きょうの社説 2010年8月14日

◎止まらぬ円高 「円売り介入」をためらうな
 円の独歩高が止まらない。野田佳彦財務相と白川方明日銀総裁がそろって円高に警戒感 を表明し、政府・日銀の協調をアピールしても「しょせんは口先介入に過ぎない」と、足元を見透かされてしまっている。

 日本は2004年3月以後為替介入を行っていない。「伝家の宝刀」がすっかり錆(さ )び付いてしまっているから、外国勢は少しも怖さを感じないのだろう。このまま口先介入のトーンを強めてもけん制の効果は期待薄ではないか。

 米国、欧州諸国はともにドル安、ユーロ安を歓迎している。自国通貨安で輸出を伸ばし 、国内景気の回復を促すためであり、日本だけが円高という貧乏くじを押し付けられ、世界中のツケを一身に背負わされている。政府・日銀は、投機筋から日本経済を防衛するために、円売りドル買い介入をためらうべきではない。

 日本単独での為替介入は効果がないと言われ、日本の政府筋からもそうした趣旨の発言 が度々繰り返されている。しかし、本当にそうだろうか。日銀は03年1月から04年3月にかけて、1ドル=105円前後を防衛ラインに設定し、合計35兆円の大規模な円売り介入を行った。このすさまじい介入圧力は、外国勢には恐怖だろう。

 市場では「1995年に付けた円の史上最高値1ドル=79円台が視野に入ってきた」 との声が上がっている。15年ぶりの異常な円高水準なのだから、80―85円の間に防衛ラインを張り、円売り介入に踏み切ってはどうか。

 円売り介入をすると、外貨準備高が積み上がる。03年から04年にかけての円売りド ル買い介入は、現在より円安水準で行われたため、外貨準備を管理している外国為替資金特別会計には含み損が生じている。1ドル=95円で計算した場合で、約23・9兆円というから、現在はさらに巨額の含み損になっているのは間違いない。

 政府・日銀が円売り介入をためらうのは、こうした事情もあるのだろうが、今の円高水 準なら含み損の心配は無用であり、異常な円高がいつまでも続くとは思えない。国内の景気が腰折れする前に、政府・日銀に決断を求めたい。

◎高校生の就職確保へ 前倒しの支援策生かして
 来春の高卒予定者の採用選考「解禁」を約1カ月後に控え、石川県内企業の求人数が伸 び悩んでいる。県や県教委、石川労働局などによる就職支援の取り組みは例年より前倒しで進められているが、「就職氷河期」の再来といわれた前年を下回る水準だけに一層の求人開拓が求められる。

 生徒にとって就職への早い取り組みは、職業選択の幅をできる限り広げ、適性や仕事の やりがいなどを考える機会が増えることになる。今年度からは高校生の長期型企業実習も拡充されており、学校側は生徒の職業意識を高めて、就職支援策を生かしてほしい。

 昨年度の県内公立高卒業者の就職内定率は、ほぼ前年並みの97・7%で全国4位とな った。関係機関や各校の地道な取り組みが、求人の掘り起こしにつながったといえるが、今年度はさらに厳しい状況が見込まれる。6月末の求人数747人(前年同月比13・7%減)に対して、高校生の就職希望者は今のところ約2400人となっている。就職の難しさから進学に変更する生徒の動きや就職のミスマッチによる早期離職の課題もあり、前倒しの就職支援の成果が問われる。

 今年度からの就職支援強化策として、昨年10月から18校に常駐させた就職支援員の 拡充と7月に初開催した企業ガイダンスが挙げられる。就職支援員は企業求人の開拓や生徒への進路相談、面接指導などを行っており、昨年度の経験をもとに、きめ細かい後押しが求められる。県内の71社と3年生約1160人が参加した企業ガイダンスは、9月の採用選考前に生徒が企業から直接情報を収集できる機会であった。自ら得たデータと感触を参考にしながら、今後の就職活動を進めてもらいたい。

 企業実習は工業分野に加えて、農業、商業分野にも広がった。専門分野への就職促進や 職業観を養う場として十分に活用する必要がある。また、早期離職防止対策として、学校側は卒業生の就職先の状況をこれまで以上に把握するなどして一層の職場定着を図り、地域の人材育成につなげてほしい。