取材を申し出たが、断られた。太平洋戦争の激戦地に赴いた人から軍隊生活を聞きたいと思い、電話でお願いした。が、「思い出すと胸がふさがり、とても話せるものではありません」。強い拒絶の気持ちがこもっていた▼この時期は例年、戦争に関する取材が多い。1945年夏より前のあの時代、日本人は何を経験し、考え、何が残されているのか。戦争体験者は、どれだけ時が過ぎようと消化しきれない「塊」を抱えている。取材する我々には、受け止める覚悟、文章にする覚悟が必要だ▼今回断られたのは、別の取材で見知った人だった。正直、気楽さがあったかもしれない。私に軽薄さを感じたのか、覚悟が足りないさまを感じ取ったのか。私にとっての宿題になった。【津島史人】
毎日新聞 2010年8月13日 地方版