながる。フランスでもマンガやアニメはかつて、大人からは冷ややかにも見られていた。でも最近はマンガを文化としてとらえてくれている。日本もそういう傾向があって、経産省や文化庁などが政府として応援してくれる。手塚治虫が生きていたころと比べたら夢のよう。生きていたら一人ではしゃぎまくっているのではないかと思うほどだ」 「最近はフランスでも、大人のマンガまで出版されるようになったと感じる。『え?』と思うような作品まで翻訳されている。マンガはどこの世界でも大人が毛嫌いする。昨年まで日本動画協会の理事長をやっていた関係で、オランダやベルギーなど様々なところで講演をしたが、『日本のマンガにはなぜバイオレンスや性描写があるのか』とよく聞かれた。そんなときは『日本のマンガを全部読んでみてください。すごいのがあるから』と説明してきた。フランスなんかはそれが完全に理解されて政府が公認してくれたのがすごくいい。フランスは日本をよく理解して日本の文化を色々見始めているように思う。これにはJEがものすごく大きな影響があったのではと思う」 ――JEは盛況だが海外には海賊盤など非正規で流通している商品も多く、日本企業にとってはビジネス化が難しい側面もある。 松谷:「例えばフランスと中国は、結構、合作でアニメーションを作っている。(JEの期間中にコ・フェスタとJETROが主催した)ビジネス商談会でも、日本とフランスもその可能性が十分あるのではと感じた。日本の技術やアイデアをうまく生かしてもらって合作して、日本とフランス、それぞれの市場に合わせて、それぞれが販売するやり方もあるだろう」 「海賊盤対策ももちろん不可欠だ。DVDなどは質が落ちずに簡単にコピーできる。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)などが積極的に対策に取り組んでいるが、海賊盤の流通を防ぐには良心に訴えるか、厳しい罰を与えるしかないのではと思う。フランスのような文化国家であれば、対策を提示すれば受け入れてくれるのではないか」 ――手塚プロダクションでは2009年11月から、北米で「WEEKLY ASTRO BOY MAGAZINE」の配信をiPhone向けにスタートした。フランスでもJE期間中からの無料試験配信を経て、8月から有料配信も始める。ネット配信は、日本の企業にとって海外展開の一つの核になりそうだが。 松谷:「手塚作品は様々な国で翻訳されている。手塚が亡くなってすぐに、中国の北京にプロダクションを作って、アニメーターを育てたりもしてきた。最近ではキャラクターグッズなどの販売も伸びるようになってきている。ヨーロッパにもエージェントがある。手塚プロとしても1億の市場より60億の市場とは考えている。手塚の考え方からしても、より多くの子供たちに読んでもらいたいからだ。ネット配信も多くの人に見てもらうために始めた。それを見て読みたいと思った作品は、また紙で読んでもらえればと思ってやっている。海外展開の方法は、手塚作品のような既にあるコンテンツと、今まさに連載されている人気作品とでは大きく異なると思う。新作がどんどんでるような作品の場合は、海賊盤がでるとビジネスへの打撃が大きいからだ」 ――日本のマンガの面白さとは? 松谷:「一番は話がしっかりしていることだろう。マンガは編集者とマンガ家の劣等意識から作られてきた。マンガが赤本なんていわれていたころ、マンガ家は普通の大人からマンガがどう見られているか当然わかっていた。大手出版社がマンガ雑誌を出し、本当は文芸をやりたかったエリート編集者もマンガをやらされて落ち込んだ。『じゃあ大人が読んで納得するようなものを作ろう』というお互いの劣等意識がストーリーを生み出した。さらに子供たちをひきつけるには、なじみのあるキャラクターを作らないとだめ。それがそのままテレビアニメになった。アニメも、ストーリーやキャラクターをきちんとしなければということが定着している」 (文/吾妻 拓=日経トレンディネット) 【関連記事】 ベストセラー作家・東野圭吾の最新作は 人間が科学で解明できる限界を問うNEO科学警察小説 【上海リポート】中国でもコスプレ、アニソン・イベントに日本語の歓声 2010年 ヒットする映画の傾向とは? 広告業界も注目する衛星媒体 BS日テレが示した変化とは 異例の興収34億円超 R-15指定映画『告白』の鬼監督は?
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