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元銀行員の新保恵志(しんぼ・けいし)東海大教授は「実績主義の広がりで、審査の質より融資額が行員や支店長の実績になるため、融資額を増やすことが目的になった」と指摘する。競争の果てに、銀行は「貸し過ぎ」の体質になったという。
■誘い文句「家賃と同じ」
日本銀行によると、銀行と信用金庫の貸し出しに占める住宅ローンの割合は、00年度末の13%から09年度末には21%に増えた。
「貸し過ぎ」の一方、借りる人たちは、返済できないリスクが高まるばかりだ。
厚生労働省の調べでは、会社員などの給料の総額は、米国のサブプライム(低所得者向け)住宅ローン問題が起きた07年度から3年連続で下がり、06年度より5%減った。
低い金利にも「落とし穴」がある。住宅ローンは変動金利なら1%前後まで下がっているため、変動を選ぶ人の割合が増えている。だが、ローン返済が残り25年で2500万円(ボーナス払いなし)の場合、金利が1%から2%に上がると、毎月の返済額は1万円以上増える計算になる。
「銀行や不動産会社に『家賃と同じ返済額』と言われ、頭金なしで家を買う人がいる。だが、頭金がない人はぎりぎりで暮らしてきた人。家を買うとローン以外の負担も増え、返済が苦しくなる」。家計の相談にのるファイナンシャルプランナーの藤川太さんはこう警告する。(松浦新)
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〈裁判所の競売〉
返済が滞るなどした時、銀行などの申し立てで、裁判所が強制的に住宅やビルなどを「入札」という方法で売る制度。裁判所が基準価格を示し、それをもとに購入希望者がそれぞれ希望価格を出し、最も高い希望者に売る。一般の売買で売れにくかったり、建物の中を見ることができなかったりするなどの理由から、基準価格は一般の売買価格より数割安い。住宅ローンでは返済が数カ月から半年間滞ると銀行などが裁判所に申し立てる。裁判所の物件調査などを経て、申し立て後半年から1年ほどで入札される。