……どこ…‥だ…‥ここは………
……光が届かない闇の中にいる……のか…?
朦朧とし手足の実感が無く、水に浮いているようだ。
(違う、浮いているようではなく浮かされているんだ)
…‥?
何で浮いているんだ?
なぜこんなに深い闇の中に僕はいる?
なんで五感のどれか一つも感じないんだ?
なぜだ…?
…………寒い…………
五感がないのに寒さだけは感じる。
いや、触覚が体に無いなら寒さを感じるはずはない。
この深い闇が寒さを「感じ」させているのだろうか?
(…いやだ、ここはいやだ!何でもいいから「ここ」から出たい!)
だが、今の自分に何が出来る?
(ただ時間が経つのを待つしかないのか……)
―――どれくらいの時間が経つのだろうか。
僕は、眠ることも、思考を停止する事もできず、明瞭な意識を保ったまま時間を過ごした。
‥‥‥気が遠くなる。いや、遠くなりたいのだ。
なんでもいい…この澱みを出たい…。
そして、前触れも無く、思い出した
「は、ははは」
絶望した。
そして笑った。
口が無いの笑っている事に笑った。
自分を形成していた物がすでに無く、人として終わっていたことを思い出した。
間もなく、薄氷をハンマーで砕くが如く、意識が、心が砕けた。
そして、望外の幸福を得られたことを自分に感謝する。
嬉しかった。
もう苦しまなくていいんだ!
…苦しむ?僕は苦しんでいたのか?
その時、それを思った瞬間、「何か」が侵入してきた。
それは僕の体の脳内物質と神経伝達の異常を修復し、心を正常に戻す。
(……B……E……T……A……)
今、本当に全てを思いだした。
滅茶苦茶にされた。仲間を。研究所を。思い出を。記憶を。僕自身を!
(そうだ、BETAは僕を何回も直した。そして壊した。)
繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し
直した。そして壊した!
その事実に絶望し僕は存在しない唇で叫んだ。
僕の声は誰にも聞こえない。
それでも絶叫した。
絶叫しつづけた。
(―――お願いだから殺してください、殺して‥‥‥‥‥‥‥・・・)
そしてまた心が壊れ、その壊れた心をBETAが修復する。
そのサイクルが半永久的に繰り返される。
やがて絶望がBETAに対する憎しみに変わっていった・・・・・