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万城目さんの中高生向け新書が人気 「小説の面白さ伝わればいい」
小説家の万城目学さんが初めて中高生向けに書いた「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(ちくまプリマー新書)が話題を集めている。今年度上期の第143回直木賞候補作に選ばれたが、新書では異例のこと。惜しくも受賞はならなかったが、現在4版まで重ね計7万部を突破しており、さらに部数を伸ばす勢いだ。「これまでとまったく違うジャンルで直木賞候補に認められたことが素直にうれしい」と話す万城目さんに聞いた。
直木賞は3回目のノミネートだった。受賞は逃したものの、「候補の範疇(はんちゅう)外と思っていただけにこれまでで一番驚いたし、うれしかったです」と、満足そうに語る。
直木賞の長い歴史の中で、新書サイズの候補作は珍しい。原稿用紙で約200枚。小学1年の少女、かのこちゃんの成長を、飼いネコ、マドレーヌ夫人や飼い犬らの視点に絡めながら描く。過去の候補作「鹿男あをによし」と「プリンセス・トヨトミ」は、いずれも硬派な歴史の史実と奇想天外なSFを織り交ぜた複雑なプロットが特徴の野心作。「鹿男あをによし」はテレビでドラマ化もされ、独特の分野を確立した。それにもかかわらず、「しばらくこのテーマはひと休み。違うジャンルで挑みたい」と、“最大の武器”を封印し、執筆したのが今回の新書だった。
「小学校に取材に行って驚かされました。1年生の女の子たちの会話の内容は自分の想像を超えていました。『一番強い物は?』と次々に挙げていき、1人の子供が『テポドン』って言うんですよ」と笑う。
若者の活字離れが叫ばれて久しいが、「多くの中高生に小説の面白さが伝われば」と期待を込めた。(戸津井康之)