2010年6月13日 9時23分 更新:6月13日 9時27分
口蹄疫(こうていえき)の感染拡大が続く宮崎県も12日、梅雨入りと発表された。雨は防疫作業の能率を著しく低下させる。今なおワクチン接種した家畜を含め約10万頭(11日現在)の殺処分、埋却処理を残す県にとってはまさに試練の時となる。一方、梅雨時の気象条件がウイルスにどう働くか、専門家の中でも見方が分かれている。【石田宗久、松田栄二郎、川上珠実】
「雨が降れば防護服の上から雨がっぱを着るため、蒸し暑さが増すうえに動きづらくなる。雨で作業員が足を滑らせるなど危険性もある」。梅雨時の作業の困難さを県農政企画課の担当者は訴える。
同課によると、殺処分した家畜を埋却する穴に雨水がたまらないよう土砂降りの際は掘削作業を中断したり、水がたまれば埋却前にポンプで排水することにしている。ウイルスが水とともに外部に流れ出すのを防ぐためだ。
また、埋却地の多くが農地のため雨が降れば地面がぬかるみやすく、ショベルカーなど重機の使用にも影響が出るという。
一方、梅雨入りでウイルスはどうなるか。山内一也・東大名誉教授(ウイルス学)は「ウイルスは動物の体内でしか生きられず、環境変化に弱い。梅雨で酸性の雨が降れば死滅するはず」との見方。さらに「欧州の事例から言えば、湿度が70%程度と高く涼しい状態が危ない。夏に向かい温度が上がる環境ではウイルスは死にやすくなる」と予想する。
これに対して、白井淳資・東京農工大教授(獣医伝染病学)は「梅雨入りで紫外線は弱くなる。消毒剤も雨で流されてしまう。水たまりやぬかるみでウイルスが車のタイヤについて拡散する恐れがある」と警告する。
また、後藤義孝・宮崎大教授(家畜微生物学)は「湿度が上がることでウイルスがほこりとして空気中に舞い上がることはなくなり、風に乗って運ばれる可能性が低くなるが、現時点では感染経路が解明されておらず、楽観はできない」と指摘している。