05年に睡眠薬を飲んでいた患者の4年後の服用状況と処方量の変化
医療機関が処方する向精神薬のうち、患者1人に出す睡眠薬の1日分の量が05~09年の4年間で3割増えたことが、厚生労働省研究班による過去最大規模の約30万人への調査で分かった。処方された患者の約3割が4年後も服用を続け、このうち薬が減っていない人は約7割に上ることも判明。調査担当者は「投与後の効果の見極めが十分でないため、漫然と処方されている可能性がある」と指摘する。厚労省はデータを基に睡眠薬の投与や減量の方法を定めた初のガイドライン策定に乗り出す。
調査は国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の三島和夫・精神生理研究部長らの研究班が実施。複数の健康保険組合に加入する約30万人を対象に、05年以降の各年4~6月の診療報酬請求明細書(レセプト)を基に向精神薬の処方実態を調べた。
調査によると、05年に睡眠薬を服用していた患者の1日分処方量の平均と09年の平均を比べると3割増加。また05年の患者4807人のうち、4年後には約3割にあたる1312人が睡眠薬を飲み続けていた。飲み続けた人の4年間の処方量の変化は▽「増えた」52%▽「変わらない」16%▽「減った」32%。減量されていない患者が68%に上った。
向精神薬全体については05年から2年間を調査した結果、05年に1回以上処方された人は1万426人だったが、07年は約1・2倍の1万2290人に増えた。不安や緊張を抑える抗不安薬と睡眠薬は年齢が高いほど処方される患者の割合が増加。65歳以上の女性では、05年は10%が処方を受けていたが、07年には14%に増えた。
処方診療科は、抗うつ薬と主に統合失調症の治療に使う抗精神病薬については精神科が6~7割。抗不安薬と睡眠薬は精神科が4割にとどまり、内科、整形外科などの一般身体科が半数以上を占めた。
三島部長は「重篤な症状のために長期間服用しなければいけない患者もいるが、効果が乏しいまま向精神薬が処方されているケースが多いのではないか。心身にも影響が出る恐れがあり、処方が適切か医師は定期的に確認し減量を検討することが必要」と指摘する。【堀智行】