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きょうのコラム「時鐘」 2010年8月13日
暑気払いにひと雨ほしいと思っていたら、頼みもしない台風が来た。それも日本海を北上という奇妙な足取りで過ぎていった
不順な気候は、台風までも迷走させる。北陸の背中をかすめていった厄介ものに、ひやひやした。暑気払いの一つに怪談話があるが、わざわざ作り話を持ち出さなくても、昨今の天の仕業には肝をつぶされることが多い 毎夜、皿を数える美女の幽霊が登場する怪談がある。何度数えても皿の数が足りない。炎暑の列島では毎日、所在不明の高齢者を数えている。数えるたびに、その数が増す。皿屋敷の怪談よりも、よほど怖い この怪談をネタにした落語がある。これは怖くはない。美女の幽霊が評判になり、見物人が殺到する始末。疲れて風邪をひいた幽霊はある晩、皿を9枚ではなく、倍の18枚まで数えてしまう。見物人が文句を言うと、「2日分です。あすは休みます」 腹を抱えて大笑いする方が、よほど快適な暑気払いになる。このところ、怪談より怖い本当の話が多過ぎる。お盆の団らんには、ふさわしくない。落語の幽霊にならって「当分休みます」とはいかぬものか。 |