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きょうの社説 2010年8月12日
◎米が追加景気対策 1ドル=80円割れが視野に
米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上の追加金融緩和策に踏み出したことで、円高
ドル安の地合が長期化する見通しが高まってきた。米長期金利の低下はほぼ確実に円高ドル安を誘発するからで、市場関係者の間ではこの先ドルが一段安となり、15年ぶりに1ドル=80円の大台を割るとの見方すら、まことしやかにささやかれ始めている。北陸の輸出企業は夏休み返上でフル生産に乗り出すところも少なくないが、円高の進行 で先行きの不透明感は強まっている。抵抗線とされてきた1ドル=85円は既に突破され、いよいよ歯止めがかからなくなってきた。円が独歩高となれば、好調な輸出に急ブレーキがかかりかねない。 日銀の白川方明総裁は、今月の金融政策決定会合で、追加金融緩和策について慎重な言 い回しに終始した。景気の減速とデフレ傾向に警戒感を強め、果敢に追加緩和の手を打ったFRBとは好対照である。もともと市場では、9月に行われる民主党の代表選の結果が出るまで、日銀は動かないとの見方が強かった。政府も目前に迫った代表選に目が注がれており、経済政策面での無策は、目を覆うばかりである。この政治的空白の間隙を突いて、円高の仕掛けが入る懸念は消えない。 米国や欧州は明らかに自国通貨安を景気回復のテコにしようと考えている。米国のオバ マ大統領は低金利とドル安で景気を持ちこたえ、11月の中間選挙を乗り切るつもりだろう。米国の明確な意思と、日本政府・日銀の腰の重さを見越して、投機筋が動けば、ゆゆしき事態になる。このところ下げが目立つ日経平均株価は、9000円の大台を割り込む懸念も浮上してきた。日本経済は円高・株安の二重苦にさいなまれ、国内産業の空洞化に拍車がかかるだろう。 政府・日銀は、これ以上の円高には為替介入も辞さぬという強い姿勢で、市場にあらゆ るかたちでメッセージを送ってほしい。日本が単独で介入しても効果は限定的だろうが、重要なことは「伝家の宝刀」を抜く凄みを見せることである。必要とあれば「抜き打ち」をためらわぬ覚悟もいる。
◎高峰映画の続編 日米交流を後押ししたい
高岡生まれ、金沢育ちの世界的化学者、高峰譲吉博士の生涯を描く映画「TAKAMI
NEアメリカに桜を咲かせた男」は、「無冠の大使」としての活躍に光を当てる。化学者としてノーベル賞級の成果を挙げ、企業家としても活躍した博士が、祖国日本を救う気概で日露戦争終結へ奔走し、日米交流に力を尽くした姿は「サムライ化学者」そのものである。スクリーンを通して郷土の偉人の功績に触れ、大きな志を次代に継承していきたい。今回の映画は、今春上映された「さくら、さくら〜サムライ化学者高峰譲吉の生涯〜」 の続編で、同じく市川徹監督がメガホンを取り、北國新聞社などで組織する製作委員会が製作する。「さくら、さくら」では加賀藩医の子として生まれた博士が米国に渡り、研究開発に心血を注ぐ姿や家族、仲間とのきずなが描かれ、夢の実現を目指す不屈の精神が見る者の心を打った。 続編では日米の懸け橋としての民間外交に積極的に取り組み、日露戦争の終結に向けて 舞台裏で尽力した晩年の博士が描かれる。映画を通じてスケールの大きい博士の全体像に迫ることができ、偉大な足跡に理解を深めるとともに、世界に通じる人物を生んだ郷土にあらためて誇りを持つことができるだろう。 田中美里さんや柴田理恵さんら石川、富山出身の俳優が多く出演し、石川県内ロケをは じめ地元エキストラを募るなど、博士ゆかりの地域にこだわった作品となる。北陸の映画文化の土壌に厚みを加えることになろう。 「さくら、さくら」上映を機に高峰博士への関心が高まっており、巡回上映会などで若 い世代に博士の「挑戦する心」が伝わっているのがうれしい。2012年に博士が贈った米ワシントンのポトマック川の桜の植樹から100年を迎え、石川県と金沢市、本社などで組織する実行委員会が、米国政府の協力を得て同河畔の桜の苗木を石川、富山に里帰りさせる計画も進んでいる。博士ゆかりの映画と桜で日米交流を後押ししたい。
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