【社説】国に恥かかせた外交部の菅談話誤訳

 菅直人首相は10日、日韓併合100年に当たり日本政府が閣議決定した首相談話で「朝鮮王朝儀軌(ぎき)等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、(中略)近くこれらをお渡ししたいと思います」と述べた。だが、外交通商部が同日発表した韓国語翻訳文では、菅首相が「渡す」と言った部分が「返還する」になっている。外交部は「菅首相は日本国内向けには『渡す』と言ったが、日本政府が韓国側に渡した韓国語翻訳文では『返還』になっている」と説明した。しかも、外交部は目立つように「返還」という文字を太字で表記した。

 「渡す」という言葉は、自分たちが持っているものを引き渡すという意味だが、「返還」は違法に奪ったものを本来の持ち主に返すという意味だ。日本は1965年の韓日基本条約締結時からこの言葉を使用し、これに対し韓国は常に「返還」と表記してきた。外交部は、菅首相が日本国内向けには「渡す」としたが、韓国側に提供した韓国語翻訳文では「返還」という表現を用いたことだけでも、日本政府の姿勢が一歩前進したものと解釈していた。

 ところが、外交部が「日本政府が提供した」と言っていた韓国語翻訳文は、駐日韓国大使館が作成したものであることが12日、明らかになった。日本は一度も「返還」という言葉を使ったことがないのにもかかわらず、韓国だけが「日本の姿勢は変わった」と騒いでいたということだ。外交部は「日本政府の翻訳だというのは担当者の勘違いだった」と弁明した。

 韓国と日本は、両国で合意した声明でも、日本は「天皇」、韓国は「日王」と表記するなど、それぞれ違う言葉を使用してきた。だが、今回の誤訳騒動は「意図的な歪曲(わいきょく)ではないか」という声が上がるほどひどかった。

 日本による韓日強制併合100年に当たっての首相談話は、今年の韓日外交で最も重要な出来事だ。菅首相の談話は史料としての価値があるのだから、原文をそのまま翻訳し、韓国はこの表記に同意しないという点を明らかにしておくだけでも十分だった。しかし、外交部はこの談話の韓国語翻訳文を誰が作成したのか確認しないまま、「返還」という言葉がまるで外交業績であるかのように広報に熱を上げた。こうした韓国の姿を見詰める日本の視線を思うと、顔から火が出る思いだ。外交部は、国に恥をかかせるようなことを自ら招いたのだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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