地域応援隊
完成まで待てない−東京スカイツリーに熱視線
7月30日(金曜日)付 日刊工業新聞 30面 地域特集から
<出稿企業一覧>
東京都墨田区に建設中の電波塔「東京スカイツリー」―。着工から丸2年が経過し、近く第一展望台が完成するなど工事は大きな節目を迎える。高さも約400メートルに達し、その存在感から週末ともなれば観光客らの見学者でにぎわい、すでに観光スポットとなっている。「完成まで待てない」とばかり、地元産業界もまた、この摩天楼に熱視線を注いでいる。
ホテル・飲料・金融 ツリー商戦が過熱
東京スカイツリーへの玄関口となる東武伊勢崎線・業平橋駅。「休日の乗降客はツリー建設前の3倍」(東武鉄道)まで増えた。高さで東京タワーを抜いた今春以降、特に週末はツリーにカメラを向ける見学者でにぎわいを見せている。
「当ホテルにご宿泊ください」。ツリー人気に便乗しようと、JR錦糸町駅近隣のホテルが宿泊客の獲得に躍起だ。東武ホテルレバント東京は「392の客室の半数で建設中のスカイツリーを眺望できる」、ロッテ運営のホテルも「213室のうち58室でスカイツリー、2室でスカイツリーと東京タワーを見渡せる」とアピールする。
「錦糸町にはホテルが少なく、ホテル間の競合なしに個人客が集まる」(ロッテ)と期待は高まるばかり。東武、ロッテの両ホテルとも宿泊客の7割程度がビジネス客で占めており、個人観光客の囲い込みで収益アップにつなげたい考えだ。
東京スカイツリーとのコラボレーション商品を首都圏で発売したアサヒビールとアサヒ飲料。ビール瓶のラベルや緑茶・ミネラルウオーターのペットボトルにツリーをデザインした商品で、アサヒ飲料はツリーを描いた自動販売機も墨田区を中心に今年度中に300台を設置する。両社の本社はツリーと同じ墨田区にあり、ツリーと地域活性化を支援する狙いだ。
ツリーをデザインしたビール瓶は居酒屋などにも供給し、「差しつ差されつ、ツリーをさかなに楽しんでほしい」(アサヒビール)という。
ユニークな金融商品も登場した。東京東信用金庫(墨田区)は、ツリーの高さが完成時に634メートルに達することにちなみ、5年物の普通定期固定金利(半年複利)を0.634%に設定した商品を完売。通常金利より約0.4%以上も高い。
同金庫は東武トラベルと組んで、今しか見られない建設中のツリーを見学する現場視察ツアーも展開している。
他方、墨田区もツリー開業を見据え、地元特産品などの販売を後押しする施策を実施中。墨田区のイメージを高める特産品などを地域ブランド「すみだモダン」に認定し、観光客らに拡販する。このほど2010年度の認定商品として、Tシャツやしょうゆ差し、せんべいなど28品目が選定された。墨田区がスカイツリー内に開設予定の「観光プラザ」(仮称)で展示・即売する計画だが、区はツリー開業に先立って、今年8月中旬に28品目をはじめ特産品を展示・販売する「すみだもの処(どころ)」をツリー近くに開設する。
特産品ばかりでなく、ツリー効果にあやかりたい地元商店。東武鉄道が2月にツリー併設ショッピングモールについて説明会を開催したところ、約1650社の参加者の中には地元商店主の姿もあった。募集は約300店舗と狭き門だが、出店できれば売り上げを大きく伸ばすことができる。
また、スカイツリー関連の商品開発に必要なライセンスを管理する東武タワースカイツリー(墨田区)への問い合わせも相次ぎ、スカイツリー・グッズに興味を示すメーカーも少なくない。
順調なツリー建設−地元企業の技術寄与
2008年7月の着工から順調に工事が進む東京スカイツリー。建設関連の受注企業は大企業が目立つものの、城東地区に本社を置く地元企業も少なからず工事に従事し、ビジネスチャンスをつかみ取っている。
菊川工業(墨田区)は第一展望台の外装工事を受注し、駒井鉄工(台東区)やJST(江東区)は、ツリーの巨大な鋼管を加工。丸秀工機(江東区)は駒井鉄工など8社の鉄骨加工会社にパイプ自動切断機を納入し、その8社がツリー向け鋼管のほとんどをガス切断しているという。
ツリー工事の受注企業はその全容が明らかでないが、巨大プロジェクトを地元企業の技術も支えている。
また、ツリーに併設して建設する31階建てオフィスビルに入居する企業をターゲットに、ビジネスチャンスを虎視眈々と狙う地元企業も少なくない。
なおツリーの施工は大林組、設計は日建設計、鋼材はJFEスチールをはじめ新日本製鉄、神戸製鋼所など、エレベーターは日立製作所と東芝エレベータ、ツリーを彩る発光ダイオード(LED)照明はパナソニック電工、放送用送信アンテナは日立電線が受注している。
ツリーの事業主体である東武鉄道グループは、ツリーだけで約650億円、ツリー併設のオフィスビルや水族館など周辺開発を含めると総額約1430億円の初期投資額に達する。
634m、自立電波塔では世界一−観光で地域活性化
2011年12月の完成時には高さが634メートルに達し、自立式電波塔としては高さで世界一となる東京スカイツリー。「634」は武蔵国(むさしの国)の語呂合わせとも言われる。11年7月に地上アナログテレビ放送が終了するのを受けて建設するもので、観光客らがその高さを体感できる開業は12年春の予定だ。
"武蔵"のツリーは、日本古来の建築技術の代表と言える五重塔の技術を最新技術で再現。五重塔は、心柱を中心として各層が独立した構造で、地震などの揺れを低減する。この制震システムを最新の技術で再現した。
ツリーのシルエットも伝統的な日本建築の「そり」や「むくり」を意識するなど、江戸・東京の文化を世界に発信する役割が期待されている。
ツリーの足元には31階建てのオフィスビル、約300店舗が出店するショッピングモール、プラネタリウムを主体とした多機能型ドームシアター(建設面積約860平方メートル)、学習機能などを備えた都市型水族館(同7800平方メートル)などが整備される。
墨田区によると、完成後はツリーだけで年間552万人が訪れ、年間880億円の経済効果が生まれると予測。ツリー併設の施設を含めると年間2907万人もの来客を見込む。
墨田区内には旧安田庭園や吉良邸跡、勝海舟生誕の地、江戸東京博物館、両国国技館など名所・旧跡や博物館などの観光資源が少なくない。墨田区はツリーをはじめ、これら施設の「点」を「面」で結びつけることで、観光地・墨田として地域活性化を進めていくことになる。
墨田区、交通網など整備
東京スカイツリーを起点に、区全体を観光地として活性化させたい墨田区。ツリー見学者が区内の名所・旧跡を訪れ、地元商店で買い物をしやすい環境とするため、ツリーを中心に北西、北東、南部を循環するバスの新たな観光3ルートをツリー開業の12年春までに整備する。またJR錦糸町駅近隣からツリー近隣までを全長1200メートルの直線道路で結ぶ「新タワー通り」(仮称)を16年度までに完成させる予定だ。
墨田区は、各観光スポットを散策する「町歩き観光」も推進する考えで、バス路線と同時に散策路の整備も進め、言問通り(浅草通り―水戸街道の540メートル)や桜橋通り(水戸街道―押上通りの660メートル)でも電線地中化や歩道拡幅などに取り組んでいく。
さらに電気自動車の貸し出しやレンタサイクル、水上交通の利用なども計画・構想している。
これまで製造業の支援には積極的だった半面、観光地としての整備が遅れていた墨田区。ツリー完成を機に、どこまで観光で地域経済を潤せるのか、これから真価を問われる。
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