裁判員裁判が各地の地方裁判所で始まって1年が過ぎた。
国民の理解と協力度合いを示す、裁判員候補者が呼び出しに応じる率は8割と予想を上回り、協働した裁判官らは、裁判員の真剣さと判断力に驚かされると感想を語っている。
そうした意欲と能力を、裁判官はうまく生かしてくれたか。審理・評議の進行と判決のまとめ方に、裁判員は不満や疑問をもたなかったか。そんな視点で裁判員たちに自由に経験談や意見を公表してもらわなければ、この制度はより良く育てていけないだろう。裁判員法の守秘義務条項の見直しを改めて求めたい。
7月末までに出た約900件の判決で初の全面無罪となった千葉地裁での裁判は、税関で摘発される覚せい剤密輸の類型的事件だった。検察は従来の裁判で有罪を得た立証方法で法廷に臨んだが、裁判員らは、被告人の反論・言い分を検察は完全に否定しきれていないと判断した。
同じような犯罪の裁判を何度もしてきた法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)と、まったく初めての裁判員とでは、証拠の見方や、検察の立証・弁護側の反論を評価する基準が随分と違うのである。
一般国民の良識を裁判に反映させるのが目的の一つなのだから、法曹三者は裁判員に分かりやすい証拠によって裁判員を納得させる弁論をし、裁判員が「法廷で見て聞いて分かる」裁判にしなければならない。
裁判員に分かりにくい証拠の典型が供述調書だ。
従来の裁判では裁判官が、供述の移り変わりや食い違いに注目しながら大量の調書を読み込み、取り調べを受けた人が真実を述べたか否かを判定した。裁判員にそんな判定はできないし、そもそもそれでは「見て聞いて分かる」裁判にならない。
裁判員に調書の真実性を判断してもらうには、取り調べの様子を録音・録画し、法廷で検証できるようにする「可視化」が欠かせまい。
これから、無実を訴える事件、難解な科学鑑定が重要証拠になる事件、死刑を求める事件などが裁判員法廷で争われる。裁判員に重い負担がかかる難事件でも「見て聞いて分かる」裁判ができるようにお膳立てをするのが法曹三者の責務である。
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