【社説】とどまるところを知らない韓国軍の虚偽発表
今月9日に北朝鮮が海岸砲で砲撃を行った際、韓国軍当局の発表がわずか一日でひっくり返った経緯について、大統領府(青瓦台)が調査に乗り出したという。合同参謀本部は、9日の時点では「北朝鮮が、ペンニョン島北方の海上と延坪島北方の海上に向けて撃った130発余りの砲弾は、いずれも北方限界線(NLL)の北側に着弾した」と発表していた。ところが10日には、「肉眼での観測や現地の部隊の判断を総合した結果、ペンニョン島付近に撃ち込まれた砲弾10発余りは、NLLから南に約1-2キロ入り込んだ海域に着弾した」と前言を翻した。軍の一部からは、ペンニョン島方面に着弾した7発はNLLから南に4-5キロも入り込み、韓国軍の哨所から3キロしか離れていない海上に着弾した、という話も出ている。
韓国軍の発表がひっくり返った理由は、着弾した場所を軍が誤って把握したか、さもなくばきちんと把握していたにもかかわらず、ウソをついたかだ。北朝鮮は、今年1月27日から29日にかけても、ペンニョン島・大青島に近いNLL北方の海域に向け、海岸砲・自走砲・ロケット砲による砲撃を行い、合計400発余りを撃ち込んだ。この事件の後、韓国軍当局は、砲弾が飛来する軌跡を追跡できる対砲レーダーをペンニョン島・延坪島に配備したという。しかしレーダーがなかったとしても、海上観測を任務とする哨兵らが、まだ明るい時間帯に、弾着点を間違えたとは考えにくい。もし、現場の哨兵がどこに砲弾が落ちたか把握できず右往左往したのであれば、とんでもないことだ。軍がNLLの南に砲弾が落ちたことを知っていながら隠そうとしたのであれば、さらに問題だ。
哨戒艦「天安」沈没事件の時もそうだった。攻撃を受けた時刻について韓国軍は、最初は午後9時45分だと言っていたが、その後9時30分→9時25分→9時22分と何度も訂正した。熱映像監視装置(TOD)で撮った映像も、「これで全部(4月1日)」→「自動保存されたのを知らなかった(4月7日)」と、言い訳をしながらちびちび公開した。5月20日に、天安事件の現場海域で引き揚げられた魚雷「CHT-02D」のものだと言って公開した北朝鮮の魚雷の設計図面が、実際はCHT-02Dのものではなく、PT-97Wという別の北朝鮮製魚雷のものだったと分かったこともあった。世論調査では、「天安は北朝鮮の魚雷攻撃を受けて沈没した」という合同調査団の結論を信じていない、という回答がおよそ30%もある。韓国軍当局の発表がしばしばひっくり返り、変更されたことで、不信を募らせた、というのが大きな理由だ。
北朝鮮の軍事的挑発に対する韓国軍の対応は、基本的には軍事的判断によるべきだが、南北関係、周辺国の情勢、韓国国内の政治的条件などを考慮し、手が加えられることもあり得る。それでも、上層部への報告や国民に対する説明については、いかなる加工や虚偽も排除し、真実をあるがままに報告し説明しなければならない。いかなる対応をすべきか判断するのが難しいからと、事実を隠したり、矮小(わいしょう)化もしくは誇張したり、そのうそが露見するのを恐れて隠ぺいを試みたりするのは、これまで軍を信じてきた国民に対する背信行為であり、国家に対する反逆的態度にほかならない。軍の発表が虚偽やうそにまみれているのなら、数百兆ウォン(数十兆円)の税金を投じて最先端の兵器を配備することに何の意味があるのか、軍はよく考えてみなければならない。