WISH2010の一般推薦枠にてTogetterが発表できることになりました。皆さまありがとうございました。

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まとめられたつぶやき

  • 仕事が長引いたので今日は会社に泊まり。つーか地元の終電に間に合わないコースなので。まあ久し振りだこと。
    kawakamiminoru
    2010-08-13 23:17:12
  • することは山ほどあるので、飽きないと言えば飽きないのはいいですねー。始発あたりで帰りたいところですが、会社の閉め方手順をかなり忘れてるのでどーだろーか的な。
    kawakamiminoru
    2010-08-13 23:18:53
  • まあ今夜はコミケ準備とかで徹夜の人も多かろうし、金曜だしで、そこらへんの人達はテキトーにお付き合い宜しく御願い致します。
    kawakamiminoru
    2010-08-13 23:21:04
  • んじゃテキトーに流しますか。タイトルは「総統閣下の塔」で。結構長くなるかなー。あ、ライブで。プロットは脳内。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:09:41
  • それは戦争が始まる前のことだった。総統閣下は国の各地に巨大な通信塔として自分の像を建て、てっぺんに仕込んだ通信施設から各地の情報を行き来させていたんだ。当然、戦争が始まったら通信の要になったけどね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:11:02
  • 総統閣下は自分の像のてっぺんから見る風景が大好きらしく、各地をデカイ黒の車で行き来しながら、寝泊まりするときはその像の中と決めていたらしい。防備にも優れた施設ってわけだ。僕の住む町、近くの丘上にもそれはあったとも。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:11:53
  • さて、当時の僕達は元気のいい中等部。僕には気になる娘がいたけど、ボーイッシュな彼女は町の人気者で、当然のように僕には近所という以外の接点がありません。どうしたもんかというところさ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:13:12
  • 僕達の町には総統閣下の像というか通信塔があるため、当然のように通信系の機械や部品が多く出回るようになった。そして僕達は当然のように自分達でレディオを作り、あるものを聞いた。それは戦前から各地で起きていたレジスタンスの抵抗放送だ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:14:11
  • レジスタンスの大将は、総統閣下の友人だったと言われる男。彼が、そして彼の仲間達が、各地で夜の音楽を流す。「ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう。あの馬鹿をもう一度起こすために」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:14:59
  • 僕達は学校で言われたり、町の掲示板にて告げられるレジスタンス放送の傍受禁止命令なんざ聞く耳当然持ってない。そりゃそうだ。堅めのヘッドホンつけてれば音は漏れないしスイッチ一つでヘルツは変わる。足なんか掴めない。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:16:50
  • 大体、レジスタンス放送自体が不定期だ。夜の十二時というのは決まっていたが、毎晩ではなかった。数日開き、一週間開きもザラにあった。だから僕達は引き寄せられ、語り合った。次はいつになるのか、と。そして放送の翌日は、”英雄”が生きていたことを喜んだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:18:21
  • 友人が、レジスタンスと会ったとか、大将らしき人が近くの町にきたとか、そういう噂で僕達は盛り上がる。場所は教室の窓際。レジスタンス放送の口まねは評価の対象になったし、そこにはいつもあの娘がいた
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:19:21
  • 川上さん(@kawakamiminoru さん)がTLで小説書き始めた件!
    fujiwarayu
    2010-08-14 03:20:28
  • だが、男連中は、彼女達がよってくると澄まして格好つけたがる。これは男の仕事なんだ、ってね。ああ、僕もやった。何しろレジスタンス放送には男しか出ない。口まねも、女の声では格好つかない。そんな声色の違いだけが僕達の優越だ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:21:00
  • ブラウザ重えー。エディタで書いてコピぺした方が速いかな気分的にも。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:21:33
  • しかし僕達は中等部の上級生になって、もう一つ上の優越を手に入れた。友人が「隣町でレジスタンスの関係者という露天商から売って貰った」と、もうインチキくさい図面を持ってきたんだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:22:47
  • だけどそれが確かに僕達を優越させた。それは何故なら通信機の設計図だったから。あ、通信機といっても、単に海賊レディオ用の放送機ってやつだ。今ならそこらの店で売ってるアレな。いや、アレよかもっと音も何も悪いしどうしようもないものさ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:24:29
  • 藤原さんがプレッシャー掛けに来たー!!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:24:46
  • @kawakamiminoru 1分に1回リロードして動向を見守ります!
    fujiwarayu
    2010-08-14 03:25:32
  • でも僕達はそれで始めた。何をって「レジスタンス放送」さ。何しろ「関係者から買った図面」なんだ。文句は無いだろう? 僕達は選ばれたんだ、ってね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:26:05
  • 通信は毎晩、十二時に行われた。レジスタンス放送が無い夜、皆で代わりをやってやるのさ。それは当然、僕達の町中にしか通じないことだったけど、用心のために僕達はいつも複数人が同時に放送を行い、攪乱したつもりになっていた。大人達が寛容だったんだろうけど。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:27:32
  • さて、あるとき僕は彼女に呼び止められた。「うちの近所のあの放送、貴方でしょう」って。おっと、例え恋人や家族でも正体を知られてはならないのがレジスタンスだ。だから僕はしらばっくれたさ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:28:49
  • 「貴方が一番、口まねが上手いと思うんだけど」っておだてても僕は乗らない。しかし彼女は言うんだ。「だったら、そんなの関係無しで”放送局”を私にも作ってよ」ってね。お安い御用過ぎるとも……! 浮かれたから二日で作って四箇所火傷したね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:30:14
  • で、だ、僕が彼女に”放送局”を渡した翌日、不意に彼が来た。総統閣下だ。総統閣下は噂通り、多量の護衛をつけて黒のデカイ車でやってきて、その像に入っていった。他国との交渉の途中とのことで、午後から町は静かな、しかし騒ぎの状態になった。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:31:35
  • 何故なら、総統閣下が「セーケンホーソー」をすることになっていたからだ。それも夜の十二時に! だったら僕達がそれを潰すしか無いじゃないか。無論、出力では雲泥なので、重ねる形で騒ぎ立てようってことだったけど。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:32:47
  • その日は夜の十二時が来るのが凄く遅く感じた。だけど始めた瞬間。僕達は自分達の放送よりも、あるものを聞いた。総統閣下の放送の裏で、確かに聞こえたのは「ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう。あの馬鹿をもう一度起こすために」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:33:46
  • 僕達が出せないほどの低い声、そしてこの口調。英雄だ、と翌日の学校では騒ぎになった。英雄が僕達のことを知って、援護にきてくれたんだ、とね。でも僕は知っている。それが英雄の声でも、放送でも無かったことを。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:35:14
  • 何故ならその放送は、僕が作った”放送局”によるものだったから。そう、僕が彼女に作ってあげたのは、声色を変えるチェンジャーつきの”放送局”さ。そして恋する男は馬鹿だねえ、自分の放送潰されても彼女の声が聞きたいから、増幅機も凄いのつけたよ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:36:37
  • 彼女が最も口まね上手いのは、澄まして距離取る振りしつつ、近くにいた僕だけが知っていた。だからあの晩、僕だけが違う意味でガッツポーズとって、浮かれて外に出て職質された。だけど浮かれまくったよ。ああ、いつもなら半日で作れるのを二日かけてよかったなあ、と。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:37:48
  • しかし、僕の少年時代はそこで終わる。ホーソーを邪魔された総統閣下が不機嫌に出ていった先で戦争が決まって戦争が起きて、中等部の卒業後に僕は持ち前の技術で通信兵になり、しかし途中で配属地が解放されると向こうの国に組み込まれたからさ。本当だよ? 戦傷もある、──背中に。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:39:25
  • 気付けば僕は山岳地帯の通信兵になっていて、インドア派から山男だよ。それで戦後って時代になって、総統閣下は今、この国の中に潜伏しているとか土の底だとか聞いた。王都では怒りの矛先どうしよう、ってね。そして僕達の英雄なんだが、これがまた、哀しいことになっていた。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:41:05
  • 英雄は、レジスタンスを作った後、病で死んでいたらしい。僕達が聞いていた放送は彼が生前に流していたものを切り取り、音楽で穴埋めしたもの。だからあんな低い声で、ああ、ノイズだったんだ。その製作に時間が掛かって毎日放送出来なかったんだそうだね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:42:27
  • ひょっとして、英雄が「死んでいない」と言われたのは、当時の僕達の放送とかがあったってのも、少しは原因になってるのかもね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:43:08
  • ああ、そういう話を聞いたのも、戦勝国側にいたからだよ。ここに戻ってきて、意外と気楽にしてられるのもそのせい。いや懐かしい。ほら、この酒場のドアの向こう。今、雑貨屋だろ? あれ、元は僕の家。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:44:32
  • 今住んでるのは誰だか知らないが、相談すべきかな。「床下にエロ本があったと思いますが、すいません今はそういう女が趣味じゃないんです。僕のことを誤解しないでください」って。この酒場だって元は友人の家がやって……、マスター御免、悪い意味じゃない。懐かしいだけだから。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:45:51
  • で、何でここに来たのか、って? ああ、別にもうここに友人がいないことも解ってるし、彼女や他の皆もいないのも知ってる。だけどアレさ。ほら、あの、丘の上の総統閣下の通信塔、ってか像。あれね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:47:09
  • あれ、地元の人達……、ってもう僕の知らない連中──、御免、知らない人達だけどさ、何だか強引にぶっ倒してこじ開けようってしてるんだろ? 明日って聞いた。何しろ噂にあるもんね、通信塔の最上階、総統閣下の寝泊まりしていた部屋には財宝が詰まってるって。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:48:28
  • だけど、あれがぶった押される前に、ちょっとやっておきたいことがあるんだ。何かは言わない。詰まらないことだよ。あ、君、さっきの、入ってきたときの曲頼む。ああ、そう、それだけはこの町に昔からあった曲だ。同じだ。だからここに入ったんだ。最後に聴けて良かった。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:50:02
  • 「──じゃ、さよなら。多分、この町には戻らないから。うん、行ってくる。──金は払うよ!」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:50:36
  • さて、酒場を出よう。今は夕刻。歩きで塔に向かえば、深夜から未明にはつくんじゃないかな。酒も食い物も持っている。そして何よりも、除隊するときの退職金代わりに貰った、軍用の照合水晶だけ抜かれた通信機がある。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:52:03
  • あの、総統閣下の像を昇ってみようと思うんだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:52:39
  • いつも見上げていた、100mくらい? あの総統閣下の像を昇り、てっぺん。いや、中ではなく、頭の上にでも立って、「えーと」ああ、やばい。それからどうしよう。ヘローやっか? 本気か? でも何のための通信機だ? ああ、そうとも、これで僕の戦後だなんて思ってないともさ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:54:01
  • ただ僕は、昔のように馬鹿をやってみたいだけなんだろう。中等部の夜、窓の外を窺いながら、親の動きを気にしながらレディオを聞き、放送し、不意に盛り上がって外に飛び出して夜気を浴びるような、あの馬鹿が。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:55:04
  • あの馬鹿な時代は、戦争によって寸断されたのか、それとも、卒業によって当然そうなるべきものだったのか。いや、実は寸断ではなく、停止であって、僕にはまだまだそれが有り続けるのか。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:55:50
  • どうなのだろう。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:56:01
  • 「おいおい」──幾つも息を入れ、休みをいれたつもりだったが、数時間歩くと、存外に早くついた。今からこれを昇れば、日の出前に上につくだろう。塔の周囲に作業員達はいない。塔を倒して得る分け前の協定として、抜け駆け無しのため、町に戻っていると酒場で聞いた通りだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:57:01
  • 懐かしいな。この塔の足下までは、昔にも「偵察」に来たことがある。そうそう、このカーブを左に曲がると、あったあった大きい木──、小さいな……。何これ……。僕が大人になったのか子供の頃に馬鹿だったのか。ああ、後者っぽいから哀しい。でも大人だから酒を飲もう。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:58:17
  • さて燃料も入れた。昔にあった鉄柵も無い。あとは周囲確認の上で塔の足下──、デケえよコレ!! 100mじゃねえよもっとあるだろ! ある意味記憶通りだ。子供の頃の僕は聡明だったと今証明された。当時証明されてればどれだけ良かったか。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 03:59:59
  • でもまあ、昇ると決めたら昇ってしまおう。一生に一度ってやつだ。小官は総統童貞をこれから捨てるであります……! うん、多分、上から見る風景は気分いいだろうしね。朝に降りて憲兵に捕まるのもいいと思ったけど、今なら皆が起きる前に下って、始発で王都方面に行ける筈だ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:02:00
  • さあザイル用意して、──と。「え? 何? 先客?」っていきなり誰ですかアナタ。聞こえた声に振り返ると、「……あれ?」見覚えあるというか、知ってる雰囲気の女が居る。訂正。彼女がいる。って何!? 彼女!? マジで!? 「やだ! 久し振り!!」やだって何だよ一体。僕は──。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:03:46
  • 気まずい……。嫌な汗だ……。だって、こんなとこで何してんのって言われたら、ええ、塔を昇ろうとか。誰だよこんなドリームプランの実行しようとした馬鹿。──僕か! いきなり昔馴染みの娘に再会して、ファーストの会話が職質状態になるのはどうしたら、ああ、先手打てばいいのか!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:05:00
  • よし、先に問おう! なるべく自然に、自然に! 「──あ、久し振り、そっちこそこんなとこで何してるんだい!?」あー! 僕、馬鹿! 何をこんな変なとこで爽やかになってんだよ! そう、よく考えたら彼女だって怪しいじゃん!? 平然としてんなよ僕!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:06:43
  • でも彼女は言った。「うん、ちょっとまあ、今、向こうの町に住んでるんだけど、この塔が倒されるって聞いて、一回昇ってみようかと思ってさ」神様……、キチガイがここに居ます。二人。「で、入り口閉まってて残念ね、みたいな」あ、屋内からの御予定? 外からのキチガイは僕だけです、か……?
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:07:57
  • 「既に開けられてるかなあ、と思ったら、まだ閉まってるし、誰もいないでしょ? 帰りの列車は出ちゃったし、町に降りようか、ここで夜明けまでいようか考えてたのよ」と、彼女は近くの物置から物色したらしい食糧の袋を見せる。まさか焚き火とかやって痕跡残してないだろうなー……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:09:12
  • が、僕は、彼女が持ってる袋に、ロープやハーケンがあるのを見逃さなかった。「その気があれば、僕が先行して昇れるけど?」「外? 本気?」「うん、戦地は山岳だったし、ここの現場にあるもの使えば、君の分くらいは」だから「この像、服着てたりで引っかかり多いからフツーに登山気分で行けるよ」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:10:31
  • そして昇ることになりました。ええ、僕が多量のロープを持つことと、ルートが直線ではなくて服の皺や関節の曲がりを利用した斜め切りになることだけが予定と違う。あ、あと、彼女がいることも。降りるルートは考えておかんとなー……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:11:58
  • 表面は荒れてるからホールドし放題。像の姿勢は直立に近いけど、ズボンの皺が螺旋状だから急な坂と同じだな。定期的にロープをザイルとして張って、手摺り代わりにしてから彼女を誘導。一部難しいところは彼女を背負って「あ、いいの? 重くない?」でけえ……!!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:13:19
  • あ、御免、ちょっと背負ったまま昇っていいかな。え? あ、危険だから。うん、ここらへん凄く危険! あぶないですよお。像の腰ポケット部分で水平っぽいけど危険だから! ──何ですかその目つき。「まあいいけど、ヘバったら駄目よ?」いやあ、軍で鍛えていて良かったわあ……。でけえなあ……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:15:39
  • ともあれ、途中で息をつきつつ、昇っていく。友人達の消息がどうだとか。こっちの家族はどうだとか。そっちはどうなんだとか。あ、独身……っぽい? ぽい? あれ? 結婚……、って、あ、ああ! ──結婚してんの妹の方かよ! うわあああゾっとした。あぶねえ。フリーですか!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:17:20
  • あー、でも、こういうとき「僕もフリーなんだ」ってのはガっつき過ぎだよなー……。「だから?」ってやられたら再起不能だよね。え? ああ、うん、コリーンが中将の嫁になったのはニュースで知ってる。中将、デブ専だよね。──小突くな落ちるから……!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:19:38
  • 話題はどんどん遡って、また戻ってくる。「あのさあ」って、何? 「昔、放送ごっこやってたわよね?」ごっこじゃなくて本気でしたが……。ああ、いえ、ごっこでいいです、ごっこで。ごっこ遊び大好き! ──何すかその目。いや、過去の自分に義理だてるより今のデカい方が大事なので。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:21:23
  • 「あのとき、私に作ってくれたレディオ、憶えてる?」”放送局”のことかな。「ああ、憶えてる」「貴方、ああいうの作るの天才、って、エレノアから聞いてたのよね」「へえ」「知ってる? エレノアさ、貴方のこと好きだったの」「……知らなかったけど気付いてたか、な」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:23:10
  • そっか、よく、本を貸してくれたのはそのせいだったか。「今は何してんの?」「北の方で結婚して病院の看護婦。子供が三人だって」「すげえ人口増加だ……」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:24:04
  • って、あー、これ、ヤバい。うん、不意に思い出した。彼女のこれはちょっとヤバい。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:24:31
  • 彼女、言おうとすることがあっても、そこからすぐに脱線して、言いたいこと言えなくなっていっちゃうんだよな。昔はそれで、話がそれたことに逆ギレされたもんだけど、今は、ええと「…………」言いたいこと黙るのやめてえええ! 彼女居ない歴=受精から現在までの独身男に超恐怖ですそれ……!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:26:40
  • 「え、ええとですね。あ、あの、話ちょっともどしていい? ちょ、ちょっとだけでいいから」「え? ってか、何?」いや、うん、もう上についたし。ちょっと疲れたし、いろいろ頭の中が一杯なので、うん、座る。一息つく。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:27:58
  • ぐるりと見回せる深夜の空の下だというのに、眼下に広がる世界にはまだ灯りがある。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:28:22
  • 汗のひく寒気を感じながら、僕は塔のてっぺん、雨と日で色も何も削れて褪せた総統閣下の頭の上に座る。本来ならここで「総統閣下制覇ー!」とかやるつもりだったけど、隣に彼女が座ってきたらそうもいかない。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:29:10
  • 「で、えーと、確かに僕が昔、君にレディオを作って渡したよね。うん、憶えてる」憶えてますともー! 「で、あれ、面白かったよねえ、憶えてる? あの夜」「──え? あの夜って?」……い、意志疎通齟齬の予感が……! 「え、ええと、総統閣下の来た夜のですね?」「ああ、あの夜ね」やり……!
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:30:52
  • 「うん、あの夜さ、君、憶えてないかも知れないけど、君の放送が一番上手くて、皆、”英雄”の放送だと勘違いしてたんだよね」「ああ、あったわね、そんなこと。貴方が私に作ったの、声のチェンジャーついてたっけ」そうそう。あ、これって、僕と君だけの秘密なのか、一応。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:32:01
  • 「でも実際、”英雄”は、僕達が騒ぐ頃には死んでたんだって」「そうなの?」「うん、彼の生前の放送と、音楽をつぎはぎしてたんだ」「そうなんだ」「だから、あの夜、”英雄”が僕達のところに来るはずもないんだけどね」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:32:52
  • それは大人になってようやく知った真実だ。”英雄”は居なかった。僕達は自分達の”ごっこ”の先に、それを作り出して浸っていた。戦争で死んだ友人は多く、本当なら、彼らのことを僕は彼女に話すべきなのかもしれない。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:34:33
  • だけど今は今で、昔のいい時間を語る時間だ。「あの夜は、いや、翌日か、盛り上がったなあ。憶えてないかも知れないけど」「憶えてるわよ」「本当? って、ああ、だって君のやったことだもんね、あの放送」「違うわよ」「何が?」「だから違うの」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:39:18
  • 「貴方、翌日に”あれは私じゃないの”って言っても”レジスタンスは正体を掴ませないからね”って聞いてくれなかったじゃない。でも、あれ、私じゃないの」だって「貴方のレディオ、電源入れたらアンプが焼けて、私、放送すら聞いてないのよ?」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:39:44
  • ※長くなったので分割してました……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:40:09
  • じゃあ、あれ、誰が?
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:40:25
  • と、お互いに顔を見合わせたときだった。眼下から物音が聞こえた。地元の作業員かと、慌てて下を覗き見れば、町側からではなく、山側から車が走ってくる。それは「デカくて黒い車……」。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:41:30
  • 見ているうちに、その車は塔の裏手に停まった。ややあってから、暗がりの中でドアが開き、人影が一つ降りた。それは塔の、開かぬ裏口に行き、「開いた……!? いや、開けた!?」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:42:33
  • 言っている間に、塔が小さく揺れた。あの人影が、エレベータを使って上へと、僕達の真下にある最上階へと上がってくるのだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:43:02
  • 僕達は顔を見合わせた。どうなっているんだと思っていると、塔の最上階、総統閣下の帽子の正面部分に灯りが、いや、これは機材の灯りだ。塔内部のバッテリーを使用して、誰かが通信を行おうとしている。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:44:22
  • 僕は酷く冷静に、ザックから通信機を出した。ヘルツは憶えている。いや、これでいい筈がない、だってこれはセーケンホーソーのヘルツじゃない。僕達のヘルツ。英雄のヘルツだ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:45:13
  • だけど僕は、それを聞いた。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:45:25
  • 「──ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう。あの馬鹿をもう一度起こすために」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:45:42
  • さあ、では、英雄の好むナンバーを掛けよう。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:46:05
  • 曲は確かに流れた。テープレコーダーから直接載せたようなものだ。”英雄”が好きだったナンバーで、僕も当然そらで歌える。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:46:39
  • そして一曲を流し、下の明かりが消えた。一息を入れたような間を経て、エレベーターは下がり、下の扉は開けっ放しで、また車が、やや迷ったように、手を振るように、バックから切り返して山の方に去っていく。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:47:48
  • 僕達は、ただ、座ったまま、世界を見ていた。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:48:16
  • 「あの、ね」彼女が言った。「戦争が終わってから、私も聞いたことがあるの」「何を?」「うん」それは「総統閣下は、友人を大事にする人で、子ども達と遊ぶのが好きな人だったって……」「他には?」「うん」それは「……政見放送はいつもテープで、実は地元の放送を聞いてたんだって」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:50:26
  • 僕は座って、やや明るくなった空を見て、灯りのある町を見ていた。まだ起きている連中が居る。いや、このまま朝を迎える連中が居るのだろう。彼らは、ひょっとしたら先程の放送を聞いていたかも知れない。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:51:18
  • いや、聞いていてくれと、そう願う僕は未だに馬鹿だ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:51:38
  • だから僕は通信機のスイッチを送信側にする。ヘルツはいつもの通りだ。ずっと前からの、いつも通りだ。今は夜でも、十二時でもない。だけど”英雄”の放送は時間を進ませた。ならば僕達の”ごっこ”も、時間を進ませよう。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:53:12
  • 東の空が明るくなる。僕は君を横において、マイクを握る。あれからどれだけ過ぎたろう。今、手元の機械は壊れることなく、僕の声も昔より低くなった。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:54:02
  • 「ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう。あの馬鹿をもう一度起こすために──」
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:54:32
  • (了)とつけた方がいいですかね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:54:56
  • そういうわけで終了ー。皆さんお付き合い下さった方、どうもです。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:55:24
  • こういう、夜更けから朝に掛けてリアルタイムで流したかった話しなもので。丁度、コミケ準備とかで音楽聞きつつ色々やってる人にはいいかな、と。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:56:10
  • @kawakamiminoru お疲れ様でした。あまりの速度に時計が狂ったかと思いました! すげー。
    fujiwarayu
    2010-08-14 04:56:22
  • いや、途中からエディタに移して書いて、勢いあるところは二分割してやったりといろいろ。これ、結構白熱しますねー……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:57:23
  • ちょっと後でリテークして、pixivの小説素材にでも使おうかしらん。そんなことを思ったりという感じですな。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:58:11
  • @kawakamiminoru あと、休憩なしで一気にやってるのがすげーです。内容も鮮やかで、楽しませて頂きました。ありがとうございます!
    fujiwarayu
    2010-08-14 04:58:50
  • @fujiwarayu いやもう途中から集中すると時間あっという間ですな。kb的にはあまり書いてない気がします。一人称なので、切るところも割合自由で気楽ですしね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 04:59:28
  • @fujiwarayu つーか藤原さんはこんなのよー何度もやりますわ……。もの凄く改めて感動というか。ええ。すげえー……。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 05:00:48
  • @とか<<君ら夜更かし好きですなー。でもラジオとか深夜に聞いてると朝になってこんな感じですよね。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 05:02:44
  • @kawakamiminoru いや僕二回しかやってないですから! しかも速度は川上さんの半分くらいですし。しかし疲労感半端ないですよねこれ。
    fujiwarayu
    2010-08-14 05:02:46
  • @fujiwarayu 疲労<<こっちは一人称だから台詞とかで自由に切れるんですけど、フツーの文体だと地獄ですね多分……。言い回しが使えないので。そこらへん予期があったのと、少しくらい日本語乱れても一人称なら押せるのでこっちはこんな感じで。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 05:04:06
  • @kawakamiminoru しかしなんというか「見られてる感」と「取り返しのつかない感」はかなり独特のもんですよねこれ。前と後ろと周りを同時に見なきゃいけない忙しなさ、みたいな……。なんにせよお疲れ様でした。
    fujiwarayu
    2010-08-14 05:13:27
  • @fujiwarayu お疲れ<あ、どもどもです。ってか意外にこっちは前しか見てない感じでー(いつも通りか……)。先にやっていた仕事もあったから、たぶんに脳が暖まっていたってのもあるかと思いますねー。自分のテンションピークのいいとこから始まった感じ。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 05:18:56
  • さてまあアイス食いつつ一息ですが、今日もコミケの方達は今これ読んでいたらその時点でお疲れさまです。こっちも適度な時分で帰るかなー。それとも寝るかなー。
    kawakamiminoru
    2010-08-14 05:21:48

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コメント

  • syukuya
    藤原さんとの会話も追加しましたー。
    syukuya
    2010-08-14 05:34:58

編集の履歴

2010-08-14 05:34:58 syukuya さんが更新しました。
2010-08-14 05:01:05 syukuya さんが作成しました。

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