減少する平和授業の“いま”
減少する平和授業の“いま” 08/11 19:51

最近は、「子供の夏休みの登校日がなくなったなぁ」と感じている方も多いのではないでしょうか。

同時に、原爆の日の平和授業も年々減っているんですが、そうしたなかでも続ける小学校を訪ねてみました。

久留米市立西国分小学校では、広島原爆の日の今月6日、夏休み中に登校日を設け、平和学習を行いました。

●平和授業の様子先生
「平和授業をせんよね?戦争の時って。戦争に行ってこいって。学校に“お父さんが死んだ"って泣いてきた子どもに、“立派だったな"って言わないかんとばい」

児童「えー?」
先生「『お父さんは立派だったな』って言わないかんとばい」
児童「えーーー!?」
先生「“泣くな"とか言えんとばい。言えんやろ、戦争でみんなで勝ちましょう、戦おうって言いよる時代に。先生だってそうよ。戦争に行きましょうってことを教えなきゃいけなかったかもしれない」

先生の熱のこもった授業に続き、子供たちひとりひとりが、平和へのメッセージを書き込んだ千羽鶴を折りました。

10月、6年生が長崎に修学旅行に行った際、平和公園に贈ることにしてます。

●生徒
「今一緒にいる人と大切に過ごしたいって書きました。おじいちゃんが亡くなったけん、その時に、大切におればいいって思ったけん書いた」

こうした夏休み中の平和授業は、10年ほど前まで当たり前の光景でしたが、いつからか登校日そのものを廃止する学校が増えています。

今年、福岡市内の小学校で、登校日があったのは146校中、わずか4校です。

そのきっかけなったのが、13年前のある事件でした。

●筑紫野警察署の会見
「春日市における所在不明女児略取事件被疑者の逮捕について説明します」

1997年の8月6日、登校日に通学していた春日市の小学2年生の女の子が男に連れ去られ、殺害されました。

当日は平和授業が予定されていました。

●福岡市教育委員会・学校指導係・赤木智幸さん
「子供たちの安全確保ということを最優先に考える学校が多くなったということが、一番の理由だろうと思います。原爆投下に関するものでは、前倒しをして、1学期末に取り組んでいると聞いています」

一方、西国分小学校のある久留米市では、登校日の平和授業を続けています。

今年も、市内に43ある小学校のうち42校で、夏休みに平和の大切さを考えました。

●西国分小学校・宮崎保幸校長
「広島と長崎に原爆を落とされた日ということで、一つのきっかけにはいい学習の時期と思って続けています」

学校以外の場でも平和学習は行われています。

筑後市では、地域の婦人会や「筑後原爆被害者の会」などが一緒になって、毎年、夏休みに入った子どもたち向けに、戦争にまつわるアニメ映画を上映しています。

●筑後市平和事業実行委員会・長瀬武夫会長
「子供の時から、それなりの戦争の悲惨さを知ってもらいたいなと思っています」

今年、上映されたのは、戦争が終わって、朝鮮から引き揚げてくる日本人を描いたものでした。

●映画を見た子供
「戦争ってあんなにひどかったんだってことが分かった」

しかし、子供向けにやわらかく表現されたアニメ映画に、戦争を体験した人たちの中には物足りなさを感じる人もいました。

●戦争体験者の女性
「ちょっと物足りなかった。(引き揚げてきた人たちは)頭ボサボサで洋服はちぢれて、『うわ汚い』って姿を目に見てるわけですから、そういう風な形で引き揚げてきているのに対して立派すぎじゃない?今日の映像」

子供を対象にした平和学習は、簡単ではありません。

しかし、子供たちが「平和」について考える場を設けること自体が、何よりも大切なことです。

●子供と一緒に映画を見た母親
「戦争のこととかちゃんと知っておかないと。ダメじゃないですか。やっぱり忘れたらいけないから。子供にもちゃんと知ってほしいと思って」
「まだ分からないかもしれないけど、戦争のこととか。アニメなので、分る形で少しでも心に残ったらいいかなと思って」

夏休み。

子供たちが学校から解放され最も遊びたい時です。

●児童
Q学校に来るときどうだった?
「めちゃくちゃイヤやった」

そんなときに、あえて「平和学習」という機会を設けて戦争について考える。

たった1日のことでも、その夏の思い出が、後々の子供たちの成長に大きく役立つ経験になるかもしれません。