阪神のマット・マートン外野手(28)が11日、自身の打撃について和田豊打撃コーチ(47)と激論を交わした。スランプ脱出には現状認識が重要と説いた同コーチに対して「僕はまだ発展途上」と力説。約20分にわたって白熱の激論を展開した。広島(14)戦は台風4号接近のため中止。チームはマツダスタジアム室内で練習を行った。また、首位巨人はヤクルトに敗れ、ゲーム差は1。12日にも真弓虎が首位を再奪取する。
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通路の陰に隠れ、両者の姿は見えない。交錯する日本語と英語。しかし助っ人の語り口が次第に熱を帯び始めた。そしてやがて、白熱の議論へと発展した。
「どんな選手だって打ち続けるのは簡単なことじゃない。この3年間でコンスタントに出続けるのは僕にとって初めての経験。僕はまだ発展途上の段階なんです」
いつもは穏やかに語るマートンが、さらに語気を強めてこう言った。本音と本音のトークは、約20分間にわたって通路の壁に響き続けた。
フリー打撃を終え、室内練習場を出たマートンに和田打撃コーチが通訳を介してアドバイス。と、ここまではいつもの光景。しかし、スランプ脱出には現状認識が重要と説く同コーチに対し、マートンがかねてからの持論を展開した。
不調時の状態を客観的に認識することは、この先再び訪れる不調を早期に脱する貴重な手掛かりになる、というのが和田コーチのアドバイス。対してマートンの主張は、現状は長いシーズンを戦う上で想定される波の一部で、決してその範ちゅうを逸脱するものではないというもの。現状認識というミクロ的視点とバイオリズムというマクロ的視点の間で、多少の齟齬(そご)が生じたようだ。
一時の安打量産こそ影を潜めたものの、近況は復調モードのマートン。10日の試合では15戦ぶりの一発を含む2安打と打棒上昇への足掛かりを築いた。「きょうの打撃練習もよかったし、だからこそ(試合を)やりたかったんだけどね」と和田コーチ。「いいスイングができてホームランを打てたのはよかったけど、また次の試合が来る。大切なのは1打席1打席、いいスイングを心掛けること」とマートン。日々を冷静に見つめることで重ねた137本の安打。その考えは今後も変わらない。
調子が悪い時というのは、思ったほど悪くはない。調子がいい時も、自分の思うほどはよくないものだ‐。
米カブス時代にともにプレーしたマダックスから受けたアドバイスだ。“精密機械”と呼ばれた名投手の金言を道しるべに、助っ人は踏み締める打席に全身全霊を注ぐ。