【インタビュー1】鄭大世「雨天用スパイクなかったわけではないが…」
  



   世界中を盛り上げている南アフリカワールドカップ(W杯)が終盤に入っている。その熱狂の真ん中で、世界の人々の胸を熱くさせた若者がいる。韓国国籍の北朝鮮代表ストライカー鄭大世(チョン・テセ、川崎フロンターレ)だ。

  世界最強ブラジルのDFをかく乱し、その技術が認められてドイツ移籍が決まったこの青年が、なぜあれほど涙を流したのだろうか。6日、川崎フロンターレの練習場で鄭大世に会い、話を聞いてみた。

  --ブラジル戦の前に国歌が流れた時、涙を流した理由は。

  「自分も知らないうちに出てくるのが涙で、説明するのは難しい。しかし(公式席上で)泣いたのは今回が初めてではない。08年東アジア大会で自分がついに朝鮮代表(※鄭大世は北朝鮮を共和国または朝鮮という)になり、日本と対戦する時も国歌演奏で涙を流した。目標の達成が目の前に近づいているという思いで胸が熱くなったからだった。ブラジル戦で泣いたのもその延長線上のことだ。もともと涙もろい性格だ。今回のW杯以降、サインをする時は自分の似顔絵に涙も入れている」

  --当時、誰の顔が真っ先に浮かんだか。

  「やはり母だ。余裕のない生活の中で、3人の子どもをみんな大学へ送ろうと苦労した。当時は観客席に来ていた。見えなかったが、母も泣いているだろうと思った。またサッカー人生を振り返りながら、ここまで来る間、いろいろ難関が多かったという思いがした」

  --日本で生まれて育ち、成長の環境が異なる北朝鮮選手と合わせるのは容易でなかったはずだが。

  「国語を100%理解できず、選手たちとコミュニケーションがうまくいかず、悩むこともあった。一時は北朝鮮のMF選手らが洪映早(ホン・ヨンジョ)選手にばかりボールを供給し、自分がのけ者にされていると思ったりした。すべて自分の誤解と被害妄想だったが…」

  --ポルトガル戦で雨天用のサッカーシューズがないため大敗したという分析があったが、事実か。

  「守備選手は一度滑れば致命的なので滑るのを防ぐサッカーシューズを履いていた。しかし攻撃手は履かない人が多かった。自分も前半は履かなかったが、あまりにもよく滑るので、後半には履き変えた。北朝鮮代表チームに雨天用サッカーシューズがなかったわけではないが、数が不足し、性能もよくなかった」


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