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【主張】日航機事故25年 「空の安全」改めて誓う時
日本航空のジャンボ機墜落事故から、きょうで25年になる。幸いにして御巣鷹(おすたか)の事故以来、日本の航空会社は大惨事を起こしていない。死者520人を出した世界最悪の事故を教訓として学び取り、安全運航に努めてきた成果だろう。
とはいえ、四半世紀が過ぎたなかで遺族は高齢化し、御巣鷹の尾根への慰霊登山ができなくなった話も聞く。日本航空も、事故そのものを話でしか聞いたことがない社員が大多数になった。
大切な肉親を突然奪われた悲しみを、次の世代に語り継いでゆくことが重要だ。日航をはじめとする航空会社は、社員研修に遺族らを招いて講演してもらうなど、さらなる安全意識の向上が求められる。すべては事故の悲惨さを知ることから始まるからだ。
国土交通省は、新たに航空事業への参入を認めた企業の経営者に御巣鷹山へ登山するよう求めている。安全運航に対して厳しく自覚を促すためだというが、大切なことである。
日航は今年1月に経営破綻(はたん)し、経営陣を大幅に入れ替えた。路線縮小や人員削減などを含む更生計画が、8月末にも東京地裁に提出される予定だ。
しかし、独り立ちへのハードルは低くない。政官とのなれ合いなど「親方日の丸」的な甘い体質や、経営の足かせとなってきた労働組合問題などが改善できない限り、再生はおぼつかないだろう。さらに何より、安全を最優先する企業であらねばならない。
日航はかつて、遺族ら「8・12連絡会」が求め続けてきた事故機の残骸(ざんがい)の保存と展示を拒んだ経緯もある。運航トラブルが多発して平成18年4月、羽田空港近くに「安全啓発センター」を設立して公開に踏み切ったが、惨事を繰り返さない決意こそ再生の原点にしなければならない。
日本の航空需要は増え続けている。事故の起きた昭和60年、国内線・国際線合わせて約5030万人だった輸送人数は昨年、約9930万人と倍近くになった。「空の安全」は、ますます重要になっているのである。
前原誠司国交相はきょう、御巣鷹山に慰霊の登山をするという。航空関係者は25年を節目として、あの事故を風化させることなく恒久的な安全運航への決意を新たにしてほしい。