7月に始まった日本近海のサンマ漁が不振だ。例年より海水温が高いためとみられ、卸値は昨年の2倍近く、小売価格も高い。推定資源量も7年前の4分の1に落ち込んだ。近年、特に安価で「秋の味覚」の代表格として親しまれてきたサンマ。庶民の食卓から遠のいてしまうのか。
「漁場は遠く、魚群も薄い。本当に厳しいね」。北海道の最東端、根室市の花咲港。主力の中型の棒受け網漁船の初水揚げがあった9日、船主の一人はさえない表情で語った。
この日の同港の水揚げは昨年の約7分の1の約70トン。魚体も1匹160グラム前後とやや小ぶりで、200グラム以上の大物はほとんどない。
同港のほか釧路港など、夏サンマで知られる北海道東部の4港はいずれも不漁で、漁業情報サービスセンターによると、7月8日の小型流し網漁の解禁から今月10日までの水揚げの累計は590トン。昨年同期の1割以下だ。
鮮度をぎりぎり保てる北方四島・択捉島の東まで行けばとれる可能性が高まるが、往復3日の燃料や照明用の発電に使う重油代がかさむ。氷は例年の倍以上必要だ。このため4港では例年の半数程度の船が出漁を取りやめている。
関連業界にも影響が出始めた。資材業者の倉庫では発泡スチロール箱の在庫が山積みに。釧路公共職業安定所によると、今年7月の水産加工を中心とした求人は平年の5割減という。生サンマを三枚おろしなどに加工する釧路市漁協の担当者(54)は「日帰りでとれた新鮮なものでないと商品にならない。今後も不漁なら製造は厳しい」と話す。
■猛暑の影響?漁場東へ
日本近海へのサンマ来遊量は前年を下回る――。秋の本格シーズンを前に水産庁が8月初旬に発表した推定結果は、各方面に衝撃を与えた。水産総合研究センターが6、7月に北西太平洋で実施した調査で、分布は例年よりかなり東に偏っていた。