犯人逮捕でも「動機」や「背景」がサッパリ分からない

●捕まった２人は塾の先生と生徒

　犯人逮捕は事件発生からちょうど１００日後だった――。今年４月に仙台市で起きた私立常盤木学園高校の教師、松本秀夫さん（当時５６）殺害事件で、宮城県警は８日、いずれも仙台市内の会社役員、松山哲士容疑者（３８）と、すし店経営の梅原啓容疑者（２７）を殺人容疑で逮捕した。執拗に松本さんを狙った犯人の動機は何だったのか。

　松本さんが最初の被害に遭ったのは、殺害される約２カ月前の３月上旬。学校の卒業式に出席した直後のことだった。

「謝恩会に出席して帰宅したのが午後１１時ごろ。その時は不自然な様子もなかった松本さんが、翌朝、前歯が折れて眉間が陥没、側頭部から血を流すというヨレヨレの姿で出勤してきたのです。驚いた学校がすぐに救急車を呼び、松本さんは脳挫傷で即入院となりました」（捜査事情通）

　退院した４月下旬、自宅前の駐車場で襲われ、絶命したのである。仮に捕まった２人が３月の傷害事件にも関わっていたとすれば、異常ともいえる「怨恨」だ。３人の接点はどこにあったのか。

「松山は親族が社長を務め、スポーツ用品販売や学習塾経営などを手掛ける会社の役員。一方、梅原はこの会社のあるビル内のすし店の経営者で、２人は学習塾の先生と生徒という間柄でもあった。松山が手伝っていたスポーツ店が納品していた地元小中学校の体操着の注文を、梅原のすし店で受け付けていた時期もあったというから、２人が相当深い関係だったのは間違いないでしょう」（地元記者）

　そんな２人と松本さんは家族ぐるみで付き合いがあったという。

「数年前に知り合ったようで、松山は今年初めまで、松本さんの娘の家庭教師を務めていました。事件に至る経緯はまだ分かっていませんが、ヒントは株にあるかも知れない。県警の調べで、松本さんは殺害前に株を購入していたことが判明しており、１度目の“襲撃事件”の入院中にも自宅に株を勧める電話が入っている。実は仙台市の消費生活センターは、松本さんが襲撃された同じころ、『未公開株に関するトラブルが増えている』として注意を呼びかけています。株売買をめぐる金銭トラブルの可能性もゼロではないでしょう」（前出の記者）

　犯人逮捕に至ったにもかかわらず、サッパリ動機や背景が分からない事件である。

（日刊ゲンダイ2010年8月10日掲載）