サンマの漁場は海水の表面温度によって変わる。今年の北海道東沖の海域は表面水温が例年より高いため、サンマが寄りつかないらしい。表面水温は8月下旬に向けて、さらに高くなる可能性がある。漁業関係者らの間には猛暑の影響を指摘する声もあるが、例年より水温が高い明確な理由は分かっていない。
不漁はすぐに価格に結びつく。築地市場での7月の卸値は1キロあたり657円で、前年同月比で193%だった。東京・日本橋の三越本店では7月10日の初水揚げ時、1匹1500円の値がついた。
食品スーパー「マルエツ」は現在、1匹300円前後で出している。担当者は「例年の1.5倍の値段。入荷が少なく、冷凍物を含めても例年の3〜4割の本数しか売れていない。漁が本格化するお盆以降に期待したい」と言う。
■ロシア・台湾の漁獲増
今後はどうなるのか。水産総合研究センターは、もう一つの主要な漁場である三陸沖ではサンマが好む冷水域が形成されると予測。10月以降、三陸沖で例年通りの漁ができる可能性があり、関係者は巻き返しに期待をつなぐ。
同センターが2003年から行っている日本近海サンマの資源調査によると、同年に800万トンとされた推定資源量は以降5年間400万トン台で安定していたが、09年に351万トンとなり、今年は221万トンまで落ち込んだ。魚類は約30年の周期で増減するという説もあり、水産庁は「長期的に調べる必要があり、資源が減った要因は現時点では不明」という。
かつてサンマをとるのはほとんど日本漁船だったが、健康志向から外国でも魚食が広がり、近年ロシアと台湾が漁獲を増やしている。北海道東方の公海が主な漁場で、日本漁船の数倍の大型船で操業し、船上で冷凍するのが漁法の違いだ。とり過ぎが気になるが、水産庁は「資源量に占める割合から考えると、いまの漁獲が過大である可能性は低い」とみている。(古源盛一、深沢博、大谷聡)