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[17288] チートだと思って浮かれてると地獄行きだぜ!(某格闘ゲーム)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:de014871
Date: 2010/08/04 21:24
初めまして、時守と申します。
別にカッとなってはいないけど、ふと思いついたんで書いた。
反省も後悔も推敲もしていない。
続く可能性は5%くらいならある。
完結する可能性はほぼゼロですが。

2010/4/16 チラ裏からその他板に移動しました。
2010/8/01 本作品の注意事項を追加しました。
2010/8/02 注意事項を改定
2010/8/03 謝罪文を追加させていただきました。
      軽率な言動、重ね重ね申し訳ありませんでした。


 注意事項(真面目)


 オリキャラ×原作キャラ物です。 

 独自設定、願望投影・自己満足・ロリペド上等に、原作とは違うオリキャラとのカップリング・性格改変、原作キャラを性的な視点で見ている…などの要素が多々あります。
 読んだ方からは、キモい、ウザい、不快などの感想を頂く事があります。
 その手の内容に嫌悪感や不快感を感じる方には、オススメできません。












































 どーもどーも初めまして、ワタクシはナッシュと申します。
 唐突に何ですが、見る人が見れば所謂オリ主に該当します。
 妹も居ます。
 姉かもしれませんが。
 どっちにしろ、将来は巨乳の心優しい天然気味の美人さんになる事はほぼ約束されていますです。
 しかもワタクシ、憑依系です。
 脳天から骨が突き出ている0歳児をやっております…ぶっちゃけ角があります。
 今はまだ小さな角ですが、いずれは成長して日常生活に支障をきたすくらいに御立派な角になってくれるでしょう。
 と言うか、現在でも充分すぎる程邪魔になっていますが。
 何と言っても、好き勝手に外に出られないんです。
 0歳児なんだから当たり前だって?
 御尤もですが、まぁ聞いておくんなまし。




 …口調は自然に戻そう、面倒臭くなってきた。
 と言うか誰に語ってるんだ俺?

 えー、とにもかくにも、目が覚めたら赤子だった。
 しかも嵐の夜に、野外に放置されていた。
 更に言うなら森の中だ。
 絶対狼とか熊とか居たよ、あの森。
 誰だ俺達をあんなトコに放り出していきやがったの。
 何故いきなり赤子だとか育児放棄は犯罪だとか、そんな事を考える余裕も無かった。
 繰り返して言うが、嵐で、しかも森の中で、野晒しだ。
 そして俺は赤ん坊。
 …幼児虐待…で済む筈ないし、ああ北斗の拳で似たような事やってたなー確か双子のどっちを生き残らせるかを決めるのに狼が沢山住んでる山に二人とも置いてきて狼は片方だけ食べるってナニソレ狼は群れなんだし赤子を一人喰った程度じゃ満腹なんかにならんだろ普通に両方死ぬわかーちゃんが助けにいくのを愛に狂ったって狂ってねーよそれが母の普通の愛だろむしろマジで置いてくる方が狂って……閑話休題。
 飛んでくる雨が冷たいは痛いは、風に吹かれて土やら葉っぱやら得体の知れん鳴き声は聞こえてくるし、正直言って死ぬかと思った。
 と言うか何故平気で生きているのか不思議で仕方無かった…まぁ、それも今になって思えば……いやいや、順番に話していこう、オチを先に言っちゃ俺も詰まらん。

 えー、俺は覚えてないんだが、その時は派手にオギャーオギャーと泣いていたらしい。
 それはもう、嵐の音にも負けずに近所の村にまで声が届くくらいに。
 俺と一緒に居た、もう一人の赤子は平然とスヤスヤ眠っていたそうだが…うん、剛の者だ。
 そんな俺の必死のSOSが届いて、近所の村に住む爺様が様子を見に来たそうだ。
 幾ら赤ん坊の泣き声が聞こえて、本人も余命幾許もない(本人談)爺様だからって、夜の嵐の森に平然と入ってくるとは…侮れん。
 と思ったら、実は俺が居たのは森に入ってすぐの所で、危険な獣もまず居ないらしい…仕方ないだろ、森なんて殆ど見た事無いんだから、どれくらいの深さかなんて分からん。
 そもそも、赤ん坊ボディだから目にする物何でもデカく見えるしな。

 泣くだけ泣いて…と言っても、風雨で死にそうになってたから記憶にないんだが…、気が付いたら俺は爺様と婆様の家に連れて来られていた。
 いやもうホントよく生きてたもんだ…俺は結局泣いてただけだが。
 雨に濡れて冷たくなっていた体は柔らかいタオルで拭きとられて、近くの古風な暖炉の火が部屋全体を暖かく染め上げて…いかん、俺に詩的な表現の才能はない。
 とにかく、生命の危機から脱した事で、何とか俺は冷静になる事ができた。
 思い返して見れば、冷静すぎる程に冷静だった。
 何の前兆もなく赤子になってるなんて異常事態に、全然動揺してなかった。
 かと言って、浮かれていた訳でもないけど。

 とにかく状況を把握しようとして、自分と同じようにもう一人の赤子が居ると気が付いたのもこの時だ。
 俺と一緒に拾われてきたらしい。
 …まんまサル…とまではいかなくても、赤ん坊の顔なんかどれもこれも同じに見えるねぇ。
 我が子とか縁がある子だったら、まだ分かったかもしれんけども、見ず知らずの子だし?
 ああ、でも一緒に捨てられていたって事は、血縁くらいはあるかもなー、案外双子だったりして?
 そう思うと、ちょっとくらい仲間意識が湧いたり。

 爺様も婆様も、髪の毛は完全に白だし、顔や手足には深い皺が幾つも刻まれていた。
 ただ、瞳の色が黒じゃなかったから日本人じゃないんだろう。
 と言うか今更何だがここは日本か?
 日本でも外国でも、俺が赤ん坊じゃ何の変わりもないが。
 …いやあった、もしも物騒な地域だったら安心できない。
 
 まぁ、とにかくそんな訳で、身寄りもない俺達は、爺様婆様に拾われて子供にしてもらった訳だ。
 話を聞いてみると、何年か前にようやく終結した物凄い戦争で、お子さん達は皆死んでしまったらしい。
 寂しかったし、と言っていた時の表情は、平穏なジャパンで育った俺にとっては全く見知らぬ表情だった。
 …やっぱ、物騒な地域か。
 捨て子があっても不思議じゃない辺りか。

 …まぁ、なんだ、とにかく。
 こうなる前の俺に未練はある、当たり前だ。
 未練タラタラだ。
 事故って死んで憑依した、とかならまだ諦めもつくけど、そんな事一切ない。
 転生トラックなんてお目にかかった事もない。
 と言うか普通のトラックと転生トラックは別物で、普通のトラックに轢かれても死ぬだけなんだよ転生トラックは日本中を年中無休でフラフラ走り回っているのさ当然安全運転なんだけど時々思い出したようにと言うか思い忘れたように安全確認をすっぽかしたり制限速度をブッチして人をあっちの世界に送り込んでその癖逮捕なんかできないから未解決の轢き逃げ事件がどんどん増えて…。
 …なんか妙な電波受信したな。
 とにかく、病死でもなけりゃ事故死でもない、単にメシ食って寝て起きたらこうなってた。
 …ひょっとして、地震か何かで寝てる間に死んだか?

 日々の仕事に疲れてるとは言え、折角就職先の環境に馴れてきた所だったし。
 続巻を心待ちにしていた本もある。
 ジャンプだって読みたい。
 酒が好きだ。
 毎週のジム通いの効果がようやく出てきて、肥満気味だった体も引き締まってきた。
 何より、実家の両親とか祖父祖母に心配をかけたくない。
 何で俺がこんな赤子になってるのかは分からんけど、何とかして連絡を取るくらいはしたい。
 信じてもらえるか、とか元の俺がどうなっているか、とかは些細な事だ。
 信じてもらおうと思ったら体当たりでいくしかない。
 俺と親しか知らない話を片っ端から並べ立てるとか。
 もしも元の俺が平然と暮らしていて、実は俺は他人の記憶を受け継いだだけのコピーだったのなら、それはそれで何の問題もない。
 それでも、どっちにしろ体が成長して、せめて話せるようになるまではこの爺様婆様の子供として世話になるしかないんだし…。

 うん、お爺さん、お婆さん、お世話になります。

 俺と、隣の子の名前をどうするか実に楽しそうに悩んでいる二人に向けて、ペコッと頭を下げた。
 ら、なんか知らんがでんぐり返りしてしまってお爺さんが慌てていた。





 そして、俺の名前がナッシュに決まった日。
 だーだーあーあー適当に声を上げながら、俺はもう一人の赤ん坊を眺めていた。
 いや、よく寝るわこの子。
 育つの早いだろうね。
 女の子と聞いて、将来の姿を想像してときめいたのは秘密だ。

 とにもかくにも、情報を集めないとどうにもならない。
 俺も多少はゲームや漫画の二次創作を読み漁った事がある身、オタクかどうかは自分じゃ分からんが、転生したり憑依したらそれは別の世界っていう話は見た事がある。
 元の世界だったら問題は無い…いや、時代の問題はあるか。
 別の世界だったら………まぁ、時間を見つけて元の世界へ帰れないか試してみるとしよう。
 オカルト的な分野を探しまわるのも、面白そうだ。

 と言う訳で、お爺さんが新聞読んでるのを見かけて、あーあー呼びかけて注意を惹く。
 …構ってくれるのは嬉しいけど、俺は新聞が見たいんですよおじーさん。
 新聞に向けて手をパタパタさせていたら、「お爺ちゃんよりもオモチャの方がええんかのう」とちょっと落ち込んでいた。
 「食べちゃダメじゃぞ」って渡してくれたんだが、なんか悪い事した気がする。
 それはともかく、新聞だけど。

 アカン、予想はしてたが日本語じゃねぇ。
 と言うか何処の言葉だこれ?
 英語じゃないみたいだが。
 数字は流石に読めるけど……。
 落ち込みそうな俺。
 だったが、そんな時ふと気付いた。

(読める…読めるぞ!)

 天空の城で石板を解読するムスカ中佐…大佐だっけ?みたいに歓声をあげる俺。
 何で読めるんだ?
 そういや今気付いたが、お爺さん達が喋ってるの日本語じゃないけど全部分かるよ。
 あれか、これが世に聞く転生特典ってやつか?
 もしそうだとしたら、体の方にも何か特典があるかもしれん。
 そうでなくても、子供の頃からトレーニングしてれば、腹筋が割れたボディとか手に入ると思う。
 うん、これは活用しない手はないな。
 …赤ん坊の頃からのトレーニングって効果あるかな?
 成長期に筋トレしない方がいいのは知ってるけど。
 まぁ、とりあえずハイハイできるようにならないと話にならんね。 



 とりあえず、その新聞で得られた知識に大したモノはなかった。
 なんかヨーロッパ辺りの田舎だって事は分かったんだが、知らない土地やら知事やらの名前ばっかりでサパーリ。
 あと知らない単語が幾つもあって、知っているけど意味が繋がらない文章がもっと沢山あった。
 雨を集めて池に飛ばすとか何とか…集めるっていうのはダムみたいなものだとして、飛ばすって何よ?
 この辺は要勉強って事か。
 まぁ一般常識みたいだし、普通に生活してれば知る機会はあるだろう。
 頭の方は冗談抜きでチートみたいだし…新聞についてたパズルを見て、頭の中だけで速攻で全て解けてしまった。
 何処ぞの大学の入試か何かで出る数学的問題も、即答えが出て、意識すればその過程も思い出せる。
 …なんか、意味も読み方も知らない記号も全部理解できたんだが…。
 どんだけ頭の回転が速いんだろうか。
 それに、物を思いだす力が凄く強い。
 今まで忘れ去っていた事も、それこそ幼稚園児の記憶まで簡単に思いだせる…おかげで思い出したくない人生の恥も思いだしてしまったが。

 体の方は…何と言うか、これもやっぱりチートっぽい。
 妹(仮)と一緒に寝ている時とかに試したんだが、まだ赤ん坊だっていうのに器用さが半端じゃない。
 これでもかと言う程に、思い通りに動いてくれる。
 どのくらい動くかと言うと、こっそり確保したボールペンで綺麗な○が書けるくらいだ…ちなみにチラシの裏に書いた。
 全く歪みのない円なんて、コンピューターでも書けないぞ。
 ○だけじゃない、四角やら三角やら、その他諸々色々と書いてみたんだが、頭の中にある映像をそのままコピーしてるんじゃないかってくらい綺麗に書ける。
 握力とかも、赤ん坊にしてはひどく強い。
 思いっきり力を入れてみたら、片手でボールペンを圧し折りそうになってしまった。


 うん、聞いてるだけだと普通にチートだろ?
 これに魔法とか付けば完璧に最低系の路線に進める。
 最低系かどうかはともかくとして、能力が高いっていうのは歓迎出来る事だから、その時の俺は喜んでたよ。
 ああ喜んでたさ、将来その能力を何に使うっていう明確な目的はなかったけど、ちょっとしたスーパーマンみたいになるんだと思えば喜ぶのも分かるってもんだろ。





   で   も   ね   。


 よーく考えるべきだったんだ。
 俺がチートなんだったら、一緒にいた子もチートなんじゃないか、とか。
 そもそも能力が高いって言っても、周囲の一般基準はどうなっているのか、とか。
 身体能力云々を言うなら、赤ん坊の未発達な脳ミソに仮にも大人の意識が入って大丈夫なのか、とか…脳については、右左に割れてるくらいの事しか知らないんで、考えるだけ無駄だったけど。
 それでも、見た事も無い字が平然と読める理由くらい考えるべきだった。
 チートだから、憑依やら転生やらだから、しかコメントのしようがないっていうのも事実なんだが。




 俺が『その事実』に辿り着いたのは、お爺さんに拾われて一週間くらいの頃だった。
 最初に疑念を持ったのは、妹(仮)に対して。
 …どうでもいい事を追記しておくが、お爺さんもお婆さんも、どっちがお兄さんお姉さんなのかは決めてない。
 自然と関係が出来上がるだろうと思ってるらしい。
 俺は妹も好きだが姉も好きだぞ、というか家族は大体好きだが。
 前者は萌え的な意味で、後者は友愛的な意味だけど。

 とにかくその妹(仮)なんだが…………見事に生えそろった、その青色の髪の毛はナンデスカ?
 青色よ青色。
 生まれながらにそんな髪の人っている?
 赤ん坊の成長速度って俺知らないんだけど、一週間で髪の毛って生え揃う物?
 いや髪自体は母親の腹の中に居る時に生えてるらしいけど、これって赤ん坊の髪質じゃないよ。
 もっと時間かかるんじゃねーの?
 と言うか俺の髪も赤ん坊の髪じゃないし。
 ちなみに俺も青髪だ。
 生えてるの髪の毛だけじゃなくて、乳歯も生えてるんだなこれが。
 お婆さんは「子供が育つのは早いねぇ」って呑気に言ってるけど、いくらなんでも早すぎる。
 もう俺も妹(仮)もハイハイで動き回れるようになっている。
 これに関しちゃ、俺が何とか動けるようになりたかったんでジタバタしてたら、妹(仮)も真似して出来るようになったっていう背景があるんだが。
 ついでに言うと、それ以来妹(仮)は何かと俺の真似をしようとしているようだ。

 気味悪がられてるような事は今の所無いんだが、このまま放っておくと5年もすると成人くらいになってしまうんじゃなかろうか。
 流石にそれはマズいだろう。
 ついでに言うと寿命も気になる。
 はてさてどうすんべぇ、とお爺さんに頭を撫でられながら…もう首が据わっている…考えていたんだが。


「痛っ」

「どうしたんだい、お爺さん?」

「何か引っかかって、血が出たんだよ。
 悪いけど、バンソーコー持ってきてくれないかい、お婆さん」


 何ぞ?
 お爺さん大丈夫か?
 と言うか、一体何が引っかかったんだ?
 撫でてたの俺の頭だぞ。
 赤ん坊の髪にしちゃ硬いけど、血が出るような髪じゃない。
 妖怪アンテナみたいに逆立ってる訳でも無いしな。

 お爺さんの傷をバンソーコーで塞いで、一体何が?と二人で俺の頭を覗きこんだんだけど。


「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」


 なんか沈黙してた。
 角度の関係上、二人の表情は全然見えない。
 でも何かイヤな予感。


「……………」

「……………」

「……………」

「お爺さんや、これ何に見えるかねぇ?」

「お婆さんと同じモノが見えるみたいだねぇ」


 何だ。
 何が見えてんだ。
 何か俺の頭に寄生してんのか?
 …よく考えたら、俺の意識が寄生してるな、憑依だけど。

「…つの」

「つの、ですねぇ」


 つの?
 津野?
 TUNO?
 Two-Now?
 つのだ☆ひろ?

 ……………角?


「ほぅ…角のある赤ん坊かぁ。
 こりゃ珍しいのぅ」

「何で角なんか生えとるんかのぉ」


 …落ち着いてますなぁ。
 俺も釣られて落ち着いちゃったよ。
 で、何?
 俺に角があるって?
 取りあえず、鏡…は手の届く所に無いから、頭を軽く壁に押しつけてグリグリしてみる。
 …ああ、確かに何か硬いモノがあるな、これが角か。
 ちょっと頭蓋骨が変型して突き出たってレベルじゃない。
 髪に隠れて見えないみたいだけど、明確に鋭い角が一本自己主張している。
 ひょっとして角があるせいで捨てられた…いや、捨てられた時には角なんて生えてなかったよな。
 昨日までこんなモン無かったと思うぞ。
 と言うか、珍しいってそれだけ?
 …ひょっとしてとは思ってたけど、やっぱりここ俺が居た世界じゃない?
 ちゃんとした情報を集められないから断定できなかったし、暖炉とか煉瓦の家についてはヨーロッパの田舎っぽいからって事で納得してたんだが。
 角がある子供って、珍しいってレベルでしかないのか?

 また混乱してきた俺を余所に、お爺さんとお婆さんはああでもないこうでもないと、何で俺に角が生えているのか話し合っていた。


「これはアレかの、ジャパンに生息していたっちゅう、オニっちゅうやつかもしれん」


 あ、日本あるの。
 じゃあ全然知らない世界って訳じゃないのか。
 でも日本に限らず鬼なんかいないよお爺さん。


「あらあら、ジャパンにはそんな生き物がいたんですの?」

「いーや、昔々の物語に出てくるだけじゃな。
 ワシも昔の通りすがりに、ちょいとばかり話してもらっただけじゃ。
 …ツヨシ、と言うとったかの…。
 まぁ、ひょっとしたら昔は実在しとったのかもしれんが、今となっては調べようもないし」

「そうですねぇ…ジャパンはもう吹き飛んで、コロニーにしかありませんから」


 …今何かおかしな単語とか出た。

 吹き飛ぶ?
 コロニー?
 …コロニーの日本って…ネオジャパン?
 Gガン?
 アニメ的世界なのかここ?
 でもアレって日本は吹き飛んでたっけ…?


「もしもその『おに』だったとして、何でこんな所に居たんでしょうねぇ」


 …俺はお婆さんのその落ち着きようが気になります。
 拾った子供が人間じゃなかったんですよ?
 気にならないのん?
 いや気にしてるから考えてるんだろうけどさ。


「うーん…ひょっとしたら、ジャパンが吹き飛ぶ前に逃げてきたんじゃないかの?
 あの聖戦は、ひどかったからなぁ…」


 …聖戦?
 そう言えば、数年前にようやく終結した戦争って…その聖戦?
 確か、その戦争で身寄りがみんな亡くなったって…。


「ひょっとしたら……この子、聖戦の生き残りの…」

「………ギア…かもしれんのぅ」


 …ぎあ?
 歯車?
 てかギア?

 ギア………ギア…聖戦って………。


 ギルティギア。


(アニメじゃない! アニメじゃない!
 ゲームの事さ~~~~!!!!!)


 まてまてまてまてまてまて、これヤバくね?
 チートがどうの最低系がどうの以前に、どう考えてもヤバいだろ!
 俺がギア!?
 いやそれが本当かどうかはともかくとして、確かギルギアの聖戦ってギアが人類に対して反乱を起こしたんだよな!?
 その聖戦でこのお爺さんお婆さんの身寄りの人が死んで…つまり俺って仇!?
 斬り捨て御免!?



 この時の俺の混乱具合を想像してもらえるだろうか。
 一週間程度でも、俺はこの人達の子供になっていた。
 本当にこのお爺さんとお婆さんはお人好しで、人間ってここまで優しくなれるんだと思うくらいに優しかった。
 保護者ってだけじゃない、本当に…憑依する前の俺の祖父と祖母と同じくらいに、大事に思うようになってたんだ。
 なのに、俺はギア。
 この人達の、多分子供や孫の仇。

 この人達から、憎悪を籠めて見られるのだと思うと。
 本当に、家族から拒絶されたかのような冷たさが体の中に湧いてくる。
 視界が潤む…泣きそうになってるのか。


「ああ、よしよしナッシュ。
 怖い顔してゴメンねぇ。
 大丈夫よ、貴方は私達の可愛い子供なんですから」

「そうじゃの。
 よしんばギアじゃったとしても、まだまだ赤子じゃて。
 今から人間と仲良くしようと教えておけば、ひどい事にはならんじゃろ」


 ……はい?


「わしらにとって、お前さんらは天国の息子や孫からの贈り物じゃ。
 お主達を拾った時にそう感じて、そうやって接してきたんじゃ。
 贈り物がギアだったからとて、掌を返すような事はするものかよ」


 ……………ええ?


「そうですねぇ、お爺さん。
 可愛い子、大事な子。
 ギアか人間かなんて、関係ないわ。
 貴方は私達の子供なのよ」


 ………マジですか?

 え、俺は貴方がたの身内の仇でしょ?
 それでいいの?
 拒まれなかったのは…また涙が出そうなほどに嬉しいけど、それでいいの?

 …マジみたいだ。
 すげぇ。
 いやホントにスゲェ。
 人間ってここまで優しくなれるんだ。
 憎いとかそういう感情が欠如してるんじゃないかってくらい優しい。
 俺もいつか、貴方達みたいな心優しい老人になりたい!
 …ギアって老けたっけ?

 気が付けば、お婆さんとお爺さんの手をキュッと握って、ケラケラ笑っている俺が居た。


「ああ、お爺さん、ディズィーがむずがっていますよ」

「おお、仲間外れはイカンのぅ。
 ほれ、今日はナッシュと4人で寝ようかの」


 …我が妹(仮)、ディズィー。
 君があのディズィーだったとは、夢にも思わなかったよ…まだネクロもウンディーネも居ないみたいだしシッポも無いし。
 俺の角みたいに、後から生えてくんのかね?
 今まで名前を呼ばなかった理由?
 …名前出した途端に察知されるじゃん。






 さて、俺がギアだと判明して数日。
 お爺さんお婆さん、我が妹(仮)改めディズィーにジャレながら考察を重ねたところ、幾つかの事実が判明した。
 憑依の恩恵だと思っていた器用さや力の強さ、それに知らない文字が読めると言うのは、もっと単純な理由があった。
 俺が、ギアだからだ。
 ギアと言うのは生物兵器っぽいナニカだ。
 兵器っていうくらいだから、当然制御プログラムみたいなのも脳ミソか何かの中にインストールされている。
 知らない文字が読めたのは、そういう知識がインストールされていたから。
 試してはいないが、多分この世界に普及している他の文字も読めるだろう。
 …いや、兵器にそんな文字を読む機能なんて必要ないかな?
 でも実際読めるしな…まぁいいか。

 力の強さは、まぁ単純にギアだし。
 多分、筋肉の構成とか密度とかからして違うんだろう。
 頭の回転が速いのも、まぁこれと、あとインストールされている知識やプログラムのおかげだろう。
 記憶力が良くなっているのは、今までの記憶が何故かデーターベースに全て入っていて、それを制御プログラムを介して自在に引き出せるからだと思う。

 体の器用さに関しては、これまた制御プログラムの恩恵だ。
 自分がギアだって事を自覚してから分かったんだが、体の中にスイッチみたいなのがあって、それを意識すると自分の体をより細かく動かせるようになる。
 何と言うか、無数のコントローラーを同時につかって自分の体を操るような感覚だ。
 体の中のスイッチの幾つかは、動かせない物も多い。
 多分、戦闘系のプログラムとか、成長して体の機関が出来上がらないと使えないとかそんなのだ。
 正直、あんまり使いたくないのだが…そうも言ってられそうにない。

 ああそうそう、俺が突然赤ん坊になってた事態に動揺しなかったのも、ギアry)
 動揺しすぎて戦闘行為に支障を来たすのを防ぐ為なのか、鎮静剤っぽい何かが発動していたらしい。
 

 実際のところ、何も問題は解決していなかった。
 と言うか悪化していた。
 まず、この世界は俺が居た世界じゃないのはハッキリした。
 何とかして、前の世界の俺がどうなっているのか、両親に心配をかけていないか確認したいのだが、普通に無理だ。
 難易度高すぎ。
 異世界に行かなきゃならんって、何をどうすりゃいいのか冗談抜きで見当もつかない。
 いや、アテというか、この世界には魔法的な法力があるし、それって空間転移とかもできるみたいだから、頼るのであればそっち方面なんだろう。
 でも法力って、確か気の属性を除いて超が蝶になる程高度な数学的ナンタラが必要なんだよな。
 頭の回転が良くなってるからって、俺がそんなモノ使えるのか?
 いやいや、何事もまず挑戦だ。
 取りあえず今からパズルとか沢山やって、頭の柔軟さを養っておこう。

 いやそれよりも何よりも、俺がディズィーと一緒にいて、なおかつ多分彼女と同じハーフだというのが問題だ。
 いやハーフでなくてもギアならもっと問題なのだが。
 このままギルティギアと同じ流れに行くとすると、ディズィーも俺もそのうちギアである事を隠しきれなくなり、お爺さんとお婆さんの元を離れて悪魔の森とやらに行かなければならない。
 二人と離れるのは寂しいが、迷惑をかける訳にもいかん…最悪、俺達じゃなくてあの二人に何かされるかもしれんしな。
 まぁ、それはいいんだ。
 いや全く問題ないわけじゃないが、妥協は人生において時に必要なものだ。


 問題は。
 そう、問題は、だ。

 悪魔の森にギア(つまり俺達)が居ると広まった場合、やってくる連中がいるって事だ。
 そう、あのソル=バッドガイを筆頭に、道理もクソもなく物凄くケンカっ早くてしかも不条理なまでの戦闘能力を持っている、かつてはディスプレイの中でコントローラーを使って操作していた方々が。

 勝てねーよ。
 ていうか勝負になんねーよ!
 あんなのに勝てたら人間止めてるって、ギアだけど!
 憑依した時には「おお、これ結構チートボディじゃね?」なんて思ったけど、あの連中が相手じゃこの程度のチートじゃ意味がねぇ!
 ストーリーモードじゃ、何か『全力でやる』的なバカげた、『実はコイツ金キャラじゃね?』って思うくらいに桁外れの性能出してた事もあったけど、あんなの相手にしてられますかっての。
 特にアレだ、常時ドラゴンインストール状態のSOLとか、一撃必殺状態のJOHNNYとか、アレがリアルでも同じだったとしたら堪らんぞ。
 SOLなんて、全力出したらアレだ、ジャパンを消し飛ばしたジャスティスとガチでやりあえるんだろ?
 無理無理無理。
 …そーいや、俺とディズィーの母ってジャスティスになんのか?
 ストーリーはあんまり詳しく知らないんだけど。
 つーかどうやってあのメタリックボディで産んだんだ。
 …実は装甲のあの赤い部分、ち○こになってて孕ませる法に回ったとか?

 いやいやマテマテ、人間ポジティブ思考が重要だ。
 俺割と後ろ向きなネガティブ君だけども、前を向いてあるいて行きたいという妄想的願望はまだ持っている。
 だから自分の戦闘力を上げて対抗しようなんて考えはせずに、災難を回避するか誰かに助けてもらう方向で考えるんだ。
 いざとなったらディズィーに全部押しつける…いや罪悪感が……待て、それ以前に俺もギアだからどっちにしろ追いかけられるって。


 アレだ、最初はまだいいよ。
 テスタメント。
 召喚する人がいてくれるから。
 でも初対面の時には闘うんだろうなー、流れは分からんけど。
 他にも有象無象が襲ってくるだろうけど、闘いを嫌うディズィーでも何とか無傷でお帰り願えたんだ。
 俺も戦力として考えれば、幾らか楽になるだろう多分。
 それに、本気で俺らの命を狙ってきそうなのは…一番ヤバいのがソルだろ。
 次に…確か仇打ちだって梅喧が。
 ディズィーが見逃してもらえたとして、俺も見逃してくれるかどうかは未知数だ。
 それに仮に俺が殺されたとしたら…ディズィーも流石に黙ってない…よな?

 カイは自分のやるべき事を迷っていたし、ヘタな行動を取らなければ…殺される事はないだろ、多分。
 他の人達も、まぁ何やかや言いつつ保護とか知りたい事があったりとか、賞金目当てでもお人好しだったりとか、無茶なアクシデントが無ければ多分大丈夫。
 心配があるとしたら、ディズィーが自分から外の世界を見に行って、ファウストとかと闘って殺害、そのまま眠りについてしまうってルートとか。
 ああ、でもそうなると次の話に繋がらないな…そうなったら事態がどう転ぶか予想もつかん。
 俺が居る時点で、ゲームと同じ流れにはならないと思った方がいいかもしれん。

 一番問題なのはその後からだ。
 何事もなければ、多分ジョニーのトコのジェリーフィッシュ快賊団に所属するだろう。
 ディズィーはね。
 あそこ、確かジョニー以外は男子禁制って事になってたよな…まぁ、非常時はともかくとして。
 俺も例外として乗せてくれんかな…アイツ、男には厳しそうだしなぁ…。
 拒否されたらツェップにでも亡命を考えよう。
 さもなきゃディズィーの泣き落とし。
 個人的にもジョニーは好きだ。
 下手だったけどマイキャラだったし、あの飄々とした余裕綽々の態度とかに惹かれる。
 若本ボイスは是非ともナマで聞きたい。

 んで…確かその後、イノやら終戦管理局やらに狙われる、と。
 イノってソル以上の…文字通り全力のソルかどうかは知らんけど、とにかくあの人外(ギアだっけ)と渡り合えるくらいの力量なんだよな。
 しかもタイムトラベラーで、何処にどう現れるか予想もつかない、と。
 …手の打ちようがないよ。
 
 俺が知ってる知識からじゃ、この程度の事しか考えられんな。
 何せやった事があるのは、GGXとGGXXのみだ。
 他の奴は…金がないから攻略サイトやら攻略本やらを見て、プレイした気分に浸ってたっけなぁ。
 虚しくなってすぐ止めたけど、気になってまた流し読み…うぅ、もっと見ておけばよかった。

 とにもかくにも、四面楚歌もいい所だ。
 平穏は遠い。
 いや今は平穏だけど、嵐が近い。
 畜生、今日はもう考えるの止めた!
 もうディズィーをキャッキャと喜ばせて一週間くらい過ごす!









 ディズィー可愛いよ可愛いよマジで。
 別にハァハァする訳じゃないぞ。
 いや本当に可愛い。
 育ってからはディスプレイ越しでも(だからこそ、かもしれない)可愛さが伝わってきたけど、今ここに居るのはリアル。
 しかも、まだ1~2歳くらいの幼女。
 一か月くらいでここまで育った。
 俺もそうだけど、つくづく成長が早い。
 天真爛漫に笑うんだ、これがまた。
 これに絆されない奴は、全部悪党だ。
 ていうか悪だ。
 断言していい。
 誰だ「いざとなったらディズィーに全部押しつけて逃げられないか」なんて考えてた外道は。俺だ。
 俺以外にいね~よ産まれてきてゴメンなさい、本当にあの頃の俺は穢れてました。
 穢れをディズィー(幼)が浄化してくれたよ!
 
 どんな風に笑うって?
 まぁアレだ、まず顔付きなんだがな、造作自体はそんなに珍しいもんじゃない。
 割と丸顔。
 子供としてはありがちな輪郭だな。
 それにしたって目鼻の形やバランスが整っているのは事実なんだが、それ以上にイイのが全身の雰囲気。
 いつも子供らしく、何が楽しいのかニコニコしてて、俺やお爺さんやお婆さんと目があったら、ニパって満面の笑みになるんだよ。
 そこから放射されるオーラが「嬉しい」「嬉しい」「楽しい」「大好き」みたいな感じで、我輩はもう、我輩はもうッ!

 …プチ錯乱してしまった。
 とにかく可愛い。
 子犬的な可愛さがある、飼い主に向かってパタパタ尻尾を振って飛び着いてくる子犬的な。
 しかも中毒性ありだ。
 実際に中毒になった俺が言うんだから間違いない。
 更に言うとだな、ニパって笑いかけられたから、俺達も笑い返すし、そうでなくても頬が緩んでしまう訳よ。
 人として自然な反応だよな?
 そしたら笑い返されたディズィーがもっと嬉しそうになって、きゃーとか叫びながら飛び着いてくるんだ。
 流石にお爺さんやお婆さんに文字通り飛び着くと危険なので、そっちは走って駆け寄って、止まってからゆっくりギュッと抱きつく。
 なお、このまま筋力が成長すると危険なので、俺が最優先で力加減を教え込んだ。
 理由は分かっているのかいないのか、素直に従ってくれて助かった。
 で、肝心の俺に抱きついてくる時だが…まぁ俺もディズィーと同じギアだし、幼いとはいえ男性体だからかディズィーよりは頑丈らしい。
 だからディズィーも特に力加減をする必要はない。
 その為、俺にだけは走ってきた勢いのまま飛び着いてくるし、思いっきり力をいれて「ぎゅー」してくるんだ。
 他にもスリスリとかしてくるし、頭を撫でてやったらクセになったのか、撫でやすい所に頭を突き出して待機する事もある。

 幼いながらも、やーらかい。

 胸がどうのとかいうオチはない。
 本当に、子供の体って柔らかいんだな。
 体温高いし。
 この子を相手にロリィな趣味に目覚めるなんて断固ありえん。
 物凄い保護欲と萌えが掻き立てられる。
 …訂正する、ロリィな趣味には目覚めるかもしれんが、ペドにはならない。
 欲望の対象にするって発想がまるで思い浮かばない。
 YESロリータ、NOタッチ…真理だったんだな。

 今もほら、部屋の扉から顔だけ出して。


「なっしゅー」

「ディズィー、どうかした?」

「ふぁー」


 舌足らずな声!
 なんかもう砂糖で出来てるような声というか、これがあれば多分俺は一生甘味を必要としない。
 そして返事をしたら、笑顔で部屋に入ってきて、意外な程の健脚で…幼いとはいえ流石ハーフギア…走り寄ってきて…。


「きゃー♪」

「はっはっは~」


 思いっきり飛びついて来た。
 勿論俺は受け止めて、そのままグルグル回してやる。
 これが最近のディズィーのお気に入りだ。
 まだ子供の体じゃ無理な荒技だが、幼いとはいえ流石ry)
 そうやってグルグルして遊んで降ろしてやると、ディズィーは決まって目を回す。
 その場で座り込んでしまうんで、俺も一緒に座り込むと、「なっしゅ~」と砂糖どころかグラニュー糖を更に煮詰めたような声を出しながら、俺に寄り掛かってくる。
 これが14歳以上の男女がやってたら、傍から見ると白いマスク被って襲撃したくなるんだろうな。
 今の年齢でもそうかもしれんが、かかってきやがれギアの戦闘能力を全開にしてディズィーが訝しむ間もなく片付けてやる!



 …とまぁ、このまま続けて何キロバイト分も「ぼくのかわいいいもうと」自慢をしてしまいたいんだが。(←妹から(仮)が取れました)
 ん?
 キロバイトって何だって?
 そりゃ俺の思考ログの量だよ、なんか一々記録取られてるんだ。
 読み返してみたら、3日前くらいから8割以上がディズィー自慢で埋まってた。
 個人的には自慢を続けてもいいんだが、その前に一言二言言っておかなきゃならん事がある。
 先に言っておいた方が、心置きなく自慢を続けられるしね。

 今後の方針の事だ。
 俺もディズィーも、半分とはいえギアだから、狙われるし厄介事が付き纏うのは遺憾ながらも如何ともし難い。
 が、そこはこの俺憑依者の面目躍如。
 憑依者だからって主人公的活躍ができるかは別の話なんだが、とにかく俺は思いついた。
 そう、逃げてしまえばいいのだと!
 無論、中途半端に逃げたところで、終戦管理局からもイノからも「あの男」とやらからも逃げられまい。
 だったら、絶対に手の届かないところに逃げてしまえばいいのだ。

 俺が、元々居た世界へ。

 難しいのは分かっている。
 それはもう、俺が想像している以上に難しいんだろう。
 が、難しさで言えばあの連中を相手にバトるよりはナンボかマシに思えるし、少なくとも命の危険はこっちの方が少ないと思う。
 そこまで逃げてしまえば、流石に(根拠は無いが)追いかけてこれないだろう。
 俺がそっちに行けると言う事は、同じ方法で追いかけてこれるかもしれないが、その時はもっと広大な世界へまた逃げ出すだけの事。
 そもそも移動方法を秘匿しておけば…でも『あの男』だったら追跡方法の一つや二つ、痕跡から作り出してきそうな気が…いかん、同道巡りだ。
 とにかく、俺の世界に行けたら、家族の様子を見るだけでもやっておきたい。
 どっちにしろ、それは当分諦める気はなかったからな。
 一言くらい『元気でやってます』と伝えられればそれでいい。
 元々自立して独り暮らししてたんだし、生きてるって伝えとけばそれで充分。
 もしもこの方法を確立できたとして、ディズィーが一緒に来るかどうかは…まぁ、その時にならなきゃ分からんな。
 ジェリーフィッシュ快賊団に所属してたら、来ない気がする…割と寂しい。

 クソ難しい法力に関しては、研究するならともかく行使する分には問題なかった。
 何故って、俺の頭の中にインストールされてたからだ。
 ギアっていうのは法力を使って作り出されて動くモノみたいだし、別に不思議な事じゃない。
 細かい理屈を把握できている訳じゃないが、感覚で動かせる。
 これは予想外のラッキーだった。
 細かい理屈はこれから把握すればいいんだ。
 その辺のも一応頭の中に入ってるみたいだし、時間をかけて分析して行けば独学でもそれなりの所まで行けるだろう。
 行き詰ったら…誰かに聞けるかな?

 そういう訳で、出来る限り厄介事を避けつつ、異世界への逃げ道を何とか創り上げて、何よりもディズィーを愛でつつ人生を送りたいと思っていますマル!




思いついたんで書いてみた。
続くとしたら殆どがディズィー自慢で占められると思う。
徐々にエロくしていけたら最高なんだが。




[17288] 02
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 ID:bc760c40
Date: 2010/08/03 19:19
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 最近は俺もディズィーもすくすく育って、お爺さんお婆さんとちゃんとお話できるようになりました。
 二人とも孫と話しているような…いやそのものか…表情で、本当に愛されてるんだなぁって実感できます。
 愛されているという実感は、人生において最大の幸福である…と誰かが言っていたようないなかったような。
 ああ、愛されていると言うか親愛の表現なんだけど、なんかキスとかしないんだよね、ここの人達。
 ゲームでもノベルでもやってる表記が無かったから、俺が元居たヨーロッパ辺りの文化とは違うのかもしれない。
 さもなきゃ、聖戦を挟んで文化がガラッと変わったとか。
 元日本人としては、ホッとしたような残念なような…。
 さて、今日も今日とてディズィー自慢と近況報告と行きますかね。



 取りあえず近況報告から。
 俺も既に2歳~3歳くらいのボディに成長した。
 えーと、確かゲームの設定では3年くらいで20歳くらいのボディになったって話だから、成長速度が一定で、かつもうちょっと前後するとしても…1年で6歳ちょっと、2か月くらいで1歳分成長するのか。
 成長したのはいいんだが…角まで成長しなくていいよ。
 もう10センチくらいの長さになった。
 普通に邪魔だ。
 こんだけデカいと帽子でも隠せない。
 寝てる時とか(当然ディズィーと添い寝だぜ!)、ヘタに寝返りを打つと角が壁やベッドを傷つける事があるし、コイツのおかげで、俺は外に遊びに行けない。
 お爺さんもお婆さんも、軟禁しているみたいでどうにかしたいと思ってるんだけど、こればっかりはなぁ…。
 誰かに見られたら、騒ぎになるのが目に見えてる。
 即ギア認定されるかどうかは分からんけど…この世界、変人が多そうだし…ヤバい情報は極力隠しておくべきだ。
 メチャクチャ硬いから切り取る事もできそうにないし。

 確かゲームの中じゃ、ディズィーの後ろに居るネクロとウンディーネは姿を消したり表したりしてた。
 姿を消してるのは、単に小型化してるだけかもしれないけど、それと同じように角を小さくできないかと試してみたんだが…ウンともスンとも言わない。
 これも、ある程度育てばそういう機能が使えるようになるのかもしれんけど、いつになるやら。
 
 まぁ、別に引き籠ってるのは苦にならない。
 元々インドア派だ。
 ただ、ディズィーが俺と一緒じゃないと外に行かないって駄々捏ねてるんだよなぁ。
 兄貴としては嬉しいっちゃ嬉しいんだが。

 ディズィーは、俺がどうして外に行っちゃいけないのか理解できてない。
 いくら賢いって言っても、お爺さんお婆さん以外の人間は知らないしなぁ。
 俺に角が生えてるのも、不思議には思っていないみたいだし。
 時々自分の額に手をやってるのは…ひょっとして、自分も角が生えてくるのを待ってるんだろうか?
 …ああ、でもお気に入りではあるらしい。
 俺が寝てる時とか、角を触ってくる事がある。
 ナデナデしてくるんで、されるがままになってるんだが…何と言うか、その、困る。
 この角、意外と敏感だった。
 角その物の触覚の他に、今まで無かった体の一部っていうのもあるんだろう。
 要するに、俺が過剰に反応してるって事。
 で、何がそんなに困るってなぁ…先端が尖ってるのは、まぁいいとしよう。
 ディズィーも最初にちょっと触ってチクッと来たらしくて、それ以来先っちょには触ろうとしない。
 それ以外の所を触ってくる訳だが…なんつーか、その、この角な………額にアレが生えたような感じがするんだよ。
 ぶっちゃけ、男のシンボルが。
 …おい其処、笑うなよマジな話なんだ。

 常時勃った状態のナニが、頭の天辺から生えてるんだぞ?
 あくまでイメージだ、実際に生えてるのは角だ。
 むしろ野性のシンボル…野郎のナニだってデカくなってりゃ野性のシンボルだな、墓穴掘ったわ。
 とにかくそんな感じのナニを、ディズィーの柔らかい手が優しく撫でてくるんだぞ?
 これ拷問?
 ご褒美?
 とりあえず、長時間続けられると何か妙な感覚に目覚めてしまいそうなので、ちょっとだけ堪能したらすぐに起きて止めさせるようにしている。
 ちょっとだけ堪能する時点でダメダメだって?
 全くさせないと、ディズィーが物欲しげな目でこっち見つめてくるんだよ…どうやって逆らえと。


 あー、とにかくだ。
 今の俺は、この角のおかげで大変美味しい目にあったり、逆に行動が制限されてどうしようもない訳だ。
 何れ来る森での生活に備えて、サバイバル技術くらい身につけておきたいんだが…幸いお爺さんが元猟師なので、先生には事欠かない。
 人が寝静まった夜中に教えてもらうしかないのかねぇ…。




 そんな感じで、数日過ぎた。
 んで、見事に失念してた訳だが…お爺さんもお婆さんも、この土地に根付いて長い。
 つまり、それなりに人付き合いってものがある訳だ。
 …うん、ぶっちゃけね。


「トマス爺さん、久々に一杯どうじゃね」

「い、いや今日はちょっと…」

「またかね?
 最近いつもじゃないかね。
 何かイヤな事でもあったんじゃないかと、心配しとるんじゃがね」


 …家に客が来るって可能性を、スポーンと忘れてた訳よ。
 しかもこの来客、既に一杯やってるらしくてお爺さんが遠慮しても帰らない。
 いや、西洋だとこれくらいが普通なのか?
 キッパリ言わないお爺さんが悪いのか?

 マテマテ、問題はそこじゃない。
 このままだと、確実にお爺さんは押し切られる。
 お婆さんはどっか出かけたままだし、応援は頼めない。
 ディズィーは初めて見る人に興味津津で、今にも俺の手を掴んだまま飛び出していきそうだ。
 ぬぅ、イメージよりアグレッシヴだ…いやそうでもないかな、バトルとかするし。
 とにかく、この場を誤魔化さないとどうにもならない。
 いや、今回隠れてやり過ごしたとしても、同じ問題は必ず遠からずやってくる。
 ならば、ならばこの追いつめられた極限状態で、何らかの根本的解決方法を見出すのみッ!

 覚悟を決めた途端、意識や思考がクリアになる。
 これもギア的な何かの恩恵だろうか?
 走馬灯もかくや、と言わんばかりのスピードで、俺は人生を振り返る。
 こういう時に何か有効な手立てはないだろうか。
 …隠れる、ノー。
 …ディズィーしか居ないと見せかける、ノン。
 …客人を気絶させて追い返す、却下。
 …空気になる、エアーマンは嫌だ。
 …角はアクセサリだと言い張る、無理………いや待て、これだ!

 俺はディズィーを引っ張って、隣の部屋に向かった。
 ディズィーは首を傾げていたが、素直についてきてくれる。


「ん~?
 誰かいるんかね?」

「い、いやそれはそのな…」


 お爺さんが慌てる声を聞き流しながら、俺は部屋の中にある目当てのモノを探す。
 確かクローゼットの中に…………あった!
 そんでもって、これをこうして…よっと………鏡!
 よし、バッチリ!

 ディズィーは俺を見て首を傾げている…こら、角を触らないの。
 俺はディズィーを伴って、慌てているお爺さんの所に顔を出した。


「お爺さーん、これ見てー」

「あ、ナッ…シュ?」

「これ、貰っていい?」


 俺達が出てきて慌てたお爺さん。
 振り返って見たのは、俺の角…と、ヘアバンド。
 俺の角は、ヘアバンドのド真ん中を突き破って飛びだしている。
 分かりやすく言えば、モンハンのキリン装備が付けてるアレと同じだ。
 勿論、俺の角は俺自身から直に生えてる訳だが、そんなの普通は考えない。
 一見すると、『角が付いたヘアバンドを被って喜んでいる子供』以外の何物でもない訳だ。
 まぁ、年季の入った猟師さんなら、『あの角、どんな動物の角だ…?』くらいの疑問は持つかもしれないが。


「お……おーおーおー。
 トマス爺さん、こりゃ一体何処のお子さんだね。
 何とも可愛らしい子じゃないかね。
 兄妹かね?」

「あ…あぁ…ちょっと前にな、森に居たのを拾ったんだ。
 最近はこの子達につきっきりだったんでねぇ」

「森に…捨て子かね。
 嘆かわしいねぇ…」


 …よっしゃ、ミッションコンプリート!
 これで外にも遊びに行けるようになったぜ!




 そういう訳で、俺とディズィーは本格的にお爺さん(トマスさん)とお婆さん(ジャンヌさん)に拾われた子供として、村に受け入れられる事になった。
 お婆さんが買い出しから帰ってきた時、お客さんが居るのを見て慌てたのもいい思い出だ。
 俺がヘアバンド付けて誤魔化してるのを見て、「賢い子だねぇ」って頭を撫でてくれたよ。
 …いや、賢いの一言だけで済ませていいのかなって気はするけどさ、まぁギアだし。
 悪い事じゃないから、の一言で受け流すお婆さんの度量に完敗だ。
 マジで勝てる気がしない。
 きっと俺はお爺ちゃんっ子お婆ちゃんっ子になるんだろうな。
 別にいいけど。

 ああ、そーいやディズィーが同じようにヘアバンドを付けたそうにしてたんだが、角付きのヘアバンドなんか無いしな。
 ゲームだと、確か大きな黄色いリボン付けてたよな。
 髪型どんな風だったっけ、えーと思いだす思い出す思い出す…………何が違うモノが出てきた。
 これ某伝説級ギャルゲ(最近新しいのが出た)の初代に登場するポンデリングじゃん。
 改めて思い出す…うん、普通に後ろで束ねてるだけだな。
 プレゼントって事で、俺から送ってみようかな。




 さて、近況報告はこれくらいにしよう。
 まだ外に遊びに行ってないしね。
 明日から行くんだ。
 今日はお客さんの話を聞いてたら日が暮れてた。

 さぁこれから好例の(誤字に非ず)ディズィー自慢タイムだぜ!
 初っ端からデカいの行くぞ、なんと今回はお風呂である!
 勿論一緒に入っている。
 一緒にお爺さんかお婆さんが必ず入っているんだけど、どういう訳だかディズィーは俺に洗ってもらいたがる。
 お返しに洗ってくれるし、お爺さんお婆さんの背中はディズィーが洗う事が多い。
 なのに、何故か『誰に洗ってほしいか』って聞いたら必ず俺。
 うーむ…何故だ、嬉しいが何故だ。
 兄妹だし、懐かれているという自覚はあるんだが…これってひょっとして刷り込みか?
 うむ……ディズィーはヒヨコみたいだな。
 想像したら可愛いかったから許す。
 ああ、ついでに言っておくけど、湯船は無い。
 あれは本当に日本特有の文化だったんだな…。
 中国辺りならやってるかもしれんが。

 で、重要な報告が一つ。
 ディズィーの背中をゴシゴシやってる時に気が付いたんだけど…シッポ、小さいのが生えてた。
 あと背中に、本当に小さな突起みたいなのが2つあった。
 プニプニした肌を洗ってる時に、何か引っ掛かったかな?って感じがしたんで見つけられたんだ。
 で、ひょっとしたらと思ってディズィーのお尻(ウホッ!)をちょっと見たら…案の定。
 シッポはともかくとして、背中のは………ネクロとウンディーネの元?
 本当に小さい、まだ緑色でも水色でもないし、触っただけでは「あれ、肩甲骨ってこんなトコにあったっけ?」ぐらいにしか思わないだろう。
 俺だって、ディズィーの背中の二人の知識がなければ気付かなかった。

 取りあえず、撫でておく事にする。
 尻尾を、じゃないよ?
 それはいくらなんでもまだ早い。
 もっと尻尾が長くならんと、冗談抜きで俺は『子供ボディを利用して妹幼女の尻を堪能する漢』になってしまうではないか。
 あいにく俺は、良くも悪くもそこまで剛の者じゃない。
 撫でるのはディズィー本人と、ネクロとウンディーネ(仮)だ。
 どっちがどっちだったか覚えてないが、とにかくあの二人は独立した人格を持っていた筈。
 寄生型とか何とか言ってたが…。
 んで、今はこんな小さいっつーか…ディズィーと同じで幼児か赤ん坊みたいな状態だと思う。
 そんな時に発見したら、何をする?
 決まってるじゃないか、刷り込みだ!
 懐柔だ!
 手懐けるんだ!
 だってウンディーネはともかく、ネクロはヤバいだろネクロは。
 日常での性格は知らんけど、戦闘時には冗談抜きで凶暴みたいだし、一緒に生活するなら最低限俺に攻撃しないように躾けとかんと。
 ペット扱いしているようで罪悪感が無いでもないが、普通の子供に対する躾けだと割り切ろう。
 ヘタに突くと何が飛び出してくるか分からんから、こうやって優しくナデナデして、俺を父or母的な存在だと教え込んでおくのだ!
 そして将来、暴れ出しても頭を撫でればアラ不思議、あっという間に大人しく…なったらいいな、なるといいな…。
 ………そういや、シッポにも口があったな…ひょっとしてアレも寄生型ギア?
 それにシッポにも黄色のリボンを巻いてたっけ…あれシッポがデカくなった時どうなってるんだろう。


 しかしまー、アレだ。
 こうしてリアルディズィーの相手してると、保護欲とかが先に立つんだが…将来の事を考えると、なぁ。
 俺もあのボンテージと見紛うようなコスチュームに妄想を掻き立てられ、同人誌とかで展開されるような妄想を何度も脳内再生したヤリたい盛りの中高生だった一人だ。
 この子があんな格好すると思うと…漲ってくると同時に、言い知れない憤怒が。
 誰が大事な妹の肌を見ず知らずの賞金首その他相手に晒すかっつーの。
 なぁいすばぁでぃに育ってたしなぁ。
 …つーか、まず何よりも先に、俺がディズィーに向けてそういう感情を持つんじゃないかと心配になってくる。
 今?
 今は平気だよ、まだツルペタだし…俺はそっち方面には萌えはしても欲情はせん。
 そもそも年齢が年齢だから勃たないしな。
 将来、そういう関係になる可能性は………未知数だな。
 つーか、ディズィーってそういう知識持ってたのか?
 多分持ってないよな。
 ファウストの覚醒必殺技食らったときも、「これは何?」とかそんな事言って特別な拒否感は無かったみたいだし…イカン、ちょっと怒りとか漲ってきた。
 落ち着け、実際にファウストがやると決まった訳じゃない。
 ……じゃあ、どうすんだ?
 一般教養、教えなきゃいかんよな?
 この村に居る頃は、お爺さんお婆さんと、外に遊びに行けるようになったからその辺から適当に学んでくるだろうが…社会に出しても心配がない程の常識を身につけるには、圧倒的に時間が足りない。
 だって長くて3年だぜ?
 いくら頭がいいからって、経験だけはどうにもならんよ。
 その3年の間に、性的な知識やら羞恥心やらを覚えるかってーとなぁ…年頃になれば男だろうが女だろうが、勝手にその辺から覚えてくるもんだけど、その年頃になった時にはもう森の中。
 教科書だってありゃしない。
 ……………俺?
 ……………俺が教えんの?
 ……イカン、妄想が滾ってくる。
 今は性的な衝動は左程強くないけど、俺も同じくらいに育ってヤリたい盛りになったら、欲望抑えられるだろうか…。
 幾ら相手が大事なディズィーだっつーても、二人きりでずーっと…いつかはテスタメント来てくれるだろうけど、それまで二人で森の中よ?
 性欲以外にも色々とストレス溜まるでしょ。
 ……忘れよ、今から考えても仕方ないわ。
 まだ2年以上先なんだし、ゆっくり考えりゃいいわ。
 

 とにかく、妹の将来がフェイトっぽくなるんじゃないかと嬉し恥ずかしなお兄さんとしては、だ。
 ウチの妹は嫁にやらねー、むしろ俺が貰いたい!って感じになる訳だよ。
 下卑た下心が全く無いとは言わない、できるなら美人で気立てがいい嫁さんが欲しい。
 勿論、ディズィーに好きな人が出来たら、血の涙を流しながら応援して、『妹さんを僕に下さい!』『誰がキサマの義兄かガンマレイ!』するけどさ。
 そーいやGGXXのストーリーモードで、CPUディズィーしか使えないチート技があったっけ。
 一回だけ見た事あったけど、あれなんて名前だろ?
 是非とも覚えたいんですが今後の身の守りの為に。



「なっしゅー、もっとぉ」

「ん?
 ああ、ハイハイ」


 …今の聞いた?
 今の聞きました奥さん、『もっとぉ』ですってよ?
 しかも裸で肩越しに振り返って甘えた声ですよ?
 …鼻血吹いたよ、吹いて気付かれないようにすぐ止めたよ、ありがとうギアの自己再生能力。

 えー、現在ディズィーとお風呂です。
 シャワーです。
 背中の流しっこしてます。
 いつものようにネクロ&ウンディーネをナデナデしてたら、それがディズィーにとっても気持いいらしい。
 服越しじゃなくて直にだから尚更。
 お風呂に入ると毎回せがまれる。
 これはお爺さんやお婆さんにもせがんでいる…うん、懐柔計画が上手くいくと仮定したら、お爺さん達にもやっておいてもらった方がいい。
 ある程度大きくなってネクロが出てきたら、「なんだこの人間、馴れなれしい」とか言ってブッ飛ばさないように。
 まぁ、そーいう描写なかったから大丈夫だと思うけど。

 そんでね?
 ディズィーの背中が柔らかくて撫でてる側も気持いいっていうのは、わざわざ書くまでもなく各々想像してくれてるだろうから省く…省けなかった。
 あー、とにかくだ、前にディズィーが俺の真似をしたがるって言ったの、覚えてる?
 ハイハイできるようになった頃からの事だから、ディズィーは意識してるか微妙だけどね。

 ディズィーは俺の真似をしたがる⇒俺はディズィーの背中を撫でている⇒俺の真似をする⇒……言わずもがな。


「こうたいー」

「…はいはい」


 つまりは、そういう事だ。
 俺の背中を流してくれる。
 ああ、シャンプーはまださせてない。
 シャンプーハット無いし。
 
 で、勿論…ディズィーも俺の背中を撫でてくれるんだよ!
 なんつーか、気持いいって言うよりは……安らぐっていうのかな。
 俺がまだ憑依前の子供だった頃を思い出すと言うか…多分、幼稚園に入る前の頃は俺も風呂場で親に撫でられたりしてたんだろうなぁ。
 思いだそうと思えばチートボディのおかげで思い出せない事もないんだが、そんな事言ってる場合じゃないので脇にどけておく。


「なでなで…きもちいー?」

「気持ちいいよ~。
 あ、ちょっとこっちがわ(右手を上げる)」

「はーい」


 手付きが柔らかいなーとか、ゆっくり撫でてるから微妙にくすぐったいとか、其処ら辺丸一日かけて語ってやりたい所だが、実を言うと一番重要な部分はこれではない。
 ああ、ついでに言っておくと、今回は無いみたいだけど…ディズィーは俺の角を洗おうとする事もある。
 勿論、自分の手で。
 石鹸塗れの手で。
 そして俺の角は、男のシンボル並みに敏感な訳で………なぁ?
 言葉にしなくても分かるだろ?
 この歳で精通したらどうしようって本気で不安になったぞ。
 精通したって別に問題は無いが、それが妹幼女の手によってってのは…。

 繰り返し言うが、これは「ついで」だ。
 一番重要な部分は…この、次だ。


「えへへ…」


 ピトッ


 と背中に何かが張り付いてくんのよ。
 何かなんてこの場にディズィー以外に居ない訳ですが。
 でもって、俺の胸の前に、俺のじゃない腕が回されている訳だ。
 …はっきり言おう。

 後 ろ か ら 、 抱 き つ か れ て い る の だ よ !

 俺に!
 この俺にどうしろと!
 何か天元突破できるくらいのパトスを感じるんですが、欲望的な意味ではなく悟り的な意味で!
 しかも頭をグリグリ動かして、やーらかい手が俺の胸も、何せ体洗ってる途中だから石鹸で泡々になっててそれどんなローションプレイ……おいコレ性的な意味ないよな、無いよな無いと言ってくれでもあったらちょっと嬉しいな!
 なんか別の意味でも…というかそーいう意味でも気持ち良くなってくるんですけどもッ!
 …この時ほど、俺のナニが反応しない事に感謝する場面は無い。

 断固として主張しておくが、コレを教えたのは俺じゃない。
 背中の流しっこは一緒に入ってるお爺さんが言いだした事だし、背中を撫でたのは俺の自発的な行動だとしてもそれを真似たのはディズィーの意思だ。
 石鹸を使うのは風呂に入っている以上当然の事だ。
 …抱きつくようになったのは、ディズィーのオリジナルだ。
 ひょっとしたらお爺さんお婆さんの入れ知恵くらいはあるかもしれんが、少なくとも俺は関与してない。


 んで、こっから更に最後のトドメが来る。
 俺が抱きつかれたままじっとしてると、ディズィーがムズムズ動き出す。
 これがまたくすぐったい。
 くすぐったいし禁断の道に踏み込みそうな感じで気持いいから止めさせたいんだが、止めさせようとすると当然ディズィーに対してリアクションが必要になる。
 例えば、強引に腕を解くとか………泣きそうになるから却下。
 例えば、声をかけるとか………ディズィーは意外と欲求に素直で、話だけじゃ離してくれない。
 唯一、ディズィーを泣かせたりせずに、このムズムズした動きを止める方法は。


「ディズィー」

「…ん」


 わかったよ、って感情を籠めてディズィーに声をかけると、素直に腕を離してくれる。
 ここで逃げちゃダメかな、といつも思うんだが…俺が欲望に負けてしまうというダメダメさ加減だ…いや、逃げたいと言う欲望の方じゃなくてね。

 俺はくるりと回って、ディズィーに正面から向き合った。
 お互いの体に石鹸の泡が残ってて、何とも背徳的……こんな感情持つからイカンのじゃないか…。
 俺の懊悩を余所に、ディズィーは満面の笑みで笑っている。
 いつもなら微笑ましく神々しいまでのオーラを感じられるその笑みが、今は痛い。
 でもこーゆー痛さならドMと呼ばれても受けたい気がしてくるから不思議だ。

 色々と転げ回りたい気持ちを抑えて、両腕を左右に広げると、ディズィーが遠慮も躊躇いもなく突っ込んでくる。
 …もう言わなくても分かるな?


 正 面 か ら 抱 き 合 っ て る ん だ よ ! !



 勿論泡だらけで。
 自覚もないのにエロい子だ。
 んで、その状態から背中とか頭とか撫でてくれって話なんだよ。
 その間、ディズィーは俺の首筋に顔を埋めてて…その内キスマークでも付けられる気がして怖い。
 性的知識を教えていいのか、本気で疑問に思えてくる。
 自重するようになるだけならまだしも、逆に積極的になったり、「恥じらい」を覚えて尚も添い寝とか一緒に風呂とかの欲求に勝てなかった日には、冗談抜きで近親相姦の危険が出るぞ。
 それ以上に危険なのが、萌え血による出血多量死の危険だが…ギアでも多分生き残れない勢いの出血になりそうだ。
 と言うか、俺のディズィー成長記録(脳内)とは別に新しいスレッド(性長記録)を立てないといけなくなる、年齢制限付きの奴を。
 今?
 今は別にないでしょ、行動が泡の国みたいだっつーても、やってるの2歳児同士よ?
 これはあくまで洗いっこ。
 ディズィーは単にスキンシップが好きなだけ。
 なのに年齢制限指定されるんなら、日本の子供はオチオチ風呂にも入れんよ。
 つまりこれは合法、少なくとも俺の場合は合法!
 大事な事なので2度言いました、同時に犯罪を犯すような事はするなと自分に言い聞かせております。
 これがR指定に見えるような輩は心が穢れているね、つまり俺の同類だよ一緒に落ちようぜでもウチのディズィーに手は出させん!
 そーいや、ディズィーって結局カイとくっつくんだっけ?
 二次創作からの知識しかないから、情報の精度はイマイチだけども。
 ぬぅぅ、やらせん、やらはせんぞぉぉぉ!
 ディズィーは嫁なんかにやらないからな!
 むしろ俺が嫁に取る!
 マシンガンでガ○ダムに挑むような無謀を犯してでも、やらせはせん!
 応援するとか言っといて何だが、こーいう事を他人にさせると思うと俺は、俺はぁぁぁぁぁ!(こーいうプレイをカイがするかは別として)



「おうおう、仲がいいねぇ。
 次はお爺ちゃんも洗ってくれんかのー」

「りょーかい。
 ほらディズィー、次はお爺ちゃんだよ」

「はーい♪」


 二人揃って、やせ細った背中をゴシゴシ。
 「うんしょ、うんしょ」の声に合わせて、俺もディズィーに追随するように動く。
 いやぁ、なんつーか背中が小さいのに大きいわ。
 物理的相対的にそう見えるって意味じゃなくて、積み重ねてきた年月が垣間見える。
 猟師だっただけあって、鍛えられて引き締まってた体の片鱗が所々に垣間見える。
 傷跡もあった…ってかこのデカい爪跡は熊か何かか?
 まさかギアじゃないよな…ギアだったらお爺さん生きてないよな。
 元は聖騎士団だった訳でもないみたいだし。
 あ、でももしそうだったら、カイとかに繋がりが作れたかも。

 こらディズィー、気になるのは分かるけど触っちゃいけません…お爺さん気にしてないみたいだから、別にいいか。
 にしてもスゲェなこの傷跡…実はお爺さん、猟師じゃなくて格闘家で熊殺しに挑んだとかいう逸話があるんじゃなかろうか。


「ん、おお?
 コイツが気になるかの?
 そうじゃなあ、あれはもう30年は前になる話じゃったか…」


 あらら、お爺さん語り始めちゃったよ。
 こうなると長いんだよなー、俺は聞いてるフリだけど、ディズィーが本当に楽しそうに聞くもんだから、お爺さんも話すのが楽しいらしい。
 ちなみに俺は聞いてるフリをするだけじゃなくて、横目でディズィーの表情を堪能している。
 楽しい話は目を輝かせて、ちょっと悲しい話は涙目に、知らない言葉が出てくるとほんの少しだけ首を傾げて…毎回毎回違う表情を見せてくれる。
 ま、流石に血生臭いところとか、強い痛みや恐怖を連想させる部分はボヤかして話してるけどな。
 今のディズィーにはまだ早いだろ。

 …ん、でもこれはチャンスかな?
 俺もお爺さんの話を聞いて、サバイバルに興味を持ったって事にすれば…。
 よし、ディズィーが寝静まった頃に頼んでみよう。
 …抱き枕状態から脱出する方法考えておかないと。
 よく考えたら、トイレに行きたくなったら地獄だしな。






 あー、トイレで思い出したが、蛇足ながらもう一つ。
 俺と同じ事をやった経験がある人がどれくらいいるのかは知らんけど、幼児の頃にはお風呂場で小用を済ませた経験は無かったかね?
 俺はある…当然もう止めてるって。
 で、今は……ディズィーがやりそうになったらちゃんと止めているからな!
 
 さて、今日はこれくらいでお開きだ。
 他にも色々試してみたり考察してみたりした事もあるんだが、それはまた別の機会に語るとしよう。
 勿論、ディズィー自慢のついでにね。




 徐々にエロくしていけたらと言いつつ、一気に下ネタに走った自覚はある。
 だが修正しない。
 自重しない。
 加速させちゃる!
 



[17288] 03
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 ID:bc760c40
Date: 2010/03/18 22:55

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 最近は家の物置を漁ったり、瞑想をしたり、お爺さんからサバイバル技能を習ったりして過ごしています。
 え、外に行けるようになったんだから近所の子供と遊ばないのかって?
 んー、まぁそういうのも考えた、と言うか実際遊んでたんだけどねぇ…。
 精神レベルも違えば、育った文化も違うから考え方が合わないの何のって。
 それだけだったらちゃんと合わせるよ?
 ジャパニーズの協調性を舐めるな…イカン、この世界のジャパニーズって梅喧とか闇慈とかだ。
 協調性に説得力がねぇ…メイは集団行動できてるけど。
 あー、問題だったのは身体能力の方だ。
 毎度毎度思うが、ギアの能力ハンパじゃねぇ。
 一般人が相手なら、普通にチートで通る。
 鬼ごっこすれば俺のスピードについて来れる奴はいないし、隠れんぼすれば何処に居てもセンサーっぽい何かでピン来るし、微妙な力加減が必要な遊びでも脳内コンピュータ(?)が最適な力を割り出すし。
 …無双してると思われるだろうけどさ………これって遊びだよ?
 同じレベル同じ土俵で、なおかつ全力でやるから面白いんじゃん。
 幼稚園児の中に一人だけ高校生が混じって遊んで、「フハハ俺最強!」なんてやってたら痛い以前に白けるじゃん。
 「なっしゅくんとあそんでも、つまんない」って言われて仲間外れにされちゃうよ。
 そーいう意味じゃ、今の俺は集団行動できてない。
 ディズィーはそういうレベルの差とかは、あんまり感じてないみたいなんだけどなぁ。




 さて、近況報告。
 折角外に遊びに行けるようになったのに何だけど、上記のような理由で子供達からは一歩引いた立ち位置にいます。
 ディズィーは特に何も考えずに、子供達に混じってキャッキャウフフしている…訂正、こんな恋人間で使うような表現されて堪るか。
 友達が出来て嬉しいんだろう。
 無邪気に跳ね回っている。
 時々足を止めて、俺に向かって手を振る。
 俺も手を振り返してやると、安心したように笑ってまた跳ね回る。
 時々飛びついてくる事もある。
 
「…………(パタパタ)」

「………(手を振り返す)」


 ニパッ

 DASH!


 ほら飛びついて来た!
 ぬぅぅ、俺から飛びついて行きたくなる衝動を抑えているっていうのに、ディズィーったらもうヤンチャさん!
 って、俺が座ってるの安定の悪い岩の上だよ!
 えぇい、ディズィーに怪我だけはさせん!

 ドン!
  ドサッ

 おうおうディズィー、重く…もとい成長したねぇ。
 まだ2~3歳ボディのままだけど、走るスピードが最近上がってきている。
 外で跳ね回ってる内に、体を動かすのに馴れてきているのかもしれない。


「なっしゅ、ごめん、だいじょうぶ?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。
 ディズィーは平気だった?」

「うん!」


 自分のせいで俺が倒れたって理解してるからか、抱きついたままUWAMEDUKAIで聞いてくる。
 ちょっと不安を宿した目が、満面の笑みに変わるのは何度見ても嬉しい。
 そんで次に来るのが。


「あー、でぃーちゃん、なっちゃんにだきついてるー!」

「かれしとかのじょだー」

「ごけっこんはいつごろになりますか?」

「………?
 けっこんって、なに?」


 ボーズ達の冷やかしである。
 マセガキども。

 も っ と 煽 っ て く れ ! 

 きっといつかはこーいう、だっこも出来なくなっちゃうんだろうなぁ…。
 なら今の内に堪能しておかないと勿体ないじゃないか。

 ディズィーことでぃーちゃんは、何で騒がれているのかサッパリ理解していない。
 まぁ、俺達の間でのスキンシップって抱きつきからナデナデまで当たり前だからな。
 世間一般がどうなってるかなんて、理解してないんだろう。
 ついでに言うと、結婚という言葉もあまり理解できてない。
 俺と結婚するって言ってくれんかな…精神年齢からしたらディズィーは娘みたいなものでもあるんだし、「おとーさんと結婚する!」っていうのは一度は言われてみたいセリフだね。
 …ディズィーに劣情を持つか本気で心配している俺が言われて大丈夫か、とは思うけどさ。
 …そーいや、近所でもうすぐ結婚式があるんだっけな。
 冷やかしてるボーズの一人、カミチの姉さんだったか…いやイミナの姉だっけ?
 まぁいいや、興味はあるけど出ようとは思わん。


「ほらディズィー、缶ケリの途中だろ。
 皆出てきてるぞ、チャンスだぞ」

「あっ!」


 寝転んだ状態から急いで立ち上がって、空き缶に向けてダッシュするディズィー。
 DASHじゃないのがポイントだ。
 俺に向かってくる時しか、あのスピードは出ない…だって危ないからな。
 わーっと缶に向かっていく子供達。
 あー、ありゃ間に合わんな。
 
 案の定、カーンと高い音と共に空き缶が宙を舞い、ディズィーが悲鳴を上げた。
 ま、ガンバレ女の子。

 ………森に出るまで3年。
 そうでなくても、体の異常な成長が話題になるまで…精々1年程度か?
 この子達、いつまで気味悪がらずに遊んでくれるかな…。
 その時の事を想像して、ちょっと鬱になった。
 ディズィーを見て癒されよう。



 こんな風に一歩引いたところから生温かい熱視線を送っている俺だが、別にボーズ達との仲が悪いわけじゃない…と思う。
 人付き合いはあんまり得意じゃない方だけど、このくらいの年齢だったら内心を隠すのもそんなに上手くないし、考えてる事を読み取るのは容易い。
 どっちかと言うとディズィーのオマケみたいに思われてるかもしれないが、グリコだったらお菓子よりもオマケの方に価値があるのは古来から変わらない法則だ。
 子供がコケて血が出た時とか、何か壊してしまった時とか、大人の対応で潜り抜けたのだ。
 2歳児がちゃんと頭を下げたら、大抵の人は許してくれる………こういう時、自分が汚れているって実感するよ…。
 普段は一緒にいないけど、何かあったら頼りになる的な立ち位置…に居ると思う。
 自意識過剰かもしれんが。
 ん、怪我の治療法?
 お爺さんにサバイバル技能を教えてほしいって言ったら、真っ先に教えてくれたよ。
 足をすりむいた程度だったけど、いい練習台になった。

 ケンカの仲裁もやったが、これはどっちかと言うとディズィーのおかげだな。
 二人分のポカポカパンチを受けても、俺は全然痛くないんだが…どうやって止めようかと考えてる内に、ディズィーが泣きだしてしまった。
 おかげでケンカは取りやめになって、俺はディズィーをあやすのに全力を注ぐ羽目になる。
 以来、子供達の間ではディズィーの前でケンカは御法度となった。
 思いっきり泣くから手に負えないらしい。
 俺としても、ディズィーが泣いた原因の子供達を反省の儀とかにかけるのは多少気が引ける。
 マジで傷つけて泣かせるなら、問答無用だが。
 反省の偽?
 あれだ、簀巻きにして何処かの大木から半日ほど吊るす。
 大抵はそれで反省するけど、反省してなかったら下に焚火を燃やして、本人をよく回した上でまた吊るす。
 煙とか熱とか回転で半死半生になるから、半生の儀こと反省の儀だ。
 …相手が弱いからこそ言える妄言だね、実行はしないよ…人里の守護者ばりの頭突き程度に治めるさ…角が刺さるかも知れんが。




 さて、近況報告はこれくらいにして、本題。
 つまりディズィー自慢の時間だよテンションが上がるねヒャハハハハヒィーハァー!
 今日は夜の時間の自慢だ!
 夜っつーても、18禁な展開はないよ?
 晩飯食ってから寝て起きるまでの事な。
 ああ、お風呂については前回と同じになってしまうので割愛する。
 つまりは今日も悶々とした感情を抱えてディズィーと洗いっこしていた訳だが。
 ちなみに今日の晩飯はカレーだった。
 明日の朝飯と昼飯は残ったカレーになるね。
 …ただ、いいニンニクが手に入ったって言うんで、ふんだんにニンニクスパイスが。
 それを堪能した俺もディズィーもお爺さんもお婆さんも、見事に息がニンニクスメルになってしまった。
 それに加えて、カレーの匂いにもニンニク臭が籠っていて、もう家の中がニンニクニンニク…。
 ここに直下型ダンディーな亜種の人が居たら辞世の句を吐いて何処かへ旅立ちそうな勢いだ。

 だが侮るなッ!
 ディズィーもお手伝いして作ったこのカレー、食べないなどという選択肢があると思うてか!
 明日中には全て食いつくす事になるだろう。
 鍋の底に張り付いたカレーの一滴まで、それこそ妖怪アカナメよろしくベロベロしてでも食いつくしてくれる!

 ま、それはそれとして。
 晩飯が終わったら、俺とディズィーは遊ぶ時間だ。
 後片付けの手伝いくらいはしたいと思ってるんだけど、何せ背丈が足りないから洗い場に皿を持っていくのもできやしない。
 作る時には、皮?きの手伝いくらいはできるんだが…ああ、刃物はまだ使わせてもらってないよ。
 流石に危ないって。
 お爺さんが晩酌してて、お婆さんが洗い物をしているのを見ながら、俺とディズィーは自分でも良く分からない遊びをしている。
 俺とディズィーのどっちかが動いたら、それに反応してもう一方が動いて、飛びかかったり足をバタバタさせたり…まぁ、有体に言えばジャレている訳だ。
 特にルールも無いし勝ち負けも無い。
 後になって思うと何が楽しいのかって気はするが、遊びなんてそんなモンか。

 ドタバタ騒いでいるのを生温かい目で眺めているお爺さん。
 その酒ちょっとください。
 …呑ませてほしいって言ってみた事がある。
 鼻で笑われた。
 なんかいつもの温厚なお爺さんっぽくない反応だと思ったら、「いいかナッシュ、酒ってのはな…」と何かハードボイルドな語りに入ってしまった。
 西部劇に出てくるオッサンみたいな渋さを醸し出してたから思わず聞きいってしまったが、どーも既に酔っ払ってたらしい。
 結局「酒の味が分かるようになってから言え」なんて言われてしまったが…酒飲まないと味なんて分からないじゃん。
 いや、憑依前では酒の味くらい知ってたけどさ…善し悪しが分かるかって言われると自信がないね。


 なんて物思いに耽っていると。
 ディズィーに押し倒されてマウントポジションを取られてしまったよ。

 キャーディズィーサンダイターン。

 そのままボコ殴り…なんて事は無くて、単に自分が上に乗っているのが楽しいらしい。
 まー分からんでもない、人間誰だって他人より自分が上に居たいと思う。
 高いし、自分が上だっていうのは優越感を刺激するしね…ディズィーがそこまで考えてるとは思えんが。。
 とはいえ、下に居るのも存外悪くはないものだ。
 上に行けば行くほど責任も大きくなるし、下という土台が無いなら上は存在しない。
 そんな社会的比喩的な話じゃなくても、ディズィーの体重が腹にかかる感触は案外悪くない…まだ尻肉は薄いが。
 幼女に押し倒されるって、その筋の人には御褒美だよな…俺は違うぞ?
 俺は幼女が好きなんじゃなくて、こうやってジャレてる我が妹が好きなだけだ。
 妹萌えもロリの素質が多分にあるのは認めるけど。

 だが!
 だがしかしッ!
 これでも男児としての意地は、兄としての矜持は蟻の触覚ほどには持っている!
 妹に組み敷かれてそのままなぞ、断じて受け入れる事はできん!
 下剋上してくれる!
 …あれ、下剋上って下の者が上の者に対してやるんだよな………俺、自分で妹幼女より立場が下だって認めなかった?
 ………まぁいいや、勝てばよかろうなのだ!

 と言う訳で、反撃!
 押し倒されてた上半身を起こして、グイッとディズィーに顔を近づける。
 普通の人はこれをやると、反射的に顔面を護ろうとして体を後ろにずらそうとする。
 …のだが、流石は我が妹、全然平気だった。
 マジでKISSする2センチ前だっつーのに、「なになに?」みたいな無邪気な顔で俺を真っすぐ見つめ返している。

 ……………そのまま10秒。

 先に目を逸らしたのは俺でした。
 その穢れない瞳で俺を見ないで……なんか心っつーか心臓の辺りがドキドキしたり良心が痛んだりするから。
 下剋上、失敗。

 だが俺はあきらめない。
 顔は逸らしたが、遊びはまだ続いているのだ。
 ゴロンとディズィーごと転がって、一回転して縺れ合う。
 ディズィーはキャッキャとはしゃいでいたのが、妙に真剣な顔つきになって再び俺の上に乗ろうとする。
 遊びであっても負けるのはイヤってか?
 だがそれは俺も同じだ!
 敢えてディズィーを押し倒さずに、俺ごと倒れた体勢になったのは五分の状態から勝利する為!
 ここから今度は俺がディズィーをマウントポジションで抑えるのさ!
 ………いや、下剋上云々は建前で、実はディズィーを押し倒したかったっていう下心はちょっとしか無いよ?



 うん、下心はちょっとしかなかった。
 でも事態はその下心の更に上を行った、下な心の上を行くってそれあんまり高く無い気がするけど。
 ちょっと考えればすぐ分かる事だったけどさ、お互い上になろうとするんなら、二人揃ってジタバタする訳だ。
 子猫がジャレ合うみたいに、ひっくり返ったり抑え込んだり、上から体重かけられて抜け出そうとしたり。

 …途中から意識が途切れてるんだが。
 遊んでる最中に、ディズィーの肘とか頭がイイ所に入ったからなー。
 痛いって感情は、兄の矜持にかけて見せなかったけど。
 結局、勝負はノーゲーム。
 風呂の時間になっちゃった。
 2歳児相手に下剋上できないってどれだけ情けない、と思うかもしれないが、肉体的には俺も2歳なんだよ。
 精神年齢と言うか知識や経験が多い分、効率的な抑え込み方や逃げ方は分かるよ。

 でも、それ以上に大きなハンデが俺にはある。
 何と言っても角。
 これは普通に危ない。
 ゴロゴロ転がっている時でも、ヘタをするとディズィーに刺さるかもしれないし、家に傷を付けないように気を付けてるんだ。
 これのおかげで、動きが大分制限される。
 オマケに掴みやすい…先端が危ないだけで、棒の形してるもんな。
 で、これ前にも言ったけど、敏感なのよ…額からナニが生えてるみたいに。
 そんなモン掴まれて抵抗できるか?
 なぁ、男子諸君、君達はナニを…誰に掴まれるのかはこの際置いとくとして、ギュッと急所を掴まれて抵抗できるか?
 タマじゃないから出来る、なんて言わないよな?
 タマが無いから出来る、何て言う男子諸君、どうして君達は男なのにゴールデンボールが無いのかね…いやスマン、失うまでにも失ってからも色々あったんだな、無礼な事を聞いてすまなかった。

 それから、単純に力加減の問題だけど、ディズィーと違って迂闊に力を籠める事が出来ない。
 ディズィーもそうだけど、俺の体は半分とはいえギアなのだ。
 自分で思っているよりも、ずっと強い力が出せる。
 それこそ、ディズィーを挽肉に変えてしまえるんじゃないかって思うくらいの力が。
 勿論、ディズィーの体だって俺と遊べるくらいには頑丈だから、杞憂だっていうのは分かってるんだが…。
 何せほら、俺の精神は成人、ディズィーの見た目は子供。
 どうしても、大人と子供の力関係で考えてしまう。
 ちょっと力を入れると、ディズィーの体がボキッと折れてしまいそうで。
 だから抵抗する時にも、迂闊に力を振るえない。


 そして、何よりも強いハンデは。

 俺が。

  ディズィーを。

   大好きだって事だぁぁぁぁぁ!

 ディズィーがそうしたいなら、下剋上失敗してもいいかなって思う時点で…俺って負け犬根性染みついてんなぁ。
 と言うより、遊んでる最中にね、どうしても体が絡み合う訳よ。
 取っ組み合いしてるんだから当然だね。
 そうなるとアレだ、殆どツイスターゲームだ。
 手が足が肘が胸が足が頭が、複雑怪奇に絡み合ってスベスベしたりツルツルだったり何かポッチがあったりと、ドキドキな接触が山ほどある訳ですよ!
 しかもディズィーのですよディズィーの、そっちに意識が行ってもしかたないじゃアーリマセンカ!

 つーかさ、さっき途中で意識が途切れてるって言ったでしょ?
 無意識なのか意識的なのか知らんけど…いや本能だろうなぁアレは…、俺が邪心を持って動きが止まったところを、的確に急所に向けて肘とか飛んでくるんですよ。
 まるでクノイチの色仕掛けみたいだ。
 ヒラヒラして露出が激しい服を着て動き回って、気を取られた隙にバッサリって奴。
 思えばゲームでのバトルコスチュームも、それと同じ原理で本能的に創り上げたのかもしれん。
 …ディスプレイ越しに見事に引っ掛かってたよなぁ…リアルで堪能できるなら、ガンマ・レイ食らってもいいかもしれん。

 ま、意識が途切れてても、オイシイ場面は覚えてると言うか思いだせるんだけどね。
 ギアの記憶力をナメんなよ…記録力って言った方が正確かもしれん。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、ゴロンと寝転んだディズィーの上に蔽いかぶさったり。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、なんかスカートの中に俺の頭が突っ込んでてクマさんプリントが見えたり。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、ディズィーが俺の脇に顔突っ込んでたり。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、将来は(多分)Gカップになりそうなチッパーイに顔を埋めてたり。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、なんかディズィーの腿で俺の頭を挟んでてやっぱりクマさんプリントが見えたり。
 例えば、どういう経緯でそうなったかサッパリ不明だけど、ディズィーが後ろから俺を転ばせて、なんか尻に顔圧しつけてたり。
 …これ以上思いだそうとすると、何か冗談抜きで刑務所に自分から入りたくなる光景が出てきそうなんで止めた。
 ああでも思いだすまいと思えば思う程気になるぅ…!

 と言うかアレか、運命は俺に『その筋の人』になれって催促してんのか?
 でもお子様のパンツ見えたからってどうこう言う事は無いぞ。
 そーいうのは二次性徴を迎えてからじゃないとドキドキしないし、俺はチラリズム推奨派だからな、ガチエロも行けるが。
 断固として主張させてもらうが、わざとやってるんじゃない。
 いや本当にそうだからな、ネタフリじゃないんだよ…2行前の供述の後じゃ説得力無いけど本当だ。。
 時々自分でも『本当か?』って思うけど、俺の下心は精々ディズィーの上になりたいって程度だよ。
 下に居ると負けワンコみたいだから、ちょっと逆襲してみたかった程度なんだよ。
 間違ってもこんなフェチっぽい体勢になろうとしたり、もうちょっと成長したら通報モノな行為をしようとしてた訳じゃないんだ。

 …え、だったら『オイシイ場面』って何だって?
 さっき述べたようなシーンが、ラブコメで言えば『オイシイ場面』以外の何だってんだ。
 ツッコミと言うかオチが付かないのが残念と言えば残念だな。
 ギアボディなら斬岩剣だって耐えられるぜ。
 ただし成○川、テメーはダメだ…特に理由は無いんだが、アンチSSとか読んでたらいつの間にか感染してしまった…割と嫌いではないんだが。
 気にいらない点というなら剣術娘にだってあるし、何であそこまでヘイトが増えるんだろう…まぁいいや、元居た世界に戻れたら立ち読みでもするべ。




 さて、お風呂上りでホコホコになったら、もうオネムの時間だ。
 時間にして…8時半くらいかな。
 ディズィーは風呂から出ると、もうウツラウツラと船を漕いでいる。
 倒れないようにお婆さんが支えてくれた。

 俺もこの頃になると、流石に眠気を覚えてくる。
 精神は平気でも、体は子供なんだな…一応兵器なのに。
 着替えだけは何とか自分でやって……無理な時には、気が付いたら着替えている…ディズィーと一緒にベッドに潜りこんだ。
 ベッドには、お爺さんとお婆さんの匂いが色濃く、俺達の匂いがうっすらと染みついている。
 四人でベッド使ってるんだぜぃ。
 ベッドの奥から、お爺さん・俺・ディズィー・お婆さんの順で。

 朝はみんな一緒に起きるんだけど、夜はそうはいかない。
 俺とディズィーにはオネムの時間でも、お爺さんお婆さんにしてみればまだ宵の淵だ。
 俺達が眠ったのを確認して、お酒飲んだり話し込んだりしているんだろう。

 つまり、この瞬間からお爺さん達が眠りに来るまでは、事実上俺の一人舞台と言う訳ですなイタズラだってし放題なんだよ!
 …やらないけどね。
 何度も言うけど、ディズィーは物凄く大事な、俺の妹。
 その妹相手にセクハラ……セクハラ……しな、しな、しな……自分からはしない!
 …これで言い訳になってるとは思わないけどさー。
 いや、ホントーに『ダメだ自分…早く何とかしないと』、とは思ってるんだよ?
 自分をどうにかするか、ディズィーをどうにかするか…だと、簡単なのは後者なんだが、問題が自分にあるのにディズィーをどうこうってのは違うだろ。
 これをどうにかしておかないと、いつか俺は某クシャミで人をマッパにする魔法先生みたいになってしまう。
 もう随分前に読むの止めたけどさ、思うにあの先生がダメダメなのはちゃんと注意警告する奴が居ないからなんだろなセクハラにしたって結局なぁなぁで済ませてるから学習しないし一般人に魔法知られても記憶消去に限らずまるで対処もせずに「やりたくない」みたいな事言ってちょっといい話風にしててもあれって結局義務の放棄でしかないと思うんだがそこんトコ言う奴出てきてないのか挙句「ヤバい事がある」と分かってるのに巻き込んだ一般人に警告もしないし結局理想を語るだけ語ってそれに追随してくる問題を真剣に考えてないんじゃなかろうかそーいや立ち読みした時に「なんで全員を助けようとしなかったんですか」みたいなセリフ言ってたけど前後の話が分からない俺としてもあのセリフ普通にムカついたなぁ誰だって八方丸く収まる解決がいいに決まっててでもそれにはドデカい問題が立ち塞がっててそれができないから次善の手を打つんだろうに後から話聞くだけ聞いてその言葉はねーだろ…………ん、なんか電波受信したな。
 えーと、某魔法先生が嫌いなのはどうでもいいとして(多分、厨二病的なシンパシーを感じるのが原因だ。自分の恥を見ているようで頭が痛い)、俺がこうやって現実逃避してるのは何でだと思う?

 …まぁ、お察しの通り…俺をロリィの深淵に誘うイベントが、まだある訳ですよ。
 と、このままそのイベントについて話したいところだが、その前にワンブレス挟む。
 この俺しか居ない時間だけど、ちょっとばかり真面目になるんだ。
 何をするかって言うと、瞑想。
 実を言うとコレ、憑依前からの習慣なんだよね。
 頭を空っぽにして、脳を休ませると言うかデフラグと言うか…。
 でも、今やってる瞑想の目的は違う。
 それはこの体の機能の確認だ。

 意識を自分の内側に向けると、体の中にスイッチが幾つもあるのが分かる。
 ある程度は自分で操作できるみたいなんだけど、いきなりポチッなんて恐ろしくてできねーよ。
 だって俺の体は兵器だぜ?
 スイッチ押した途端に意識が無くなって、ふと気が付いたら辺り一面焼け野原でお爺さんもお婆さんもディズィーも呼吸してなかった、なんて事に冗談抜きでなりかねん。 
 そんな事になったら…俺は多分死ぬ事も考えない、抜け殻になりそうだなぁ…。

 そういう訳で、スイッチの役割が何なのか、一つ一つ確かめてるって訳よ。
 今意識できるスイッチの2割くらいは把握できたぜ。
 把握できたスイッチの一覧は脳内データベースに入ってる。
 この調子で把握していって、いつか頭の角を消したい。
 これさえどうにかすれば、人間社会に混じってもそうそう発覚しないでしょ。

 ああ、気分が乗らない時にはスイッチじゃなくて、法力の理論の方も確認してる。
 さすがチートボディに制御プログラム、憑依前だと古代スワヒリ語にしか見えない数字と記号の羅列がちょっとだけ理解できるよ。
 徐々に理解していけば、自分でも法力の理論を作れるくらいになる…といいな。
 幾ら頭の回転が速くたって、俺の発想が凡人じゃ意味ねぇ。
 …ん、俺は凡人じゃなくて変態だって?
 何を馬鹿な、俺は正真正銘一般人で凡人だ。
 ディズィーを猫可愛がりしてるのは、ディズィー本人の愛らしさからくるものだから、俺自身が変態じゃないんだよディズィー可愛いよ可愛いよマジで。

 …と、15分も瞑想したらすぐに切り上げる。
 人間の集中力なんてそんなもんだ。

 まだお爺さんもお婆さんも寝に来ない。
 ディズィーは天使の寝顔を見せて穏やかな寝息を立てている。
 その手がしっかり俺の手を握りしめている辺り、ディズィーも順調にブラコンに育ってきているようだ。
 別に俺が仕込んだんじゃないよ、これは単にディズィーの性格だって。

 さて、俺もそろそろ眠気に抗えなくなってきたし、一眠りしますかね。
 そーいう訳で布団に潜りこむんだけど、寝るって言っても俺の場合普通に寝る訳じゃない。
 別に寝ている間に寝返りで敵を攻撃する訳じゃないが…戦士のパジャマってどんなパジャマだよ臭うのか筋肉ムキムキな臭いがするのか?

 …そんな臭いはしなかったが、すぐ近くのディズィーの寝顔からニンニク臭が漂ってきた。
 ほんのり悲しくなる。
 だが侮るなッ!
 ディズィーの吐いた息ならば、ニンニク臭だろうが納豆臭だろうが全てフローラル極まりない匂いに感じられるッ!
 ちなみに俺はニンニクも納豆もピーマンもニンジンも大好きだ。
 うむ、今日の匂いは一段とフローラル。
 ニンニクに感謝だ。
 …シュールストレミング臭だって多分大丈夫だぜ…ディズィーの方がマジ泣きしそうだけど。

 それはさておき、俺の場合眠るというよりスリープモードとか待機モードに近いらしい。
 体はしっかり寝てるんだけど、脳の方は情報の整理をしている…まぁこれは普通の人間でも同じだよな。
 でもその情報の整理の流れを俺が把握できてる…分かりやすく言えば、眠れば毎回夢を見て、その夢を構成する情報がどの部分かっていうのが分かるんだ。
 内容をある程度自分で操作する事もできるから、ちょっとしたバーチャルリアリティ。
 あんまりやりすぎると、次の日に脳が疲れて眠気が取れなくなるから自重はする。
 と、言いつつ、夢の中の視界一面に「きょうのでぃずぃーのきろく」を映しまくってるんだけどね。
 ああ、癒されるなぁ……。

 なーんて、癒されているって言うよりも、実は現実逃避だったりする。
 寝ている時でも、生物というのは周囲の状況をある程度把握できる。
 達人が、寝ている間に殺気を向けられたら跳び起きるのと同じ原理だな。
 どういう神経してるのか自分でも理解できんが、寝ている間も俺の周囲がどうなっているのか、夢の中で理解できる。
 つまり、「きょうのでぃずぃーのきろく」を観賞しながら、すぐ隣で寝ているディズィーの寝顔を堪能したり出来る訳だ。
 なお、寝息をクンカクンカするのは出来ない…あんまり動くとディズィーが起きるし、寝息のリズムが変わると体がちょっと覚醒する。


「…ん~」

 ゴロン


 …とまぁ、こんな具合にディズィーが寝返りを打って。
 俺に寄り添って来るんだよ毎回毎回お爺さん達が来る頃には俺達ピッタリ寄り添って寝てんだぞ!
 分かりやすく言えば抱きつき癖がついてるんだよ!
 俺抱き枕!
 おk、俺抱き枕!
 幾らでも抱いてくだせい!
 …なーんて考えてたら、ディズィーの寝相はエスカレートする。
 夢の中でも俺に甘えてんじゃあるまいな、と思うくらいに可愛い仕草で。
 俺の胸元や首筋に顔を埋めてグリグリしたり、抱きついた腕で俺の背中を撫でたり、ひどい時(凄い時)には比喩抜きで俺の上に寝そべる。
 寝息がくすぐったくて堪らないんだこれが。
 体は待機モードだから殆ど動かない、でも夢の中で感覚は得られるから、俺は夜毎に夢の中で一人悶えている訳だ。
 なんだこのくすぐりプレイ。

 で、何よりもヤヴァイのが下半身。
 別に、俺がもう勃つようになったなんてオチは無い。
 その辺の機能も、今はまだ使えないけど体内部のスイッチで操作できるしな…つまり俺は意図的に不能になれる訳だ嬉しくねぇけどある意味ありがたいよ。
 なら下半身のナニがヤバいって…ディズィーの動きがね。
 これ絶対2歳児の動きじゃないだろ。
 何と言うか、軟体動物なんじゃないかってくらいに足と足が絡み合ってる。
 幼児の体って柔軟性があるけど、それって艶めかしい印象は受けないんだけどなぁ。
 絡み合うだけならまだしも、お互い寝息で動いたりディズィーがモゾモゾしたりして、腿の内側とかふくらはぎとかの敏感な部分が擦れ合って…なんかもう冗談抜きで愛撫されてる気分になってくるんだが。
 そんなに絡み合ってるもんだから、腰がこれでもかと言うくらいに密着し合う。
 いつかカニ挟みにまで発展するかもしれない。
 …勃つような年齢になったら、寝る前に身体操作しておかないと、知らない内にディズィーの処女貰ってたって話に…流石に考えすぎか。


 そうやって夢の中で悶えていると、お爺さんとお婆さんが眠りに来る。
 この辺からは、特に変化は無くなる。
 ディズィーも俺に抱きついたままだし、俺は夢の中で悶えてるままだし。
 お爺さんもお婆さんも、俺達の頭をちょっと撫でて布団に潜る。
 そして朝までお休みだ。
 俺は朝まで、夢の中で悶えながらディズィーの寝顔と寝息と「きょうのでぃずぃーのきろく」を堪能し続けるのであった。
 …精神的に、殆ど休めてないからなぁ…昼寝しないと保たないのよ…。




夏朱の川の字(ディズィーと俺が寄り添ってるから)で眠りて詠める。

 我が家族 
   寝床に籠る
       ニンニク吐息
 
            字余り



 追伸
 カレー鍋の底のカレーまで舐めとろうとしたら、お婆さんにゲンコもらいました。






明日は面接なんで、不安を紛らわしながら書いてみた。
…ディズィーのおかげで、不思議と落ち着いたよ!



[17288] 04
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/03/25 15:24
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 人類が生み出した至宝を再び手にしました。
 名前はインターネットと申します。
 …まぁ、名前は大分変ってるし、機能もかなり制限されてるけどね…俺はこの呼び方が好きだからこっちで通すよ。
 いやー、やっぱり便利な物は残るのかねぇ。
 一応これって科学技術の産物だから、ブラックテックに分類されるんだろ?
 まぁ、法力で同じ事をやってるんだろうけどさ。
 機能が制限されてるのは、単純に旧世界…インターネットが普通に使われていた時代の技術が幾つも喪失・封印されて、現在の法力の技術では再現できない部分があるからだそうだ。
 2chも見つからないし…あってもあんまり活用した事無いけど。
 まぁ、つまりは…まだ『始って』ないって事だね。
 『始まったら』ある意味終わりだけど、いいじゃないかそれで。
 きっとウチの妹自慢を続けてたら、いつかギアでも受け入れてくれるよ…悪い虫が山ほど付きそうだからやらないけど。

 そもそも、聖戦が終わってまだあんまり時間経ってないしね。
 100年続いた、人類が滅亡寸前にまで追いつめられた戦争から、たかだか2,3年。
 たったそれだけの時間で、ここまで復興している事自体が驚異的だ。
 まぁ、復興って言ってもスラムはあったり聖戦の爪跡があちこちに残ってたり山賊の類は居たり封印されただけでギアが残ってたりと、平穏とは言い難いけどさ。
 でも、やっぱり日本文化が衰退しまくってるのは残念極まりない。
 憑依前は仕事で忙しくてあんまり見なかったけど、ゆっくり見たいアニメとかドラマもあったんだけどな~。
 今でもアニメやドラマもあるにはあるんだけど、感性が違うのかレベルが違うのか、イマイチなんだよ。
 それとも日本のコロニーに行ったらまた違うんだろうか?
 ぬぅ、これではチップにジャパニメーション文化を布教するという夢が…!
 ハットリ君は定番として、乱太郎とかマスク・ザ・レッド(勿論、十傑集)辺りを見せてみたかったのに。



 さて、愚痴はこれくらいにして、近況報告と行きますか。
 現在、肉体年齢は4歳前後。
 周囲からは、発育のいい子供だと…何とか誤魔化せてるレベルだ。
 ディズィーのシッポもまだ目立つような大きさじゃない。
 俺の角も、10センチくらいの長さで止まっている。
 まだ怪しむような視線は感じない。

 最近、俺はお爺さんにサバイバル技術を本格的に習い始めた。
 …多分、俺はもうすぐ蛇なり兎なり魚なり、命をこの手で奪う事になるだろう。
 そして仕留めた獲物は朝食としてテーブルに並ぶだろう。
 その時、俺はどんな気持ちになるのだろうか…罪悪感は邪魔なだけだと制御プログラムが働くのか、それとも自分の行動に耐えられずに吐くのか、或いは素で何も感じず淡々としているのか…。
 どう感じるかによって、多分俺の死に方生き方は大きく変わる事になる。
 と言っても、教わっているのは明朝から午前中だけで、午後からはディズィー達が遊んでいるのを見守っている。
 …俺のボディが精神年齢と一致していたら、即通報されそうだ。

 こうしている間にも、ディズィーの記録を保存しつつ法力の理論確認を怠っていない。
 最近、分割思考ができるようになったんですよ。
 これが便利でねぇ…でもディズィーに何かあったら、即そっちに全思考が集中するからあんまり意味がない。

 まぁそれはそれとして、俺が法力の理論確認を行っているのは、体の確認が一通り済んだからだ。
 幾つか理解できない機能とかブラックボックスがあったが、延々と気にしてても分からないものは分からない。
 使わないのが一番。

 で、その俺の体に関する考察なんだけど…思い返せば、俺は自分が半分ギアだって事で、制御プログラムがどうとか、体内のスイッチがどうとか、考え方や例えが機械的すぎたように思う。
 何せギアは兵器と言っても生物兵器。
 どのくらいの割合かは分からないが、半分くらいは生物なのだ。
 と言うか、そもそもギア=機械だったら、子供を産んだとしてもハーフとか関係ないね。
 後天的に取り付けられた機構が、DNAを通して伝わるなんて有り得ないって。
 DNAを通して伝わるのは、やっぱりDNA。
 機械化じゃなくて、体の設計図に手を加えたって事なんだろうな。
 それを成すのが、ギア細胞と。
 だから、ギアの機械的な部分と表現していた部分を…そうだな、遺伝子に刷り込まれた本能とか、そんな感じに言い変えた方がいいのかもしれない。
 でもややこしい言い方だからパス。

 で、その更にハーフである俺。
 機械的な部分(ややこしい言い方だからry)の比率で言えば、精々俺の四分の一くらいなんじゃないだろうか。
 現に、ディズィーは俺みたいに体の中にスイッチがある、なんて事は感じてないらしい。
 でも俺は明確に感じてる。
 むしろ体の7割以上…生命の神秘とかその辺の事は別として…を、スイッチのような機械的なイメージで捕えているのだ。
 これは単純に先入観の問題かもしれないが、俺とディズィーの間には根本的な違いがあるんじゃないか、と最近思うようになってきた。
 つまり、ギアボディと人間ボディの比率の違いだ。
 俺はギアの、特に機械的な部分の比率が大きく、制御プログラムのような融通の利かない制御法が有効。
 逆にディズィーは、生物的な部分の比率が大きく、感覚的で融通がきくがその分正確ではない制御法になる。
 こう考えれば、ゲームでは力の加減やセーブが苦手だったディズィーと違い、俺はほぼその力を制御できる理由が説明できる。
 大雑把もいい所だけどね。

 ………更に深い所まで疑ってみれば、俺とディズィーが兄妹だっていう確証も無いんだよなぁ。
 実は俺、100%のギアで、ディズィーの護衛として一緒に送り出されていた…なんて事は無いよな?
 だとしても、やっぱりディズィーは俺の妹だけどね!

 よくよく考察してみれば、ディズィーとネクロ・ウンディーネの関係だって分からない。
 寄生型って話だったが、それって生まれた瞬間から寄生してんの?
 寄生してるって事は…それぞれ独立した存在と言えるから、その意思及び肉体の制御権は各々にある?
 でもネクロは覚醒必殺技の『ネクロ怒った場合』で、ディズィーの体を短時間とは言え乗っ取って、自分の全身を出してきたな。
 仕草からすると、ディズィーはそれをやらせまいとして、流されてしまったようだが…。
 以上の事から考察するに、肉体の制御権はそれぞれが持っているも、それを力尽くで押し返す事も可能。
 つまり、3人の体及び意思は何らかのシステムで繋がりがあると考えられる。
 そうでなければ、体を乗っ取るなんて出来ないからね。
 そんな複雑な状態に加えて、俺が考えたように『感覚的で融通がきくがその分正確ではない制御法』で行動すれば、そりゃー暴走もしやすいわな。
 言って見れば、自転車に3人乗りしてるのにどいつもこいつも好き勝手に動こうとするようなもんだ。
 真っすぐ走れる訳がない。
 もしもこれを矯正しようと思ったら…3人の意思意見を一致させるか、それぞれボディを切り離すか……少なくとも今の俺じゃ無理だな。
 方法すらも思いつかん。

 つーかさ、あの2人ってディズィーから離れられないんだよな。
 てー事は、夫婦水入らず(オレハカイヲブッコロス!)の時間もあの2人が居たって事。
 当然…ここここここここここコケコッコこここ子供をつつつつくくるときいいいいぃぃいもおぉぉぉぉぉ!
 …よくよく考えたら剛の者じゃねーか、3歳児を衆目の中で手篭めにするとは…敵とは言え天晴れとだけ言っておいてやろう。
 愛があれば歳の差なんて、を地で行く奴が居るとはな…。
 必殺の誓いは、剣心の不殺の誓いよりも強固になったが。


 ああそうそう、それは置いといてだな、ネクロとウンディーネだよ。
 ディズィーの背中から、緑色と水色の小さな突起が生えてきました。
 まだ二人の意識があるかどうかは分からんけどね。
 優しくしておいて損は無い。
 ディズィーも気持よさそうだし。
 もしもネクロに懐かれたらと思うと若干不安が生じないでもないが、大丈夫。
 俺はネクロがツンデレだって信じてる!
 「フン、別に貴様の事など心配していない…だがディズィーに心配をかけるような事をするな」とか背中で(ディズィーの背中で、更に俺に背中を向けて)心底安心したって口調で語るんだ…あれ、なんかちょっとトキメイたよ。
 代わりにウンディーネがヤンデレだったら洒落にならんなぁ…。
 誰に対してヤンデレかで、俺とディズィーの生き残る確率が極端に変わるぞ。
 話し合いでどうにかできそうな時に、穏やかな大人の顔したウンディーネがいきなり豹変して攻撃。
 纏まる話も纏まらねぇ。
 そして倒れたディズィーと敵を見下ろしながら、「……これで……私のモノ……」。
 …怖ッ!
 マジで怖い!



 ……はぁ、まだ見ぬ家族に妙な幻影を重ねるのはこの辺にして。
 小難しい話は止めにして、本体のディズィー自慢タイムでフィーバーしようか!
 今回はご飯の時間だべ!

 欧米だけあって、食事はパンが主食になる。
 パエリアやら何やらが出る事もあるけど、どれも美味しい。
 元日本人としては米が食いたいと思うが、無い物ねだりしてお婆さん達を困らせるのは本意じゃない。
 それにパンも美味いしね。
 子供の味覚に合わせてくれてるのか、フルーツやら砂糖やらが沢山盛りつけられていて見た目にも色鮮やか。
 主婦の熟練の技を感じるね。

 ディズィーも甘いのが大好きらしくて、アップルパイなんか出た日には目を輝かせてパクパク食べまくる。
 全部食べ終わった後も、物足りないのか強請るような視線を向けてくる事もあった。
 …まさかこの歳で「あーん」が出来るとは思わなかったぜ。
 いや、むしろこの歳だから出来るのか。
 アップルパイを突きさしたフォークをディズィーに向けたら、ディズィーもノリノリで「あーん」なんて言いながら大口を開けて待つ。
 大口って言っても、ディズィーにとってはって事で、俺から見ると控え目に開けてるようにしか見えないんだけどね。
 なんつーか、雛鳥に餌を上げる親鳥みたいな心境を味わったぜ。
 それと同時に、開けた口から見えた舌とかが気になったりもしたけど。
 なんか舐めまわすみたいにレロレロ動いてんのよ。
 多分口の中に残った味を堪能してるんだろーけどね。

 で、いざディズィーの口の中にフォークを突っ込むと、口を閉じてアップルパイを取るよな。
 あーんしてるんだから、当たり前の事だ。
 最近気付いたんだが…フォークから伝わってくる微細な振動で、ディズィーの口の中がどう動いてるのか分かるのだ!
 唇がフォークを挟んでいるのとか、舌がアップルパイごとフォークを舐めてるのとか!
 更にフォークを引き抜く時は引き抜く時で、「あ…」なんて声を出してちょっとだけ舌を突き出して追いかけようとする。
 お行儀悪いから止めなさいと言いたいんだが、その仕草が可愛くて言えない。
 あ、お婆さんもっと言ってもっと言って…やっぱ言わないで。

 そこまで行くとようやくディズィーも満足するんだけど、今度は別の事が問題になる。
 とにかく夢中で食ってるから、口元に食べカスが付いてるんだ。
 そりゃーもう、幼稚園児の頬におべんとうが付いてるようなもんだ。
 それで「おいしかった!」ってニコニコしながら言うんだぜ。
 なんて和み…!

 なーんて和んでいたら、奇襲が来る。
 口元に食べカスが付いているのを指摘されたディズィーがそれを拭い取る…指で。
 ハンカチやティッシュを使いなさいと言われてはいるんだけど、アップルパイの時だけは指を使う。
 どんだけアップルパイ好きなんだろうか。
 指で口元を拭って、それをしげしげと見て………チュパ。

 チュパ。


 大事な事だから3回目言うぞ。
 チュパ。


 ディズィー、指を舐めちゃいけません!
 お婆さんが何か言ってるけどゴメン、俺は桃花原に居るから聞こえない。
 指チュパですよ指チュパ!
 自分の指だけど!
 自分の指だけども、咥えるよりも先に舌を伸ばして食べカスとかを舐めとるのです!
 妙に赤い舌がディズィーの細い指をゆっくり這い回る所なんて、もうどこのAVの真似ですかと言いたくなる!
 いや、俺がそーいう感性を持ってる変態だというのは本気で否定できなくなってるから何も言わないけど、それにしたってディズィーの仕草は妙にエロい。
 お爺さんとお婆さんから隠れようとしているんだろうけど、ギリギリで視界に入る所でそっと指を舐め回す。
 しかも唾液は妙に粘着質…あれは性的興奮じゃなくて、好物を目の前にしたら自然にそうなっただけだけど。

 …アップルパイを俺の角に刺したら、舐めとってくれないかな…なんて考えた時は本気で自分の道徳を疑った。
 それよりも口移しの方がマシだよね!
 …ごめん、本心ではあるけど自分でも言っててどうかと思った。
 まぁ、やろうって言えばアッサリ頷くような気はするけどさ。
 大事なディズィーのファーストキスを、幼児の時とは言え一方的に奪うような事はしないよ。
 それに、いくらディズィーがアップルパイが好きでも、俺が噛み砕いたアップルパイじゃあんまり美味しくないだろ。
 唾液で余計な味が絡むし、歯応えも変わるし、そもそも食べにくいし。
 昔から疑問だったんだが、口移しって意味あるのか?
 イチャつく事に意味云々なんぞ言っても仕方ないけど…ああそうか、咀嚼した物を口から渡すんじゃなくて、口に咥えて相手に渡すんだな。
 重症人とか動物の赤ん坊とかにそういう口移しをするって聞いた事があったから、それと勘違いしてたわ。
 ポッキーゲームみたいな奴が口移し、と。
 よっしゃディズィー試してみようぜー……いつかね。


 まぁ、この辺は時々しか出ないアップルパイだから堪能する事ができるシーンだ。
 普通のパンやスパゲティじゃこうは行かない。
 つまりレアショットだよ、運が良かったね今日の俺。



 さて、食事が終わったら何よりも先に歯磨きの時間だ。
 ギアが虫歯になるのかは知らんけど、もしもなった場合はファウスト先生ぐらいにしか頼れないからな。
 医療保険無いし。
 磨いておくに越した事はない。
 歯磨き粉を使うから、スッキリするしね。

 二人で並んで、鏡の前でシャコシャコ。
 歯磨き粉はお子様用のイチゴ味。
 別に意思してる訳でもないのに、歯ブラシを左右に動かす腕の動きがぴったり一致している。
 段々泡立ってくる歯を剥き出しにして鏡に映す。
 二人一緒にコップの水を口に含んで、グジュグジュグジュグジュ、ペッ。
 吐き出した白く濁った水は、俺の分もディズィーの分も洗面台に着地して一つになって流れていく。
 …俺の口の中にあった水と、ディズィーの口の中にあった水が混ざり合って一つになってハァハァ…冗談だよ、そこマジで退くなよ。
 俺は直接触れ合う方が好きだから、唾液が混ざろうが汗が混ざろうがそれだけで興奮なんかしねーよ、俺にとってそれはあくまでオプションだから。

 口をイーッと歪ませて、ピカピカになった歯を見る。
 将来はヨン様よりも白い歯を目指そう。
 芸能人は歯が命だ。
 ところで、社会に出てからのスマイルって目を大きく開けて、歯を見せずに、唇の端を上げるって程度でいいのかね?
 近所に住んでた写真屋のおっちゃんに聞いたんだけど、上の歯を見せなきゃ笑顔が引き攣って見えるんだが。
 歯を剥き出しにしたら……どこぞのオーガが浮かんだよ、あんなの会社や大学の面接で見せたら受かるどころか落ちる通り越して土下座されるって。

 それはともかく、歯磨きが終わったら、今度は…虫歯チェック。
 具体的に何をするのかって?
 まぁ見てなさい。

「ナッシュ、あーん」

「ディズィーも、あーん」

 二人で向き合って、大きく口を開く。
 顔はちょっと傾ける。
 そして接近。

 更に!互いの顔を両手で掴む!

 でもって接近!接近!接近!密着寸前!


「あ…ぁ……あが…」

「んが……がぁ…」


 吐息が互いにかかるくらいの距離で、大きく開いた口の中を覗き合う。
 舌が暴れそうになるのを自制して、鼻にかかるイチゴ風味…正確に言うと歯磨き粉風味の息でクシャミをしそうになりながら、歯を一本一本確かめる。


「……ふが…うぃ」

「んぁ」


 両手を離して、チェック完了。


「ディズィー、右の歯にパンくずがちょっと残ってるよ」

「わかったー。
 ナッシュは綺麗だったよー」


 おお、ディズィーに褒められたよ!
 …え、何やってるんだって?
 だから、相互虫歯チェック。
 憑依前に何かの漫画で読んだ。
 読んだ時はジョーク以外の何物でもなかったけど、実際にやってみたら意外な発見があるもんだなー。
 別にやましい気持ちで提案したんじゃない。
 さっきも言ったように、俺達は医者を当てにできないからな。
 用心するに越した事は無いってだけの話だ。
 まぁ、信じるかどうかはそっちに任せるけどね、どうせ信じないけどね。


 お爺さん達に最初にやっているのを見られた時、不思議な物を見る目を向けられたが…子供のやる事だと思って流してくれた。
 流石に、最近は止めるべきなんじゃないかと話し合う事もあるみたいだが。




 さて、歯磨きが終わったら昼寝の時間だ。
 寝る子は育つとは良く言ったものだね。
 3年であんなグラマラスボディに…いやちょっと待て、だったら俺はどうなるんだ?
 …セックスアピールが凄くなるっていうなら、やっぱナニがデカくなるのか?
 大きいのは嬉しい事だが、大きすぎると相手に負担をかけるからな…悩みどころだ。
 いや、オスのセックスアピールつーたら、ヒゲとか胸毛とかになるのか?
 毛深いのイヤだよ俺。
 ところで乳首とかから毛が出た場合、それは身だしなみとしては処理しておいた方がいいんだろーか?
 尻の毛はどうにもならんけど。

 馬鹿な考えはともかくとして、昼寝は陽の光が差し込んでくる縁側で。
 やっぱり太陽の光っていうのは、生物にとって重要なエネルギー源らしい(夜行性除く)。
 日の光を浴び始めて、10分もしない内に何となく気分が良くなってくる。
 隣のディズィーも、早くもうつらうつらしていた。
 ああ、日光で照らしだされるディズィーの姿の何と朗らかな事よ!
 心なしか顔色も良くなってきている気がする。
 俺自身、体の血行が良くなっているのが実感できた。

 今日は雲一つない晴天で、運動会でも開けば絵になるだろうし校長の挨拶にもテンプレで出てくる事だろう。
 太陽を直視しないように空を見上げていると、吸い込まれて何処かに飛んで行ってしまいそうな気がしてくる。
 試しに2段ジャンプと空中ダッシュをやってみようとした事があるが、見事に失敗。
 顔面から着地して鼻血が出て怒られた。
 くそぅ、まだ無理か。
 だがいつかあの大空へ羽ばたいてやる!
 …よく考えればディズィーは文字通り空を飛べたな。
 俺が飛べないままだったら、抱えて飛んでくれるかも。
 その時は……お姫様だっこ?
 いやいや、でもそれはそれで…下手な抱きつき方したら、本能を抑えきれずにセクハラしてしまうかもしれん。
 叩き落とされた挙句「キライ!」とか言われたらその場でショック死するぞ。


 そんな事を考えながらボヘーっとしていると、コテンと肩に重量がかかってくる。
 ディズィーが眠ったようだ。
 このままにしておいてもいいのだが、流石に安定が悪いので、起こさないようにゆっくり動かして…俺の腿の上に乗せる。
 膝枕だ。
 定番だね?
 定番だけど………。


(ああ、俺ってばまたこの体勢に自分から…)


 ちょっと、いやかなりの自己嫌悪に陥った。
 この体勢にしたらどうなるか、実体験済みで分かっていると言うのに…。
 俺は、俺は兄貴として最低だぁぁぁぁぁ!
 …そーいえば、今までディズィーに兄って呼ばれた事ないな。
 呼び方変えさせるかな……?


 で、膝枕したら結局どうなるって話だが。
 俺が起きてる間は、何もならない。
 ディズィーも大人しく寝てる。
 むしろ一日の中でもトップクラスの和み時間だ。
 ディズィーの天使の寝顔をすぐ傍で見られるし、夜のように息がくすぐったくもない。
 いい日差しが差し込んできていて、風は温かいし鳥の鳴く声も聞こえてくる。
 風流だねぇ、と素で呟けるくらいだ。

 そうしてボンヤリしていると…時々ディズィーの頭を撫でたりする…、次第に俺も眠くなってくる。
 元々昼寝の時間なのだから、それに逆らう理由もない。
 ディズィーを起こさないように気を付けて、上半身をゆっくり後ろに倒して…そのまま午睡。
 この時は、夜と違って特に夢を操作したりしない。
 純粋に休むのが目的である。



 で、寝ている間に、何かモゾモゾとした感触を覚えて目を覚ます。
 何処にそんな感触がするかと言われれば………ぶっちゃけ、股間に。
 いい加減毎度毎度の事なんで予想もつくだろうが、ディズィーが寝返りを打って、その頭…つーか顔を俺の股間に押しつけてるのよ。
 やっぱりモゾモゾ動く。
 そして俺のナニは無反応………何だろう、悲しくなってきた。
 所謂朝立ち(昼寝後だけど)が無い訳だが………枯れてない、俺は枯れてない、まだ芽吹いてないだけなんだ!


(はぉう!?)


 なんてバカな事考えてる間にも、ディズィーは頭をグリグリ。
 この仕草は、俺に限らずお爺さんやお婆さんに甘える時の仕草だ。
 夢の中で誰を相手にしてるのかは知らんけど。
 俺の股間が、ディズィーの顔で責められるッ………!

 そしてそれ以上にヤバいのが、その日の食事にアップルパイが出た時の事。
 夢の中でも食べるのか、「あーん」して噛みついてくるんだよ。
 何処にって、そりゃ…言うまでもないだろ。
 流石に思いっきりだと洒落にならないが、ズボン越しだし、寝てるから力もあんまり入らないらしくて精々甘噛み程度。
 カプ、とかね。
 それでもズボン越しに感触は伝わって来るんだ…!
 正直色々と突き抜けそうになるが、ナニを幼児に噛まれて天元突破したら「そんな穢れたドリルで来るな!」とばかりにグレンラガンに叩き落とされそうだ。
 必死こいてガマンあるのみ。
 更に舌を突き出して舐めようとする事すらある。
 …流石にこの辺に来ると、幾らなんでもヤバいと思って俺はディズィーから逃れようとする。
 でも「逃がさない」とばかりにガチッと腰が拘束されててさぁ!
 僅かに動く腰だけで、何とかR指定にならないように逃げようとするんだけど、それをディズィーが、ネズミを甚振るネコみたいにゆっくり追いつめてくるし!
 一体どんな夢見てるんだと小一時間問い詰めたい!
 …いや、激しく問い詰めるとディズィーが泣くかもしれんから、ゆっくり聞き出す方向で。


「ふぁ…にげ、ちゃ、だめぇ…」

(起きてないか!?
 起きて何かエロい精霊か何かに憑依されてないかディズィー!
 もしそうだったら精霊さんに礼を言うべきか退治するべきなのかッ…!)


 本当に逃げるのも限界で、逃げちゃダメと言われたしこのまま流されてもいいかなーって思うようになった頃に。


「ん………あ?
 なっしゅ?」

「…お、おはよウ、でぃずぃー」

「んー…おはよ…」


 見計らったように、ディズィーが目を覚ます。
 毎回毎回、このタイミングで。
 何か妙な力でも働いてるのか?
 板の制限的な力とか…いや自分でも意味が分からないけど、まぁ電波だし。

 ディズィーは自分が何をやっていたかなんて理解してないし、目が覚めたばかりでこの体勢にも疑問を持たない。
 フラフラと立ち上がって、顔を洗いに行く。

 …………ざ、残念だなんて、思ってないもんね…そう、思ってないもんねッ………そーいう事にしておいてくれ、頼むからッ………!



 で、結局次の日の昼寝でも同じ事を繰り返してる辺り、俺も救いようがないよなぁ…。





どうも、時守です。
面接に落ちたよ。
でもディズィーのおかげで何か立ち直ったよ!
アレです、面接を受ける前と受かった後は企業のいい面を見て、落ちたら「労働条件に不満があったしー」で済ませるのがイイ。
本質的にはネガティブ思考でも、表面だけポジティブにしてれば色々と取りつくろえるようです。


追記
HP作りました。
まだ動作確認の段階ですが、一応アドレス乗せておきます。



[17288] 05
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/03/29 10:32

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 唐突に何ですが、最近ちょっと悩んでます。
 何にかって、そりゃディズィーの可愛らしさ悩ましさ……じゃなくて、強いて一言で纏めるなら、今後の方針に。
 二次創作とか憑依モノのテンプレで言えば、こういった危険な世界に生まれてしまった以上、生き残る為に戦闘能力を上げるというのはテンプレだろう。
 実際、俺もそうしようと思っていた。
 が、よくよく考えたら、それって俺の場合むしろ危険なんじゃあるまいか。
 ゲームの中では、ディズィーは戦闘行為を自分から求めるような事はせずに、むしろ平和主義者だった。
 戦闘能力を求めるような事もしてないない。
 力の制御の為に訓練をする事はあったようだが、それも『結果的に戦闘能力が上る』事になったかもしれないが、戦闘能力を上げる為の訓練じゃなかった。
 その訓練にしたって、ソル達に見逃された時にはまだやっていなかった。
 とにかく何が言いたいかって言うと、ヘタに自分の能力とかを追及すると、戦闘能力を求められていると判断されて危険なんじゃないだろうか、って事だ。
 かと言って、何もしなけりゃ何もしないで、速攻でブッ殺されてデッドエンドになりそうだし。

 とりあえず法力の理論確認は続けているが、確認しても確認してもキリがない。
 元が高校時代の数A数B…数Ⅰ数Ⅱだったか?…がギリギリ赤点にならない程度の素養しか持っていなかった俺が、ただでさえクソ難しい法力理論の、論文とか読めるレベルまで自力で到達しようってんだから、そう簡単に行かないのは当たり前だ。
 頭の回転は高校時代とはケタ外れに違うし理屈も理解はできるんだが、なんつーかそれが…自分の血肉にならない感じなんだよね。
 そーだな、数式だけ覚えてて、それを活用出来る程に覚え込んでいないって感じかな。
 一々確認しながらじゃないと、値を数式に当て嵌めていいのか分からない、と言うかね。

 生き残る為に何をするべきだろうか…。
 話術や交渉術を磨く?
 技術を磨くのが可能不可能以前に、あの方々話聞く気なんかないでしょ。
 いや、だったらそもそもどーしてディズィーは見逃してもらえたんだ?
 …考えるだけ無駄か。
 ディズィーの持つ特有の雰囲気と言うか誠意と言うか、その辺のが通じる相手には通じたって事だし…通じない相手?
 イノとか終戦管理局のマッドさんとか、色々。

 あーくそ、どっかにオリ主が降臨してて、『あの男』とか終戦管理局とかをブッ潰しててくれんかな。
 …いや、やっぱそれはダメだわ。
 その行動パターンからすると、ハーレムとか何とか抜かしてディズィーを狙ってくるに決まってる。
 ハーレムじゃなくても、可愛いディズィーを狙わないなんてそいつは絶対に男としてどうかしてる!
 どうかしてるとしても、ディズィーに余計なちょっかいを出してなけりゃそれでいいんだが。

 ん、俺がオリ主?
 違うよ。
 俺はオリジナルではあるけど、そういう意味での主人公じゃないよ。
 俺がオリ主だって言うなら、俺だけじゃなくて誰もかれもがオリ主だよ。
 人生は誰だって、転生だの憑依だのなんかしなくたって、一人一人がオリジナルで主人公なんだよ。
 あれ、俺何か良い事言った?




 さて、俺の葛藤はこれくらいにして、近況報告と行きましょう。
 現在、肉体年齢は5~6歳ってトコ。
 嵐を呼ぶ幼稚園児と同年齢だね!
 だからどうだって話だけど。
 うん、それだけなら本当にどうだって話なんだけど、ちょっと厄介な事になってきた。
 ちょっとずつだけど、疑念の視線が湧いてきたのだ。
 成長するのが早いんじゃないか、ってさ。
 まぁ、だからって即ギア認定されるわけじゃないけど、そろそろ何か手を考えないといけない。

 更に言うなら、ディズィーの背中の緑と水色…要するにネクロとウンディーネが、段々大きくなってきた。
 着ている服の背中に、穴を開ける事も考えないといけない。
 そしてシッポも大きくなってきた。
 履いているパンツ(興奮すんじゃねーぞ)のお尻の部分に、穴を開ける事も考えないといけない。
 …いや、俺がやるなんて主張してないよ?
 俺、裁縫なんかボタン付けるくらいしかやった事無いし。
 …パンツにハサミで切れ目を入れりゃいいのか?
 でもそれをやったら、ちょっとした動きでビリッとなってノーパンに……こ、興奮なんてしてないからね! だから君達もハァハァすんなよ!
 
 まーとにかく、服に穴を開けるのは決定事項として、羽と尻尾を誤魔化す方法を考えないといけない。
 と言っても、出来る事なんて限られてる。
 俺と同じように、アクセサリを使って誤魔化すくらいしか考え付かない。
 プレゼントって事にすれば、ディズィーも喜んでくれるかな?
 それにしたって、シッポもネクロ&ウンディーネも時々動くしなぁ…。
 しかし動くって事は、ネクロもウンディーネももう意識があるんだろうか?
 そう思うと、羽とディズィーを撫でる手にも一層慈愛が籠ると言うものよ。
 ああ、可愛いなぁ…。
 最初はネクロがヤバそうだから、なんて理由で撫でるようになったけど、そうやって撫で続けていると本当に愛しくなってくる。
 勿論ウンディーネだってそうだ。
 ディズィーに至っちゃ言うまでも無いっつーか言葉で語りつくせるもんじゃねぇーーー!

 …まぁ、何だ。
 例え羽コンビに意識があるとしても、「目立たないようにしてくれ」なんて言える筈がない。
 二人は言わば、生まれたばかりでちゃんとした自我も(多分)確立されてない。
 そんな時に、目立つなとか、お前は人に見られちゃいけないんだ、なんて言えるかバカヤロー!
 幼児虐待もいいトコじゃねーか!
 ネクロもウンディーネも、絶対に欝属性を背負っちまう!
 そんな事はこの俺が許せん許可せん拒否って阻止してやるあぁぁぁ!

 とはいえ、アレも嫌コレも駄目じゃ、世の中渡っていくのは難しい。
 どうにも出来ない問題があるから、世の中というのはゴタゴタした形になっているのだ。
 やっぱり、俺達がこの村を去る事は決定事項のようなものだろう。
 例え俺達が努力して、この村の人達に受け入れてもらえたとしても、ギアがこの村に居ると言う事は必ず情報漏洩する。
 そうなりゃ、いつかは賞金首になって、やってくるのは荒くれ者。
 絶対に村に迷惑がかかるし、俺達自身も足手纏いとかが多くなって賞金稼ぎ達を撃退できない。
 地の利を得る為もあるし、な…。



 さて、辛気臭い話はこの辺にして、ディズィー自慢で一日の活力を得よう!
 ちゃんとした一日っていうのは、ちゃんとした朝ご飯じゃなくてディズィー自慢から始まるんだぜ!
 お腹が透いててもお金がなくても、ディズィー自慢だけは欠かしちゃ駄目だぞ、おにーさんとの約束だ…誰が貴様のお義兄さんクァァァァ!


 今日は勉強の時間です。
 お婆さんが基礎教育をやってくれます。
 テンション下がるぜウボァー。
 ディズィーは楽しそうだからいいけどねヒャッハァ!
 ちなみに俺が好きな教科は国語だ。
 古典とかサパーリだったけど、単純に文章を読むのは好き。
 おかげで高校時代の国語は楽させてもらいました。
 何せ長文問題っていうのは、結局の所文章の中に答えとヒントがほぼ全て書かれてるんだからね。
 ある意味公認のカンニングペーパーさ…漢字の問題でも、長文の中でその漢字が使われてる事もあったなぁ…。
 好きこそ物の上手なれってホントだね。

 まぁ、今やってる国語は、憑依前で言う国語とはちょっと違う。
 国の語っていうくらいだから、英語…じゃないフランス語?でもないっぽいな…。
 えーと、多分ベースは英語だと思うんだけど、地方言語っつーの?
 方便みたいなものだと思ってたら、それもちょっと違うらしい。
 ま、この辺の地方って、幾つもの民族が混じり合って暮らしてるらしいし、使われてる言語が公用語と全然違っても不思議はないね。
 とにかく、ここで使われてる言葉だから、細かい言い回しが理解できない。
 コトワザなんか、もうサッパリだ。
 なまじ日本語で考える癖がついてるから(その割には口から出るのは英語っぽい何か)、普通ならすぐ予想がつく事でも閃かない。
 喋るだけなら感覚で出来ても、読み書きとなると急にへたくそになってしまう。
 漫画や小説で、「○○語は話すのは出来ても読み書きはできない」って話がよくあったが、当時は不思議で仕方無かったなぁ。
 言葉っていうのは、学校で筆記で勉強して覚えるものだったから、「読み書きは出来るけど話せない」じゃないのかって思ってた。
 うん、逆だね…頭で覚えるんじゃなくて、体が覚えるから喋れるし読み書きできるんだ。
 話をしてて覚えるのは、ペンを握る手じゃなくて耳と口と舌だわ。

 そういう訳なんで、国語の時間は文法の理解と文字を覚えるのに費やしています。
 読むのは余裕なんだが、書く時は筆が迷うんだよな。
 ディズィーの方はと言うと、こっちは余裕である。
 物覚えのいい子だし、ヘタな先入観が無いだけストレートに物を受け入れられる。
 テストの点数では全敗中です…うぅぅ…幼児相手に…。
 せめて長文問題があれば、そっちで点を稼げるんだが。
 ちなみに俺は字が汚いそうだ。
 手先は頭の中にあるイメージを丸ごとコピーできるくらいに器用なんだから、そのイメージが俺の頭の中で固まってないのが原因だろう。
 もう練習あるのみじゃないかメンドクセェ。


 その代り、数学…もとい算数の問題では俺が余裕でブッチである。
 ま、ディズィーはまだ2ケタの足し算を覚えたばっかりだから当たり前なんだけどさ。
 ちなみに引き算は1ケタしかできない。
 現在、5歳児くらいだから、これは…遅いのか? 早いのか?
 小学校一年の時に、1ケタ2ケタの筆算を習った覚えがあるから、そう遅くはないと思うんだが。
 そーいえば、中学だったか高校だったかの英語の授業で、「小学校の時に習った筈」なんて言われた事があるけど、習ってねーよ。
 ローマ字しかやってないよ。
 確かに、小学校で英語を習わせる習わせないの境界線辺りの世代だったけどさ。

 ま、とにかく、だ。
 俺は国語じゃディズィーに負け続けの一方で、算数じゃ自慢できない白星を刻み続けている。
 ディズィーはテストで負けているのが悔しいのか、時々お婆さんに特別授業を強請っている………特別授業って言葉で卑猥な妄想をした奴、君達は相手がお婆さんでも漲るのかね?
 うーん、しかしディズィーって意外と負けん気が強いのな…相手を傷つける争いじゃあないから、かもしれないけど。
 ゲームの方では闘争本能とか弱い…まぁ、他の連中に比べれば誰でもね…方だと思ってたんだが。
 仮にゲームと同じ性格になるとするなら…やっぱり、魔の森で一人ぼっちだった期間が響いたんだろうねぇ。
 だったら大丈夫だな、なんたって俺がいるから一人じゃないヨ!
 
 ちなみに、テストは毎日…じゃないが、毎週勉強をした日の翌日にやってる。
 これはいいやり方だと思う。
 人間…俺達ギアだけど…、教えられたらすぐに復習して、ちょっと間を置いてかからまた復習。
 それくらいのペースでやるのがいい。
 月を見るたびに…もとい、忘れかけた頃に思い出せ、って訳だな。

 まぁそれはそれとして、俺は国語の授業以外は真面目にやってない。
 つーても、国語以外じゃ算数と…精々家庭科くらいしかやってないけどね。
 社会とか理科とかやるには、俺達はちっと幼すぎる。
 まぁ、普通に考えりゃ理解できるよーな年齢じゃないわな。
 でんぷんを…なんかやって紫に染めたからって、どうなる訳でもないし。
 それよりは料理や掃除を教えた方が後々役に立つってのは確かだと思う…将来性を考えない、即物的な理由でね。
 …つーか、俺の知ってる科学知識って…一応ブラックテック?
 でも機械らしい知識なんて持ってないしな…原子分子の知識なら、この時代にも伝わってるだろうし。

 それは置いといて、俺は国語以外は真面目にやらない…と言うより、聞いてはいるけど態と間違えたりする。
 何のためかって?
 そんなモン、俺が間違えたのに自分は正解した時のディズィーの表情を堪能したいから決まってるじゃないか!
 いやー、もう微笑ましいと言うか何と言うか、いつも負けてる分「どう? フフン!」って感じで俺を見てくるのよ。
 でも、俺がそれで悔しがる筈が無い。
 当然だな、わざと間違えてんだからさ。
 でも、それがディズィーには気に入らないらしい。
 まー突っかかって行ってる相手が余裕カマしてたら、あしらわれてる気がして気にいらんのも当然だ。

 が、これがまたカワイイ!

 フフン!って顔から、むぅーっ!って顔にどんどん変わっていくんだぜ!
 日頃のディズィーじゃ、まず見られない表情だ。
 苛立ちを覚えるって事が、殆ど無いからなぁディズィーは…。
 脹れっ面になって、「次こそは!」って顔でプンプン怒りながら、俺を見るのを止めて机の上のノートに向き合うんだ。
 それを和やかな…本当に和やかかって質問は無しだ…顔で見ている俺。
 そしてそれを更に見守るお婆さん。
 …お婆さん、俺が手を抜いてるって事くらいお見通しだなぁ…。
 でも何も言わないのは、俺が授業内容を充分理解しているのと、それ以上にディズィーが可愛いからだと思う。
 うん、あの目が会った時、「分かってるねぇナッシュも」「いえいえお婆さんこそ手練でいらっしゃる」的なアイコンタクトは錯覚なんかじゃない。

 さて、今日の授業は算数。
 勿論、脳内チートを十二分に活用できる俺が負ける筈が無い…というかこれで負けたら凹む。
 まぁ、あまりの陽気に頭が回らなくなって素で間違えた事はあるけど…あれは仕方ないよ。
 昼飯直後で日当たりもいい。
 誰だって寝ちまうって…ディズィーも結局寝てたし。

 算数の授業だけど、残念な事が一つある。
 それは何かって?
 言語体系が全然違うから、1+1=田んぼの田が出来ないんだよ。
 お父さんカエルはケロケロケロ、お母さんカエルはケロケロ。 さて、子供はなんと鳴くでしょう?オタマジャクシは鳴きません、はできたんだが。
 …でもね、後から聞いてみたら鳴くらしいのよ。
 しかも口がデカくて牙があって羽があって光線まで撃って来るらしい。
 それオタマジャクシじゃなくてギアだろ…と言いたい所だが、案外いるかもなぁ。
 ゲームでも背景に有り得ないくらいにデカいカブトムシとか地球外生命体っぽいのとか居たし…人間の亜種が居るんだから、蛙の亜種も居るかも。
 つーかそのオタマジャクシが蛙になったら、どんな恐ろしい生命体になるのやら…。
 つくづく侮れんと言うか安心できんな、この世界は…。


「ディズィー、5+6は?」

「えっと……いち…に……さん…」


 …ああ、しかしこのディズィーの可愛さよ!
 今の俺達からしたら、どうして間違うのか理解できないくらいの計算なんだが、それでも数字自体に馴れてないディズィーにとっては大変な作業だ。
 指を一本一本立てて、数を数えている。
 真剣な目で、自分の手を見つめて一本指を立てる毎に間違っていないか確認していた。
 が、残念ながら問題は5+6。
 答えは当然ながら11…別に引っかけ問題じゃないからね。
 両手で数えようと思ったら、1本分足りてない。


「……はち…きゅう……じゅう………・…え、えっと…」


 全部立ててしまった両手の指を戸惑いがちに見詰めて、ディズィーは悩んでいる。
 ここで「そういう時は、立てた指を折っていけばいいんだよ」と……言う訳が無いワナ。
 いやー、別にディズィーが困ってるのを見て楽しんでなんかいないよ?
 ホントだよ?
 立てた指を折っていくなり、足の指を使って数えるなり、指じゃなくてノートに点を打っていってそれを数えるなり、そーいう工夫をする癖を付けておく為に決まってるじゃないか!(爽やかな笑み)
 決して、「どうしようどうしよう」って顔で指を見たり、助けを求めるようにお婆さんを見たり(勿論お婆さんはニコニコして見てるだけ)、俺に助けを求めようとしてやっぱり止めたりと、いやー子供って表情豊かだねぇ。(爽やか笑み)
 ついでに言うと、俺は問題を与えられたら、ディズィーのように指を立てる事無く即答している。
 即答できたからって威張れるレベルじゃないが…そうしてディズィーにちょっと視線を向けてやると、ムキになって自分も暗算で答えようとして…やっぱり指を折り始める…しかもちょっと悔しそうに。(爽笑)

 ディズィーはこのまま悩んでいても答えが出ないと思ったのか、指を一度全部折ってもう一度最初から数え始めた。
 が、このまま行けば同じ結果に付き当たるのは目に見えている。
 そして悔しそうに俺を見る……ああ、妹幼女から受ける微妙に敵意が入った視線もオツなもんだなぁ…。(邪笑)


「……いち…に……さん…」


 ところで唐突に何だが、番長皿屋敷という怪談をご存じだろうか。
 番長つーとボロボロの学ラン来て下駄履いてて成績が悪くてケンカするあの番長が思い浮かぶが、その番長とは関係ない。
 むしろもっと古い歴史を持つ、由緒正しき怪談である。
 どのくらい由緒正しいかというと、「ばんちょうさらやしき」を変換したら一発で「番長皿屋敷」に変換されるくらいだ。
 …スマン、間違えた…番町皿屋敷だった…。
 

「よん……ご………え、えっと…ろ……ろく?」


 詳細は省くが、10枚ある筈の皿の数を数えて「八枚…九枚…一枚足りな~い!」と叫ぶ幽霊が居て、とあるお坊さんが「九枚…」の所まで来た時に「十枚」と声を上げる事で、その幽霊を成仏させたと言うお話だ。
 何が言いたいかってーと。


「はち…きゅう…じゅう…(ヒョイ)…じゅういち!」

「はい、よく出来ました」

「やったー!」


 バンザイして歓声を上げるディズィー。
 そして固まる。
 その目の前には、俺が突き出した指一本。
 勿論、ディズィーが十まで数えて詰まる瞬間を見計らって突き出した一本だ。
 浮かれた表情は一転、不満そうに剥れて俺を見るディズィー。
 ああ、もっと睨んでくれ……。

 と、とにかく、クリアできたと思ったら、最後のところでライバル(つまり俺)が手を貸していたとくれば、そりゃー面白くあるまい。
 俺はその表情が見たくて手伝ったりしてんだけどね。
 でもディズィーにしてみれば、手伝ってくれたのだから怒る訳にもいかず、お礼を言える程に意地を治められず…。
 はっはっは、大変だねぇw
 こうやって確信犯的に内心で笑ってるのに気付いてるのか、ディズィーがますます膨れている。
 ああ、可愛いなぁ。

 そのほっぺでプニプニしない手はないでしょう。
 膨らんでいる頬を撫でてやると、くすぐったそうに顔を背けてしまう。
 が、勿論その程度で逃げられる筈もない。
 むしろ顔を背けた分、こっちからの攻勢を目に出来なくなって隙が出来る。

 そこから先はフィーバータイムですよ?
 頭を撫でようが、頬を突こうが、首筋を舐めようが(やったら張り倒されるので、指を這わせる程度です)一方的にスキンシップを計れます。
 で、怒っていようがいまいが、ディズィーはスキンシップが大好きなのだ。
 ちょっとナデナデすると、それだけで表情が緩んでくるくらいに。
 そして暫く堪能していたと思うと、ふと我に返って「私怒ってます!」な表情を取りつくろうのだ。
 無論見え見えだが。

 そんでもって、そういう集中できてない状態だから、次に何か問題を出された時には間違える。
 そんな時には、今度は俺の出番である。
 途中式…と言う程のものでもないが、「何故そうなるのか」を一から述べながら正解する。
 これを聞いて、ディズィーがまた悔しそうな顔するんだよ。
 それでも俺の解説は分かりやすいのか、悔しそうな顔をするのは最初と正解後だけで、「ふんふん、そーなのかー」って感じでコクコク頷きながら聞いてくれる。
 その時に向けてくる、尊敬の視線が何ともくすぐったい。
 ああ、これが人に教える快感…と言うか、一方的に俺が喋るだけだから、聞いてるだけの授業より楽しいのは当たり前かな。


 それを数回も繰り返すと、いい加減ディズィーも疲れてくる。
 元々怒りが持続するタチじゃないしな。
 その辺を見計らって、お婆さんからお勉強終了の合図。
 休憩時間や放課後に騒ぐのは、人間でもギアでも変わりないね。

 ま、放課後って言っても、座学が終わってお遊戯の時間になるだけだ。
 3人揃って、夕飯の支度の時間まで遊ぶ。
 あやとりとか、メンコ、カルタ…何で日本文化がこんなトコに?
 まぁ、楽しいからいいが。

 どの遊びも、勝とうと思えば俺はブッチギリでトップを取れる。
 チートボディを舐めるな…この程度でチートしても自慢にならん、せめて何処ぞの部活か大会でチートできるくらいじゃないと。
 カルタに関しては、国語についてディズィーに一歩劣る俺が不利…に思えるかもしれないが、そんな事は無い。
 ディズィーが動くのを見てから手を伸ばしても、余裕で俺が先に標的に手を付ける。
 そしたらお互いの手が重なって、ラブコメよろしく慌てて手を引っ込める…ような事をしたら、ディズィーが泣きそうになるからやらないけどね。
 自分に触りたくもないのかって…いや、やった事無いから、そういうリアクションが返ってくるかは分からんよ?
 大体ディズィーの掌に接触してるのに、どうして慌てたり離れたりする必要があるのさ。
 むしろ堪能しないとネ!
 逆に、俺が手をゆっくり出して、ディズィーが先に目標ゲット、その上に俺の手を乗せるって事もある。
 勿論態とに決まってる。
 ああ、俺の手の下で押し倒されているディズィーの掌萌え…。
 そして「勝ったよ!」みたいな顔して俺を見るディズィーが萌えッ!

 他にお遊戯っつーたら、まぁちょっと体を動かす事だな。
 でもお婆さんはもう歳だし、ドタバタ動き回るのは俺とディズィーの二人だけ。
 それも家の中だから、対して暴れられない。
 だから…俺はディズィーに踊りを仕込んでいたりする。
 …オイコラ、今何かエロい踊りを妄想した奴出てこい。
 詳しく聞かせてくれ俺も妄想するから。

 仕込んでる踊りだが…言うまでもないよな?


「じゃ、ディズィー。
 今日は1分やってみようか」

「うん!
 それじゃ、なっしゅも」


 二人並んで、お婆さんの前に立つ。
 揃ってまず直立。
 そして両手を頭に当てます。

 ハイせーの、



 ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)
 ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)
 ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)
 ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)
                 」


 これ以外にも、パラパラ仕込んでるけどね!
 横目に見えるディズィーの満面の笑みと腰の動きに萌え血が全身から出そうです。
 え、自分がやってる事について?
 いやぁ、ウマウマ(゜∀゜)は一人でやっても片手落ちでしょう。
 二人揃ってないとね!
 俺も最初は恥ずかしいと思わない事はなかったが、開始3秒でそんな羞恥は吹き飛んだぜ!
 心底楽しそうなディズィーと一緒だったら、俺だって笑顔にならずにいられない!
 ぬぅ、これ一撃必殺技に使えるかもしれん。
 ディズィーが踊り出したら相手も一緒に踊りだして、必殺はしないけどなんか仲良くなって万事OKとか。
 …マジで狙ってみるか?
 宴会でも大人気だぞきっと。
 闇慈とかにもやらせたら、舞いが本職だけあってキレが違うかも。
 一番やらせてみたいのはロボカイとジャスティスだがな!
 …クリフの爺様は駄目だ、公式で腰がグキッと行ってるから。
 やるなら気の力っぽい何かで若返らさないと…この踊り、見てる分にはいいけど結構腰にくるのよ。

 いやいやマテマテ、今はいいよ、幼児だからな。
 萌えしか出ないからな。
 しかし、将来(つーても3年以内だが)にはディズィーは天然巨乳さんになるんだぞ。
 しかもあのバトルコスチュームだぞ…アレをボンテージと思うのは止めた、陸上用の水着だと思え。
 とにかく、あのコスチュームで踊るのか?
 ………イカン、肉体年齢的にまだ先だっつーのに息子が巨大化しそうだ。
 揺れる、揺れるぞ!
 ナニがとは言わんが揺れまくるぞ!
 スパロボも真っ青の揺れっぷりだ!
 DOAなんざメじゃないぜ!
 ぬぅぅぅぅ、そんなモン実用化した日にゃ、ディズィーをロクでもない目に合わせる同人誌が山ほど増えてしまうではないか。
 俺が読めない以上、そんな代物の存在は許さネェーッ!
 逆を言うと俺が読めればある程度は許すから、次元の壁を越えてでも許可を取ってサンプルを送ってくださいお願いします。
 と言うか揺れるくらいならまだいいよ、ポロリがあったらどーすんだ!
 俺は服を着たままの方が好きな人だけどね!
 それがボンテージなら尚更…どっちが責める方かはノーコメントと言う事にしておく。
 どっちでも行けるんじゃねーかと思った人、多分正解。
 あんまりディープな方面に行かなければ、人間は大抵の事には慣れる生物です。

 さて、一頻り踊って、そろそろ疲れてきた。
 ディズィーも疲れてきたようだ。
 時々見えるパンチラから生えているシッポが、上ではなく下向きになっている。
 これ、ディズィーが疲れてきた時に自然とこうなるらしい。
 元気な時とか、驚いた時にはピンッって上に向かって直立するんだぜ!
 今はまだそれ程の長さじゃないけど、将来はスカートを持ちあげてパン2○見えにしちゃうんじゃないだろうか…どんだけお色気キャラだろう。



「はい、ナッシュ、ディズィー。
 私はお夕飯の準備をするからね。
 二人とも一緒に遊んでいらっしゃいな」

「「はーい!」」


 さて、今日はこの辺にしておこうか。
 やっぱりディズィー自慢はフィーバータイムだなぁ…。





[17288] 06
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/04/05 22:09
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 ちょっと前まで、自分は強くなるべきかならないべきか、それが問題だ…なんてシュークリームをディズィーとワケワケしながら悩んでいたりもしましたが、吹っ切れました。
 考え方をちょっと変えればよかったんだよ。
 『自分の力を使えるように訓練する=強くなる』じゃなくて、『自分の力を役立てられるようになる=結果的に強くなっていた』にすればいいんだ。
 何言ってるか分からないって?
 つまるところアレだ、ゲームのディズィーの技だよ。
 「魚を捕る時に使ってたんです」「はじめはただの明りだったんです」「木の実をとる時に使ってたんです」だよ。
 あーゆー風に、日常的に使えるように訓練すればよかったんだ。
 例えば「薪を割る時に使ってたんだ」「ディズィーを覗く時に使ってたんだ」「刃が鋭いからタマネギを切っても涙が出ない」みたいに。
 あくまで生活の為に、な……・…なんか2つ目の奴で、ギアとは別の意味の危険人物指定を受けそうな気はするが。
 それでどうなるって?
 いや、だからつまり、そーゆー便利な能力が、結果的に戦闘に使える代物だったってだけで、俺自身は強くなろうなんてしていないのだ!
 だから俺は戦闘を求めるような、危険なギアじゃないんだYO!
 それが戦闘に使えるのは、俺の中の戦闘プログラムが使えるモノを使ってるだけで、ギア関係の能力だろうがその辺の木切れだろうが関係ないのSA!

 …いや、あの連中を相手にこんなコジツケが通じるとは思ってないけどさ。
 それでも言い訳や建前の一つもあるっていうのは、気分的に大分違う。
 そもそも、結局ある程度の力が無ければ命乞いする暇も出来ないし、何よりディズィーも護れない。
 結局は、特にがっつかない程度に技とか開発しようという結論になった。

 …ディズィーの技と言えば、疑問が二つある。
 まず「よく話し相手になってくれます」だけど…ありゃ一体何だ?
 氷っぽいナニカで出来た口を出してたけど、あれって話し相手になるなら自我があるのか?
 …小パンチであっさり粉砕される儚い命だが、あれって命を使い捨てにしてたのか?
 しかも生み出されて10秒もしない内にあっさり寿命を迎えるとは…。
 ぐふぅ、何か罪悪感湧いてきた!
 いや待て、だったら使うディズィーは何で平然としてたんだ?
 使い潰して何の問題もない生命体なのか?
 謎は深まる。

 そしてもう一つ、これ物凄く重要な事なんだが…GGXXで、フォースブレイク技に「独りにしてください」っていうのがあったよね。
 誰が独りにするもんか地獄でもベッドでも風呂でもトイレの中でも俺達は一緒だぜ!
 ………心がな。
 ストーカー容疑で逮捕なんかされたくないよ。
 えー、とにかくあれって何やらシャボン玉出して、そこにスッポリ入る技だった。
 いや、確か出したら結局すぐに出てきてたけど、技の名前が行動を表しているなら、もっと長い間泡に閉じこもる事もできたんだろう。
 で、ここで重要なのは……あの泡、何で出来てんだ?
 確かウンディーネが何かやって作っていたような気もするが…。

 ………まさか…まさかまさかとは思うが、アレってディズィーの体液ッ……!?
 もしもそうだったら、俺幾らでも吶喊するぞ!
 アレを受ける為だけに、パーフェクト勝利一歩手前から逆転負けしたって悔いは無い!
 と言うか何処だ、何処の液だ?
 唾か?
 涙か?
 汗か?
 汗だったら何処の汗だ?
 あれだけ大きな泡を作るんだから、人間だったら余裕で脱水症状になるんだろうな。
 大量の汗を出すところっつーたら…脇の下とか?
 或いは耳の上側?
 それとも靴に包まれた足?
 あのボンテージもとい水着っぽい衣装、腹とかの露出度は高いけど、その分何か蒸れそうだな。
 ハードレザーっぽいし。
 いやいやマテマテ、案外シッポもすごく汗を掻くのかもしれん。
 さもなくば……じょ、女性としてとても大事なトコロッ………いけませんそんなハシタナイ、対戦で使っちゃイケナイのコトよ!

 ただ一つ言える事は、何処の液であっても、俺にしてみればどんな香水よりも上品で芳しい香りに違いないって事だな!
 ニンニク吐息だろうが何だろうが、これ以上ないほどにフローラルな香りに感じられると言ったのは嘘でもハッタリでもないんだぜ。
 泡っつーても結局は液体な訳だから、あれを集めて直に啜ったりしたら俺はもうッ…吸血鬼じゃなくて吸液ギアになってしまうかもしれん。
 無論、ディズィー専門のな。





 さて、今日の近況報告。
 肉体年齢は、7~8歳にまで達しています。
 最近、ちょっと難しい年齢に入ってきました。
 俺じゃなくて、ディズィーがね。
 俺はこれでも、中身は20過ぎた好青年…え、高精念って何?交性燃?…だから、精神的にディズィーよりは頑丈だ。
 でも、ディズィーは見た目よりも更に年齢が低いから、精神的な耐性と言うか頑丈さがとにかく低い。
 今まではそんな鬱な展開が入る事なんて無かったんだが、最近はな…。

 何があったかって?
 いい加減、俺達に向けられる目がちょっとずつ痛くなってきてるのが、一つ。
 更に、ディズィーが自分の外見を気にしだしたんだ。
 つまり羽とシッポ。
 どうして自分にだけ羽シッポがあるのか、どうして俺にだけ角があるのか、悩み始めているようだ。
 元々、隠すように言い聞かせたしなぁ…気になっちゃうのも仕方ないと言えば仕方ない。
 いい加減、ディズィーにギアの事を語って聞かせるべきなんだろうか。
 ショックを受けて家出でもされたらと思うと、不安で仕方ない。
 もしそんな事になったら、俺は夜な夜な悪魔の森の奥深くまで駆けこんで何処ぞの高い木の上でフェンリルみたいな遠吠えを響かせる運びとなるだろう。

       あお~ん

 なんてね。

 ま、何だな…いつかは話さないといけない問題だけど、14歳前後の時は止めた方がいいよね。
 ディズィーが厨二病にかかったらと思うと、目も当てられん。
 …まぁ、この天然妹君が邪気眼だの世界を滅ぼすだのを言いだすとは思えんけど。
 よく考えたら、邪気眼はネクロ・ウンディーネで、世界云々はギア的な何かで可能だな。

 ………え、じゃあひょっとして俺も出来る?
 ぬぅ、恥ずかしいのを我慢して、一度やってみる価値はあるかもしれん。
 だって、厨二の邪気眼がアレなのは、要するにカッコ付けてる上にそれが下手だからだろ?
 つまり冗談抜き、誇張も何も無しに「左手が…疼く…!」とかになったら、それは厨二じゃない訳だ。
 少なくとも、過去を振り返る日が来ても、リアル厨二病より羞恥心を感じなくて済む。
 そんな言動をしながら厨二ではないなんて稀有な体験、もう出来ないかもしれないじゃないか。
 うん、ギアパワーを制御できなくなるような機会があったら、狙ってみよう。
 ギア細胞を持たぬ者にはわかるまい…!




 さてさて、重苦しい話題は置いといて、 デ ィ ズ ィ ー 自 慢 だ よ ッ !
 と言っても、今回のは正確に言うとディズィーとはちょっと違うかもしれない。
 大きくなってきた羽…つまりネクロとウンディーネの事だ。

 相変わらず羽の形のままなんだが、最近はディズィーの意思とは無関係にピコピコ動いている事がある。
 例えば昼寝中とかな。
 元々、この羽をディズィーは自分の意思ではあんまり動かせなかったみたいだ。
 何度か試してみてもらったけど、何と言うか…………そう、足の薬指だけを動かそうとする感覚に似ているとか。
 …この比喩は、あくまでディズィーの感想を俺なりに解釈したものである事を付け加えておく。
 足の中指か……フーゾク行った時に舐められた事あるけど、気持良……いやいやいや、忘れろ忘れろ、今の俺は肉体年齢7~8歳だ。

 えー、とにかく、最近ディズィーの意思を無視して、羽が動くようになってきた…これもう言ったか。
 昼寝中にも動くが、一番よく動くのはナデナデしてる最中だ。
 俺は主にディズィーの頭とか首筋とか、後は背中にやら腹やら胸…は自重してるよ…を撫でているんだが。
 ちなみに、今は頭を撫でている。


「にへへ~」


 溶けたアイスクリームみたいに緊張の無いディズィーの笑顔。
 これが見たいが故のナデナデと言っても過言ではない。
 もっと見つめていたいが、ちょっとそっちから目を離し、彼女の背中に目をやってみると。

 パタパタ
  パタパタパタ

 羽がせわしなく揺れている。
 俺も撫でろ、私も撫でてと言わんばかりにパタパタ揺れている。
 実際、そっちに手を回して撫でてやると、パタパタは小さくなってゆっくり揺れるようになる。
 片方だけしか撫でてない時は、もう一方の羽が「私も、私も!」と言わんばかりに自己主張してるんだぜ。

 で、両方を撫でている時は、肝心のディズィーが不満顔だったりするんだから困りモノだ。
 羽を撫でていても、ディズィーには感触は伝わってる筈なんだが…やっぱり頭なり背中なりを直接撫でた方が気持ちいいらしい。
 それに、無意識かも知れんが、俺がディズィーじゃなくてネクロ・ウンディーネを撫でているという意識にも気付いているのかもしれない。
 つまり……。

 ヤ キ モ チ だ ね !

 ああ、ディズィーにヤキモチを妬かれる日が来るなんて…なんかもう俺、聖戦時代にタイムスリップしたとしてもこの思い出だけで戦っていけるような気がしてきたよ。
 …今、何かヤバいフラグ立てたような気もするが、先の事は考えても仕方ないわ。


 だが、ディズィーがヤキモチを妬いてくれるのが嬉しいからと言って、それを放置しておくわけにはいかない。
 何せヤキモチを妬いていると言う事は、寂しがっていると言う事だからね。
 ヤキモチを妬く表情が可愛いから、なんて理由で放っておく事ができますかって。
 …あんまりにも嬉しかったので、ヤキモチヤキモチと連呼してみました。
 そしたら磯辺焼き食べたくなってきたよ!

 まぁとにかくだ。
 ディズィーを撫でればネクロかウンディーネのどちらかを撫でられず。
 ネクロとウンディーネを撫でればディズィーを撫でられず。
 あちらを立てればこちらが立たずの状況で、俺は考えた。
 何とか3人纏めて撫でられないものだろうか。

 考えた。
 考えた。
 考えた。
 ディズィーを膝枕して耳掃除なんかしながら考えた。
 そして閃いた!

「ディズィー、耳掃除終わり。
 撫でてあげるよ」

「わーい」


 ディズィーの耳にフッと息を吹きかけて耳掃除を終え…ブルッと来たみたいだ…、声をかけるとディズィーは無邪気に抱きついてきた。
 ああもう、スキンシップが大好きだねこの子は。
 真正面から抱きついてくるディズィー。
 そうそう、この体勢が必要だった…役得でもあるけど。

 早く撫でろ俺を撫でろとばかりに、背中の羽が急かしてくる。
 俺がそっちに手を回したのを感じて、ディズィーは不満そうな顔をした。
 が、ここからが本番だ。


「んっ…」

「んひゃっ」


 ディズィーの首筋に、思いっきり顔を埋めました。
 ああ、スベスベした感触だ…。
 そして僅かに香る人肌のニオイ。
 思いっきり吸い込んで、トリップして、息を吐くと、ディズィーがくすぐったそうに震えた。
 敏感なうなじに息を吐きかけられれば、そりゃくすぐったいさ。


「えと、ナッシュ?」

「気持ち良くない?」

「………くすぐったい…けど、きもちいいかも?」


 首筋に顔を埋めるだけじゃなくて、俺自身も顔をグリグリしてみる。
 何をやってるって?
 要するに、ネクロとウンディーネの相手をしている時に放置されているからディズィーは不満に思うんだよ。
 だったら、別の方法…手で撫でる以外のスキンシップをしていれば大丈夫なんじゃないかね。
 それに、子供のホッペは本当にスベスベだ。
 ディズィーの頬を触ったりしているから良く分かる。
 俺の頬もディズィー程じゃないが、やっぱりスベスベ。
 手で撫でるよりも、頬を合わせた方が肌触りはいいのだ。
 何より、両手を背中の羽に、そして顔を首筋に付けている為、抱きしめているような体勢になっている。
 密着感がハンパ無い。
 もしもこれでディズィーの胸がCカップくらいまであったら、俺は色々と立ち止まれる自信がゼロを通り越してマイナスだ。

 最初はディズィーも戸惑ったようだが、気に入ったらしい。
 そして俺の首筋に、同じように顔を埋めた。

 ………この発想は無かったよ。

 いや、冷静になってみれば当然の帰結だった。
 まぁ、ディズィーと抱き合ってる時の俺が冷静なんかになれる筈ないから、後で気付いた事なんだけどね!

 元々ディズィーは俺の真似をしたがる傾向がある。
 最近は治まってきた…と言うより自立的に行動するようになってきたんだが、ふとした拍子に俺の真似をしている事がよくある。
 食事中も、同じ種類のパンを同時に頬張ってたり、風呂上りに揃って青汁一気飲みしてみたり…まぁ、青汁に関しては次の日から牛乳に変わったけど。
 そのディズィーが、ナデナデの最中は大人しくしているものの、途中から逆に俺をナデナデする事なんか珍しくも無い。
 だからと言ってヨロコビが薄れる筈も無く、毎回毎回頭の中でスクワットなどしつつ激情に耐えている訳だが。

 んで、この首筋に顔を埋めて抱き合っているような状況…普通にナデナデするのと違って、お互い同時に出来るんだった。
 よくよく考えなくてもすぐ気付くべきだった。
 気付いたところで止めはしないが。
 …何で気付かなかったって?
 そりゃーアレだ……俺自身がディズィーの首筋をクンカンクンカしたい…じゃなかった、3人纏めてナデナデできると思ったら舞い上がっちゃって。
 …フェティッシュな願望を満たす為に、危険要素を気付かないフリをした訳じゃない。
 そういう願望の為だったら、危険要素じゃなくてご褒美要素になるからなッ!


 ディズィーはこの体勢が随分と気にいったらしい。
 鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、俺の首筋をグリグリしてくる。
 背中の羽も、俺に撫でられてご満悦っぽい。
 ディズィー自身も、お互いグリグリ+密着感でご満悦。
 そして俺はヘブン状態!
 いい感じでトリップしてます。
 ああ、このままキスマークでも付けてしまおうか!
 この季節なら、蚊に噛まれたで何とか誤魔化せるかもしれない。
 ディズィーの白い肌に刻まれる、俺の唇の後………イカン、俺の唇って所がマイナス点だ。
 なんかこう……幻想的な肌に、無駄に生々しい俺の跡って…。
 他の奴のだったら法力を駆使してキスマークを消すけどな!

 しかし、キスマークってどうやって付けるんだ?
 唇をくっつけて吸えばいいのか?
 ちょっとやそっとの吸引じゃ、跡が残るどころか5分もすれば赤みも取れると思うんだが。 


「~~~♪」


 と言うか、むしろ俺の方がキスマーク付けられそうな勢いだ。
 俺の方はと言うと、もうこのままクンカクンカどころかペロッと舐めてしまいたい衝動で一杯だ。
 ディズィーはうっすらと汗ばんでいるから、ちょっと塩味な天上の甘味が感じられるだろう。
 この際、妹幼女を舐めて発情する変態と呼ばれても構わんから、やってしまおうか?
 どうせ今は我慢できても、いつか限界が来るのは目に見えているし、早いか遅いかの違い…いやいや、早いから問題なんだろ真性ペドになる気か待て遅かったらそれはそれで普通にセクハラだし、男だったらどっちを選ぶべきかッ…アンケートにお答えください!?
 いやいや、そもそもディズィーが俺の真似をしたがるというのを再認識したばかりだというのに、それはどうだろう。
 ここで俺がレロっとやってみろ。

 きっと ディズィーが 真似して ぺろっ ってするよ!

 ぺろっ だよ、 ぺろっ 。

 カタカナじゃないんだよ!
 平仮名なんだよ!
 ここ平仮名もカタカナも漢字も使われてないけど、ニュアンス的にそんな感じで!
 妹幼女の擬音語は平仮名なんだよ文句あっかコラ!
 ととととととにかくだ、多分ディズィーはやる。
 最初は驚くだろうけど、俺に対しては遠慮があんまりないし、きっとやる。
 それはそれでとても嬉しい……嬉しいんだよ、色々葛藤あるけど嬉しいって思っちゃうんだよ分かってくれよ。

 えー、実際に ぺろっ された時の感激とかはとても言葉じゃ表せないだろうし、何より想像しようにも想像がつかないから、実際にそうなった時に保留にしておく。
 問題は…その後だ。
 賭けてもいい。
 もしもやってしまったら、俺かディズィーの…十中八九、俺の…タガが外れる。
 別にディズィーを獣欲に任せて襲ってしまう訳じゃない…今色々と堪能しているのは、獣欲じゃないからな!
 とにかく、タガが外れたら…きっと、あっちこっち舐めまくってしまうだろう。
 そりゃーもう、首筋を初めとして、指とか、腕とか、羽とか、羽と背中の境界線とか、ヘタするとシッポまで。
 …他もヤバいが、シッポは一番ヤバいな。
 敏感とかじゃなくて、まだそんなに長くないから舐めようと思ったらディズィーのスカートの中に頭を突っ込む事になる。
 流石にそれは自重云々以前にお爺さんにブッコロされそうだ。

 ちなみにお爺さん、人間で高齢にしては破格の強さの持ち主です…ゲームで出てきた連中とは、また桁が違うけど、
 長年猟師をやってた経験は伊達じゃないって事だね、特に罠を仕掛けるのがメチャ上手いんだこれが。
 森の中で追いかけっこして、チートボディだから楽に勝てる…なんて思ってたら3歩も進まず落とし穴にかかったり足を取られて逆さ吊りにされたりしたもんだ。
 体がギアでも、精神は一般人だし、戦闘モードに入ってないと運動神経がいい人程度の力しかないんだな…。

 えー、とにかくシッポだけは何とか我慢するにしても…いや待て、もしもディズィーから頼まれたらどーすんだ!?
 流石にそこまで無邪気通り越した神経を持ってるとは思いたくないが、ディズィーの純粋さは異常だ。
 何より、今までのパターンから考察しても、ディズィーは自覚なしに俺を悩殺する行動をとりまくる。
 風呂の時も、寝ている時も、昼寝の時も、食事の時も、自覚も無いのに俺のナニに顔を寄せたり、性的なニュアンスを見いだせる(妹幼女相手に見出す俺がダメダメというのは棚に上げても、だ)行動をとりまくるディズィーだ。
 それこそ、俺とディズィーの相違点である角(ナニと同じくらい敏感)とナニに興味を持って、 ぺろっ なんてやりかねない。
 …それってさぁ、おフェ○になるかな…ならないよなぁ。
 でも角の感覚的には似たようなものなんだから困り物だ。
 流石にこの年齢くらいになったらやらないけど、子供ってほら、おしゃぶり感覚で自分の指とかしゃぶったりするじゃん。
 それと同じ事をやってるつもりなのかもしれない。
 …まぁ、マジで試してみないと分からないけど、やりかねない事だけは重々承知しておこう。

 ああくそ、現実逃避もできやしない。
 何か考えようとしても、思考があっという間にエロい方向に流れていくんだよ。
 ある意味辛いよ…ナニが反応しないのが。
 枯れた気分になってくる。
 こりゃニンニクとか食いまくって精をつけねばならんだろうか。
 …まぁ、そりゃ将来の事としてだな。

 まず以て重要な事は、この悩ましくも背徳的な状況をどうするか、だ。
 と言うか、さっきからディズィーの鼻息の音が聞こえてくる。
 どーやら俺の匂いを堪能しているらしい。
 むぅ、ニオイをクンカクンカして興奮すると言う性癖は、多少なりとも俺も持っているんで何も言わんが…え、興奮っていうか食欲が湧くっていう意味だよ、カレーの匂いとかで。
 しかし自分がクンカクンカされる方に回るとヘンな気分だな。
 折角堪能してくれてるんだし、2,3日風呂に入ってない方がよかったか?
 …しかし、正直風呂に入ってるって気がしないんだよね俺。
 毎日シャワーだけだし、何と言うかこう…洗うだけ洗っても、サッパリした気分にならないんだ。
 …まぁ、俺と同じように洗っているディズィーの匂いも、特に強いってわけじゃないから、単に気分の問題なんだろうけどさ。
 …………いかん、3日洗ってないディズィーのニオイを想像してしまった。
 ああ、何て芳し…いやフローラ………ええと食欲がその…………性欲を持て余……………………すまん、忘れてくれ。
 言葉じゃ言えん。
 ただ精神コマンド魂熱血気迫愛必中閃きその他諸々(手加減除く)何よりも愛と祝福を重ね掛け(勿論効果重複)したくらいに漲ってキタッ!!!
 ヨッシャー!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 しかしてこの漲ったチカラを何処に向ければいい?
 俺の天上天下一撃必殺砲に向ければいいのか?
 それとも超大型回転衝角として体ごと吶喊していきゃいいのか?
 俺、親分の雲耀の太刀が一番好きなんだが。
 でも相変わらずナニは脱力しまくってるんだ…なんかこう、もうちょっとでスーパーサイヤ人になれそうなくらいにエネルギーが集中してるんだが。
 …まて、ひょっとしてこれ、本当にエネルギー集中してないか比喩表現じゃなくて。
 ちょっと検査………システムチェック。





 …………とんでもないモノを発見してしまった。
 システムチェック、と言うか体の機能のチェックしてみたんだけどね。
 今まで使えなかった機能の一部が、使えるようになってたんよ。
 さっき漲りまくったエネルギーで封印が解かれちゃったんだよ。
 何だと思う?




 ……………ヒント。
 中国。
 ほぼフレームのみ。
 基本的な言語能力あり(らしい)。
 目と鼻もある。
 電源ケーブルも必要だそうだが、なんか聞いた話じゃ龍脈だか地脈だかの氣のエネルギーを吸収して動くらしい。

 ……そろそろ分かったよね?











 先行者ばりの!




 股間の中華キャノンがあるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!




 マジだぞマジ!
 こんなショック、自分がギアだったと知った時以来で以上だよ!
 何でこんなモンがあるんだよオイ!
 誰だよこんなトコにこんな代物設置した阿呆は!
 ギアメイカーことあの男か!?
 それともお母さんことジャスティスか!?
 まさか誰かが設計したんじゃなくて生まれた時に自然とこうなったのか!?
 まさかまさか、実は俺の元になった生物(じゃないけど)は先行者で、わざわざソレにギア細胞を埋め込んだとかいうオチじゃあるまいな!?


 …いやいやマテマテ、ちょっと冷静になって想像してみよう。
 闘っている途中…そうだな、鍔迫り合いになったとするだろ?
 こう、相手から力をかけてきて、劣勢な感じになったと仮定するんだ。
 グググググ、と上から力をかけて、俺はもう少しで押し潰されそう。
 力で押し返すか?
 無理、敵わない。
 じゃあ力を唐突に抜いていなすか?
 それも無理、スピードも技量も差がありすぎて逃げたところで事態が悪化するだけ。
 故に、敵さんは確信し、同時に警戒するんだな。
 俺との力量差を理解して自分が勝てると判断すると同時に、一瞬でも気を抜いたら、それは即座に自分の死に繋がると気を引き締めなおす。
 そんな時に、俺は放つ訳だ。


 股間から。


 中華キャノンを。


 しかもディズィーに対するアレやコレで充填された、そりゃーもう超強烈な…当たり前だね、元が俺のディズィーに対する愛情とか劣情とかなんだから…エネルギーの。


 股間から。


 中華キャノンを。


 しかもディズィーに対するアレやコレで充填された、そりゃーもう超強烈な…当たり前だね、元が俺のディズィーに対する愛情とか劣情とかなんだから…エネルギーの。


 股間から。


 中華キャノンを。


 しかもディズィーに対するアレやコレで充填された、そりゃーもう超強烈な…当たり前だね、元が俺のディズィーに対する愛情とか劣情とかなんだから…エネルギーの。



 重要だからリピートしたぞ。
 しかも一回一回、コピペせずにベタ打ちして。
 根性籠める為に…あーアレだ、もしも俺が小説書いてるんだったら、ブラインドタッチなんかせずに人差し指オンリーの一本打法で。






 勝てる気がしねぇよ。
 相手が避けられるとも思わんけど、他の技やパンチとは比較にならない程強力だとは思うけど、直撃しても勝てる気がしねぇよ。
 間違いなく一撃必殺技(カウンター型とは珍しい)だけど、これで勝ったら俺が負けるよ。
 どないせいと。
 俺にどないせいと。
 使うべきなんだろうか。
 いや、そりゃディズィーの為なら使うよ?
 俺が死にそうになっても使うよ。
 命には代えられないもん。
 死か恥かと言われりゃ、それは恥でしょ。
 普通の恥ならね…普通じゃない恥っていうのは、人生を丸ごと使っても償えない恥の事を言うんだよ。
 例えば、ディズィーの心に一生消えない傷を残す…とかね。

 …ちょっと待て、自分の兄が股間から中華キャノンを打つギアだと知ったら、普通に一生モノのトラウマじゃね?
 いくらディズィーが心優しくて銀河より広い心を持ってて賢くて世間ズレはしてなくて巨乳になって天然さんでも、世を儚んで散ってしまうレベルじゃね?
 ユリアみたいにビルの屋上から飛び降りかねん…ユリア生きてたけど。
 ディズィーも飛べるし、ネクロとウンディーネも多分止めるか飛んでくれるから、ディズィーも生きてるだろうけど。
 つーか、キャノンだぜキャノン。
 Kanno…じゃなかったk、Cannon。
 日本語表記すると似てるからって、ファンに殺されるレベルのスペル間違いするトコだったぜ…。
 それはともかく、Cannonだ。
 中華レーザーならまだしも、Cannonだぞ。
 よく考えてみろ、レーザーだったらまだいいよ。
 光を収束させて放つ訳だから、ナニが輝くと言う18禁漫画並みのある意味神々しい光景を拝めるだけだよ。
 闇慈辺りなら、拍手すら打ってくれるような気がする。
 火傷はするかもしれんが。
 でもCannonだとなぁ…。
 細かい種類とから知らないが、小さく見積もっても2,3センチ以上の実弾が発射されると予想される。
 何処から?
 …そりゃ尿道からだろ。
 で、先っぽのワレメから出てくるだろ。
 ……2,3センチもある弾が。
 実弾だぞ?
 当たったら死ぬ勢いで。

 ………俺のナニが死ぬわ!
 『海綿体を、ブチ撒けろ』だなんてハラワタをブチ撒けた方がマシだってのホントに!


 ん、でも実際にやると仮定して…やりたくない事この上ないが…何処を狙う?
 確実に当てる事を考えるなら、やっぱり腹だろうな。
 鍔迫り合いの状況なら意識は上半身に向きやすいだろうし、何より腹なら的が大きいから当てやすい。
 が、その反面、腹に風穴開けた程度じゃアイツら普通に襲ってきそうだな。
 一撃必殺技受けたのに戦闘続行、そんなのアリ?
 確実に相手を仕留める事を考えるなら…………相手の死をも厭わず、という条件でだ…………選択肢は二つ。
 心臓か。
 顔面…というより脳か。
 何て物騒な選択肢だ。
 平和的ギア第一人者の名が廃る。
 が、廃るのを敢えて無視して、本当に狙えるのかという疑問も差し置いて、一度考えてみよう。
 もしも顔面を狙った場合………。


 それは顔射に含まれるのか?


 ………ヤロー相手には絶対に使わんが、女性相手に使っていいものか非常に悩む。


 ああもう、今日はもう考えるの終わり!
 考えれば考えるほど怖い想像しか出てこないし。
 ディズィー自慢から俺の自爆型兵装の話に移ったし、これで今日は終わり!
 もうディズィーをだっこしたりナデナデしたりして、この鬱憤を癒すよ。

 はぅ、ディズィー………。


「ん~……ナッシュ、いいニオイがするね」


 ………再び漲ってきた。
 今度はケツに何か目覚めるかもしれん……。
 でも今はヘブン状態を堪能するよ!








アトガキ
投稿してから1日経ってないけど、中華キャノンに対するコメントが少ないのがちと寂しい…。 
信じられるか?
渾身のネタだったんだぜ?



[17288] 07
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/04/10 13:45
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 何はともあれ、強くなる事に決めました。
 リスクが大きいだの、危険視されるだの、そんな事考えるだけムダだった。
 人生なるようになる。
 そりゃ色々と最初は迷っていたが、迷うって事はメリットとデメリットがほぼ均等にあるって事だし、どっちを取っても危険度は変わりない訳だ。
 なら趣味の方向に走ればいいだけである。
 どっちに転んでもメリットは無くデメリットばかりのような気がするが。

 大体だ!
 あの日に不意に聞こえた、頂いた感そ…もとい天の声ッ!

『とりあえずカイさんがやってきた時に立ち向かえるくらい強くないと、もっていかれるよお義兄ちゃんw』

 の一言が俺に全てを決めさせたのだッ!

 ちなみに執筆時、第6話投稿直前ッ!

 誰が誰のお義兄ちゃんクァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
 最低限アレだ、『お嬢さんを私に下さい!』⇒『妹が欲しければ俺を倒してみろ!』⇒徹底的に殴り合って、俺敗北⇒酒&『お前のパンチ…効いたぜ』のコンボが出来るくらいには強くならんとイカン。
 父親と娘じゃないのがちと残念だが、俺は兄妹愛と家族愛と父性愛を全て持っているから問題ない。
 ヘタをしなくても母性愛も兼ね備えていると自負している。
 それに、両親(お爺さんお婆さんじゃなく、血の繋がった親)が居たとするなら、どっちかと言うと母親の方がこの役をやりそうな気がする。
 それに比べりゃマシだろう、なんたって俺達の母親はジャパンを消し飛ばしたジャスティスだ。
 父は…知らんが、お母さんと子作り出来るくらいのメカフェチ的猛者だ。
 殴り合うどころか生存もできんよ。
 KYだったらROBO-KYになっちゃうかもしれん。
 ディズィーはいつになったら結婚できるのやら。
 結婚なんかせずに、ずっと家に居てほしいけどな!


 …いや待て、『お義兄ちゃん』の呼び方なら、ディズィーを嫁にやらず婿を取らずとも、孤児とか拾って教え込めば……やめとこう、犬猫でも面倒見れる自信が無いのに人間なんて。
 同族っつーかギアなら何とかなるかもしれんが。
 多少放っておいた所で死にそうにないし、むしろ拾って育てたら俺達を護ってくれるかも……話が逸れたな。
 
 とは言ったものの、強くなるったってどーすりゃいいんだか。
 法力の使い方は分かるし、ゲームで使われていたフォルトレスディフェンスみたいなのも、一応できる…らしい。
 実際には、まだ法力使った事ないのよ。
 何処で誰が見てるか分からんし、お爺さん達にも余計な心労を与えたくない。
 仮に正常に使えたとしても、出来る=使えるではない。
 戦闘の経験も必要だし、体の動かし方だって必要、相手の狙いを読み取る力とか、とにかく色んな物が必要だ。
 ちなみにサイクバーストはまだ出来ない…体が未成熟だからか、それともゲームの機能的にこの時期はまだ備わって無い事が何か関係しているのか。
 
 その辺の指導をしてくれる人なんて、この近辺には一人だって居ない。
 一番出来る人って言ったら、ウチのお爺さんが真っ先に挙げられる。
 狩りの途中にクマに出くわして、ワンパンかまして逃げてきた事があるらしい。
 まさかとは思っていたが、体に残っている大きな爪跡はその時のものだったらしい。
 鷹村さんじゃあるまいし、わざわざ殴らなくてもそのまま逃げればいいじゃないのよ。

 とにかく、ギアの戦闘本能とかがあるとは言え、我流じゃタカが知れてるし、何より基礎も出来てないのに一人で戦闘訓練てのはアレだ、噛ませ犬フラグだ。
 ヤムチャしやがっての前触れだ。
 いや噛ませ犬通り越して、モブキャラの自称・達人フラグだ…噛ませ犬とどっちがマシかは微妙だが。
 偏見かもしれんが、俺はそう思っている。
 フラグじゃなくて、リアルに戦闘技術が身に付かないだけって見方もあるけど。
 自分で修練するにせよ、最低限の手本は要る。
 あークソ、いっそチップ辺りがその辺をウロウロしてないかな。
 日本文化について教える代わりに、ツヨシ式忍術を教えてくれとか相談できるといいんだが。
 確かチップって、オツムとは関係なく体質か何かで使える6番目の法力の属性…気を使えるんだよな。
 俺にも出来るだろうか?
 …まぁ、頭が単純極まりないとは言え忍者だし、そうそう手の内を明かしてくれるかは微妙な所だけど。

 …事程さよーに、強くなろうにもなれない、どう訓練していいのかも分からない八方塞がりだ。
 とりあえず腕立て伏せとかはやってるが…そしてそれをディズィーが真似しているが…一向に力が強くなったりする感じは無い。
 そりゃそーだ、ギアボディはチートボディだ。
 鬼のパンツよりも強いボディだ………あんまり強い気がしない。
 運動により筋肉繊維に傷を付け、それを治す事で筋肉を付けるという手法は使えないのだ。
 何せ腕立て程度じゃ、ロクに筋肉繊維に傷が付かない…一言で言えば、100回くらいやっても全然疲れない。
 なんちゃって腕立て伏せじゃなくて、ちゃんと腕を突っ張って胸の筋肉使って、しかも1回10秒くらいかけてやってるのに。
 同じ理屈で、ジョギングやランニングも朝飯前だった。
 どうすりゃ強くなれるんだよ八方塞がりじゃん。
 いっその事、カイを下す為にソルに弟子入り願えないかと本気で考えたくらい八方塞がりだ。

 …待て、ディズィーがジョニーの所に引き取られた後だったら、案外OKしてくれるんじゃね?
 俺がカイに突っ掛かって行く間は、ソルはカイのラブコォルから解放されるし。
 でもソルの訓練って、まず間違いなく実地訓練というか延々とガチバトルなんだろうな…つい殺っちまっても、それはそれでギア殲滅だから問題ない、とか。



 さて、そろそろ近況報告と参りましょう。
 現在、8~9歳前後。
 流石に他人の目が厳しいというか鬱陶しくなってきた。
 何せ初めて外で遊び始めた頃に比べると、身長は10センチ以上伸びてるしな…。
 羽と尻尾はアクセサリで何とか誤魔化してはいるけど、身長だけはどうにもならない。
 あからさまに排斥されてはいないが、影でヒソヒソ話が出てきているのを、俺は知ってる。
 一緒に遊んでいる子供達からも、時々不思議そうな視線を送られるし、気後れしているような表情を見る事がある。
 ちょいと話をして色々聞き出してみると、親の方から俺達とあんまり遊ばないように、と一言言われたらしい。

 …ちょっと、来るなぁ……。

 まぁ、それでも一緒に遊んでくれてるし、それがバレても厳しく叱られたりしてないみたいだから、もう暫く大丈夫だとは思うんだけども。
 それに、お爺さんお婆さんにも文句とかは言われてない。
 ちゃんとチェックしてるんだよ。

 ああ、そうそうこう言う事を言うのも何だけどな、俺を好きって言ってくれる子が居た。
 まだ子供だけどな。
 流石にときめかないし、リア充でもない。
 ある意味メモリアルにはなったけど…ギャルゲ的な意味じゃなくて、微笑ましい思い出的な意味で。
 「どうやったら、なっちゃんみたいにはやくおおきくなれるの?」って純真な目で聞かれた時は、マジでどうしたもんかと思ったが。
 とりあえず好き嫌いせずにピーマン食べろと言っておいた。
 あと牛乳。

 しかしなぁ…何と言うか…ちょっとだけな、『この子を今の内に懐柔…とまでは言わなくても、物凄く仲良くなっておけば、俺達がギアだって知れた後でも仲良くしてくれるだろうか』って考えた。
 光源氏計画、って程じゃない。
 単に…そう、例えば俺が実は吸血鬼だったとして、いつかはそれをバラさないといけない。
 その時になっても友達でいたいから、もっと仲良くなりたいっていう…これを打算だって言う奴は、一度自分の人間関係を見直してこい。
 人間関係の始まりなんざ、9割以上に打算が絡んでるから。
 まぁ、とにかくそういう事も考えたんだよ。
 でも止めた。
 仲良くしてほしいとは思うけど、それで人質にでも取られたら洒落にならん…こんな事言い出したら、お爺さんお婆さんだって同じだけど。
 少なくとも、あの子を連れていく訳にはいかない。
 俺達がこの村から離れる時、あの子は10歳にも満たない子供…それを親元から引き離して連れていけるかよ。

 ハァ……この体に憑依する前にさ、オリ主的なSSを読んだ事がよくある。
 典型的な勘違いタイプと言うか…自分が異世界とかに呼び出されて、ゲーム感覚で人(彼ら曰く『攻略キャラ』)と接したり闘ったりする奴だ。
 チート能力を持ってるのがステレオタイプだな。
 そういうのを読んでる時、「実際にこんな事態になっても、ギャルゲの攻略みたいに勘違いはできねーよなー」なんて思ってたんだが…何せ目の前に居るのは3次元の生き物だし、自分が実際そこで生きてるんだし。
 まともな神経持ってれば、浮かれる事はあっても『生活』を考えるとイヤでも地面に足が付く。
 今は、そういう勘違いタイプのバカ主人公の性格が、ちっと羨ましい。
 ゲーム感覚でもいいから、そういう風に考えてれば、俺も楽に人生送れるかもなぁ…デッドエンド当日になって文字通り死ぬほど後悔するだろうけど。
 何よりゲームのキャラを愛でるような感覚でディズィーに接していたら、多分俺は嫌われる。
 今、ディズィーが懐いてくれるのは、俺がGGXというゲームの中のディズィーを重ねて接しているからじゃなく、リアルでここに居るディズィーを愛している(家族愛だぞ)からだと自負しているのだ。
 うん、だからやっぱりバカ主人公はパスだ。
 それなら今のシスコンで通す!


 ディズィー本人は、最近では外で遊ぶよりも家の中に居る方が多くなってきた。
 子供達から遊びに誘われたら素直に遊びに行くんだけど、その時も背中と尻尾を気にするような素振りを時々見せる。
 …やっぱり、自分が他の子達とは違うって事を気にしているんだろうか。
 と言うか他に思いつかん。
 せめて、俺にも同じように羽とシッポがあればもうちょっと違ったのかもしれんが…いや、そんな事は俺とディズィーの間には関係ない。
 兄妹の絆を無礼(なめ)めるな!
 BETAだって蹴散らしてみせるぜ!
 …BETAとギアってどっちがヤバいかな…司令塔クラスのヤバさで言えば間違いなくギアだが。
 ジャスティスじゃなくても、メガテス級とか100万都市を1時間で灰にするくらいって聞いた事あるし。

 家の中に居る間は、ディズィーは俺だけじゃなくて、お爺さんお婆さんのすぐ側に居る。
 姿形が違うのを気にしていても、家族だけは別格だ。
 少なくとも、ここに居る3人は、羽の事もシッポの事も成長速度の事も、知っていながら受け入れている。
 ちゃんとディズィーがそれを考えているのかは分からないが、何となく感じ取ってはいるんだろう。

 そして、俺達はそんなディズィーの心境なんぞお見通しだ…もっと深い所まで、と言われると話は別だけどね…未熟でナンだが。
 擦り寄るように側に来ると、頭を撫でたり膝に乗せたり、各々の方法でスキンシップをとっている。
 そうしていると、ディズィーはもっと強く抱きついてくるんだな。
 …抱きしめられるのはシスコンの兄としては嬉しいんだが…こういう心境でされると、なぁ…。
 俺に抱きつく程度でディズィーを慰められるんなら幾らでもバッチコーイてなもんだが、やっぱりディズィーが悲しんでいると思うと、俺も少しばかり悲しくなる。
 抱き合うなら、友愛を以て抱き合いたい。
 だから、ディズィーを何とか慰めようとして、四苦八苦してる訳だな…苦とは思ってないけどね。



 さてさて、今日のディズィー自慢の時間だよ、全員集合~!
 今日は男のロマン、耳掃除のお話だ!
 つーてもやっぱりツルペタだし、見ていてあんまり面白くない気はするけど、面白い面白くないじゃなくてディズィーなのが重要なんだよ俺の場合わ!

 まず膝枕します。
 …ディズィーが、俺の膝を枕にして。
 フツー逆じゃね?と思う方、相手はディズィーさんですよ。
 男女の機微だのラブコメだの理解できる年齢じゃないですよ。
 だからまずディズィーから耳掃除するんです。 
 勿論、その次は俺の番だけどね。

 ディズィーの場合、耳掃除するには綿棒を使ってる。
 耳の中っていうのは敏感だからな。
 ディズィーの珠のお肌に傷がついたら堪らんよ。
 それに傷つける程に激しくしたら、絶対泣く。

 傷なんか付けないように気を付けて、ディズィー自身にも動かないようにってキツく言ってある。
 この時ばかりは、羽もシッポも動かずに大人しくしていてくれる。
 ヘタに動かれると、それだけで重心がブレて危険だからね。

 目を閉じて、息を詰めて体を硬直させているディズィー。
 漫画だったら両目が (><) こんな風に表現されているだろう…AAでも表現できたか。
 いずれにせよ、こういう表情は貴重だ。
 しっかり脳内データベースに保存しておかねば。

 時々、緊張しているディズィーにイタズラでも仕掛けて見たくなるんだが…ああ、一応言っておくけど軽くくすぐるとか鼻の下をコチョコチョするとかだ。
 誰だ、アダルトな意味でのイタズラだと思ったのは…最低限、ディズィーからOKが出てないとやらんよ俺。
 ま、どっちにしろ、やらないけどね。
 ヘタな事すると、次の俺の耳掻きの時に何されるかわからん。
 と言っても、根が純真でいい子すぎる程いい子なディズィーだから、大した事はされない。
 よっわ~い力でペチッとされるとか耳掃除が一通り終わったら耳元で「わっ!」と声を上げるとか、その程度だ。

 が、本人が意識してやる事はその程度でも、本人のタイミングが悪いと言うか配慮が足りんと言うか。
 唯でさえ敏感な耳の穴、不安定な膝枕という体勢。
 そんな状態で、ディズィーがアレやコレやと余計な事をやろうとしたり考えたりしてみろ。
 あっという間にバランスが崩れて、耳の中がゴリッと……!
 綿棒だから痛くない、なんて事は無い。
 痛いモンは痛い。
 そしてディズィーは気付かない、俺が気付かせない。
 …偶には気付かせた方が情操教育にはいいと思うんだが、どうも踏ん切りがつかなくて…そもそも俺の自業自得みたいなもんだし。
 …そういう体験を一回した訳で、耳掻きの時ばかりは自重している。
 マジで痛かった…血が出てなかったのが幸いだ。

 プルプル小さく震えているのを見るとちょっとずつ嗜虐心が掻き立てられてしまうので、手早く耳掻きを終わらせる。
 …しかし、人の耳ってこんな風になってんだなー。
 自分で耳掃除はするけど、その時はこうして目視できる機会なんかなかったし。
 大きな耳クソがある、って本当に見えるもんなんだ。
 まぁ、その分自分でやってるのと違って、どこまで差し込んでるのか分かりづらいからな。
 慎重にやらなアカン。
 ディズィーの耳をガリっとやってみろ、地獄を見るぞ俺が。
 罪悪感で。
 …しかし、子供の頃に母さんに耳掃除とかしてもらってたけど、今考えるとどうしてあんなに上手にできたんだろうなぁ…。
 ……やはり父さんで練習してたのか?
 むぅ、リア充め!と実の親に対して罵ってみる…むしろ褒め言葉になる気がするな、夫婦間・家庭間の仲がいいんだから。

 うむ…もしも俺があっちに帰る事ができたら…いや、もしもじゃなくてどうにかして帰るんだけどね…、その時はディズィーも一緒に紹介できたらいいなぁ。
 嫁です、と一発ギャグ(割とマジ?)をかましながら妹として紹介する、と。
 うん、俺の妹なんだから、父さん母さんにとっては妹だよな。
 義理の妹扱いになるかもしらんが、その頃には俺も経済的に自立してるだろうし、受け入れてくれるだろう。
 理解ある両親を持って幸せです。
 天下一の妹を持って俺は幸せです!


「はい、これで終わり。
 ちょっと待ってねー」


 一通り耳掃除を終えて、最後に綿棒じゃない普通の耳掻きの、綿の部分でササッと拭いて、最後に耳に向けて息をフッと。
 それで耳クソが飛んでいく訳じゃないけど、何かやるよね皆。
 くすぐったかったのか、ディズィーはブルブルッと震えて起き上がる。
 このブルブルッの所がまたかわいーんだよホント。
 何て言うかな、背筋をツーッっと撫上げた時もこんな感じだ。
 思わず体を伸ばして小刻みに震えて、ついでにシッポも逆立って。
 子犬っぽいなー。

 …しかし何だな、耳クソって何か語呂悪いなぁ。
 そりゃいくらディズィー産だからって、耳クソは耳クソだが。
 別の言い方をするにしても、精々が耳垢…ミミアカとかジコウとか、その程度だ。
 何かこう…もうちょっと気品のある言い方は無いもんだろうか。
 小便だって、所によっては…と言うか業界によっては聖水なんて呼び方もあるのに…一緒にするのもどうかと思うが。
 ……とはいえ、うん。
 ディズィー専用の新しい呼び方を考えてもいいかもしれない。
 佐山だって新庄とのスキンシップで、『まロい』なる神の如き新たな言葉を創造したんだし、俺のディズィーへの愛なら相応しい呼び方を開発したっておかしくない。
 問題は、俺にネーミングセンスが無いという致命的な事だが。
 まぁ、モノは試しだ、やってみよう。
 ………。
 ……………耳クソ………まずクソは無しだ。
 ………………耳垢……垢、なんだよな…。
 ………………………………………垢…って、皇后の后、キサキに土……。
 ……………………………………………………………………土の女王つったら…ダイコン…ノー、大根はどっちかというとキングだ、女王で言うならニンジンだろ、そしてジャガイモがプリンス…根拠は無いが。
 ……………………………………という事は、大根とニンジンがセクロスしてジャガイモが生まれた…どうセクロスしてどう産んだのか、お母さんことジャスティスの妊娠風景くらいに謎だ。
 ちょっと方向転換して…………………………………耳の………汗……耳汗、ジカン。
 …………………………………を、これちょっと良くね?
 何だかんだ言っても排泄物…シモに限らず…なんだし、老廃物である事には変わりなし。
 うん、本質をよく表せているとは思う。
 が、こりゃディズィー専用にする理由が無いな。
 やっぱり耳垢からとって土に后の方向で考えた方がよかったか?
 くっ、俺の愛がこの程度の事に躓くとは……鍛錬が足りなかったか。
 つまりこれからは今にも増して溺愛しろって事だね!


 さて、それはともかく交代の時間だ。
 いそいそと正座したディズィーが、ポンポンと膝を叩いて催促してくる。
 ああ、漢の夢、膝枕……ッ!

 勿論、俺もいそいそと横になってディズィーの膝に頭を乗せる。
 まずは左の耳から。
 顔はディズィーの反対側に向ける…後頭部が腹に付く形ですな。


「なっしゅ、いい子にしててねー」


 …ハイいい子にしてます。
 でも内心はちょっとワルイ子です!
 お、オシオキなんてされたくないんだからねっ!
 だからマジで耳の中ガリッは勘弁してください。

 まー冗談はともかくとしても、結構緊張感はある。
 ディズィーの柔らかい感触や甘いニオイ(最近、ニオイに変化が出てきてよりフローラルになりつつある)を感じながらもジッとしていないといけないというのは、ちょっとした拷問だ。
 好きなゲームや漫画、ドラマ…何よりお笑いを見てもニヤニヤしたり爆笑したりするなって言われてるのに等しい。
 かと言って、衝動に負けて「吾輩は、吾輩はッ!」なんてした日にゃー、耳がガリッに加えて驚いたディズィーが体勢を崩して膝の上から頭がガン!
 そうでなくとも、ディズィーのたどたどしい手付きは柔らかくて丁寧だけど、その分非常にくすぐったい。
 とにかく純粋にくすぐったい。
 下心が無かったとしても、体を捩りたくなるのも無理はない。

 ギアボディの身体制御プログラムまで使って、体を固定する俺。
 …と言うか、こーいう事はお爺さんお婆さんがやった方がいいんじゃなかろうか。
 と思いはしたものの、ディズィーから折角申し出てくれてるんだし、断れる筈も無し。
 それに、お爺さんもお婆さんも軽度のリュウマチなんだそうな。
 むぅ、確かに朝は動きが鈍いと思ってたが……そうかぁ…もう歳だもんなぁ…。
 俺達がここを離れる前に、目一杯親孝行しておかないとな。
 うん、今度ディズィーと相談して、二人の肩揉みとかやってみるか。

 でも今は耳掻きだね。
 枕にしているディズィーの太股は、何とも言えない柔らかさ。
 何と言うか、子供特有の柔らかさと、年頃の女性が持つ柔らかさが絶妙にマッチしてるっつーか…。
 うん、ディズィーも過渡期なんだな。

 そろそろ二次性徴の時期か?
 つまるところ、オッパイが大きくなり始めるって程度の認識だけど。
 ……最低限、俺達がお婆さんの元を去る前に、初潮は迎えておいていただきたい。
 アソコから血が出るって事は知ってるが、俺はその対処法なんかまるで知らない。
 ナプキン?
 それどう使うの?
 …美味しいの、なんて聞いてやらないからな!
 当然、そうなった時にどうすりゃいいのかなんて分からない。
 …しかし、それ以前にハーフギアに初潮って来るのか?
 …来るっぽいなぁ、シンを産んでたし。
 …………・もしもシンが生まれたら…俺、猫可愛がりするかも…?
 でも、孫は孫でも男だし…いや年齢によっちゃ、男でも女でもニューハーフの類でも可愛いんだろうけどさ。
 憎き敵(カイ)の子供であり、我が最愛のディズィーの子供でもある…ぬぅ、嫌うべきか嫌わぬべきか、それが問題だ…Byハムレット。
 ま、実物を相手にしてたら、嫌うって選択肢は無いと思うけどね。
 「じーさん」なんて呼ばれるのもいいかもな………。

 ………ん?
 ちょっと待て、今普通に間違えてた。
 ディズィーの子供なんだから、孫じゃなくて甥っ子だ甥っ子。
 つまりディズィーは俺にとって、妹であると同時に娘でもあるという俺の意識なんだね。
 うん、何も問題は無いな。


 それはともかくとして、ディズィーは意外と手際よく耳掃除をしてくれる。
 ただ、時々羽がパタパタ揺れてるのが見えて、ちと怖いんだが。
 ネクロ、ウンディーネ、頼むから暴れたりしないでくれよ。

 まぁ何だ、この段階では、特に問題らしい問題は無いんだ。
 確かに女性らしくなりつつあるディズィーの柔らかさに魔が差す事はあるけど、その程度。
 この程度の煩悩を抑え込めないようでは、とてもじゃないがディズィーと一緒に風呂なぞ入れん。
 あ、ちなみにまだ一緒に入ってマスヨ?
 そろそろヤバイかな~とは思ってるんだけど(←心にもない発言)、どうにも切りだすタイミングが…。

 えーとにかくね、片方の耳をしてる時はいいのよ。
 顔が外側に向いてるから。
 で、それが終わると。


「ナッシュー、こっちむいてー」

「…はい」


 陶然…もとい当然、もう一方の耳をやる訳だな。
 耳を一方しか掃除しないんじゃ、落ち着かないっつーかモヤモヤするっつーか。
 ここで一つ考えてみよう。
 右の耳を今までやってもらっていて、顔は外側…後頭部がディズィーのお腹についていた。
 じゃあ、左の耳をやってもらう時は、どうよ?

 ……俺の!
 ………顔面が!

       ディズィーのお腹にピッタリくっ付くんだよぉぉぉ!

 しかもディズィーってば、意識は絶対してないだろうけど頭を固定する為に、自分の腹に俺の顔を思いっきり押しつけるのよ!
 ああ、服という遮蔽物があるとはいえ、ディズィーのお腹ッ…ぷにぷにしてツルツルッ…!
 あまつさえ、だ!
 俺が息をすると、くすぐったいらしくて体をちょっと震わす…この時は少しばかり恐怖だ…んだが、その時「んっ…」って小さく喘ぐんだよ!
 エロい意味じゃなくて単純にくすぐったいだけだっていうのは分かってるつもりなんだが、それを耳元でやられるとどーにも妄想が掻き立てられる。
 何がヤバいって、その微妙に我慢してる感じの吐息がヤバい。
 しかもほんのちょっとだけど、ディズィーの吐息の匂いが流れてきて…よくよく考えると、お腹の匂いもしてね!
 クンカクンカしたい衝動と、良識と、耳の中がガリッの恐怖が三つ巴で大暴れし始める。
 そりゃもう、某木の葉の3忍もFF6の三闘神もドン引きするくらいの三つ巴だ。
 物凄い勢いで、血みどろの闘いが展開される。
 その血は全て萌え血だがな。

 え?
 体勢を変えればいい?
 頭の前後を逆にするんじゃなくて、上下を逆…ああ、右側から頭を乗せてたのを、左側から乗せればいいと。
 …………。
 ……………………。
 ………………………………俺は何も聞いてない。

 ああ、萌え血が!
 萌え血が沸騰する!
 俺のこの血が光って唸る!
 ディズィーを愛でろと轟き叫ぶ!
 必殺!
 撫で撫でフィンガー!
 ……いや、今はやらないよ?
 耳の中ガリッと行くもん。


「ん~…ナッシュ、大きいのがあるよ。
 じっとしててね……」


 宣言してから、息を詰めて俺の頭を抑え込み、綿棒を動かすディズィー。
 奥深い所にあるらしい。
 んだが、正直俺は「じっとしててね」に不必要なエロスを感じずにはいられないんで、それどころではなかったりする。
 それに、息を殺す女性っていうのに、微妙なエロスを感じるお年頃なのだ。
 正確に言うと、何かを我慢する女性、なんだろーけど大して変わらない。
 つくづく思う、俺はもうダメダメだ、でも何とかないととは思えないから困る。

 ちゅーか、この状態で緊張してるのは俺も同じなんだけどね。
 いつガリッと来るかわからないし。
 でもそれを表に出すと、ディズィーが余計に緊張しちゃうんだよね。
 慎重にやってはくれるんだけど、過剰な緊張は返って集中力を削るし、ポーカーフェイスで切り抜ける。


「んっ……とれた!
 ナッシュ、ほらほら」


 何でわざわざ見せるかな。
 いや、俺だって気持はわかるけどね。
 デカブツをゲットしたら、それを誰かに見せたくなる感じ。
 ネコとかってネズミ捕まえたら見せにくるらしいけど、イメージ的にはそんなんかなぁ。
 ………ディズィー猫か、いいね。
 勿論その時はウンディーネもネクロもネコミミだ。
 …あれ、何か急にネクロが可愛らしく……見えるんだよこれも家族愛の成せる技だよ『その感性はおかしい』とか言うなコノヤロー!

 にしてもマジでこの耳クソでかいな。
 実は脳ミソの一部だったりしないよね?
 もしもこれが脳ミソの一部だったとしたら、それってつまり、ディズィーが突っ込んだ綿棒が俺の鼓膜とか突き抜けてるって事だよな。
 そうなったら、確実に血が出るな……男の場合は、それが破瓜の血だな、処女喪失の証!
 俺の処女を破ったの、ディズィー!
 …いやでも実際処女を破るっつーなら、ケツを差し出さないといかんのか?
 ディズィーなら、ナニが無くてもシッポがあるから出来ない訳じゃないし…今はまだ無理だが。
 でもいくらディズィーが純真でも、クソする所を平気で触る訳じゃないだろ。

 ぬぅ、しかしいつかゲームと同じような展開になるとしたら、俺もファウスト先生にメスでアッーされるかもしれないんだよな。
 …うん、処女がどうのじゃなくて普通に怖いわ。
 先に自分で馴れておこう、なんて冗談半分でも考えた自分もマジ怖い。
 我ながら何考えて生きてるんだろうか…疲れてるのか、それとも壊れてんのか?
 うん、前々からひょっとしてとは思っていたんだが間違いない……俺は病んでいる。
 ファウスト先生、診断を…いやそのメス使うのは勘弁してください。

 とりあえず、もしもファウスト先生と闘う事になったら、ワセリンを先に渡しておこう。
 俺使い方分からないし、専門家に任せた方がいいだろ…「やってくれ」って意思表示だと思われるかもしれんが。
 あ、それと無駄とは思うけど、ケツに貞操帯でも付けとくか……いや、いつ会うか分からないのにそんなモン付けてどうすんだ。
 トイレ行く時とか普通に不便すぎる…つーか毎回毎回お漏らしの危機と闘うのは嫌だ。


「それじゃ、これでオシマイ。
 ふーっ」

「おひょう!?」


 余計な考えに耽っていたところ、ディズィーが耳に息を吹きかけました。
 思わず奇声をあげてしまったが、ディズィーはそれが面白かったらしい。
 キャッキャと喜んで、もう一回吹きかけてくる。
 らめぇ!
 今はらめぇぇぇ!
 鼓膜破れて、直接脳ミソにディズィーの息来ちゃうからぁぁぁ!
 …ま、冗談はともかくとして、繰り返しのフーッは勘弁してください。
 汗とかで濡れて敏感になってるんです。
 ああでもちょっと気持ちいいから抜け出せない、人としてダメでギアとしてはアレな俺……。

 つーわけで、今日のディズィー自慢はここまで。
 まだちょっと足りない気もするが、何事も腹八分目。
 名残を惜しむくらいが風流と、ジャパンの平安貴族あたりが言った事があるとか無いとか。
 じゃ、またね。





アトガキ
感想を催促したみたいで申し訳ない。
でも色々言ってもらえて満足でしたw
そろそろ、その他板の方に移って見ようかな…と考えています。
多分、次かその次くらいに。

多分、今日中にHPの方にも装飾を加えたりした2話がアップされると思うんで、気が向かれたらそちらも如何。



[17288] 08
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/04/16 22:37

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 最近、肉体年齢がようやく9~10歳の大台に乗りました。
 もうここまで来ると、この異常な成長スピードは隠しようがないね。
 近所の人達の視線が痛い。
 少しずつだけど、距離を取られているのが分かる。
 つーか、今日まであからさまなリアクションが無かったんだから、そのまま流してくれればいいのに…。
 大らかなのにも限度があるか。

 まーそれは一端脇に退けといて。
 朗報があります!
 ウンディーネとネクロ、とうとう正式に(?)誕生しました!
 前からディズィーの意思を無視してピクピク動いてたのが顕著になってきたから、そろそろかなーと思ってたんだけどね。
 見事に当たった。

 そもそも、最近のディズィーはやけに食いしん坊だった。
 嫌いな料理(辛いのが苦手)が出てきた時も、自分から進んでパクパク食べてた。
 今思えば、あれはネクロ・ウンディーネの分までエネルギーを溜め込んでたんだな。
 美味いの三個欲しいのか?
 三個…イヤしんぼめっ!

 どういう風に生まれたかっていうと、まぁ……寝ている間になってたから、俺にも分からんのよ。
 ただ、いつもよりもディズィーの食欲が旺盛で、食べるだけ食べたら遊びもせずにベッドでコテンと横になった。
 勿論俺を抱き枕にして。
 …俺、別に眠くなかったんだけどなぁ。
 と言うか、お爺さんにサバイバル習う予定だったんだけど。
 ま、だからって俺がディズィーに逆らえる筈ないんだけどさ。

 それに、最近ディズィーが兄離れしててねぇ…添い寝に誘ってくれるのが嬉しかったってのもある。
 兄離れつーても、相変わらず俺の後ろをチョコチョコ付いてくるし、精々寝る時にちょっと距離を開けるようになったってだけなんだが。
 しかも、寝ている間に結局ピッタリひっついている。


 …まぁとにかくだ、別に眠くはなかったけど、俺の場合は自分でスリープモードに移行できる。
 ディズィーの寝顔を堪能してから、スリープモード。
 夢の中でもディズィーを鑑賞し続けたがな。
 で、朝になってみたら……なんかネクロとウンディーネ、居たんだよね。
 最近大きくなってきていた羽に、顔が浮かんでた。
 緑色の羽には、なんちゅーかコミカルにデフォルメした感じのドクロが。
 水色の羽には、髪の長いお姉さま的キャラになりそうな………………ょぅι゛ょ。

 あっるぇ~~~?

 …と言う程不思議でもないか。
 ネクロとウンディーネだって、小さな羽の状態から成長してここまで来たんだし、悪魔の森に行くまでにゲームでもあったお姉さま・怖いドクロみたいな顔になるんだろう多分。
 うん、ディズィーの可愛さはょぅι゛ょでも美少女でも美熟女になっても天下一品だが、最近ょぅι゛ょ成分が無くなってきたからな。
 需要はあるかもしれん…誰の需要かは聞くな。

 ま、まぁとにかく、寝て起きたらこうなってた。
 そーいや、昨晩のディズィーはうつ伏せで寝てたな。
 寝顔ばっか見てたが、布団の中でこの二人が羽化してたんだろう。
 …と言うか、これからディズィーは仰向けで寝られんのか…?


 お爺さんとお婆さんも流石に驚いたみたいだったけど、そこはこの二人。
 拾った赤ん坊がギアであっても驚かずむしろ愛してくれて、しかも異常な成長速度を目の当たりにしてもちっとも動じないという、本当に一般人なのか疑わしい神経の持ち主だ。
 平然と受け入れてくれやがった。
 「これでも俺達は、熊や狼程度なら軽く捻れるぞ」と腕を槍のように変えてみせたりもしたけど、やっぱり平然と受け入れた。
 「おお、流石(ギアだけある)と言うべきかの」の一言で終わりだ。
 むしろ、ディズィーの混乱の方が大きかったくらいだ…ま、誰だって自分の体の一部からドクロとょぅι゛ょが生えてくりゃ驚く罠。
 まぁ、それもネクロもウンディーネも非常に好意的な態度だったのが大きいんだろう。
 ネクロなんか、後の好戦的な性格になるとは信じられないくらいに素直で大人しい性格だ。
 勿論、俺に対しても。
 やっぱりナデナデが効いたのかな?
 ……いや待て、ひょっとしたらとは思うが、ナデナデの影響でこういう性格になったのか?
 大人になっても、大人しいままか…何か変な日本語だ。

 …そうそう、名前だけどね、最初から付いてたわ。
 混乱も一通り治まって、如何なる心境の表れか、ディズィーは何故か俺の角を掴んで放さないという俺にとって非常にアレな状況の中…忘れてるかもしれんが、俺の角は股間のイチモツと同じくらいに敏感だ…。
 これから一緒に暮らす事になるのだから名前を付けようと言う話になった。
 ちなみに俺は、ゲームに合った通りネクロとウンディーネ…ではなく、むしろカーバンクルとシヴァにしようと主張してみた。
 んだが、本人達の申請により、それは却下。
 なんか、製造番号と言うか個体認識の為の名称がちゃんと振られているらしい。
 二人によると、俺とディズィーにも一応そういうのがある筈、らしいのだが…ハーフギアになった為か、そういう自覚は全く無い。
 自分の機能を色々と認識できている俺も、やっぱり無い…未確認の機能も多いが、そっちに含まれているんだろうか?。
 まぁ、別に問題は無いが。
 『今』の俺の名前はナッシュで、『前』の俺の名前は……いややっぱ今の無し。
 『今でも』俺はナッシュであると同時に………まぁその、スマン、名前の設定無いんだ。
 時守wとでも呼んでくれ。
 一応言っとくが、憑依前の事が思いだせない訳じゃないからな!
 両親から祖母祖父、飼ってた犬も寿命で死んだひい婆ちゃんの名前までバッチリだぜ!
 ……でもなー、やっぱり名前はともかく、声や顔って薄れていくもんなんだなぁ…。
 ギアになって良かった事の一つに、生きてた頃のひい婆ちゃんの声や表情を明確に思いだせるって事が………いかん、話がズレた。

 そういう訳で、結局ネクロとウンディーネに名前は決まった。
 むぅ、こりゃカーバンクルとシヴァを主張しといて正解だったかな。
 『何で知ってんだ』って事になりかねん…家族相手にこんな警戒しても仕方ないっちゃ仕方ないんだが、話がややこしくなりそうだしな。


 さて、それはそれとして、ディズィーは新しい家族の誕生を喜ぶのと同時に…まぁ、背中の羽に何かいるような気がする、というのは前から気付いていたらしいが…、自分がいよいよ他の人とは違う、という事が気になりだしたらしい。
 ネクロとウンディーネが居る以上、ディズィー本人にギアの事が知られるのは明白だ。
 だったら、家族会議を開いて全員で話した方が、幾らかショックも和らぐだろう。
 ディズィーがショックで落ち込んだとしても、「大丈夫だ」ってすぐに慰められるしな。


 ま、その家族会議は明日の予定なんだけど…。


 皆さんに、一つ…言っておかなければならない事があります。





 ネクロが。









 ……ネクロ、が…。














 ……ネク…ロ、が………………ネクロがッ!












「どうした?
 早く撫でてくれ、兄よ」






 ネクロが、クーデレ…いや、素直クールでしたッ………!



 ヤバイ、マジときめいた……!
 心臓がドッコンドッコン大暴走するくらいにときめいた…!
 え、何?
 それは心不全か何かって…いや違うよ、精神的にもダメージは受けてないよ。
 ヘブン状態に近づきはしたけど。


 …半分くらい本気の冗談はともかくとして、こりゃ本気で予想GUYにして予想害だった。
 こんなん予想できてたら、マジで害にしかならんわ。
 ネクロはツンデレだと信じていたのに……!

 と言うか、これはツンデレよりマシだと思っていいのか?
 妹キャラされるより遥かにマシなのは確かなんだが。
 照れ隠しで攻撃してくるツンデレと、怒ったら素直に攻撃してくるクーデレor素直クール。
 …うん、何も悪い事してないのに攻撃されない分、こっちの方がいいね。

 コミカルドクロがこっちを真っすぐに見て、頭を突き出して待機している。
 しかも、ディズィーは何故か俺に背中を向けて…まぁ、そうじゃないとネクロがこっちに来れないけどさ…何やらお冠だ。
 …ひょっとしてヤキモチか?
 ディズィー以外を俺が撫でるのを嫌がってるのか?
 しかし、幾らディズィーがそう思ってるとは言え、こうまでネクロからストレートに要求されると断ろうにも断れん。
 怖いっつー事じゃなくて、好意を無碍にする訳にはいかんだろう。
 ネクロだって家族なんだし。

 ちなみに。


「私は、別に撫でてほしいなんて思っていませんので。
 …で、ですけど、兄様がどうしてもと言うならば…」


 ウンディーネが、ツンデレでしたッ…!
 と言うかょぅι゛ょでツンデレ…しかもやたら似合ってるし。
 水色の肌を微妙に紅潮させて……血、通ってるのか?……ネクロと同じくディズィーの背中から、そっぽを向きながらチラチラとこっちに視線を向けている。

 …これなんてハニートラップ?
 冗談抜きでヘブン状態になりそうなんだけど。
 …お冠のディズィーが居なければ、俺は飛行技能を取得していたかもしれん。
 浪漫飛行へ IN THE SKY だ。
 飛びまわるマイ・ハート(心臓)。
 …空飛ぶ豚とかいう本があったから、そっちでもいいなー…心臓じゃなくて拳法殺しの豚紳士が飛ぶ。
 おお、なんかウケそう…と言うか、数あるザコキャラの中で、どうしてあの豚紳士だけやたらと持て囃されているんだろーか…。

 にしても、二人とも普通に喋るの上手だね。
 ネクロはカタコトで喋るのかと思ってたんだが…そういや、ゲームではウンディーネって喋ってたっけ?
 まぁ、全部カタカナで喋られると大変だからいいんだけどさ。
 何が大変って?
 そりゃ…アレだ、時守が…と言うか書くのがというか…いや思考ログにカタカナで記録されるだろうから読み取るのが面倒になるんだ。

 つーか、俺ってやっぱり兄なのな。



 ………いや待て。
 この際、撫でるのはいいし、兄なのもいい。
 むしろウェルカムだ。
 大歓迎だ。

 だが、よく考えてみろ。
 ウンディーネが、ツンデレ。
 ネクロが素直クール…素直クールっていうのは、某大型掲示板で言う所のクーデレ…亜種だとか異論はあるだろうが、始まりはその辺りだった。
 まぁ、俺自身は素直クールとクーデレは別物だと思ってんだが、Wikiにそんな事書いてあったしな。
 じゃあ、ディズィーは………?

 ツンデレ。
 クーデレ。
 とくれば後はやっぱり………?
 …………何か洒落にならない事に首を突っ込もうとしてる気がしてきたぞ…。


 え、何?
 俺?
 俺は単なるシスコンだよ。
 最初からデレデレだよ。
 別にヤンデレじゃないから!
 …いやまぁ、自分でも別の意味で病んでいるのは分かってるけどさ。



 と、とにかくだ。
 ネクロとウンディーネをナデナデするのは吝かではないが、やはりディズィーを放っておく訳にはいかん。
 ここは一つ、以前思いついて思わぬ反撃を食らった抱きつきナデナデ…6話でやってたアレで行くしかあるまいて。

 まずネクロをナデナデ。
 コミカルなドクロが俺の手で撫でられて、安心したように眼を瞑る。
 …何かシュールな光景のような気がするが、見た目の恐ろしさと行動のコミカルさが相まってギャップ萌えを生み出すのだッ!
 ……ま、見た目の恐ろしさっつーても、精々キンコツマン程度なんだけどね。
 ウチの弟が可愛くないわけないよ!
 ……………待て。
 ちょっと待て。
 今、何か物凄く危険な事を考え付いてしまった気がする。

 根本的に、だ。


 誰がネクロを男性だって決めたんだ?
 公式でそう発表されてたか?
 仮に発表されてたとして、ここのネクロも同じであるって確証は無いよな?


 確かに一見すると男性型だよ。
 おっぱい無いし。
 声低いし。
 顔は画面で見ると怖いし…なんたってドクロ。
 でも、それって男性である決定的な証拠にはならんよな?
 ちっぱいなだけかもしれないし。
 声だって、人によっちゃ女性でも低いし。
 顔は怖いつーても、今はコミカルだし、そもそもドクロ…頭蓋骨の形から男性女性を見分けるようなスキルは無い。
 言葉遣いは、単に男勝りなだけかもしれん。
 そもそもからして、ネクロもウンディーネも寄生型ギア。
 性交によって子孫を増やすとも思えん…だったら、性別に意味はあるんだろうか?
 …イカン、これ以上考え続けると、ウンディーネが実は男性型だった、なんて恐ろしい発想が浮かびかねん…もう浮いてきてるけど。
 この考えはここまでだ。
 …でも、後で男性かどうかだけは、ネクロに確認しておこうと思う。
 ……よく考えたら、ネクロもウンディーネも、俺よりギアの事に詳しそうだなぁ…製造コードとか個体識別名とか自覚出来てたんだし。
 ディズィーが寝静まった後に、色々聞いてみようかな。


「…?
 兄、どうかしたのか。
 心配な事でもあるなら、俺達に出来る事なら何でもするが…」

「いや、何でもない。
 ほれ、なでなで…」

「む………うむ…やはり、心地よいな…」


 まぁそれはともかくとして。
 ナデナデの続きだ。
 目を閉じて、俺のナデナデを堪能するネクロ。
 それに対して少々恨めしげな視線を送るウンディーネ。
 更に┣¨┣¨┣¨┣¨・・・と背中で『私怒ってます』的に語るディズィー。
 い、いつの間にJOJOな雰囲気を出せるようになったんだ?
 ディズィー……恐ろし………可愛い子…!

 ちょっと体勢を変えて、ネクロを撫でる手はそのままに、ディズィーの背中に近づく。
 ウンディーネに手招き。


「な、なななんですか兄様!?
 なななななな撫でていただけるのでしたら、最初は優しく、しかる後に激しくお願いします!
 ど、どうしても撫でた言うというのでしたら、そのようにするのですよ!
 そうでなければ、ナデナデさせて差し上げませんからね!」


 モチツケ。
 目が期待で輝いている。
 そしてその手が落ち着きなく忙しく動きまくっている。
 と言うか何故踊る。
 …ウンディーネのイメージが壊れそうだ…まぁ、ょぅι゛ょになってる時点でイメージからかけ離れてたけど。
 うむ、子供だしな……ツンがあまり激しくても俺の体が保たんし、これくらいならちょうどいいだろう。

 望み通り、ウンディーネの頭に手を置いて、優しくナデナデしてやる。
 ウンディーネは、なんちゅーか縁側で緑茶を飲んで溜息を吐くお爺ちゃんみたいに「ほふぅ…」なんて惚けている。
 抵抗しようとも、手から離れようともしない。
 うむ……ネクロもウンディーネも撫で心地がいいな。
 元がディズィーの羽だけに、羽毛100%みたいな手触りだ。

 にしても、このウンディーネはツンデレって言っていいのかな。
 確かに言動にそれっぽいのはあるんだが、ツン分が殆ど無いぞ。
 羽の時の意識ではツンが多かったのかもしれんが、人間形態になってから…と言ってもまだ2日も経ってないけど…デレばっかだ。

 ………はっ!?
 こ、これって……ひょっとしてナデポか!?
 ツンが少ないのもナデポ故か!?
 ぬぅぅ、全然気付かなかったが、確かにナデポだな!
 別にポされてはいないが、撫でまくって懐かれてんだから、確かにナデポだ!
 しかし、同じナデポと言っても、俺のナデポは一味違うぜ。
 一度撫でたらそれで惚れられる、なんてABEさんに掘られてしまえ的な厨展開じゃなくて、幼子の頃から撫で続けてきた結果、デレられてるんだからな!
 所謂一つの、ヒカルゲンジストーリー!
 事実、『こうして撫でてたら、ネクロもウンディーネも懐いてくれるかな』なんて下心から撫で続けてたんだしな。
 うむ、見事に成就してしまった。


 なんて余計な事考えてるうちに、だ。



        /´〉,、     | ̄|rヘ
  l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
   二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
  /__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
  '´               (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
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 …ディズィーの背中で語る怒りが、エライ事になってたよ!
 ……後で自分の思考ログとか見てみたんだけどね、まさかログにAAが出てるとは思わなかったよ。
 意外とオチャメだなギアの制御プログラムっぽい何か。

 俺に背中を向けて三角座りして、時々体をピクッピクッとさせてるけど、何か影…というか特殊効果背負って動かない。
 …ちっと怖い。
 女の情念という奴の恐ろしさを垣間見た気がする。
 時々体をピクピクさせてるのは、ネクロとウンディーネを撫でている感覚がディズィーにも伝わっているんだろう。
 そうやって自分以外の誰かが撫でられているのが分かるから、また一層不機嫌になってるって事か。
 ま、気持良さそうではあるんだけどね。

 どっちにしろ、これ以上放っておくとストレスで寿命がマッハどころか光速だ。
 そういう訳で、ディズィーを構い倒す事にする。
 ネクロとウンディーネのナデナデは止めないまま、俺はディズィーの背中に密着する。
 ピクッと反応したものの、ディズィーは未だにJOJOっぽいゴゴゴゴドドドドドドを撒き散らしている。
 …正直、割と怖い。
 挫けそうだ。
 でも負けない!
 俺とディズィーの為にも!


「でぃ~ずぃ~~?」

「………」


 ディズィーの肩に顎を乗せて、ホッペがぴたっと密着する。
 ああ、柔らかい。
 きっと、おっぱいとおっぱいを押しつけ合ったらこんな感覚がするんだろうな。

 むっすー、とした表情で俺を無視する。
 こうまでスネている表情も珍しい。
 ホホをスリスリして、息を軽くふーっと吹きかける。
 目をキツく閉じて、背筋をブルブルッと震わせた…あ、なんか今の色っぽい。
 顔の角度をズラして、首筋に顔を薄めて大きく息を吸うぅぅぅぅぅぅ…っと吸い込む……ああ、ディズィーの匂いだ…なんか落ち着くなぁ…。
 と、ここまでやってもディズィーは未だにスネたままだった。
 全然あやしてない気がするが、いつもだったらこれで機嫌は直ってるんだけどな。

 それだけ、俺にヤキモチを妬いてるんだと思うと可愛げもあるし、色々と漲ってくるモノもあるんだが…。
 ふむ、やっぱり単にあやして宥めるだけ、と言うのは…この場合悪手だ。
 これから、ディズィーとネクロ、ウンディーネは不可分の運命を辿る。
 運命なんて大仰なモノじゃなくても、分離できそうにないんだし、当分の間共同生活を送る事になるのは間違いないだろう。
 ネクロやウンディーネと話す度にスネられては、まともな共同生活など送れそうにない。

 と言うか、ディズィーがこれだけ拗ねるのも珍しいというか可笑しな話である。
 一緒に遊んでいた村の子達に懐かれていた時も、好きだと告白された時も、多少の独占欲みたいなものを見せる事はあっても、こうまで拗ねる事は無かった。
 それがどうしてこの二人だった場合に限って…。
 仮にもディズィーとは体を共有しているし、同族意識というか、そういう感じの繋がりがあると思ったんだが。
 ………いや待て、ひょっとして、だからこそ…か?
 友人は単なる…という表現もナンだが…友人であって、ネクロやウンディーネのようにディズィーに…何と言うか、『近い』存在じゃない。
 分かりやすく表現するなら、ディズィーにとってネクロやウンディーネはもう一人の自分…に近い位置づけで、だからこそ自分じゃない自分が構われてるのを見ると腹が立つ…とか。
 うーん、あながち的外れな考察じゃないと思うんだが、検証出来ないな…。

 ふむ。
 まぁ、とにかくだ。

 ディズィーが俺を無視するって言うなら、徹底的に調子に乗っちゃうもんね!

 ハァハァ別にハァハァエロイ事をハァハァする訳じゃ、ないヨ?
 単にハァハァ兄妹のスキンシップをハァハァ手加減無しでハァハァするだけヨ?
 …ハァハァはもうやめた、面倒臭い。

 とにかく、今は普段は遠慮したりディズィーが抵抗したりして出来ない事をやりたおそう!
 ディズィーの機嫌を直す一言なら、心当たりがあるしな!
 と、言いつつもネクロとウンディーネを撫でる手を休めない俺…ある意味神の領域に達しようとしている気がしてきた。
 ちなみに、神よりも一歩上に東鳩の主人公なるランクがある訳だが…。

 さて、まずはどうしてくれようか。
 両手は塞がっているから、首から上だけでスキンシップを図る訳だが、この状態で出来る事っつーと……。

 ①クンクン
 ②ペロペロ
 ③ぐりぐり
⇒④アマガミ
 ⑤キミキス
 ⑥耳をふーっ


 なんかギャルゲのタイトルみたいになったけど遠慮なくイクぜヒャッハァ!
 2,3度自分の頭でディズィーの頭を押して、反応が返ってこないのを確かめる。
 ぐりぐりと頬でディズィーの髪を掻き分け、首筋を露出させた。
 …この辺にしてアマガミしないと、体をブルブルして拒絶されそうだな。
 て訳で、ふーっとせずにイタダキマス!


 はむっ

「ひあっ!?」


 …あ・ま・が・み・させてイタダキマシタ!
 流石にディズィーも驚いたみたいで、目を丸くして俺を振り返った。
 上半身を回転させたんで、ネクロとウンディーネが手から離れちゃったが…二人とも自力で俺の手元にまで戻ってきた。
 またナデナデ。
 それを見て、ディズィーは驚いた顔から徐々に不機嫌な顔になって、膨れてまたソッポを向いてしまう。

 好 都 合 だ ね !

 では、AMAGAMI第二弾!
 は~、カプッとな。

 歯ではなく唇で噛みつく感じ。
 まだ歯を立てるには早い。

 ディズィーはやっぱり驚いたようだが、今度は振り返らなかった。
 気にはなっているようだけど、まだスネスネ具合が深刻なようだ。
 …と言うか、こうしてると ぺろっ とやりたくなってくるんだが。
 舐めたい衝動を抑えるように、唇をハムハムさせてディズィーの気を惹いてみる。 
 …まだスネている。
 じゃあ、ちょっと方向性を変えて、ハムハムするんじゃなくて唇で挟んで左右に移動。
 …アレだ、フェラテクでハーモニカっつーのがあったが、それと同じ原理で。
 ………ディズィーのナニだったら、俺がおフェラするのも耐えられる…かも?
 ビクビクビクッと反応。
 をを、ディズィーの弱点発見か!?
 もうちょっとコレを続ければ、ディズィーも我慢できなくなるか…!?


「…あ、あの、兄様?
 こうして撫でるだけというのも、その芸がありませんし、これ以上続けるのでしたら、私にもその、ディズィーと同じ事を…」


 …E?


「俺も興味があるな。
 後でいいから、やってくれ」


 …∃?


「…………!」


 や、ヤベ……折角ディズィーがスネスネモードから復帰しかけてたのに、もっと強固に閉じこもってしまった!
 天照大神もビックリな閉じこもりっぷりだ!
 …だが、天照を引きだした時と同じ手段は使えない。
 この場合、それをやるとなるとディズィーから一端離れて、ネクロとウンディーネに色々しまくる事になる訳だが!
 いやこの際ネクロをアマガミするのだって別に問題はない、我が家族愛の前ではこの際でなくても問題は無い。
 もしそんな事したら、ディズィーはスネるのを止めて振り向くかもしれんが、ネクロとウンディーネとの間に溝が出来てしまう気がありおりはべりいまそかりゃ!

 くっ、仕方ない…もう暫く色々と堪能していたかったが、ここで札を切る!



「ああ、分かったよ。
 ていうかディズィー、そんなにスネないの。
 お姉さんになったんだから」

「……お姉さん?」


 おっし、反応アリ!
 キーワードは『姉』。
 ディズィーとネクロとウンディーネの繋がりを強調する言葉であると共に、ディズィーの立場が変わった事に自覚を促す魔法の言葉である。


「そう、お姉さん」

「む、我々にとってはディズィーはむしろ娘「ネクロ、だったらむしろ譲歩してやってくれ」…兄の頼みだ、まぁ問題は無い」


 娘扱いだったのか…。
 ウンディーネを見ると、素知らぬ顔でソッポを向いている。
 こっちも同じか。
 まぁ、確かにゲームでの言動を見るに、どっちかと言うとネクロとウンディーネが夫婦でディズィーが娘に見えたよな。
 が、事実なんかどうでもいいし、画面の中での事だってどうでもいいのだ!
 むしろ娘扱いだと言うなら、オママゴトに付き合っているのだと思ってくれぃ。
 む、そうなると俺がディズィーの夫役になるのは確定的に明らか!
 うん、これは素晴らしい。
 あれ、でもディズィーが娘扱いなのに、俺は兄扱い?
 どういう家系図だ。


「お姉さん…」


 俺が勝手にウンウンと頷いたり首を捻ったりしている間に、ディズィーは何やらトリップしていた。
 ま、ディズィーは今まで末っ子扱いだったからな。
 家の中では勿論、外で村の皆と遊ぶようになってからも、初対面時は外見年齢から言っても明らかに一番年下だった。
 その扱いが今でも続いている…何故急成長に今までツッコミが入らなかったのか不思議で仕方ないが、まぁ変人が多いしな、この世界…ザッパとか素の状態でも割と変人の類だと思う。
 ポチョムキンの体なんか変の範疇に収まるかどうか。
 他にもヴェノムの髪型とか。
 チップは…まぁ、ジャパン被れって意味で変人だし。
 ファウスト先生なんて最早…。


「そうそう、お姉さんなんだから、妹と…………弟?
 に譲ってあげなきゃいけないぞ」

「兄、何故俺を見て首を傾げるのだ?」

「いや別に。
 …実は女だったりしないかな、とふと思っただけで」

「面白い事を言うな、兄。
 ユーモアのセンスがあるぞ」


 そんなモノ無いよ。
 俺は極々常識的で面白味のない思考しかできない一般人だよ。
 …え、俺がHENTAI?
 それも含めて常識的な一般人なの。
 一般人って言ったって、誰だって我を忘れる程に好きな物が出来たりしたらこんなモンだよ。
 俺の場合はそれがディズィーだったってだけの話さね。
 いや、ギアが一般人かって言われると、そっちは普通に反論できないけど。


「女も男も、我々は寄生型ギアだ。
 はっきり言ってしまえば、男女の区別など無い。
 何せ、基本的に子供なんぞ作らんからな。
 …兄が我々に対して女性として振舞ってほしいなら、せんでもないぞ?
 別に何も変わらんからな」

「そういう事です、兄様。
 外見で女性男性に近く見えると言うだけで、別に男女の機能がある訳ではないんです。
 ネクロが言うように、女性として振舞うにしても男性として振舞うにしても、口調や動きは変わりません。
 ただ自分が『そういう立ち位置にある』と定義するだけです。
 わ、私は…兄様が望んでも立ち振る舞いを変える気はないんですよ。
 ないんですからね?
 い、妹の方が……その、大事にしてくれる場合が多いと聞きましたので…」


 ………え、まじ?
 …はっ、茫然自失としてて『なん…だと…』をやる余裕も無かった!
 凄まじいな、この二人の戦闘力(意外性とも言う)。


「…ギア?
 ナッシュ、ギアって何?」


 はぅあ!?

 お、おおおお落ち着け俺!
 どっちにしろ明日の家族会議で色々と話す事になるんだ、今話しても、気付かれても問題はない。
 と言うかトリップしてたのにどういうタイミングで戻ってきとるかね!
 しまったトリップ顔を激写するのも忘れてた!


「え、えーとな、俺も実を言うと詳しい事までは知らないんだけど、俺とディズィーとネクロとウンディーネはギアらしい。
 ギアが何かって、それは明日お爺さんとお婆さんに聞こう。
 俺よりも詳しく知ってるから」

「…………」

「なっ、お姉さん。
 今日はネクロとウンディーネの誕生日なんだから」

「む、祝ってくれるのか?」

「当然」

「でしたら、ディズィーが好きなアップルパイと言うのを、私も直に食べてみたいのですが」

「OKOK、お婆さんにお願いしてくる」


 …ふぅ、何とか切り抜けたぜ。
 ディズィーはさっきまでとは違う意味で不満そうと言うか不安そうだが、こればっかりはな…。
 その日のディズィーの表情は、アップルパイを食べている時もベッドに潜りこんだ後も曇りっぱなしだった。




アトガキ
次の話しから、ちょっとシリアスになりそうです。
むぅ、最初からプロット0で書き始めたからメッチャ詰まってる…。

AAって扱うの難しいなぁ。
左側から作成・編集してくのがコツ、と…。
AAの編集のおかげで、投稿は2時間くらい遅くなったぜ。
もう使わない…。



[17288] 09 前
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/04/23 13:48

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 いつものペースで言えば、今回は10~11歳の話になるんでしょうが、今回はちょっと特別イベントが入るよ!
 何かって、そりゃ俺達がこれからどうするべきか、またギアとは何かをディズィーに説明する家族会議だ。
 こればっかりは避けて通れないし、外伝扱いにもできないしなぁ…。
 重い話になるかもしれんけど、妹の将来の為だ。
 いっちょ頑張りますかね!

 ちなみに2か月で約一年分成長してるんだ。
 今までの成長記録(No.1~No.8)で16カ月分…この世界に来て、実はもう一年以上経つんだね。
 まぁ、成長速度が一定ではない時期もあったんだけど。
 それに、いずれは成長記録を編集して、特集みたいなのも作ろうかなと思ってるから、記録一つにつき一か月とは限らない。
 



 さて、それはそれとして。
 昨晩、ディズィーは夜遅くまで目が冴えて眠れず、結局お婆さんの子守唄で眠る事になった。
 俺も一緒に寝た……事は寝たんだが、俺には例の機能…夢、と言うより情報処理中にイメージの中だけで活動できるという機能がある。
 それを使って、ネクロとウンディーネに接触できないか試してみた。
 本当なら直に話せるのが一番良かったんだが、そうするとようやく寝付いたディズィーが起きそうだし、お爺さんお婆さんも眠れないだろう。
 何より、羽コンビもお子様らしくスヤスヤと非常に寝付きが良く夢の中だ。

 自分でも出来るかどうか半信半疑だったんだが…こう、何か通信システムのような何かが起動して、同じように眠っている二人とコンタクトが取れた。
 上手い事夢の中に連れてきたんだが。


「あ、兄様…夢の中で、私達をどのようになさるつもりです…!?
 ああでも、兄様が望むと言うなら…いやしかし初めて顔を合わせた日にだなんて、幾らなんでも早すぎます!
 もう少し節操を持ちなさい兄様、でもこの千載一遇のチャンスを逃すべきではなく」

「むぅ…兄よ、立てんので手を貸してくれ」

「…まぁ、いいけどさ」


 何かへたり込んで妄想しているっぽいウンディーネ…つーても、コイツ性的な知識あるのかな?
 どうするつもりかって、この子の想像では精々が延々とナデナデし続ける程度のもんじゃなかろうか。
 まぁ、確認するのは怖いからその内酔った勢いで聞いてみるとして。

 ネクロもウンディーネも、ちゃんと立てないのは予想外だった。
 よくよく考えてみれば、普段はこの二人の下半身は羽だからな。
 で、今の夢の中では普通に2足。
 初めての直立、ちゃんと立てないのも無理ないわ。
 ゲームではネクロは全身を出してきて直立した事もあったけど、まだ子供だし。 


「よっと。
 立ちにくいっつーなら、足幅をこう、もうちょっと広げてな。
 前後に倒れそうになったら、上半身を反対側に動かしてだ…」

「感謝する、兄よ。
 うむ…そうか、足で立つというのはこんな感じなのだな」


 おお、笑顔。
 ガイコツの骨格が歪んでいるように見えるが、何か可愛い。
 素直な笑顔程、心が和むものはないね。


「…感謝はいいから、あっちで何か妄想してるウンディーネを止められんかね」

「兄が止めた方が、ウンディーネも喜ぶと思うが…まぁいい」


 ガツン!


 …いい音しました。
 うん、やっぱネクロは好戦的っつーか乱暴なトコあるわ。
 でもこれはこれでカワイイね?


「あ、あら?
 ネクロ?
 それに兄様?
 さっきまで私の上半身をナデナデしてくれてたのでは?
 …あ、そ、そうか今からするのですね?
 早くしなさい、兄様。
 私は貴方と違って暇では……ないのですけど、ナデナデの為だと言うなら…いえ、いっそ私が兄様をナデナデ」

「落ち着け妹よ。
 そうじゃなくて、ちょっと二人に色々と聞きたい事があって呼んだんだ。
 …ギアと言うか、俺の事についてな」

「兄の事について?
 俺が知っている事なら答えるが…精々、兄は優しい、撫でるのが上手い程度の事しか知らんぞ」


 …そう言いながら顔を赤らめるな、ネクロ。
 撫でられるのを思い出したのか?
 ………・うん、顔が基本的に緑で赤みが刺すドクロってスゲェ。
 これは妹、これは妹、これは妹…弟よりかはダメージが少ないぞ…どういう意味でのダメージかは、各自推測してくれ。


「お褒めの言葉ありがとう。 
 うん、何から聞いたもんか…」


 取りあえず、細かいやりとりは省く。
 何と言ってもキリがないからな。
 ネクロが言うとおり、俺について大した情報は無かった。
 俺がどうしてナッシュボディに憑依したのか、とか…まぁその辺は、最初から当てにしてなかった訳だが。
 何故あの森に、誰が捨てたのか。
 お母さんことジャスティスは、どうやって俺達を産んだのか。
 ネクロとウンディーネは、生まれた時からディズィーと一緒だったのか、それとも後から誰かが植えつけたのか…。
 その辺りを色々と聞いてみたんだが、何も分からなかった。

 ただ、分かった事もある。


「…俺が?」

「そうです、兄様。
 旗艦型ギア、とでも言えばいいのでしょうか…。
 兄様は、私達にとって非常に心地の良い波動を出しています。
 気分が良い、というだけでなく、近くに居ればその波動を受け取り、私達のエネルギーとする事ができるのです。
 …自分の事でしょうに、ご存じなかったのですか?」

「いやご存じも何も、俺とディズィー以外のギアって知らないし。
 要するに補給地点みたいなものか」

「ああ、大体そのような認識でいい。
 ただ、俺達が兄を好いているのは、それだけが理由ではないぞ。
 羽の姿しか取れなかった昨日までも…兄が何度も俺達を撫でてくれたのは、よく覚えているからな」


 あ、結局刷り込みって効果あったの。
 ヒカルゲンジ計画、進めてる間に俺も情に絆されちゃったけど。 


「そもそも、こうして夢の中に別のギアを引き込むなど、普通のギアには備わっていない機能だ。
 情報伝達でやりとりするくらいはできるがな。
 …とはいえ、実を言うと俺達も詳しい事は知らん。
 そうだな…恐らくだが、他のギアを運搬する能力もあると思われる」

「あ、それは心当たりがあるな。
 頭の中に入ってる情報の中に、空間操作系の奴がある」


 ファウスト先生が使ってるらしい奴だな。
 これを使えれば、いつでも何処でも手術室が確保できるというスグレモノ。
 実際に使うには、複雑すぎてギアボディでも頭が痛くなるけどね。


「その空間操作でギアを特殊な空間に格納し、兄様の波動でエネルギー補給させ、戦場まで運ぶ…という寸法ですか」

「いや今更戦場言われても…ケンカは嫌だよ俺」


 相手があの連中なら尚更な!

 この後も暫く話し込んでいたのだが、結局これ以上分かった事は何も無い。
 話す事が無くなったので、二人とも眠ってしまった。
 うーん、子供に無理をさせすぎたかな…。


 夢の中でお話している間、ディズィーの寝顔が微妙に歪んでいたのは…ギア云々が不安だったのよりも、仲間外れにされたのを敏感に察知していたからのよーな気がする。
 だってお話し中はいつもより抱きついてくる力が強かったし、ネクロとウンディーネが眠ったら表情の和らいたし。
 俺も大概シスコンだけど、ディズィーも結構ブラコンだからなぁ…。







 さて、翌日の家族会議。
 その日は朝から微妙な緊張感が漂っていた。
 ディズィーもいつもより早起きだったし、ちゃんと眠れなかったって顔だったし……はっ!?
 しまった、ディズィー自慢で寝るときの自慢はしたが起きた時の自慢してねぇ!
 ぬぅ、家族会議はこの際次回に回して、今からでもディズィー自慢寝起き編を……いや、流石に無理だわ、この流れだと。
 それに、次からはディズィーだけじゃなくネクロとウンディーネ自慢もしないといけないからな!
 今は……二人とも羽の形になって出てきてない。
 寝起き姿も何も無いな…。
 いや、ひょっとしてまだ寝てるのか?
 おはようの挨拶も無いし…。


「ディズィー、おはよう。
 ところで後ろの二人はまだお眠?」

「おはよう……うん、寝てるみたい」

「じゃ、自分で羽動かせる?」

「ふぇ?
 えっと………うん、動かせるよ」


 成程、あの二人が寝ている間は制御権はディズィーにある…と言うより、より優先的な制御権がある二人からの介入が無いから羽を自由に動かせる、って事か。
 …そう言えば、羽の大きさからして物理的に飛べる筈が無いんだよな。
 人間を羽ばたいて飛ばすには、2メートルくらいの翼が要るとか要らないとか、そんな話を聞いた事があるような無いような。
 ……まぁ、ギア的な何かで飛んでいるんだろう。
 そもそもファウスト先生がやってる、メリーポピンズみたいな傘飛行だって何も突っ込まれないんだ…ファウスト先生だから、かもしれないが。
 ゲームの中での技が現実でそのまま使われてるとしたら、虚空から出現する畳返しやら幾らでも出てくるビリヤードの玉とか、疑問は山ほど。
 土台、二段ジャンプが出来る時点で………いかん、これ以上考えてると人類の機能の根本から考えなきゃならなくなってくる。

 ………こんだけ色々ある世界なんだから、エッチぃ方面も発達してんじゃないかな…。
 48手を通り越して120手くらいに増殖してるんじゃあるまいか。
 ナニを増やしたりデカくしたりカタくしたりする法力があっても驚かずに狂喜乱舞するぞ俺は。
 そしてきっと触手や分身もある。
 え、誰に使うって?
 ………どうしよう。
 ディズィーは現状、劣情を煽る妹であると同時に保護対象だし。
 だからって一般人を口説いてるような余裕は無いし、そもそも根がヘタレの俺はナンパなんかした事無いし。
 …あのメンバーの誰かを口説けって、そりゃ普通に死ねるレベルだよ。
 ディズィー…じゃなくてもネクロやウンディーネがヤキモチ妬いて突っ掛かって行ったらどうすんだ。
 嫁姑戦争がガチで死ねるレベルになっちまう。



 さて、戯言はともかくとして…まぁ、読者の方々は戯言の方をメインに思ってる気がするが…待て、読者って誰だ、誰か俺の思考ログを読んでるのか?
 とにもかくにも、朝の食事を終えて家族会議の時間だ。
 食事は…まぁ、いつもよりちょっと沈んだ雰囲気だったが、ネクロとウンディーネはお構いなし。
 昨日のお祝いのアップルパイで味を占めたのか、ディズィーの分まで食べようとしていた。
 お行儀が悪いから、素直にお代わりしなさい!とお婆さんが怒っていたな。
 素直に謝るネクロとウンディーネ…二人が素直と見るべきか、平然と怒れるお婆さんが剛の者なのか…。
 まぁ、ディズィーは今日は食欲が無いみたいで、結局二人に食べてもらったんだけど。
 …3人の胃袋、どうなってんだろうな。
 羽の姿しか取れなかった時は、ディズィーだけが食べてたから栄養を3人で共有しているんだと思うんだが。
 二人が人間形態をとれるようになった分、必要なカロリーも多くなったのかなぁ。

 ま、とにかく、この家族会議を無事終えて、ディズィーの精神も持ち直したら、中々騒がしい日々になりそうですな。
 よっしゃ、頑張るぞ!





「さて、ディズィーや。
 よくお聞き。
 まず、お前はギアなんだよ」

「ギア…」

「いや、爺よ。
 ディズィーと兄は正確にはハーフギアだ」

「おや、そうなのかい?
 ハーフと言うと…」

「人間との子供、という訳だな」

「ほぅ…それは興味深いのぅ。
 ま、問題なのはそこではないわい。
 ネクロ、ウンディーネ。
 お前さん達にも言い分や訂正はあろうが、まずはワシから話して構わんかの?」

「どうぞ、お爺様。
 ネクロが話を妨げてすみません」

「む…」


 ペコリと頭を下げるウンディーネ。
 おしゃまなょぅι゛ょにしか見えないね!
 とても可愛い…などと言ってるシーンじゃ無かったな。

 お爺さんは語る。
 俺と、ディズィーがギアである事。
 ギアとは、数年前に終わった聖戦で人類に牙を剥いた、恐ろしい兵器と思われている事。
 …そして、お爺さんとお婆さんの子供達が、その戦争で死んだ事…。
 子供達が居なくなって寂しい思いをしていた頃に、俺達を拾った事。
 詳しい事まで話した訳じゃない。
 それを一度に理解させるには、ディズィーはまだ少々幼い。
 と言うか、唯でさえ寝不足気味なのに、長くて衝撃的な話を延々と聞かせた所で頭に入る筈無いわな。

 ディズィーは黙って話を聞いていた。
 俺も見た事も無い程に、真剣な表情で。
 まぁ、ちょっとばかり顔色が悪いと言うか、眠そうだったのは御愛嬌だ。

 話を聞いている内に、顔色は段々と悪くなっていく。
 ギア、という物がどういうモノなのか、徐々に理解しているんだろう。
 実感があるかどうかはともかくとして…いや、自分にはシッポとネクロとウンディーネ、俺には角という他の人間には存在しない特徴がある。
 実感という意味では、これ以上無い程にあるのかもしれない。
 俺は………どうだろうな。
 自分がギアだと言う事は認識があったけど、それに実感があるかと言われると返答に詰まる。
 体はギアでも、俺の意識そのものは今でも人間なのだ。
 俺自身は、未だに自分を人間だと思っている。
 …そう思ってても大して問題無い程、俺というギアは人間に近いのだろうけど。
 …ディズィー自慢をしている時は、人間でもギアでもない別の何かに進化している気がしないでもないが。


 お爺さんの話は、まぁ何と言うか、話以上のものじゃなく、10分足らずの時間で終わった。
 確かにギアが起こした戦争で息子達は死んだが、ギアそのものは直接見た事が無い。
 見るような機会があったら、まず間違いなくその場で死んでいる。
 「そういうモノだと聞いた、或いは伝えられている」以上の情報は持っていなかったし、ギアの生態についても知っている筈が無い。
 ネクロやウンディーネが言う、寄生型や旗艦型などのタイプの違いも知らない。
 だから…と言う訳でもないが、お爺さんの話は、「ギアであろうが人間であろうが、もうお前達は私達の孫だ。愛すべき、孫なのだ」という言葉で締められる。


 残ったのは、沈黙。
 俯いているディズィーと、黙っている俺とネクロとウンディーネ、お婆さん。

 …幾ら俺でも、この状況でディズィー自慢は出来ないよ。
 俯く姿も可愛らしいとは思うけど、涙にくれる姿を自慢するような趣味は無い。
 それに何を言っていいかも分からない。
 …ああ、ネクロとウンディーネに訂正や補足はあるかと聞いてはみたけど、黙って首を振られるだけだ。

 本来なら、今後の事を話すべきなんだろう。
 これから俺達はどうすべきなのか。
 ネクロとウンディーネの姿を隠して生活できるのか。
 いつまでこの村に居られるのか。
 …でも、そんな重いテーマを話せるような雰囲気じゃない。
 これは確かにディズィーが受け止めなければいけない事だが、一度に全てを受け止めなければいけない道理はない。
 今後の相談なら、ディズィーが落ち着いてからにした方がいい。
 ネガティブ思考に取り憑かれてると、逃走か自殺系のアイデアしか出て来ない。


 震えているディズィー。
 …出生の秘密、か……確かに衝撃的で重い事実…。
 ……………待て、よくよく考えてみりゃ、ディズィーは俺達が拾われっ子だった事も知らないんじゃなかったっけ?
 普通に生活してて話すような事でもないし、
 ギアがどうのこうの以前の事だった……う~む、盲点。
 と言うか、ディズィーはあの頃の事を覚えてないんだろうか?
 俺はハッキリと思いだせるんだが。

 …どう考えても、大丈夫じゃないねコリャ。
 今のディズィーを一人にするのは、とてつもなくマズい。
 漫画の世界の、人を気絶させたり三途リバー送りにしたりする料理よりマズイ。
 色んなショックが積み重なって、今のディズィーは錯乱状態にあると考えられる。
 ネクロとウンディーネが居るから最悪の可能性は回避されると思うが、逆に言えば最悪以外の可能性は大いに考えられる。
 錯乱したディズィーの感情に釣られて二人が暴れ出した日には、俺達だけじゃなくてお爺さんとお婆さんもこの村に居られなくなっちまう。
 ていうか村ごと消える。




 という建前の元、ディズィーに密着する事に決めまシタ。
 ええ、文字通り密着です。
 ハグとも言います。
 ああ、ディズィーはちっこくて可愛いなぁ。
 ネクロもウンディーネも可愛いなぁ。

 …え?
 ディズィー自慢はしないとか涙にくれる姿を自慢するような趣味は無い、はどうしたって?
 いや自慢はしないよ。
 ただディズィーが大事なだけで。
 スキンシップが大好きなディズィーだから、こうやって抱きしめてれば少しは慰めになるかなって程度の話だよ。
 それに、衝動的にいきなり飛び出していくような事も防げるしね。
 …まぁ、私情と言うか欲望を捨て切れていないのは認める。
 ディズィーを慰める為に抱きしめている筈が、いつの間にやら「ぬをををををこのまま押し倒してぇぇぇ!」なんて考えている始末。
 …まぁ、押し倒したってナニが役に勃つかどうかは微妙なトコだが。
 むしろ股間の中華キャノン(ネタとしか思えない機能なのに、没にはされてないんだ…)を使ってしまったらと思うと腰が引けるが。

 ディズィーは、俺に抱きしめられても暫くジッとしていたが、やがて弱々しい動きでぎゅっと俺の服の袖を握った。
 血反吐を吐きそうなくらいに可愛らしい姿なんだが、それ以上に心が痛む。
 ネクロとウンディーネは、意外と空気が読めるらしくて大人しくしている。
 自分も撫でてくれギュッとしてくれと催促もしない…それはそれでちょっと寂しいような。


「うむ…儂達から話しておく事は、これくらいじゃの。
 ディズィー、ナッシュ、暫く休憩しよう。
 儂も喋りすぎで、喉が渇いた…。
 そうじゃの、晩御飯を食べて一休みしてからでどうじゃ?」

「そうですねぇ…。
 お腹が空いてると、暗い考えしか浮かびませんからねぇ。
 ディズィー、今日は大きなアップルパイを焼いてあげるわね」

「……うん…」


 大好物のアップルパイにも、ディズィーは反応を示さない。
 それだけショックだったって事か。
 まぁ、俺のハグにも殆ど反応してないのに、アップルパイに反応したら俺が家出する程ショック受けるけど。

 二人をチラッと見てみると、小さく頷かれる。
 もうお爺さんとお婆さんは、それぞれ自分の仕事に行かねばならない。
 ディズィーを頼むって事か…。
 俺も見かけは子供なんだけど、中身はディズィーよりずっと精神年齢が高いっていうのはとっくに知られているし、同じハーフギアなんだから適材適所と言えば確かにそうだ。
 尤も、だからといってお爺さん達が感じている無力感や、大人としての不甲斐なさが消える訳じゃ無かったんだけど。

 …ただ、俺はそう考えて、その通りにお爺さん達の行動を受け取ったけど、ディズィーはそうじゃなかったのに気付かなかった。
 これは、後からディズィーに聞いて、気付かなかった自分に本気で中華キャノンを叩き込んでやりたい衝動に駆られたんだけど…。

 強いショックを受けてマイナス思考に取り憑かれてしまったディズィーには、その行動が自分から逃げるように見えたらしい。
 事実、そういう意図がまるで無かった訳ではないのだろう。
 あの重い空気から逃げ出したいのは良く分かる…それでも、退いてはいけない場面だったんだろう…進む事も下がる事もできなかったとしても。
 でも、単に逃げ出しただけじゃなくて、空気を変える為の休憩のつもりだったんだ。
 それが悪い方向に働いたんだなぁ…。
 加えて、お爺さん達が感じていた負い目を、ディズィーが敏感に感じ取った事も裏目に出た。
 その負い目は、お爺さん達自身の不甲斐なさから来る負い目だった。
 しかし、ディズィーは自分と言う異物・ギアを恐れたから、そういう負い目を感じているように思い込んだのだ。
 そのショックがどれ程のものだったのか…冗談抜きでトラウマ物である。


 そんな心境になっていたディズィーにも気付かず、俺はディズィーを抱きしめ続ける事で、多少の慰めを施した気分になっていた。
 偽善者どころの話じゃないな…。
 これでシスコンを名乗る資格は無い…。

 …自虐的な話は繰り返しても詰まらないだろうから、一端心持を切り替える。
 よし、切り替え完了!
 俺はディズィーを抱きしめてたけど、何と言うか、反応が薄いのが寂しいとか、いつもに比べて体温が冷たいと言うか…。
 今思えば、それもディズィーが沈み込んでいたのをある程度感じ取っていたのかもしれないな。
 壁一つ、分厚いカーテン一つ隔てて抱きしめているような、そんなもどかしさを感じていた。
 …ディズィーも辛いだろうけどさ、それとはまったく別のコミカルな方面で俺も真剣に辛かった。
 そう、コミカルな方面で。

 ん、結局何が辛かったって?
 そりゃ…ほら、アレだ。
 前にも言った事があると思うけどさ、ディズィーの可愛らしさは、ある種麻薬以上の習慣性がある訳よ。
 少なくとも俺にとっては。
 何だかんだいいつつも、今回もディズィーをハグして、その可愛らしさに浸っていたんだが…それを素直に感じられない!
 壁一つ、分厚いカーテン一枚に遮られて、ディズィー成分を摂取できない!
 この辛さが分かるか、分かるかぁぁぁぁ!?
 …分かると言ったそこの君、君はどうやってディズィー成分を摂取したのかね?
 もしや我が妹とハグをした事があったりストーカーした事があったりするのではあるまいな。
 もしそうだとしたら、君はKYに次ぐ宿敵としてファイナルアンサー。

 例えるならば、だ。
 容赦なく太陽が照りつける灼熱の砂漠で!
 丸二日間水分摂取無し!
 だと言うのに、手元にはペットボトルに入っている、なんとも冷えた一リットルの水があって!
 それを飲み干してもいいと言うのに、そのペットボトルには飲み口も無いし切れ目を入れる事もできない!
 目の前に冷たい水があると言うのに、しかもそれを目視する事すら出来ると言うのに、飲めない、吸えない、触れられない!
 このイライラ感が分かるかぁぁぁぁ!?
 …もうちょっと身近な所で言えば、禁酒中に飲み会に誘われたり、禁煙中に目の前でプカプカやられる感じかなぁ…。
 ま、俺はタバコは吸わないし、禁酒中でも飲み会でガバガバ飲んじゃう駄目な人だけどね。
 …いかん、酒飲みたくなってきた……。



 それはともかく、ディズィーは何故か部屋の隅っこで三角座りしている。
 もう夕方になっていて、赤い夕陽が差し込んできていた。

 …と言うか、前から疑問だったんだが何故に三角座りは体育座りと呼ばれているんだろう?
 どっちが正式名称だろうか。
 俺が小学校に通っていた時代は…辛うじてブルマァが現役として残っていた時代だったような気がするんだが覚えてないなー、勿体ない。
 ひょっとして、ブルマァを堪能する為に三角座りを体育座りとして定義したんだろうか?
 実際、小学校の体育の時間では女子が揃って三角座りしていた。
 当時は何も思わなかったが……もしも教師がアレな人だったら、そりゃ性犯罪が増えるのも…いや、性犯罪に走るのは本人のモラルが低いからだ、断じてブルマァが原因ではない。
 うん、ブルマァに罪は無いな。
 真面目な話、コスチュームに罪がある筈が無い。
 罪はいつだって、それを目にする人間にある。
 もちろん漫画やゲームにだって罪はねーよ、んなトコ目の敵にするくらいだったら教育改革しろってーの!
 そもそもその手のサブカルチャーが無かったら日本経済なんぞ3カ月立たずにポシャるわ!


 ま、それはともかくとして…俺もディズィーも、何も言わなかった。
 何を言えばいいのか分からなかったっていうのもあるけど、そもそも口を利く気にならない。
 俺も抱きしめるのは止めて、ディズィーの背中に寄り掛かって座っていた。

 …家の外が赤く染まって、やがてゆっくりと藍色に染まって行く。
 もう夜だ。
 そろそろご飯の時間……なんだけど、その前にトイレ行きたくなってきたな。
 昼飯食ってから、ずっとディズィーに付きっきりで出す物出してなかったし、尿意を意識したら一層我慢できなくなってきた。

 しかし、今のディズィーを放置しておくのもな…。
 だからといってトイレまで一緒に連れていく訳には………別によくないか?
 文字通り一緒のトイレに入って、出す所を見せる訳でもなし…………モチツケ俺、今更この程度の想像で興奮するような俺じゃない!
 ああしかし、もしも立場が逆だったらどうなる!?
 妹幼女の排泄シーンを見て、俺は一体何を思うのか!?
 …小を見て興奮するなら…まぁ、そういう性癖の人が居ると理解してはいるから、モラル云々はともかくとしてまだ許容できるけど…大を見て興奮したら、どうすればいいんだろうか…。
 あれ、でもカンチョーする分にはあんまり拒否感はない俺………うん、まぁアレだ、実物を見た事が無いからそう感じるんだな。
 エロゲなんかで美化(?)されてるのが判断基準になってるから、こんな事で興奮してしまうんだ、うん、俺は異常じゃなくて単に幻想を見てるだけだ。
 あと、ノーマルな人間ほど、ちょっとアブノーマルな行為を見ると興奮してしまうのは世の常だ。
 「だ、駄目だそんな事は!」と叫びながら、想像してちょっとドキドキしてしまうのは思春期の常だからな、うん。

 …いかん、余計な事考えてたら、本格的に尿意が高まってきた。
 もしもこれでナニが勃ってたら、トイレに行きたいけど立つに立てないという地獄の状況が出来上がる所だった…男性なら誰でも一度は経験があると思うが。
 具体的に言うと、朝起きたばかりに時に。
 …ま、単に前屈みになって歩けばいいだけなんだけど、それをディズィーの前でやって、純真な目で首を傾げられるとな…。


「ディズィー、ちょっとトイレ行ってくる。
 一緒に来る?」

「…いい」


 …そうか。
 ホッとしたような残念なような、とにかく不安なような。
 3分足らずの時間目を離すだけなんだが、そこはかとない不安が残る。
 移動しようと思えば、3分どころか30秒で村の外まで行けるしなぁ…。

 去り際に、羽の姿をしたままのネクロとウンディーネをポンポンと叩く。
 ディズィーをちゃんと見ていてくれ、という意味を籠めて。
 二人は小さく揺れて返事をしてくれた。


 そしてディズィーから離れ、トイレに駆け込む。


 暫くお待ち下さい 暫くお待ち下さい 暫くお待ち下さい 暫くお待ち下さい 暫くお待ち下さい 暫くお待ち下さい

 …断っておくが、何もおかしな事はしてないからな。
 はー、スッキリした…。
 しかしナンだね、俺っていつになったら勃つようになるんだろうか?
 考えて見れば朝立ちだって何歳くらいからなるんだか。
 今、体の年齢が10歳前後…。
 つーたら、小学校3,4年って所か。
 憑依前の俺は………どうだったかなー、中学生になった頃には、もう勃つようになってたと思うが。
 小学校の頃、授業中にナニが大きくなって、そのまま何やら妄想していた覚えがあるようなないような…まぁ、当時は性的な知識なんかまるで無かったから、精々パンツがどうのと考えてる程度だったけど。
 セクロスでナニをソコに突っ込むって事も、中学時代に初めて買ったエロ本(しかも小説・SM色強し)で初めて知ったもんだ。
 それまでは、精々裸で同じ布団の中で胸とか触る程度の事だと思ってた。
 フェラとかクンニとか乳吸いとか、ある意味カルチャーショックだったなぁ…。
 とにかく、この年齢ならもう勃ってても不思議はないと思うんだよ。
 まぁ、勃起したからって何かできる訳でもないけどさ。
 この環境じゃ自慰もできん、皆一緒に寝てるんだから。
 やっぱトイレでやるしかないのかなぁ…匂いが残るから、確実に気付かれると思うんだが。
 お爺さんはまだ理解してくれるかもしれないけど、お婆さんがどんな反応するか……ディズィーは無邪気に聞いてくるだろうけど、これが一番怖ヒ…。
 ………改めて考えると、こういう事をディズィーに教えなきゃイカンのだよな、一般教養的な範疇で………胃が痛くなりそうだ。
 「ナッシュは……その、そういう事をする時は、私が見てない時にやってね?」なんて言われてみろ、色々な意味でダメージデカすぎだ。
 逆に「私がや」………カットカットカット、トイレの中でブッ倒れるのはゴメンだぜ。



 …そーいや、俺はディズィーに兄って呼ばれた事無いなぁ。
 名前で呼ばれるのに不満がある訳じゃないんだが。
 …よし、ネクロとウンディーネも兄って呼んでくれる事だし、ディズィーの呼び方も変えないか提案してみようかな。
 うん、家族というか繋がりを認識させるのにも繋がるだろう。

 早速戻ってきて………あれ?


「ディズィー?
 ディズィー、何処行った?
 Where is まいえんじぇる?」


 頭良くなってるにも関わらずこの程度の自分の英語力に絶望しそうになるが…んな事より、ディズィーは何処だ?
 姿が見えない。
 嫌な予感が膨らむ。
 ディズィーの状態が状態だけに、姿が見えないのが不安で仕方ない。


「お爺さん、お婆さん!
 ディズィーは!?」

「ぬ!?」

「ディズィー……!?」


 … 最 悪 。

 トイレの中にまで連れ込んでおけば良かった、と下心無しに心底思う。
 もう外は暗い。
 ディズィーは何処に行った!?
 




あとがき
うぬぬぬぬ…問題だ。
非常に問題だ。
就活よりも問題だ。
ネクロをそのまま愛でるか…それとも女性型にして愛でるか…それが問題だッ…!

と言う訳で、ちょっとご意見を伺いのですが…個人的には、このままドクロのネクロを愛でる方向で逝きたいと思うのです。
家族の絆に外見なんか、刺身のツマみたいなもんだよ!



[17288] 09 中
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/04/30 22:12

 どーもどーもさっきぶり、ナッシュです。
 なんて呑気に言ってる場合じゃねぇ!
 ディズィーが家出しちまった!
 なんてテンプレな行動、そしてそのテンプレな行動を予想しておきながら放置していた俺をバラバラに引き裂いてやりたい!

 …なんて言ってる暇があったら、すぐに探しに出ないと。
 もう外は暗く、人も出歩いている時間じゃない。
 それが不幸であり、幸いと言えなくもなかった。
 ディズィーが何処かに行こうとしても、この暗がりじゃまともに進めるかどうかも怪しい。
 道を迷わすこの闇は、ディズィーが目撃されたとしても個人特定を不可能にしてくれる…筈。

 どうする、何処を探す!?
 いやまずは村の皆に助けを求めるべきなのか?
 でもそれをやると俺達がギアだってバレかねないし!


「落ち着かんかナッシュ!
 ディズィーが行きそうな場所に心当たりがあるなら、全て言え。
 まずそこを探すのじゃ。 
 それで発見できなければ、村の者達に助けを求めるぞ」

「え、でも」

「ナッシュ、命より大事なものは無いわ。
 村の中に居るなら良し、最悪森に入り込んでいたら、獣に襲われるかもしれない…。
 ネクロとウンディーネが一緒に居るから、すぐには大事にはならないと思う。
 例えこの村に居られなくなっても、死んでしまうよりはずっといいわ。
 それに、例え皆に助けを求めたとしても、それでギアである事がバレると決まった訳じゃない。
 ほら、ディズィーが行きそうな場所は!?」


 …理詰めで諭されて、俺は何とか冷静になる事ができた。
 方針の是非はこの際関係ない、とにかく指針がある事で頭を落ち着ける事ができる。
 これが歳の功と言うヤツか、と納得しながら、すぐにディズィーが行きそうな場所を思い浮かべる。
 行きそうなのは…いつも遊んでいる広場。
 友達の家……はこの場合無いな、自分がギアだという疎外感を感じているなら、友人の家に行こうとは思えないだろう。
 そうでなければ、森…これは保留…目指したとすれば、俺達が拾われた場所だけど、そこに真っすぐ辿り着ける筈が無い。
 深いところじゃないんだが、場所知らないだろうしな。

 …あ、ネクロとウンディーネが居るから飛べるのか?
 でもディズィーを頼むって言っといたし、ヘタな所に行こうとしたら諫めてくれると思うんだが…。

 とにかく、まず思い浮かぶのは。


「村の真ん中の広場。
 西のはずれにある池。
 森の中」

「森へは儂が行く。
 お婆さんは広場を頼む。
 ナッシュ、お前は池を探して、ディズィーが居なかったらすぐにお婆さんに合流するんじゃ。
 儂も森にディズィーの痕跡があるか確かめて、一度戻る」

「了解!」


 一目散に俺は飛び出した。
 西の外れの池…と言っても、俺なら1分程度で余裕で到着できる距離だ。
 全力で走るのなんて久しぶりなんで、危うくスピードが付きすぎて民家に激突しそうになったけれど、気合いで回避。
 思った以上に身体能力が成長していたようだ。
 感覚と体の差が、少しばかり大きすぎる。


(…戦闘用制御プログラム、起動。
 目的地、西の外れの池。
 備考:村の施設に損害を与える行為は、後々の潜伏生活に響くので極力控えよ)


 …特に意味はない、単なる自己暗示と言うヤツだ。
 バカやってると思うかもしれないが、こんな事でも考えてないと不安が暴走してしまいそうだ。

 すぐに池に到着。
 周囲は暗く、動く物は何も無い。
 せめて虫の一匹くらい居てくれても、と思うが、鳴き声一つ無かった。
 …強めの風が吹くと、草木が擦れて何かが泣いているような音を立てた。
 明りらしい明りと言えば、新月に近く細い月の光と、それを反射する池からの照り返しのみ。
 その僅かな光と照り返しでも、俺の目には充分だった。
 夜目が効くって程じゃ済まないくらいに良く見える。


「ディズィー!
 ディズィー、何処だ!?

  お 兄 ち ゃ ん だ よ !


 ネクロ、ウンディーネ、居るなら答えてくれ!

 お に ー さ ん だ よ ! 



 …一頻り声を上げるも、何の反応も無し。
 いくらスネていたって混乱していたって、ディズィーがこの声に無反応で居られる筈が無い。
 そもそもディズィーが返事しなくても、ネクロかウンディーネが反応してくれる筈。
 目に映る限りでも、ディズィーの痕跡は……無い。

 …待て、ここには無くても、ここに来るまでの村の中はどうだった?
 痕跡らしきモノは……あったか?
 ……駄目だ、目にしたモノを思い出す事はできるけど、痕跡があったかは断定できない。
 一瞬目に映っただけの情報を調べられる程、俺は高性能じゃない。

 落ち着け…後悔するような事じゃない、肯定するような事でも無い。
 お婆さんの元に向かいながら、俺は村の中にディズィーの痕跡が無いか、逐一チェックする。
 と言っても、それなりのスピードで移動しているから、あくまでざっとチェックするだけなんだが。

 …無い。
 足跡も、ディズィーの落し物も、昼飯に食べたパスタの残り香も、何よりも離れていても僅かに香るフローラルなディズィーの体臭も無い!
 クソ、本気で何処に行ったんだ?
 ………待てよ?
 よく考えたら、確実に痕跡が残っているところがあるじゃないか。
 ディズィーは靴を履いて家から出て行った。
 だったら、家の玄関に確実に痕跡が残っている筈。

 ああもう、何で最初に気付かないかな!
 俺のディズィーへの愛を以てすれば、玄関にさしかかった瞬間に残り香を発見して警察犬みたいに追跡する事もできた筈!
 今すぐ家に…いや、お婆さんに合流が先………ノー、合流いつでも出来るが残り香は風に飛ばされるかもしれん、一度家に戻る!

 と、言う訳で再びダッシュ。
 …周囲の民家が、少し騒がしくなってるな。
 家の壁で隔てられているとは言え、これだけのスピードで走りまわれば多少気付かれるのも当然か。
 隠密行動するべきだったか……いや、この際もう開き直ってしまえ。
 バレた時はバレた時、どうせ早いか遅いかの違いだけだ。

 と、言う訳で家に到着。
 ディズィーは…やっぱり帰ってきてないな、ちょっと期待したんだが。
 玄関にしゃがみ込んで、犬みたいに匂いを嗅ぐ。
 …日本みたいに、屋内で上履きを脱ぐ習慣があれば、クンカクンカできる程の匂いが残ってたんだろうが、性癖的な意味で残念なような、それどころじゃない的な意味で残念なような。

 なんて戯言言ってる場合じゃない。
 匂いは………僅かに残っている!
 お婆さんとの合流を後回しにしてこっちにきた甲斐があったぜ!
 よし、この匂いを辿って……………あれ?
 家の外に出て…ちょっと進んだら、匂いが消えた?
 まさか、もう風で流されちまったのか!?
 …いや、今日はそんなに風は強くない。
 仮に流されてしまったのだとしても、こんな風に唐突に消えるとは考えにくい。
 となると………ひょっとして、空を飛んだ?
 …ネクロ、ウンディーネ……何で協力してんの……。
 いや待て、そうと決まった訳じゃない。
 少なくとも、今までディズィーは空を飛んだ経験なんか無いから、飛ぶにしたって長距離は無理だ。
 この村は森に囲まれてるから、何処か飛んで行こうとしてもその中に降りる筈。
 外界…という表現もおかしいけど、とにかく村の外に繋がる道は一本道。
 そっちに向かった可能性もあるが、それは他の村人に探してもらえばいいか。
 よりヤバいのは森の中だ。

 なんて冷静に分析するより先に、お爺さんとお婆さんに合流しなくちゃな。


 西の広場に向かう時、ふと俺は考えた。
 ディズィーはどうして家出したんだ?
 自分がギアだと言う事を知って、ショックだったのは、分かる。
 でも、それなら何処かの部屋に閉籠るという選択肢もあったろうに…まぁ、俺達が住んでいる家は、台所兼居間、寝室、風呂、トイレくらいしか無い間取りだから、閉籠ろうにも閉籠れないのは確かなんだが。
 ショックだったのは分かるが…それがどうして、一直線に家出という方向に結び付いたのか。
 それを分からないと、ディズィーを連れ戻したとしても同じ事の繰り返しのような気がした。




 広場に到着して、お婆さんに報告。
 ディズィーが飛べるようになっていたと聞いてかなり驚いていたも、流石にお婆さんは冷静だった。
 ちょうど戻ってきたお爺さんと合流して、それぞれ結果報告。
 やはり、俺以外には成果無し。
 ただ、空を飛んで行ったらしいという報告を受けて表情を歪めるだけだった。


「で、どうやって追いかける?
 人海戦術?」

「それしかあるまいな…。
 ナッシュ、森に入っても大丈夫だな?」

「うん、サバイバルできるよ」


 数ヶ月間、お爺さんにサバイバル技能を習っていたのは伊達じゃない。
 νガンダム程でも独眼竜程でもないが伊達じゃない。
 本格的に森の中に住んだり遭難したりしたら無理だが、それでも道具を用意して森に入って迷わないくらいの能力はある。
 この辺の森は、色々と危険な動物もいるけど、それ以外はごく普通の森だ。
 磁石が通じない秘境でもなけりゃ、前人未到の荒れ地でもない。
 悪魔の森は例外だが、あそこは少々遠い。
 飛行覚えたてのディズィーが、一気に行けるとは思えない…それに上空は寒いし、すぐ音を上げるだろう。


「なら、お前は森を探せ。
 あまり奥には行かず、安全だと教えた範囲で、だ」

「でも…」

「自惚れるな、ナッシュ!
 確かにお前は覚えもいいし筋もいい、熊や狼に襲われても撃退できるかもしれん。
 …だが、それでもお前は子供にすぎん。
 何より、初めて蛇を殺した時の事を忘れたか!?」

「………!」


 反論できない。
 サバイバルを習う過程で、当然動物を殺す事はあった。
 生き残る為、食べる為だ。
 …決して、軽い気持ちで殺したつもりはなかった。
 弱肉強食とか食物連鎖とか、その手の言葉で理論武装もして、無駄にはしないと誓って殺した。
 …ただ、相手が蛇と言う、自分にとって馴染みも無く、見た目的にも可愛らしいとは思えない動物だと思っていたのは確かだ。
 ………甘かった……味が、じゃないよ?
 いや、確かに味も意外と甘かったけど……上等な魚みたいな味がするって聞いた事はあったけど、甘い味がするってのは想像してなかったよ。
 憑依前の世界でも同じなんだろーか?

 とにかく。
 初めて殺した時の俺は、何と言うか酷かった。
 まず腰が抜けた…とまでは言わなくても、足腰がガクガクして直立できなくなった。
 気分が悪くなって吐いた…吐瀉物はちゃんと埋めておいた。
 そして夢見も悪くなった……ディズィーの写真集で癒されてたけど、その中に混じって殺した蛇の映像が浮かんでるのはシュールだった。
 …あまつさえ、何かディズィーのデータと融合して蛇人間になりかけたし!
 あれは冗談抜きでダメージがデカかった…。
 その後も、1度2度殺した程度で馴れる筈も無く、未だに慣れたとは言えない。
 殺す時も、解体して捌く時も、恐怖や罪悪感や嫌悪で手が止まる事が何度もある。
 …そりゃ、狼なんかに襲われた時にそんな事してちゃ、生き残れるものも生き残れんな。


「…わかった」

「よし。
 では、家に戻って道具を取ってこい。
 儂らは皆に助けを求める」

「…うん」


 素直に従い、家に駆け戻る。

 …蛇を殺した時の話だが。
 実を言うと、嫌悪と同時に、少しばかり安堵した。
 「ああ、俺はまだ人間だ。兵器なんかじゃない」「罪悪感を感じるって事は、ここをディスプレイの中みたいに感じていない」って。
 ハーフギアになったからって、そのメンタリティが急激に変わった訳じゃない。
 闘う事、殺す事に抵抗が無くなるようにギアの制御プログラムが何かしたんじゃない。
 俺の意識は、まだ人間のままで居られる。
 それに、SSで読んだ事があるような、平凡で一般人だった主人公に無双させる為に殺す事の忌避感や闘う事への恐怖を感じさせなくなるようなのは、俺は我が身に起こるとしたら断固拒否する。
 殺し壊しが当然みたいな顔して行動するような、一種の精神異常者に改造されるのはゴメンだ。
 なるとしても、それなりの過程を経て自分でならないと…何と言うか、それまでの自分との差異で拒絶反応を起こしそうだ。
 この世界も、俺にとっては現実なんだ。
 シミュレートされている幻なんかじゃない。


「っと、家に到着。
 サバイバルグッズは……」


 家に入ると、ガランとした空気…あ、カギかけるの忘れてたな。
 ……誰も居ないから当たり前なんだが……何と言うか、肌寒くなってくるな。
 俺、一人暮らしとか平気なタチだったんだけどなぁ…。
 仕事止めてから、新しい仕事に就くまでは、家の中で一人で過ごすなんて珍しくもなかったし、その時は寂しいだなんて全く感じなかったんだが。

 よくよく考えてみりゃ、俺ってこっちに来てからディズィーとずっと一緒に居たんだよなぁ。
 お爺さんからサバイバル習ってる時とトイレ以外は、ほぼ視界の中に居たと言っても過言じゃない。
 距離にして1キロ以上離れた経験は無いぞ。
 ああ、だからこんなに不安になってるのか?
 今の俺の心にあるのは、ディズィーがどうなるかって不安だけじゃない。
 何と言うか……自分の体の一部が欠けているような、そんな不安定感。
 実際には欠けているどころか、角という余計な代物までくっ付いているんだが。
 更に言うなら中華キャノンという封印したい代物までくっ付いている…ネタじゃないんだ、ネタじゃなかったんだっ…!

 あー、とにかく、だ。
 ディズィーが居なくなって不安になるのは分かるが、我ながらこりゃちょっと…何と言うか、不安になりすぎじゃないか?
 気分的には、「空が…落ちてくる…」な気分だ。
 愛じゃなくて、コロニー的な感じで。


「っと、そうそう、コイツも使えるかも…いや、使うって用途の物じゃないけど」


 俺はここ暫くのお手伝い賃を詰め込んでゲットした『それ』を懐に詰めた。
 正直な話、もうちょっとマシな状況で渡したかったが…まぁ、仕方ないか。









 家からサバイバルグッズを持ち出して、森に入って10分程。
 既に村には話が行き渡っているらしく、少々騒がしくなっているのが伝わってきた。

 それはそれとして…今まで、シスコン兄貴の戯言だと思われていたであろう言葉を、今、これ以上ないというくらいに大真面目に発しよう。

 デ ィ ズ ィ ー 分 が 足 り な い !!!

 冗談でもなきゃ誇張でもない。
 本気でディズィー分が足りん。
 まさかディズィーの姿が見えないだけで、こうも心が荒波立つとは思わなかった。
 異常なくらいに不安が膨らんで、内側から弾け飛んでしまいそうだ。
 と言うか、こういう時こそギアの制御プログラムは動いてほしい。
 過剰なストレスを抑制する為なんだし、作動してもいいじゃないのよ。 
 それともアレか、俺がディズィーを求める気持ちが強すぎて、制御プログラム如きじゃ太刀打ちできないってのか。
 うっわ、スゲー説得力がある。
 だって俺の愛だしな!

 不安で不安で、何が不安なのか分からなくなるくらい不安で。
 今この場で、不安に任せて絶叫しちまいそうになる。
 まぁ、実際「ディズィー何処だー!ネクロ返事しろー!ウンディーネ戻ってこーい!」って叫んでるんだけどね。
 …いや、ネクロとウンディーネの名前を呼ぶのはヤバくないか?
 居なくなったのはディズィー一人って事になってるし…まぁいいや、その時はその時だ。
 どうせいつかはバレる話だ。

 俺は夜の森を小走りで駆けながら、ディズィーの痕跡が何処かに残っていないか探し回る。
 ほんのちょっとした匂いや声でも、流れてきてくれたらそこから辿っていけるんだが…まるで手掛かりなし。
 それとも……俺が見落としているのだろうか?
 それが益々持って焦りと不安に拍車をかけ、探索の効率を悪くしている。
 自分でもわかるんだが、明らかにこう……苛々した雰囲気というか、怒気が抑え切れずに発散されていた。


 それが原因だったんだろうか?
 安全圏だと教えられていた区域から、僅かばかりはみ出してしまったのは。
 普段はこんな所まで出て来ない獣達が、今に限って森の奥から湧いて出てきていたのは。

 ヤバい、と思った時にはもう遅い。
 気が付けば、俺は囲まれてしまっていた。
 熊…じゃない、狼。
 あちこちの木の陰から、茂みの中から気配がする。
 …闘って勝てるかどうかは微妙な所。
 何より闘うメリットが無い。
 こいつらを放置してたらディズィーに何かするかもしれんが、その時にはネクロとウンディーネがどうにかしてくれるだろう。
 具体的に言うと飛んで逃げるとか。


(俺の場合は、空は飛べないから…一気に突破して、村まで逃げ切るか)


 何だかんだいっても、獣達も賢い。
 森の中で人間を襲うならともかく、人里に下りて人間を襲えばどうなるか理解している…と、俺はお爺さんに聞いている。
 とにかくここは、一端引き上げるのが吉だろう。
 ディズィーを探す邪魔になっていると思うと、それだけで異常なくらいの殺意が湧きあがってくるが、ここは我慢の一択。
 …村まで少しばかり距離があるが、それこそ俺の脚力を嘗めてもらっても別に困りはしない。
 むしろ過小評価されるとやりやすいくらいだ…いや、やっぱ嘗められるのはムカつくし、プレイでもないのに舐められるのは普通に引くな。
 ディズィーならイイけど!

 なーんて考えてる内に、包囲網が徐々に狭まってきたので、村に向けて一直線にダッシュ開始!
 しようとした瞬間だった。


「たりら~るら~~♪」


 …頭上から、気の抜ける歌声が聞こえてきたのは。
 おにーさん、思わず足を止めて上を見上げちゃったよ。
 木々の間から見えていた月が陰っている…なんてレベルじゃなくて、隠れていた。
 …ヘンなシルエットで。
 というかどっかで見たシルエットで。

 傘と。
 白衣と。
 紙袋の頭。

 …こんなキャラ、きっとこの世界でも一人しか居ない。
 同キャラ対戦とかどうなってんだと思う事はあるが、それはゲームの話しでリアルの話じゃないな。
 いや、この人なら分裂くらいはできるかも…何かの技で出してた、ちびファウストが成長したらこうなるとか。
 …怖いな。

 明らかに航空力学を無視した軌道で降りてきたのは、無論我らが変態紳士ことファウスト先生。
 …変態と言う名の紳士……これ程この人に似合う称号もないと思う。
 ある意味尊敬すべきだ。
 ある意味じゃなくても尊敬できる人なんだけど、なんかこう…実物見てみると、なぁ……かなり退くわこりゃ。
 軽く2メートル以上…どころか3メートル近くあるヒョロッとした長身に、実は薙刀だって言われても納得できるくらいにデカいメス。
 そのクセ、飛行に使っている傘はやけにメルヘンだ。
 …何だろう、この拒否感というか何と言うか……。
 ゲームではファウスト先生の勝ち台詞はやたら難しいけど知性に溢れたものだった。
 でも他のキャラがファウスト先生に勝った時のセリフは、ほぼUMA扱い…幾らなんでもこの扱いは無いなぁ(笑)なんて思ってたけど、アレ納得した。
 この人相手にまともな対応をするのは至難の業だ。
 小説版じゃ、ちゃんとした対応してたけど。


 …いやいやいや、そうじゃなくて、何でファウスト先生がこんなトコに?


「オペ、完了!」


 なんて考えてるうちに、いつの間にやら周囲に居た狼の群れは消え去っていた。
 メスに血が付いている訳でもないから、適当に追っ払ったんだろう。


「あ、え…えーと……その、助かりました。
 ひょっとして、ドクターファウストさんでしょうか?」

「いかにも、私はしがない放浪の医師のはしくれ、ファウストです。
 私の事をご存じで?」

「ええ、流浪の天才医師の話は何度か聞いた事がありますので」


 これは本当だ。
 姿形までは噂に含まれてなかったがな!
 含まれてたら、この人は今頃世間からギア認定されてるような気がする。
 ギアより不思議なナマモノだが。
 ……いやいやいや、恩人に対してこの思考は失礼だ。


「…………」

「……あ、あの、何故顔が光っていらっしゃるので?」

「いえ、森の中で暗いと気が滅入るでしょう?」

「それはそうですが…」


 おお、これが顔フラッシュか。
 ナマで見れた。
 うーむ、これに比べりゃ股間の中華キャノンも大した事………あるよ、顔フラッシュ如きがなんじゃっちゅーねん。


「時に小さな紳士さん、お名前は?」

「ナッシュと申します。
 あっちの村に住んでいるのですが、実は妹が家出してしまって村中総出で探索中なのですが居ても立ってもいられず心配で心配で苛々してふと気が付けばこんな森の深いと言えるほど深くは無いけど普段来ない場所まで出てきてふと気がつかなくても狼に囲まれて難儀しておりましたあの狼どもディズィーになんかしてやがったら森ごと焼き打ちして全滅させちゃるああそれにしたってディズィー分が足りないディズィーディズィーディズィーディズィ~~~~!!!!」

「おちつきなさい」

「はゥ?!」


 ビシッとチョップ食らった。
 おお、これがファウスト先生の技の「オイ~ッス!」か。
 長さん本人から食らうのよりもレアな体験だ…でも長さん、惜しい人だったよなぁ……。


「ふむ…事情は分かりました。
 及ばずながら、私も妹君を探すお手伝いをさせていただきましょう。
 とは言え、この近辺には人の気配はありません。
 一度村まで戻り、体勢を整えるのがいいでしょう」


 それはそうだ。
 そうなんだが、見た目不審者のファウスト先生をこんな時に連れて帰って面倒な事にならないだろうか。
 中身は紳士だから落ち着いて話せばどうって事無いと思うんだが、今は非常事態でゆっくり話している暇は無いしな。


「ところで…一つ突っ込んだ事情を伺ってもよろしいですかな?」

「…どうぞ」

「妹君は、何故に家出をなされたのです?」

「それは……」


 別に隠すような事…ではあるんだが、相手がこの人の場合は大丈夫だ。
 むしろ話しておくメリットの方が大きい。
 ギアだからって差別する人じゃないし、むしろ今後の…ゲームと同じ流れになるとしたら、3年後のドタバタの時に助けてくれるかもしれない人脈も作れる。
 うん、包み隠さず話すとしよう。
 まずはいつも付けているヘアバンドを取って。


「…まぁ、俺もディズィーも、このような生物でして」

「成程…ギアでしたか」

「ハーフですけどね。
 ちなみにディズィー…妹は角は無いんですが、小さなシッポと背中に寄生型ギアが2人ついてます。
 その2人は羽になる事もできて、どうやら飛べるようなんです。
 と言うか、気付いてたでしょう」

「はっはっはっ…」


 笑ってないで何とかコメントしてくれ。
 まぁいいけど。


「俺は前から知ってたんでどうって事なかったんですが、ディズィーが知ってショックを受けちゃったみたいで…トイレに行く為に目を離した隙にやられました」

「成程成程…しかし、そういった事なら、妹君を探すだけならむしろ簡単です」

「本当ですか!?」

「ええ。
 聞いた話では、ギアには所謂レーダーや、離れた場所に居る相手と会話をする能力が必ずと言っていい存在するそうです。
 ハーフとは言え、貴方もギア。
 恐らく、その能力を受け継いでいるものと思われます」

「俺が…?
 そう言えば、確かにディズィーが何処に居るのか何となくわかる事はあったけど」


 それはてっきり、俺のディズィーへの愛の成せる技だと思ってたんだが。
 レーダー云々じゃなくても、お互いの行動パターンくらい何となく見当が付くし。
 何せディズィーが物心つく前からの付き合いだ。
 あれってレーダーっぽい何かのおかげだったのか?
 だとすると、そのレーダーの動力源は愛だな。
 異論は認めない。


「ふむ、完全ではないにせよ、その能力は使えているようですね。
 なら、妹君の居場所を感じている時、体の一部がピリピリしたり引き絞まったりする感覚はありませんでしたか?
 そこを起点として意識すれば、恐らくより正確に場所が分かると思うのですが」

「…ちょっとやってみます」


 確かに、ファウスト先生が言うとおり、そういう感覚を感じる事はあった。
 何処に感じるって、そりゃ角に感じてたに決まってる。
 他の何処に感じろと?
 角は隊長機の証にして、レーダーその他の機能が色々ついているんですよ?
 俺がネクロ達が言うように旗艦型だってんなら、レーダー機能はむしろ無いとおかしいしな。

 …おお、確かに。
 今まではディズィーだけしか感じられなかったのが、他にも色々分かる。
 野性の獣の反応…あ、さっきの狼達が逃げて行ってる。
 村の方では……おお、結構人数居るな。
 何人もディズィーを探しに出てきてくれているようだ。
 ギアだって半ばバレてるのに、いい人達だ…。
 いや、ひょっとして排除しに……待て待て、それにしちゃお爺さんの動きが落ち着いてる。
 人を無暗に疑うもんじゃなかtったな、うん反省。


 それよりディズィーは………………!!
 発見!
 森の結構深い所だ。
 …ああ、俺に向かってネクロとウンディーネが信号出してるな。
 何で今までコレに気付かなかったんだ。
 近くに危険な動物は……居ないな。
 虫までは反応が小さすぎて分からんけど、そっちはネクロとウンディーネに期待しよう。
 それにしても流石はファウスト先生、出会いから数分と経たないうちに事態が一気に好転したよ! 


「見つけました!
 すみません、このお礼はまた後ほど!」


 そしてダッシュ!
 お爺さんからは森に深入りするなと言われちゃいるが、このレーダーがあれば危険は大概避けていける。
 大まかな地理も把握できたし、ディズィーの元まで一気に行くぜ!

 だが。


「お待ちなさい」

「ッ…!
 何ですか一体!」


 …落ち着け俺。
 恩人に対する態度じゃない。
 でも、俺の心は焦燥で一杯になっていた。
 落ち着けと言い聞かせたところで、それだけで落ち着けるレベルじゃない。
 自分でもこれは異常だと思っちゃいるけど、そんな疑問は後回しだ。
 とにかくディズィーの元へ、ディズィーの元へ、ディズィーの元へ!

 さっきみたいに、俺から怒気や鬼気が噴き出したのが分かる。
 何とか抑えようとするが、制御が効かない。
 このままファウスト先生を殴り倒してでもすぐに飛んで行ってやろうか、と本気で思えてきた。

 そんな俺を見て、ファウスト先生は顎(?)を撫で、紙袋に空いた穴から少しだけ目を光らせた…本当に光った。
 レーザーが出そうな勢いで。


「ふむ…やはり、ですか。
 話を聞く限りでは、共依存…と言うよりは…。
 その愛情は素晴らしいものです。
 ですが、それが何処から来るものなのか…貴方は一度考えねばいけません。
 荒療治が出来るほど、貴方は自分を持てていない」

「………何を言ってるんです…どいてください!
 こうしている間にも、ディズィーが泣いてるんだ!」


 …何故だろう。
 ファウスト先生の言葉が、妙に苛つく。
 今すぐ、耳を塞いで走りだしてしまいたくなる。
 だが、全く隙が無い…ように見える。
 その手のモノは俺には分からないけど、なんか知らんがギアの戦闘プログラムが、どんなルートを辿っても『突破不可能』の答えを返す。
 クソ、やっぱりこの世界の人間は規格外ばっかりか。
 …ん?
 ……耳を塞いで?
 この言葉を聞きたくないと?
 ディズィーの元へ走るだけでなく、聞きたくないと?


「走りながらでもいい、考えてください。
 何故、妹君が家出をしたのか。
 何故、貴方の愛が何から来るのか考えてほしいと言ったのか。
 何故、私の言葉を聞きたくないと思っているのか。
 …それを放置したままでは、いずれ妹君は自分を不幸とも思わずに不幸になります。
 何、貴方の症状はまだ軽いものですから、気付けさえすれば問題はありません。
 貴方の愛情その物は、きっと本物なのですから」


 それだけ言うと、ファウスト先生は道を開いた。
 俺は返事もせずに、ディズィーの元に向かって一直線に駆けだした。



 …ちなみに、話している間、ファウスト先生はずっと顔フラッシュ状態のままだった。





ディズィーの家出、意外と長引きました。
こういう話は、プロット無しには進めにくい…。
09の後は、かなり長くなりそうです。
でも書きあがっているので、多分GW中に投稿します。



[17288] 09 後
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/04 22:59

 どーもどーもさっきぶり、ナッシュです。
 現在、ディズィー達の元目掛けてランニングしてます。
 結構な距離があるけど、それよりも問題は走りにくさだった。
 100メートルを2,3秒で駆け抜ける事だって出来る足も、視界がクリアでない、しかも障害物だらけと来ちゃ意味が無い。
 急加速・急ブレーキ・急加速・急ブレーキと、極端なチェンジオブペースで何とか走っていた。
 この状況でデビルバットゴーストやっても意味無いし、な。

 そんな状況でも、ディズィーの居場所を細くできているのは本当に心強い。
 だから、ディズィーに近づくに連れて、徐々に精神の落ち着きを取り戻す事ができた。
 まだまだ焦燥は治まってないが、それでもファウスト先生の仰っていた事をリピートするくらいの余裕ならある。



『走りながらでもいい、考えてください。
 何故、妹君が家出をしたのか。
 何故、貴方の愛が何から来るのか考えてほしいと言ったのか。
 何故、私の言葉を聞きたくないと思っているのか。
 …それを放置したままでは、いずれ妹君は自分を不幸とも思わずに不幸になります。
 何、貴方の症状はまだ軽いものですから、気付けさえすれば問題はありません。
 貴方の愛情その物は、きっと本物なのですから』


 …俺のディズィーに対する愛情が本物なのは当然として…と言うか、偽物の愛情なんて言われても理解できん…、一体何を言いたかったんだろう。
 俺に対して、あんな風に忠告するような言葉を投げた以上、俺に何かしら問題があるのだと言う事は理解できる。
 それも、肉体的な問題ではなく精神的な問題が。
 しかし、精神的な問題と言われてもなぁ…。
 偏りとか妄執が全く無い人間なんて居ないと。
 むしろ、そんなのが居たら精神的には絶対に人間じゃない。
 偏り、妄執、拘り…それこそが人を人たらしめる、と俺は考えている。
 つまり、その集大成こそが性格、人格と呼ばれるものだと。
 何に対しても、どんな状況でも……ニュートラルの人間。
 それは、自分以外のあらゆる存在からの…ひょっとしたら、自分自身からの全てから切り離され何物からも独立した…何と言えばいいのか、ただそれだけで完結してる存在だと思う。
 それは極論か言い過ぎにしても、少々度が過ぎてるとは言えシスコンを病気と見做して治療にかかる程、狭量な人じゃないと…思う、うん多分。
 まぁ、俺自身、性格をもうちょっと何とかした方がいいかな…と考えはするけど。
 考えるだけで何もせんけど。
 そんな暇があったらディズィーを愛でるよ!






 …この思考が。
 この思考こそが、ファウスト先生が問題視した懸念事項だった事を。
 俺は、後に気付く事になる。
 のだが、それはもうちょっと後の話。





 まぁ、それは置いといて、だ。
 今は俺自身の事よりもディズィーの事だ。
 見つけ出してどうする?
 そりゃ連れ戻すさ。
 ただ、何て言って連れ戻したらいい?
 力技は却下だ、ディズィーも泣くしネクロやウンディーネがどう出るか分からん。
 懐かれてるとは言え、あの2人はディズィーの守護をとにかく重視している。
 場合によっては、俺も……殺すとまではいかずとも、どうにかされる可能性は非常に高い。
 家族を相手にこういう考察をするのも不本意だが、そういう側面がある事から逃げちゃ話にならんな。


 そもそもからして、ディズィーは自分がギアだって事にショックを受けたんだと思ってたが、ファウスト先生の言葉からすると、それだけではないっぽい。
 あの人が、俺の話から何を読み取って何処まで何を見通してるのかは分からないけど、洞察力や、何よりも人を思いやる心で俺はあの人の足元にも及ばないだろう。
 ……でも何だなー、それを素直に認めるのがスゲー嫌というか、あのUMAみたいな行動を見せられた後だと、正論である程受け入れがたいと言うか…。
 アレが自分より人格者だと思うと、どうにも敗北感…。
 まぁそれはともかく、考えるだけ考えておいた方がいいのは確か。
 何かしら、俺が気付いていない問題があるなら、それは早めに対処しておかないと後から大きな波になってドンブラコッコと俺とディズィーを攫って行くに違いない。

 俺が気付いてない問題…この場合の問題は、ディズィー関連だよな、やっぱり。
 それも、『何故ディズィーが家出したか』に関する。
 ネクロとウンディーネとの関係については問題ない筈。
 ディズィーがお姉さんって事で、大分拒否感とかは和らいだと思う。
 それに、あの二人を拒絶するんだったら、家出しても意味が無い。
 なんたって背中に一緒に居るんだから。
 んじゃ、一体何が問題だ?
 自分がギアって事がショックだったのは、もう気付いているから置いといて…別の問題?

 ………。
 ………………。
 ………あ、ひょっとして自分がギアだった事そのものよりも、自分がお爺さん達を傷つけるのが怖くなったのか?
 何せギアは前の聖戦で散々っぱら暴れまわったと聞かされたし、自分もそうなるのかと考えてもおかしくない。
 …でも、それだったら俺も連れて家出するんじゃなかろーか。
 俺だってギアだぜ?
 ディズィーだって、もう10歳近い。
 それなりに頭も回るようになってきてる…と思う。
 俺から見ると、まだまだ甘えん坊でチョコチョコ俺の後ろを付いてきてたょぅι゛ょディズィーのイメージが抜けないんだけどさ。
 ……まぁ、混乱している相手に理詰めの行動なんざ期待できんか。
 それに、自分が家出するからって俺まで巻き込める程、図太い性格してる子じゃない…ネガティブ思考に取り付かれてるんなら、尚更だ。


 むぅ………他には……ちょっと考え付かんな。
 考え付いたって、結局ディズィー本人に聞かなきゃ確認もできないんだけどさ。
 ここで一人で思いついた事を『ディズィーの悩みはコレだ!』なんて勝手に決め付ける程、俺は逆上せあがってもいないし、ディズィーの事も知らない。
 ディズィーの事をその程度にしか知らないから、もっと知りたくなる。
 ディズィーの肌の味とかニオヒとか髪の毛のサラサラ具合とか怒った顔とか笑った顔とかスベスベな手触りとか、将来の姿とか過去の恥とか今現在どうして家出してるのかとかどんな景色が好きなのかとか、フェティッシュな方面から精神的な方面まで色々とな!

 …ディズィーが居る所までもうすぐだ。
 これ以上の事は、ディズィーと面と向かって話すとしよう。


「ん?
 芳しきスメル……ディズィーだ!」


 森の中に僅かに流れてきた、俺を魅了してやまない匂い。
 間違いない、これはディズィーの匂い。
 どうやら、この辺りをフラフラとさ迷っていた時の残り香らしい。
 とりあえず一安心だ。
 実を言うと、レーダーで見つけた所に本当に居るのか不安だったのだ。
 ディズィーじゃない、別の何かを感知してたんじゃないかと…。
 ネクロ達が送ってくれる信号も、単なる錯覚なんじゃないかと思ってた。
 ディズィー分が足りないお陰で、ネガティブ思考が頭の9割以上を占拠してたからなぁ。
 そもそも俺は元が一般人だからして、気配を感じるとか、遠くで突然コスモが大きくなって弾けたとか、そんなよく分からん感覚を突然得ても自信が持てんのだ。

 ああ、ディズィーが近くに居ると実感しただけで、本当に頭がすっきりしてザワついていた心が治まってくる。
 ディズィーは実はアルファ波とか出しまくっているに違いない。
 ほら、羽コンビが俺を旗艦型ギアで、ギアにとって心地よい波動とか出しているって言ってたけど、きっとディズィーはギアに限らず見る者感じる者全てを癒す波動を出しているんだよ!
 いやアルファ波なんて生易しいモンじゃない、もっと効果が高い、未発見で穏やかで高尚で高密度で高騰する新しいエネルギーだ。

 っと、イカンイカン、いつものディズィー自慢のノリに入る所だった。
 このまま一気にディズィーの元まで……いや、ちょっとストップ。
 気配を消してこっそり行こう。
 別に出待ちする訳じゃないんだが、顔見せた途端に逃げられちゃ敵わん…主に精神的に。
 空を飛んで逃げられたら、追いかけるのも一苦労だ。
 正直焦れったいとは思うんだが、慎重を期するに越した事は無い。
 …別に、ディズィーの寂しげな表情とか泣きべそとかをメモリーに記録したいからじゃない。
 いやネタじゃなくて本当に違う、別に24時間皆で笑っていてほしいなんて意訳・笑いタケ食えなんて寝言じゃなくて、出来る事なら…その、泣くのは後から笑う為にしてほしいと言うか…。
 希望を感じさせる泣き方にしてほしい、って言うのかね。
 自分の中の抱えきれない感情を発散させる為に泣くならともかく、泣く事で自分自身がもっと悲しくなるような泣き方はしてほしくない。

 とにかく、俺は気配を消したまま、そっと木陰からディズィーの様子を窺った。
 蹲っている。
 少し開けた森の中、ディズィーは蹲っていた。
 小さな岩に腰掛けて、外の全てを拒絶するように、三角座りで顔を伏せている。
 …不謹慎ながらも想う、可愛らしい、と。
 そして三角座りしているが故にちょっとだけ見えている、パンツの…まだパンティとは言うまい…柄が気になる、と。
 …確か…昨日の風呂上りに確認した時には、ワニさんパンツだったような…。

 いやいや、この状況でそっちに思考が行くってどんだけ駄目だよ俺。
 思わず飛び出して土下座する所だった。
 戯言はともかくとして、そこに居るのはディズィーだけだ。
 ネクロとウンディーネは何故か姿を現していない。
 何故に?

 それはともかく、ディズィーは少しだけ体を震わせている。
 寒いんだろうなぁ、心情的にも肉体的にも。
 昼は暖かい時期とはいえ、夜はまだまだ冷え込むし…普段のディズィーなら、この時間はそろそろ布団に潜りこんでいる時間だ。
 体も生活のリズムが突然狂って驚いているのもあるだろう。
 …そうじゃなくても、こんなトコに一人っきりで居れば、大の大人だっておかしくなっちまうだろう。
 暗く獣も居る森の中、月明かりは優しいと言えば優しいけどそれ以上に酷薄。
 風が小さく枝葉を揺らして音を立てるが、音が小さすぎて静寂を際立たせる結果にしかなってない。
 …よりにもよって、こんなトコで蹲らなくてもいいだろうに。
 見知らぬ森の中じゃ何処でも同じっちゃ同じだけどさぁ…。


「っ!」


 咄嗟に隠れる。
 ディズィーが顔を上げた。
 キョロキョロと周囲を見回しているらしい。
 隠れた為に俺からは直接見えないが、月明かりで出来た影を見ればわかる。
 …気付かれた?
 ひょっとして、背中の二人が俺に気付いて伝えたんだろうか。
 それとも俺の熱視線を受信したか?
 むぅ…ここは出て行くべきだと思うんだが、意味も無く隠れちゃったから何と言うかタイミングがな…。


「……ナッシュ?」

「はぁい♪」


 …タイミングもクソもなかったよ!
 目を丸くしているディズィーと、へらへら笑ってるけど内心で何か芸術は爆発だと叫ぶ俺。
 うぅ、様子見だの何だの考えてたけど、名前呼ばれただけで手を振りながら出てきちまった!
 どんだけダメダメなんだ俺!

 えぇいクソ、こうなりゃ出たトコ勝負…じゃ人聞きが悪いから、何も考えずにありのままにぶつかって行くぜ!
 小細工なんかもう要らん!

 唖然としているディズィーに、トコトコ歩いて近寄った。
 ディズィーが腰かけている岩に俺も腰かけると、ちょっとだけズレてスペースを譲ってくれた。
 よし、嫌がられてない!
 じゃあ肩を組んで。


「よし、ディズィー捕まえた!
 怪我したりしてないか?」

「…うん」


 …あれ、ちょっと意外。
 抵抗とか無いな。
 こりゃ様子見は不要だったかな。

 …でも、泣いてた跡があるな。
 ……心が痛む、本当に。

 そのまま、暫くじっとしていた。
 俺もディズィーも何も言わない。
 空を見上げて、月の光を浴びる。
 …不思議なもんだ。
 一人だった時は酷薄に思えていた月光なのに、ディズィーが一緒に居ると思うと何となく暖かく…はないけど、明るく思えてくる。
 ディズィーも同じように感じているんだとすれば、俺は嬉しい。

 沈黙が続く事暫し。
 コテン、と俺の肩に重さ。
 ディズィーの頭だ。
 寝たんじゃなくて、体を立て懸けただけ。
 でも何も言わない。
 俺は何を言っていいのか分からない。
 結局、ファウスト先生が何を言っていたのか、何故ディズィーが家を飛び出したのか分からなかった。
 これで兄と言うんだから笑わせる…いや、笑えもしない、か。
 ……いかんな、俺もまだネガティブ思考に取り付かれてる。
 ここはひとつ、ディズィー分を補給補給…。



 二人で、どれだけの間そうしていただろうか。
 気が付けば、俺はディズィーの頭に手を回していた。
 ゆっくり、ゆっくりと無意識にディズィーを撫でている。
 …そうしている間に、ディズィーは小刻みに震え始めてた。


「っ……っ………!」


 泣いている。
 ディズィーが、泣いてる。
 …俺は、どうすればいい?
 こんな場面、ナッシュになる前の人生でも一度だって経験した事なかった。
 どうすりゃいいんだ…ただ、ディズィーを慰めるように…いや、事実慰める為に頭を撫でる。
 でもこれじゃ駄目だ、これだけじゃ駄目なんだ。
 それは経験の少ない俺でもわかる。

 漢だったら、女の見せたくない涙は見なかった事にする。
 いい漢だったら、女の涙を止めてみせる。

 そう、小耳に挟んだ事がある。
 なら、俺が今するべきなのは一つだけ。
 カッコ悪くてもみっともなくても、ただディズィーの涙を止める事。
 笑顔を、希望の光を灯す事。
 紳士、というのだそうだ。
 不幸な女性の為に闘い、その心に光を灯す者。
 ただ生きているだけで不幸にされた女性が最後に頼る男。
 
 俺はいい漢でもいい男(ウホッ……自重自重)でも紳士でもないかもしれないけど、ディズィーが不幸にされたなんて思ってないけど、兄としての矜持は持っているつもりだ。
 この一年ちょっとで創り上げられた矜持でも、中身が空っぽだったとしても、口に出される益体も無い戯言同然の矜持だとしても、だ。
 どうすればいいか分からない、なんて泣き言に…意味はなかった。
 そんな戯言、吐ける筈が無かった。

 何を言えばいいのか。
 何を感じるべきなのか。
 …違う、感じるべきなんて義務みたいな話じゃない。
 ナンタラしてみせる、なんて誰かに見せつけるような話でも無い。
 俺は兄だ。
 ディズィーは妹だ。
 形だけのものじゃなくて、日々を積み重ね、絆を結んできたんだ。
 こうして接していれば、きっと分かる。
 根拠のない、感情論にすらならないやり方だけど、俺はそれを選ぶ。
 それが俺にできる最善にして最高のやり方だ。

 頭を空っぽに。
 ただ、ディズィーを抱きしめて暖める。
 泣き声を抑え込むディズィーから伝わってくるのは、凍えるような冷たさだ。
 体だけの冷たさじゃない。
 ディズィーは、その心が凍えてる。
 何故?
 何故?
 何故?



 頭で考えても、分からなかった。
 でも。
 不意に感じた、俺とディズィーの間に立ち、隔てた壁。
 俺が、それを分からなかったという事実。
 それこそが、俺の直感を導いた。


「………そっか」

「……………」

「寂しかったんだな」


 ビクン、とディズィーの体が跳ねた。
 それで俺は確信する。
 そうだ、ディズィーは寂しかったんだ。
 それは森の中で一人っきりだったからじゃない。
 ファスト先生が言ってたのは、これの事か?
 確かに、これを見逃してちゃ連れ戻したって意味が無い。
 今後も、同じ事に繰り返しになりかねない。


「…俺も、お爺さんもお婆さんも、ネクロもウンディーネも…ギアだって事を知ってたのに、自分だけ知らなかったのが…寂しかったんだな。
 仲間外れが嫌だったんだな」

「うっ……・…う、あ……」


 …服の袖が湿ってきた。
 ディズィーが、涙を堪えられなくなったのか。
 …参った。
 本当に参った。
 ……俺達は、ずっとその話を避けていた。
 俺は知ってたのに、何も言わなかった。
 お爺さんとお婆さんは、出来る事なら知られたくなかった。
 ネクロとウンディーネは、知っていたけど今まで伝える術を持たなかった。
 …何を言えばいいんだよ、本当にもう。
 いや、今は俺が言うべき場面じゃない。


「…いいよ、言えよディズィー。
 お前は怒っていい。
 ディズィーは悪くなんかないんだ。
 俺達が悪かった。
 黙っていてゴメン。
 不満を全部吐き出しちゃえ。
 思いっきり、ぶつけてくれ。
 全部、俺が受け止める。
 俺はディズィーの兄さんだ。
 お爺さんにも、お婆さんにも…ディズィーは優しいから、言えないだろ?
 俺と分け会おう。
 不満も、寂しいって気持も、怖い事も。

 な?」 


 …これで、いいんだろうか?
 見当外れな事を言っていないだろうか。
 そんな俺の不安は…すぐに消え去った。


「あ、っ、ぁ……っ、う……な、ナッシュ、ナッシュは……何で知ってたの…?」

「私は、知らなかった、知らなかったのに…何でナッシュだけ知ってたの!?」

「どうして教えてくれなかったの!」

「ずるい、ずるいよ!
 ずっと一緒だったのに!
 どうして、ナッシュだけ!」

「どうして、私も同じにさせてくれないの!」


 …途切れ途切れに、ディズィーの声が漏れ出てくる。
 俺の腕を、痛いくらいに握りしめて…泣きながら、本音の声をブチ巻ける。
 ……思えば、本気の、本音の、心の底からの声を聞いたのは…これが初めてだったんじゃないだろうか?
 別に、こういう…所謂負の感情って奴だけが本音だとは思わない。
 今まで俺に甘えて、一緒に遊んで笑いかけてくれたのだって、本音なのは間違いない。
 でも、本当に……言いにくい事でも言おうとして、心の底から絞り出した声は、初めて聞いた気がする。
 子供なのに、迫力が違う。
 籠められていた意思が、感情が、とても強い。

 だから、俺はそれに応じないといけない。
 無駄であろうと、最初は言葉で。
 それでも駄目なら……力によって、でも。
 それでも。


「…俺が知ってたのはさ、覚えてたからだよ。
 俺達が拾われた時から、俺は意識があって、その時の事もハッキリ思い出せる。
 その時に、お爺さん達が話してたのを聞いたんだ…俺達はギアだ、って。
 それから…自分で調べたんだ」


 それでも、俺はこうやって嘘をつく。
 …ディズィーが相手でも、憑依云々を言う訳にはいかない。
 少なくとも、今は。 
 言い訳かもしれないけど…ただでさえ混乱しているディズィーに、この世界がゲームの中の世界かもしれない、なんて言えるものか。
 …俺自身は、ここがゲームの中だなんて、これっぽっちも思っちゃいないけどな。
 全くのウソって訳でもないけどね。


「話さなかったのは、それがいいと思ってたから。
 …仲間外れにしようとは思ってなかった、いつか話すつもりだったんだ…皆。
 ディズィーが、皆と違う事を気にしてたのは知ってた。
 だから、その違いを受け入れられるようなるまでは、話しちゃいけないと思ってたんだ」


 ディズィーの涙は、止まらない。
 …参った、俺はいい漢じゃないらしい。
 ディズィーの涙を止められない…いや、ここで諦めるようじゃ、いい漢どころか単なるクソだ。
 血と糞尿が詰まった、単なる革袋以下だ。
 話しただけで諦めるようなら、兄の矜持も何も無い。
 ましてや、俺は話してすらいなかった。
 ただ語っただけ。
 さぁ来い、ディズィー。
 言葉でも、平手でも、ガンマレイでも何でもいい。
 お前の鬱憤、全て俺が受け止めてやる!

 ドン、ドンとディズィーは両手を握って俺を叩く。
 意外と力が強い…ああ、ディズィーも成長してたんだな。
 痛くはあるけど、止めさせるなんて考えもしなかった。
 体の痛みより、心の痛みがずっと強い。
 ディズィーをこんな風に泣かせた、痛みが。

 ディズィーは、ずっとずるい、ずるいと繰り返している。
 …力が、徐々に強くなってきた。
 駄々から、明らかに殺生を意識したくらいの力強さに変わってきている。
 それに、ディズィーから感じる…なんつぅか、反応?
 エネルギー?
 そんな感じの何かが強くなってきている。
 それに、ネクロとウンディーネ…と言うより羽もザワザワと騒いでいるように見えた。

 元が良い子すぎる程良い子だし、今までこういう…所謂、黒い感情って奴を抱え込んだ事が無かったんだろう。
 自分が他人と違う事に多少の寂しさを感じる事はあっても、俺が一緒に居たし、家に帰ればお爺さんお婆さんだって居た。
 そんな風に育ってきたから…ディズィーは多分、身を蝕む孤独や怒りの晴らし方を、殆ど知らない。
 少しずつ流し出して制御していく事を知らず、ただ感情のままに激発する。
 それが……ディズィーを暴走させる。 
 …こりゃこっちも準備しといた方が良さそうだな。


     HEAVEN OR HELL? 



 正直な話、予想していなかったと言えば嘘になる。
 と言うより、話の内容や展開に関わらず十中八九こうなるだろうとは思っていた。
 何せ、ここは…まぁその、ゲームの中とは思わないけど、それに良く似た展開を見せる(らしい)世界。
 些細な切欠で、ガチバトルに持ち込まれる世界だ。
 ディズィーが泣けば、感情を爆発させれば、こうなる事は十二分に予測できていた。


          DUEL 


 だが逃げない。
 対策を練る暇は無かったが、ここは退かない。
 馬鹿な選択かもしれない。
 怪我をして、ディズィーを逆に悲しませる結果になるかもしれない。
 それでも退かない。
 受け止める、って言ったんだ。
 ちっぽけな、恐怖で竦んであっという間に消し飛ばされない矜持でも、俺はそう決めたんだ。

 俺が、ディズィーを受け止める! 


               Let's ROCK!!








































 そう思っていた時期が、私にもありました。



「KYOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!」



 ちょーちょーちょー!
 ちょ、ヤバいってディズィー!
 洒落になってねぇって!
 何でネクロとウンディーネまでフルファイアしてくんの!?
 さっきまで大人しく翼してたじゃんよ!
 キャプテン翼みたいに俺を軽々と吹っ飛ばすようなシュートっていうかショットしてこないでよ!
 せめて大人しくててくれよ!
 出来れば止めろよ!
 お兄ちゃん悲しい!
 そして何ですかその格好は!
 いつの間にやらゲームで着ていたようなバトルコスチュームになっているんだけど、実際に見ると本気でけしからん。
 しかも着てるの、大人ぼでぇじゃなくて、少女ぼでぇ…より正確に言うなら、幼児から少女への過渡期にあるディズィーだ。
 青い果実がどうこうじゃなくて、もう物凄くイケナイ物を見ている気になっている。
 と言うか、このコスチュームはデフォルトなのか?
 俺はこんなモン教えた覚えは無いぞ。
 誰だ、こんな素晴らしいコスチュームを設定したのは。

 …えー、現在暴走状態のディズィー・ネクロ・ウンディーネからフルボッコされそうになってます。
 と言うか、その叫びはどうかと…叫びを上げたのはネクロなんだけど、それ確かジャスティスの叫び声じゃなかったっけか?
 まぁ人語を解するし、それしか叫べない訳じゃないだろうけどさ。

 とにかく、こりゃ幾らなんでも手に余る。
 一歩間違えればガチで死ねるレベルだ。
 だが、それでも俺の方が一枚上手と言えた。
 ギアの戦闘プログラムのお陰だね。
 暴走状態にあるあの3人は、ただ只管に攻撃を連発してくるだけで誘導もクソもあったもんじゃない。
 素人の俺でも、フェイントかければ…まぁ、3人のスピードについていければだけど…対応できなくもないくらいだ。
 逃げる側っていうのは、追う側迎撃できる側に対して、一つ有利な事がある。
 それは、何処で戦うか、何処から切り込むかを決められる事だ。
 それを戦闘プログラムのお陰でより的確な行動をとれるんだから、負ける気はしない。
 ただ純粋に怖いがな!
 見ろよ、この辺一帯の木々が薙ぎ倒されて消し飛んで…ゲームの方で「要塞」って評価された事があったけど、こらマジで要塞や。
 そんな破壊を齎すレーザーやら何やらがバカスカ飛んでくるんだぜ?
 上手くやってりゃ当たらないとはいえ、怖いわマジで。
 いや、年齢が年齢だから火力は低いだろうし、精々トーチカくらいかな?

 にしてもなー、まさかこの世界初のガチバトルが俺とディズィーになるとはなぁ…。
 ファウスト先生とは結局戦わなかったし。
 それにしても、どうしたもんだろうか。
 まさかディズィーを殴る訳にもいかん。
 とは言え反撃しなけりゃ俺の命がマジヤバイ。
 殴らず反撃か……殴らなけりゃいいってもんでもないが、投げ技?
 …投げるだけでどうこうなる相手かよ。
 しかも避けるだけなら余裕はあるけど、接近はかなり難しい…俺が弱腰だって事を差し引いても。
 絞め技…………一時的接触……柔らかい肌に食い込む俺の腕……イカン、これはイカン。
 有効無効以前に俺がトリップして戦闘不能になる。
 まぁ、そうでなくてもちゃんとスッキリさせておかないといけないから、中途半端な所で占め落とすのは駄目だ。
 となると…やっぱり、牽制しながら暴走が治まるのを待つしかないか?
 どのくらいで治まるのか…。

 チキショー、ファウスト先生助けて~~!

 …来ないなぁ。
 そう簡単には行かないか。
 あの人が来てくれない限り、俺がどうにかするしかない事は変わりない。
 これはガチ。
 確定。
 だって、この状態のディズィーを村の皆に会わせられるかよ。
 ギアだとばれる以前に、生存者0になっちまうわ。
 そうなったらディズィーも自殺しかねんし、ヘタすると俺も後を追う事になる。
 そして誰もいなくなった、だ。
 …結局、あの小説誰が犯人だったんだ?
 船乗りだか船長だかって聞いたけど、本編読んだ事無いからわかんねー。

 クソ、現実逃避してる暇はない。
 何とか止めないと、この辺の森がエライ事になっちまう。
 さっきから何発か牽制にその辺の石とか投げてるけど、効果無し…と言うか当てようとしても、どうにも手が鈍る。
 この時ばかりは、俺の兄心が邪魔になった。
 歌だったか古典だったかで、「優しさ、時には邪魔になる愚かさ」というのがあったけどリアルで体験したよ。

 しかし、実際逃げ回ってばかりじゃディズィーを受け止めているとは言えない。
 ここは一つ、被弾覚悟で吶喊して……そっから先は、テンションに任せるか!
 そうじゃなきゃテンションゲージが下がりまくってフォルトレスディフェンスも使えなくなるしな!
 ………い、一撃必殺技は使わないからな!
 股間の中華キャノンなんて、あらゆる意味でデンジャラスなブツをよりにもよってディズィーに使えるかい!







 接近するのは、意外と簡単だった。
 攻撃の合間を縫って、左右のステップで誘導し、一気に距離を詰める。
 元々、俺とディズィーの間は10メートルと離れていない。
 俺なら一歩で詰めるに充分すぎる程の距離だ。
 問題はディズィー・ネクロ・ウンディーネの3重波状攻撃だったが、所詮は急造コンビネーション。
 プログラム的には連携が取れているのかもしれないが、経験が少ないんだな。
 俺だって経験は少ないけど、そこは単体故の身軽さと、憑依前のアーマードコアで培った回避技術やら何やらで意外とどうにかなった。
 …将来は通じなくなるだろうけどね。

 ギリギリまで接近して。
 そこから先が大変だった。
 何をしたかって?
 一言で言えば……攻撃の、迎撃。
 繰り出されてくる攻撃を、全て叩き落とした。
 ネクロが出してくる鬼火っぽい何かを殴り壊し、ウンディーネが伸ばしてくる氷柱っぽい何かを粉砕して…苦痛の色が見られなかった事に心底安堵した…ディズィーのパンチを受けてその非力さに涙したり。
 時々出してくる、ガンマレイの未完成版っぽい何かを押し返すのが一番大変だった。
 辛うじて出来るようになっていたフォルトレスディフェンスを展開し、それを両手に集中。
 発射されたガンマレイを、正面から殴って押し返すという我ながら無茶苦茶な真似をしたのだ。
 うーむ、前々から考えていたフォルトレスディフェンス活用法ではあったが…意外と有効かもな、これ。
 え、何?
 念?
 硬?
 知らないよそんなの。
 手っ取り早く使えるようになりそうな技を考えてたらこうなっただけだって。
 似たような技は山のようにあるしな。
 集中、凝縮、ついでに回転は少年漫画の必殺技の基本だぜ。

 余談ではあるが、俺は闘いの為の技を考える時に、一つ禁じている事がある。
 それは『○○の能力』とか『ナンチャラの技』を、そのままそっくり真似る事だ。
 どうしてかと言うと、まぁなんつーかオリジナリティに欠けるっちゃ欠けるし、いや参考にはしてるんだけどね?
 丸ごと使わせてもらうような事になると、どうも…なんつーか、『借り物』の力って気がして、今一馴染まないんだよな。
 ある程度でも自分用にアレンジしないといけないし、猿真似だけして俺TUEEEするのは俺の芸人魂が許さない。
 何かこう、オリジナル要素を……なんて言ってる場合じゃなかったねっ!


「KYOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


 相変わらず泣けてくる程暴走して叫びまくっている3人。
 ガンマレイを凌いだら、もっと攻撃が激しくなってきた。
 いやホントに洒落にならん。

 くぅ…こりゃ選択ミスだったか?
 受け止めるんじゃなくて、互いにぶつかり合うべきだったのか?
 だとしても、まだ遅くない。
 こっから先は……俺も反撃するぞ、ディズィー。
 心が痛むが、これも兄と妹達とのスキンシップだと思ってくれ!
 …あ、結局ネクロは妹でお願いしようと決めました。
 ボーイッシュと言うよりは、ちょっとヤンキー入った…違うな、それだと素直クールに合わないし……うん、某ツンデレばかりの18禁ゲームの通称ココナッツと同じような方向で?
 今からドキがムネムネするね!

 よっしゃ、一丁気合い入れますか!


「お兄ちゃんと呼んでくれぇぇぇぇ!」


 よっしゃ、気合い入ったぜ!
 テンションゲージが一気にマックス、途切れそうだったフォルトレスディフェンスも一気に力強くなった。
 胸元を狙って伸びてきた氷の柱をフォルトレスディフェンスで弾いて、ディズィーの首をガッチリ掴んで引っこ抜くように放り投げる。
 一抹の心配とは裏腹に、ディズィーは空中で体を捻って木に軽やかに着地し、羽を羽ばたかせて空へ舞い上がる。
 させぬわ。

 ディズィーがスピードに乗る前に、俺が地を蹴って飛びあがる。
 3メートルは軽くジャンプしているが、気にならない。
 とにかく空へ移動させちゃいけない。
 迎撃に飛んでくる青い刃物らしい何かを避けながら、俺はディズィーの目の前まで来て…2段ジャンプ。
 一瞬前まで俺が居た所を、ネクロの拳が貫いていった。
 その隙を逃さず、ディズィーの頭を飛び越えて背後に回った俺は、人間形態になっているネクロを思いっきり掴んで振り回す。
 片側だけに極端な負荷がかかって、ディズィーのバランスが崩れる。
 そのまま地面に向かって投げ落とし、反撃のレーザーをフォルトレスでガード。
 着地と同時に再接近、脇腹への掌打をフェイントにして足払いを掛ける。
 ボディブローはネクロの腕に、足はウンディーネが伸ばした腕に阻まれ、反撃に来るのはディズィーのへなちょこキック…ただし、両足の付け根の間にな!
 幾らディズィーでもそれは受けてやれないぜ!
 にしても躊躇なく恐ろしい真似してきやがる…暴走状態が故のギアの本能なのか、それとも昨日懸念した通りにディズィーがヤンデレの道に進みつつあるのか…。
 いや、ヤンデレに目覚めたって金玉キックはあんまり関係ないな。
 むしろ刃物持ち出してくる方向だろ。

 にしても…やっぱ、どうにも殴り辛い…この魂の底にまで染みついた本能が、ディズィーを殴る事を拒絶する。
 どっちにしろ、殴るだけじゃディズィーは止まりそうにないし…何か手はないか?
 一番有効そうなのは、アレだ、俺が持ってるらしい…ほら、多数のギアを作った空間の中に格納して持ち運ぶっていう、運搬機能。
 その空間を作って、ディズィーをそこに入れれば或いは…。
 そこなら少々暴れても問題はないだろうし、周囲に敵が居なくなったって事で攻撃乱舞も治まるかもしれない。
 俺の機能の中にディズィーを入れるって事で、受け止めるって意味でもオッケーと言えなくもない。

 しかし、その機能まだ使った事無いしどうすりゃ使えるのかも分からないんだよなぁ…。
 っと、ツララ飛んできた…。
 あーもう、何か分かりやすい弱点とか無いのかなー。
 俺にはあるのに。
 ほれ、頭の角が。
 これ握られたら、俺は即座に大人しくなっちまうぞ。
 特に大人のおねーさんに優しく握られたら。
 逆に暴走する危険もあるが。


 ………ん?
 ………ひょっとして………ディズィーにも、ある?
 俺の角みたいに敏感な部分。
 敏感な部分っていうのは、特別に神経が集中して通っている部分じゃなくても、普段触れられなければ敏感になるものだ。
 仮性ホホホホホーケイがいい例だよな。
 …ちなみに今の俺はホーケイちゃうぞ。
 子供の頃から剥いといた方が大きくなりそうだったから、毎日ちょっとずつ剥いて今ではズル剥けだぜ!
 剥いた直後、歩くのも一苦労だったけどな…。
 お爺さんには何とも言えない生温かい目で見られたのもいい思い出だ。

 あー、それはともかく、ディズィーにも、よく考えてみたら…ある。
 普段何にも触れてない、非常に敏感…かもしれない部分。
 そこを掴めば、ひょっとして……いや、いくら敏感と言ってもそれを掴んだだけで大人しくなる訳じゃ……でも弱点としては伝統の部分だし。
 それよりも問題なのは、掴んでも意味が無かった時のリスクの大きさだ。
 次の攻撃が回避できないという致命的な点と。
 例え上手く行ったとしても、その……社会的な信用と言うか、その辺のが完全に失われてしまう気が…。
 ……ええい、男は度胸!
 このままドンパチを続けててもじり貧だし、社会的な信用はこの際ディズィー達から失われなきゃいい、どうせあと3年もしない内に村を出にゃならんのだ!
 よっしゃ、やったるぜ!

 何度かの攻防を交えつつ、気付かれないように位置取りのパターンを変える。
 必要な位置は、ディズィーの背後。
 片手だけ届けばそれでいい。
 力は要らない。
 籠めてはいけない。
 下手に力入れて、千切れたらどーすんだ。
 余計な心配は頭から追い出せ。

 ガード、ガード、回避、ガード、回避、回避…。

 タイミングを見計らって…。

 回避、牽制、ガード牽制牽制回避牽制、このタイミングで反撃が。


(来たッ!)


 流石はギアの戦闘プログラム、読みの確かさは飛天御剣流並みだ。
 前後左右に移動して避けていたのを、急激に切り替える。
 人間は上下の移動に弱いと言うが、それはディズィー達も変わらないらしい。
 ディズィーの頭の上、人型化しているネクロとウンディーネのド真ん中をすり抜けた。
 俺を見失っていたのは一瞬、すぐに補足された。
 だが、もう遅い。
 ディズィーの背後に回って、俺は手を伸ばす。
 …体勢を整える暇が無かったので、バランスを崩したまま俺は手を伸ばしている。
 これで効果が無かったら、冗談抜きで次の攻撃に対応する術が無い。

 祈るような気持ちで、俺は手を伸ばした。

 ディズィーの。


 …………尻に向かって。


 むんずっ


「hlytdflれqp6lhbg918;:お85vdfり16y NA!NI!WO!SU!RU!DA!XA---!!!!!」


 …おお、予想以上の反応だ。
 ディズィー本人は、体を硬直させて文字通り総毛立てている。
 ネクロは何故か「シュワッチ!」みたいなポーズで両手を上に向かって伸ばし、それこそファウスト先生のカンチョー食らったような顔でテンパっていた。
 ウンディーネは、目鼻を丸い穴に変えて何やら絶叫していた。
 …ウンディーネの顔、どっかで見た事あるな…………そうだアレだ、エロゲのランスシリーズに出てくるハニワと同じ顔だ。
 「ポー」って言ってくれ、インディアンみたいに。

 一頻り3人それぞれのリアクションを返した後、3人は力尽きたようにパタリと倒れた。
 幼い体で不必要な色気を演出していたバトルコスチュームは、一瞬だけ光ったと思ったら村で着ている普段着に早変わりしていた。
 ………えーと、勝利、でいいのかな。
 思いついた弱点が、まさかこうまで劇的とは…どんなご都合主義か。
 まぁ、助かったけどさ。

 …あー、遅ればせながら説明しておく。
 俺は別にディズィーの尻を揉んだ訳じゃない。
 そりゃそーだこの状況で尻を揉んでどうなるんだ。
 揉んだら揉んだ出俺に色々と漲ってくるだろうし、傷を受けても即座に100%回復できるかもしれんが、その分俺の社会性…はどうでもいいとしてディズィーからの信用がストップ安になっちまう…あれ、ストップ高とどっちだっけ。
 底値っていうのが価値が一番無い状態だったと思うから、ストップ安が正しいんだろうか?
 えー、とにかく信頼とか信用とかが一気に瓦解する。
 俺自身も今まで堪えてきた、こう、なんつーの、堪忍袋の緒…じゃなくてギリギリで踏みとどまってきた理性…でもあるし、辛うじて近親相姦を否とする倫理観と言うか…その辺の諸々が、一気にブチッと叩き斬られるのは間違いない。
 それで治まるなら、そっちに賭けてもよかったんだけどね…うん、なんかこう、今でも「どうしてそうしなかったんだ!?」って心の声が…えぇい、俺の心の悪魔の声ばっか聞こえるぜ!
 俺の心の天使の声、ヘルプ!


『ナッシュ、どうして私のお尻を触るの!?』

『ふむ…兄よ、俺の尻も貸そうか?』

『に、兄様フケツです!
 変態です!
 近寄らないでください、ディズィーに何をするつもりですか!』


 …俺の心の天使はディズィー達でした。
 しかも止めるんじゃなくて責め立ててるし…ネクロは別の意味で責めてきてるし。
 ゲハッ……。
 つーか、ネクロとウンディーネはケツあるのか?
 むしろ下半身あるのか?
 …ああ、ネクロは全身を出現させる事もできたっけね。
 ウンディーネの全身は…ガンマレイの時の姿を見ると、なんかデカい獣っぽかった気が…?
 うむ、お手とか仕込みたい。


 ま、まぁ何だ、真面目な話何をしたかってーと。

 シッポだ。

 ディズィーの尻尾を掴んだのだ。

 相変わらず小さいままだからすっかり忘れてたんだが、ディズィーにはシッポがある。
 ネクロやウンディーネと比べると成長が遅くて、辛うじて握れる程度の大きさしかない。
 具体的に言えば10センチも無い。
 なんでこっちだけ成長しないんだろうなぁ…。
 当然、普段はパンツに穴を開けてそこからシッポを出している。
 ついでに言うと、普段のディズィーはスカート…それもミニじゃなくて、足元まで届くロングスカート…ゲーム初登場時に着ていた、あの野暮ったい黒い服だ…を履いているので、見られる危険は割と少ない。
 そんな風な扱いのシッポだから、普段は刺激を受ける事なんか殆ど無い訳だ。
 だから、ひょっとしたら物凄く敏感なんじゃないかな…と思った訳よ。
 シッポが弱点というのは、ドラゴンボールのサイヤ人からの伝統みたいなものだしな。
 だから一か八か、で行ってみたんだが…見事に的中しちまった。
 シッポを掴むだけじゃ良くても動きを止める程度だと思ってたから、そこからナデナデのコンボに繋げるつもりだったんだが…この虚空を彷徨う手の行き場は何処?
 …とりあえず3人の頭を撫でとこう。
 俺も疲れてるし…ああ、撫でてるだけで癒される。

 …え、何でまだシッポを握ってるのかって?
 そりゃ…えーと、あれだ…また起きた時、またディズィーが暴れまわるんじゃないかと…いや、こうして掴んでたら暴走が治まってても激怒して張り倒されそうだな。
 んーと…べ、別にディズィーのお尻が手のすぐ側にあるのが気になってるんじゃないんだからねっ!
 …ゴメンなさい、物凄く気になります。
 ヤリたい盛りの中高生でもここまで気にならないだろうってくらいに気になります。
 でも本当に手を触れる事はしないよ!
 ディズィーを汚しちゃイケナイからね!
 え、だったらさっさと手を離せって?
 …そりゃそうですね、はいゴメンナサイ。


 はー、それにしても何だな、また新たにディズィーを可愛がる為の技を開発してしまったかもしれない。
 今まで、ディズィーのシッポは避けてきた。
 さっき言った通り、短すぎるからお尻に触ってしまいそうになるから。
 しかし、軽く握っただけでこれだけの反応を示してくれるシッポ…。
 これを見逃す手はあるまい。
 フェザータッチで軽く撫でるようにすれば、ディズィーも気持いい……かも?
 うーん、いきなり手でやるのは不安だな。
 セクロス的に言えば、敏感な小豆を触るようなものだし…………言っとくけど、これは18禁的な事を言ってるんじゃないからな!
 セクロスというのはあれだ、セパタクローとラクロスが合体して出来た球技で、敏感な小豆というのはそれに使う道具の一番デリケートな部分の事なんだ!
 そういう事にしといてください板的にお願いします!
 …それはともかく、直接触るのは不安が残る。
 セクロスの時だって、手で触れると刺激が強、もとい手の脂とかが付くからという理由で、より柔らかい舌で舐め、もとい綿棒のような専用の器具を使って小豆さんを調節する。
 ならば…俺も使わねばなるまい。
 そうだな…毛筆とかどうだ?
 あれは柔らかいし、いい品であれば肌触りもいいぞ。
 小学校の頃、未使用の筆を体に滑らせて遊んでた頃の体験談だ。
 …しかし、ディズィーの敏感な部分を筆を使って可愛がるって………お互いファーストキスもまだだろうに、どんだけ高度なプレイになるんだろうか。
 …是非ともやってみたい。


 それはともかく、これからどうするべきだろう?
 取りあえず、お爺さんとお婆さんに合流するべきだっていうのは分かるんだが、こんだけ派手に暴れた後だとな…。
 お爺さん達はともかく、他の人たちの反応が怖い。
 おめおめと戻って、その結果魔女狩りみたいな騒動になりました…なんてのは御免被る。
 かと言って、何も言わずにあの二人の元から去ってしまうというのもな…。

 ゲームの方では、少なくとも3年間は村に居られた…という設定だったと思う。
 が、ここでその通りに行くかは未知数。
 少なくとも、俺が居なかったら、多分ディズィーは家でもしなかったし、ギアだと言う事にショックを受けても自分だけが知らなかった事にここまで傷付かなかったと思う。
 俺の存在がディズィーを傷つけたと思うとorzして仕方ないが、その辺は一々考えるだけ無駄だ。
 どの道、人間でもギアでも、生きてる限りは誰かに迷惑かけて迷惑かけられるもんだし、考え出すとキリがない。
 とにかく、仮に俺が居なかった場合、例え家出したにしても大暴れする事はなかっただろう。
 そうすれば、もう少し長く村に居られたかもしれないな。
 まぁ、所詮は可能性の話だ。
 もう実現しない可能性の話だ。
 考えたところで意味は無かった。

 そのまま、俺はディズィー達を抱きかかえて、ただ月を見上げていた。
















『う、ん……あ、兄様…?』

「起きたか、ウンディーネ。
 体の調子は?」

『はい………大丈夫です。
 今まで、ディズィーに抑え込まれて出て来れなかったのですが…』

「ディズィーに?」

『ええ。
 私達は、まだ寄生型ギアとしての力もあまり強くありませんので…ディズィーが出てくるな、と願えば、ある程度はそれに抑え込まれてしまうんです。
 それを跳ね退けて、出て来れない事もないのですがそれはディズィーに負担がかかりますし…私達にとっては、ディズィーの意思と、その安全が第一優先ですので』

「…そうなのか。
 ところで……ディズィーが空を飛んで家出してたみたいなんだが、ひょっとして手を貸したか?」

『う……』


 バツの悪そうな表情で、ウンディーネは目を逸らす。
 …予想通り、ネクロと一緒に手を貸していたらしい。
 俺はディズィーを頼む、と言っといたんだけどな…。


『勘違いしないでほしいのだがな、兄よ』

「ネクロ?」

『ああ。
 体の調子は悪くない。
 気になるなら、後で撫でてくれ。

 それはともかく、兄よ。
 お前の意思は我々にとっても尊重されるものだが、だが同時にディズィーの安全と意思ほどには重要ではないのだ。
 我々はディズィーを護る。
 できるのであれば、その心までもな。
 兄は、我々にディズィーを頼む、と任せただろう。
 だが、ディズィーは家から飛び出したいと願った。
 我々が優先すべきは後者だった、そういう事だ』

「…………」


 まぁ…そりゃ、確かにそうか。
 兄と呼ばれているからって、絶対服従されるようなおかしな話は無い。
 どうもちょっとばかり思いあがっていたようだ。
 反省反省。


「すまん、ちょっと筋違いな事言った。
 …でも、言葉で止めるくらいはしてくれただろ?」

『うむ。
 だが聞く耳持たなかった…と言うより、俺達に対して意固地になっていたようにも見えるな』

「…あー…。
 そりゃーなるわな。
 一人だけ除者にされてたように感じてる時に、本人の方から言われれば…」

『そうですね。
 こういう場合、どうすればよかったのでしょう、兄様』

「いやどうすればって言われてもな…。
 頑なになってる人に対して延々と繰り返しても、両方疲れるだけだし…。
 まぁ、何だ…どっちにしろクールダウンさせなきゃ話にならんから、飛び出していくのは仕方なかったとして…そうだなぁ。
 うん、行き先を書いた書置きくらい残して行ってくれるとありがたい」

『それをやっては、家出にならないと思うのですが…。
 それに、ディズィーは衝動的に飛びだしただけで、何処に行くつもりも何も…』

「む…確かに。
 じゃあ、俺に向かって信号を飛ばすとかは?
 …と、そう言えば送っててくれたよな」

『…無駄かもしれんと思って送っていたのだが…受け取れたのか、兄?』

『流石は兄様、私達の声を聞き逃さなかったのですね……し、シスコンと呼んであげますわ!
 それだけ私達を大事にしてくれるんですからね!』

「最初は受信できなかったけど、多分できる。
 レーダー使えるようになったから。
 まぁ何だ、そうやってクールダウン…と言うか延々と怒ったり悲しんだりしてたら、生物ってそれだけで疲れてくるからさ。
 その辺を見計らって、『こうしてはどうだ』って提案したら、意外と揺れるモノなんだよ。
 疲れるだけ疲れさせて、その後に付け込むと言うか…。
 マニュアル通りに行くとは限らないけど」

『成程、覚えておきます。
 …それで、これからどうしますか?
 大暴れしたおかげで、ディズィーも何とか落ち着いたようですが…』

『言い忘れていたが兄よ、シッポを掴む時はもっと優しくしてくれ。
 そうしてくれれば、我々も中々心地よいのでな』

「…ああ」


 ネクロの嘆願は覚えておく事として…実際、これからどうしたものか。
 ディズィーを連れて帰るのは決定事項。
 村から去るにせよ、挨拶はしておきたいし、色々と持っていきたい物もある。
 漫画とかじゃなくて、サバイバルグッズをな。
 いや、漫画だって持っていきたいけどさ、あんまり面白いの無いし、そもそも悪魔の森に都合よく住居があるかどうかも怪しいもんだ。
 紙雑誌なんざ持って行っても、森の中ならあっという間に湿気てしまうのが目に見えてる。


「…とにかく帰ろう。
 こうしてる内に、獣が来ないとも限らんし。
 …よっと」


 未だに眠っているディズィーを抱えあげる。
 お姫様だっこ…は、帰り道が木々の枝で一杯だから無理。
 大人しく背負いあげる。
 …ちょっと柔らかい。
 ディズィー、知らない内に女の子になりつつあるんだなぁ…まだまだチッパイだけど。
 あのGカップと湛えられた宝乳になるのはいつの日か。
 ともあれ、ディズィーの寝顔が安らかになっているのは一安心である。

 にしても。


「なんか……記憶にあるディズィーの2倍くらいの重さがあるんですが…」

『女性に向かって何です、重いとは。
 …まぁ、今のディズィーでは無理もありませんが。
 何せ私達の分まで重量が増えているのですから。
 ……え、えい』


 え、重さ変わるの?
 羽の状態と人型状態では重さ変わるの?
 質量保存の法則…いや、考えるのは止めよう。
 法力的な何かでどうにかしてるんだ。
 実際、俺の知識の中にもそれに使われてるらしい理論はあるしな。

 ところでウンディーネ、何故俺の左肩にひっつく?


『ふむ…しかし、夜の森とはこのような物か。
 これだけの光があれば何の問題もなさそうなものだが、この程度で人間の目は眩むのだな。
 …人間は、このような場所だと不安を強く抱き、寄り添う事で不安を紛らわすと言うが……。
 ………兄よ、失礼する』


 ネクロ、何故俺の右肩にひっつく?


「…何で抱きつくのん?
 別にいいけどさ」

『そ、それは……別にいいのでしたら、お気に『抱きつきたいからに決まっているだろう、兄』……………ぁぅ』


 何でも堂々と言えばいいってモンじゃねーぞネクロ…。
 ほら、ウンディーネのように恥ずかしがって顔を赤くする等の方がリアクションに幅が出るんだ。
 でもネクロはネクロでカッコカワイイよ!
 …ちょっと思いついたんだけど、ネクロ転じて猫ロとか駄目かな?
 ドクロにネコミミ………おお、意外と可愛いな。
 リアルドクロじゃシュールなだけだが、なんかこう…今のネクロは見た目縫い包みっぽいし。
 じゃあウンディーネは……?
 ツンデレに合う動物って結構あるよな。
 実は寂しがりって設定なら…まぁ、ウンディーネは割と寂しがりというか構ってちゃんな一面がチラホラしてるが…ウサギだろ。
 呼んだらすっ飛んできそうな点ならワンコ。
 警戒心は強そうだけど、懐いたら可愛いなら…キツネとか。
 ………属性考えずに、アライグマ辺りでどうだろう。

 そんな全く下らなくない、非常に重要なテーマを考えつつ、俺はディズィーを背負って帰路に付くのだった。






 歩いて暫く。
 別に道に迷ったと言う事は無いし、重くて疲れた訳でもない。
 同年代の約2倍の重さだと考えると普通は疲れるんだが、ギアパワーは流石に格が違った。
 体力的にも腕力的にもまだまだ余裕である。
 どっちかと言うと、背中に当たるチッパイとディズィーの吐息と、両肩にしがみつくネクロ・ウンディーネの方が精神的にSAN値をガリガリ削ってくれる。
 0になっても、発狂せずにヘブン状態になるんだけどね。


「ん……」


 もぞ、とディズィーが蠢いた。
 足を止めて横目で背後を窺うも、相変わらずディズィーは眠っている。
 ように見えた。

 だが甘い!
 この一年と半年近く、毎晩毎晩ディズィーの寝顔を堪能しまくってきた俺を誤魔化せるとでも思うてか!

 チラッとウンディーネに目をやると、軽く肩を竦められた。
 …やっぱ狸寝入りか。
 まぁ、別にいいさ。
 あんだけ暴れまわって疲れてるだろうし、こうしてピッタリくっつく事で心が癒されるなら大歓迎だ。
 俺にとっても役得だしね。
 少なくともこのハグは、悲しみだけのハグじゃないし。


「…少し、寄り道していこうか」

『む、いいのか兄?
 爺も婆も心配していると思うが』

「あー…うん、ここまで来たら1分2分の遅刻は同じって事で」


 悪いとは思うけどね、いやホント。
 その1分2分の心労で、ディズィーのケアがちょっとでも出来るなら…うん、あの二人なら許してはくれる。
 あくまでも許して『は』、だけどね。
 許してくれるまでのお説教とゲンコは覚悟の上だけどね!

 足を適当な方向に向けて、ブラブラ歩き出す。
 …心なしか、ディズィーとの密着度が上がっていると言うか、抱きついてきているような。
 まぁ嬉しいからいいけどさ。

 と、ああそう言えば…忘れてたな、アレ。
 ディズィーを落ち着かせるというか、博打のつもりで持ってきたアイテム。
 結局使わなかったが、不本意な使い方をするよりはずっといい。
 えーと、確か懐に……あったあった、ちゃんと無事だな。


『? 兄様?
 何か持ってきているのですか?
 食べ物?』

「ちょ、ま、ウンディーネやめれ!
 くすぐったいくすぐったい、はん、ソコはダメぇ!」


 胸元に手を突っ込まれてくすぐったい!
 と言うかむしろ冷たッ!
 ウンディーネの体冷たい!
 基礎体温低いのね!

 止めれと言ってるのに、腹が減ってるのかワサワサと俺の懐を探るウンディーネ。
 何かネクロもやりたそうにしてるが、君がやるとリアルで触手が出てきそうなんで勘弁してください。


「…む~」

「で、ディズィー!?
 お目覚めで!?」


 脹れっ面のディズィーが目を開けた。
 で、俺の懐を愛撫…もといまさぐっていたウンディーネの手をぺチぺチ叩く。
 ウンディーネは残念そうだったが、仕方なく手をひっこめた。
 ふぅ、べっくらこいた…。


「よ、ディズィー、起きたか…こら、また寝ちゃ駄目だぞ」

「…眠いよ」


 …ウソだ。
 嘘だと分かっていても、思わず騙されてしまいたくなる。
 だってそれだけ俺に密着していたいって事だろ?

 それ以上ゴネる事はしなかったディズィーだけど、俺の背中から下りはしなかった。
 俺も特に何も言わずに歩を進める。
 この先には、小さな泉があった筈…ここに来る途中に確認した。
 お、あったあった、ここだ。


「ディズィー、ここで少し休もう。
 …話したい事もあるし、さ」

「…ん」


 ぬぅ…まだネガティブ思考、抜けてないな。
 それだけショックが大きかった訳か。
 さて何から話すべきかな…。

 ディズィーを降ろして、適当な岩に腰掛ける。
 ディズィーも俺を追うように隣に腰をおろして、ペタンを引っ付いてきた。
 目を向けて見ると。


「…さ、寒いから」


 心が?
 体が?
 どっちも?
 …ま、好きなだけくっ付けばいいさ。

 それよりも、何を言うかが問題だ。
 ん~、どうすっかな……。


「……さい」

「ん?」

「ごめ…ごめん、なさい……」


 ちょ、ちょちょちょっとディズィー、いきなり何泣いてんの!?
 ごめんなさいって、別に悪い事……じゃなくても謝るような事したね、うん。
 家出とか大暴れした事とか。
 大暴れについては、記憶残ってんだろうか?


「いいのいいの、ディズィーは悪くない。
 俺達が黙ってたのが悪いんだから」

「で、でも、でも…!」

「…うん、ディズィーがさ、自分で悪い事をしたって思ってるんなら、それはきっと悪い事なんだろうね。
 でも、全部ディズィーが悪いわけじゃないんだ。
 ディズィーをそこまで追い詰めた、俺達も悪い。
 追いつめてる事に気付かなかった、俺達も悪いんだ。
 だからほら、お互いにごめんなさいしよう。
 ディズィーが許してくれるなら、俺もディズィーを許すよ。
 それとも、許してくれない?」


 ディズィーは泣き顔をブンブン振って否定した。
 うん、許してくれるって事だね。

 泣いてて上手く喋れないディズィーに、一気に畳みかける。
 自己主張が出来ない相手に、勢いだけで押し切るんだから、2流の詐欺師のやり方だね。

 短い時間だったけど、それから色々話した。
 自分がギアだと知って、それがどういうモノなのか聞かされて。
 しかも自分だけ、それを知らなかった。
 ショックを受けていた時に、話を切り上げて休憩するお爺さん達が、自分から逃げるように感じられた。
 そこには、ディズィーの錯覚ではない後ろ暗さがあったが、その後ろ暗さが何からくるものかを錯覚してしまった。
 俺は一緒に居たけれど、結局何一つ言わなかった。
 自分がギアだと知っていた事さえも、言わなかったし弁解もしなかった。
 拾われた子供だった事も同じ。

 …あ~~、こりゃ何でもいいから喋ってた方が正解だったんだな…不覚。
 まぁ、不満不平を吐き出すだけ吐き出したらスッキリしたのか、ディズィーは少しばかり明るさが戻ったような気がする。
 あくまでも少しだけ、だけどな。


「…それじゃ、そろそろ帰ろうか。
 心配かけちゃったしな」

「うん…」


 おお、歯切れは悪いが即答が来た。
 いい傾向だな。
 少し喋っただけでこの程度は回復したんだし、後は実際にお爺さん達と話せばどうにかなるか。
 所詮、言葉は言葉。
 実践、体感に勝るものではない。
 いくら言葉を重ねても、お爺さん達との絆を感じられなければ…意味は無い。
 ま、その点に関しちゃ、俺は何にも心配してないけどね。
 だって本当に家族なんだから。
 絆はちゃんとある。
 すれ違う事はあっても、疑った事なんかないね。


「っと、ああそうだ。
 帰る前にディズィー、ちょっとアッチ向いてくれ」

「? こう?」


 そうそう、そのままな。
 俺は懐に入れていたブツを取りだす。
 それを見るネクロとウンディーネに黙っておくようにジェスチャーして、ディズィーの背後に立った。
 僅かに緊張するディズィーの髪を纏めて……こうして…こうでいいのかな?
 確かマニュアルではこうすればいいと………よし。


「よし、これでオッケー」

「?」

「プレゼントだよ。
 ほら、見てみな」


 ディズィーを促して、泉を覗きこませる。
 泉の水は冷たく透き通っていて、月のみならず星の光さえ写し取っていた。
 星の光は、俺が元居た世界の星とは比べ物にならないくらいに大量で、何よりも力強い。
 天の川が氾濫したんじゃないかと本気で思えるくらいだ。
 そこに映るディズィーの顔。
 うん、月明かりにも星光にも負けてないね!


「………きいろ」

「ああ。
 俺は角を隠す為に、ヘアバンド付けてるからな。
 同じ物はないけど、代わりにって事で」


 ディズィーの後頭部についている、ちょっと歪に結び付けられた、2つの黄色いリボン。
 前々から考えてたんだよね。
 ディズィーが俺と同じように、頭に着ける物を欲しがってたみたいだから、この際だからと思ってね。
 別にゲームの『ディズィー』と同じようにする理由も無かったんだけど、今の俺にはこれが精一杯。
 村は辺境だから、気のきいたアクセサリなんか扱ってないし、あったとしても俺の小遣いが届かない。
 だから、リボン。


 ディズィーは、頭の後ろで纏められている髪とリボンにそっと触れる。
 チョンチョンとつついてみたり、振り返って目にしようとしたり。
 …振り返った所で、リボンは見えないけどね。
 とにもかくにも、気に入ってくれたらしい。

 もう一度池に顔を映して、JOJOに…もとい、徐々に笑顔になっていく。
 おお…なんかこう、いつもの笑顔とはちょっと違うぜ。
 天真爛漫を形にしたような明るい笑顔じゃなくて、こう…月明りのような、てーの?
 力強い満面の笑みじゃなくて、ゆっくり滲みでてくる慈愛というか感謝と言うか。
 赤ん坊のエンジェルスマイル以上のスマイルだぜ。


「ナッシュ……ありがとう……」

「…いやいやいや、いいって事よ」


 …本気で見惚れてた。
 弱気になってる所を物で釣ったような気がするなぁ、なんて罪悪感も吹っ飛んだ。
 ああ、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!
 これでディズィー自慢にも一層熱が入るってもんだぜ!

 ギュッ

 なんて考えてたら、いつの間にか抱きつかれてたよ!
 いやいやいや、嬉しいけど今はヤバイ、今はヤバすぎ。
 さっきのス~パ~エンゼルスマイルのおかげで、俺の心の防壁は一気に18個くらいブチ抜かれてたのよ。
 しかも衝撃任せで砕くんじゃなくて、こう…ゆっくり、内側から解除されていくような感じで。
 そこへきて、ギュッ、だよ?
 こりゃー無条件降伏するしかないじゃありませんか!

 え、降伏したらどうなるって?
 そりゃ…アレだ、カヲル君が言う所の一時的接触するんだよ。
 …何だ、別に今と大差ないじゃないか。
 単に俺がディズィー萌えパワーを受け止める…のはともかく、制御できないだけで。
 うん、とにかくこの場は抱き返しても問題ないだろ!
 なんて考えた途端に。


「シツレイしますよ~~」


 ……なんてタイミングで出てくるんですか、ファウスト先生…。
 空から2メートル以上の長身が下りてきた。
 相変わらずの紙袋顔、メリーポピンズな傘、長身のおかげで異様に小さく見えるカバン。
 そして紙袋ごと顔フラッシュ中。
 …ディズィーが目を丸くして、俺の後ろに隠れてしまった。
 そしてネクロとウンディーネも、物凄い勢いで警戒して人型になっている。


「ちょ、ま、落ち着け落ち着け、悪い人じゃないから!
 ディズィーを探すのを手伝ってくれたんだよ」

『む…ですか、それだけで味方と判断する訳にはいきません。
 この方……得体が知れない実力者のようです』

『何より、その体に染みついた血の残滓。
 …何物だ…?』


 ネクロ、せめて何『者』にしようよ…。
 いや、気持は分かるけどさ。
 あー、それにしてもファウスト先生って、そーいえば元連続殺人だか猟奇殺人だかの人でしたね。
 手術が失敗して小さな女の子が死んで、そこから気が触れたとかなんとかで…。

 ファウスト先生はピクリと表情を動かした(ような気がする)。


「だから落ち着けって!
 こんなご時世だし、実力者には色々あるだろ。
 それに、得体が知れないって言うなら、尚の事戦闘をしかけるのは止めなさい!
 そーいう見敵必殺な生き方は、余計な敵を産むから!

 …すみませんファウスト先生、こいつら生まれたばっかりで世間知らずなもんで…」

「いえいえ、こんな姿をしているからには、怪しまれるのも慣れていますよ。
 それより…無事に妹君を見つけられたようで、何よりです。
 …ふむ、しかし…」


 俺とディズィーを見比べて、ファウスト先生は何やら頭を掻いた。
 居心地悪そうにしているディズィーに気が付いて、いやはや失礼と何処か道化のような仕草で礼をする。
 …まぁ、何とかネクロとウンディーネも落ち着いてくれたし、ここでガチバトルにはならないか。


「………いえ、今からどうにかする事はできませんか」

「は?
 何の話です?」

『キサマ……ディズィーや兄に余計なちょっかいを出すのなら…』

「いえいえいえ、大した事ではありません。
 お二人に危害は加えないと約束しますよ。
 …ですが、失礼ながら一つよろしいでしょうか?」

『ネクロ、落ち着きなさい。
 兄様に力を貸してくれた恩人ですよ。
 …どうぞ』


 ウンディーネに窘められて、ネクロは不満そうに引き下がった。
 落ち着かせる為にも、ちょっと撫でておく事にする。
 …家のワンコがお客さんに向かって吠えるのを、止めようとしてる気分だ。


「では、お言葉に甘えて。
 失礼ながら、これからちょくちょくお邪魔してよろしいでしょうか?」

『…何の為に、ですか?』

「それは勿論、往診の為です。
 お二人は、今は怪我や病気の類はしておられないようです。
 ですが、これから成長したら、どうでしょう?
 不慮の事故があるかもしれない、深刻な病気でなくても虫歯になるかもしれない。
 ひょっとしたら花粉症になるかもしれません。
 そういう時、お力になれないものかと考えているのですが」

『………対価は何です?
 我々に金銭を求めても応じられませんが』

「金銭が目的であれば、流浪の医者などやってはおりませんよ。
 もしも何かあった時、『ありがとう』の一言でもいただければ。
 そして何事もなく、健康に過ごしていただけるのであれば、それが何よりの報酬です。
 感謝の気持ちとして、何か頂けると言うのであれば喜んでお受けいたしますが」


 ウンディーネは黙り込んだ。
 ディズィーは不安そうに、俺の袖を握っている。
 ネクロは………撫ですぎたか、なんかトロけていた。

 実際のところ、ファウスト先生の人柄云々を抜きにしても、この話はとても有難い。
 何処で暮らすにしても、医者は必要だ。
 特に俺達は、生態が全くと言っていいほど分からないハーフギア。
 信用的な意味でも、能力的な意味でも、そこらの医者には診せられない。
 …この辺の事情も承知の上で、しかし口に出さない理由をウンディーネも気付いている。
 即ち、ディズィーが悲しむ。
 ネガティブ思考から大分回復できたとは言え、まだコンプレックスは残っている。
 俺達が他の人間とは違う、ハーフギアであるという事実は変わらない。

 俺個人としては、メリットは医者であるという事だけではなかった。
 いずれ来る賞金稼ぎ達との闘いの時期。
 その時にどう対応するにせよ、強力な伝手が出来る。
 これは正直、喉から手が出る程欲しい。

 それに…これはメリットなのか分からないが、ファウスト先生は俺の事も気にしているように見受けられる。
 ディズィーの元に向かう前に言われた、『考えてみてください』という発言も気にかかる。
 それが気になって、時々俺の様子を見に来る…という事もあるのだろう。

 まぁ、来るなって言った所で、ファウスト先生が足を止めるかは微妙な所なんだけどね。


「そういう事でしたら、むしろ願ったり叶ったりです」

『兄様!?』

「大丈夫だって。
 この人、悪い人じゃないというかむしろ善意の塊っぽい人だから。
 暴走する人種って意味じゃなくて、自制もできる人だし」

「いやはや、そこまで褒めていただけるとは。
 少しむず痒い気もしますねぇ」


 たはははは、と笑うファウスト先生。


「ああ、それはとうと…村の方々には、妹君が発見された事を報告してありますので」

「…村に直接行ったんですか?
 混乱したんじゃ…」

「ええ、まぁこの姿ですから。
 短時間ではありますが、誠心誠意お話したら分かっていただけました」


 …リリカルな意味でのお話じゃないんだろうけど、なんつーか…この人の場合、話術とか詐術の方面が混じるような気がするな。
 まぁ、そうでもしなけりゃ話もきいてもらえん気がするが…。
 しかし、この人が何処か一か所に留まる時って、どうやって溶け込んでるんだろうか。
 そのノウハウがあれば、角や羽があっても人間社会で生活していける気がするな。


「そうですか…。
 ともあれ、ありがとうございます。
 俺達は…まぁ、今後どうするかは分かりませんが、何処かに隠れるにしてもファウスト先生でしたら歓迎いたしますので」

「それはありがたい。
 …では、私はそろそろ行きます。
 貴方の村には、健康な方ばかりで私の出る幕はありませんでしたしね。
 いやはや、非常に素晴らしい事です。
 ……それと…兄君、暇な時で結構ですので、私が言った事をよく考えておいてくださいね」

「…はい」


 バサッ、と図体からするとあまりに小さく見える傘を広げるファウスト先生。
 その途端、航空力学とか無視してフワ~っと体が浮き上がって行く。
 …ああやって移動するのか…UMAだけじゃなくてUFOでもあるんだな。
 流石ファウスト先生、そこに痺れも憧れもしないがな。

 俺の後ろでビクビクしていたディズィーが、ポカンと口を開けて見送っている。
 ふと我に返ると、俺の前に飛び出して一声叫ぶ。


「な、ナッシュと私がお世話になりました!」

「ご~きげ~んよ~~。
 ご家族と仲良くしてくださいね~~~………」


 ペコリと頭を下げるディズィーに向かって、パタパタ手を振るファウスト先生。
 …ディズィーの背中で、ネクロとウンディーネが何とも言えない表情でファウスト先生を見送っている。
 敵対心というか警戒心は大分薄れたようだ。
 毒気を抜かれたとも言う。

 ファウスト先生が見えなくなるまで見送って、俺は踵を返す。


「…そんじゃ、そろそろ帰るか」

「…ん!」


 もう夜も遅い。
 冗談抜きで草木も眠る丑三つ時だ。
 ディズィーは……ちょっと眠そうだけど、色々あって神経が高ぶっているらしく、瞼が落ちそうな程ではない。

 …しかし、意外っちゃ意外だな。
 ファウスト先生、ディズィーに対して何も言わなかったよ。
 こう…小難しい表現の助言くらいあるかと思ってたんだが。
 実際、俺には言ったしな。
 ん~、ディズィーじゃまだ理解できないから?
 でも 家族を信じていい、くらいの言葉はあってもいいと思わんか?
 …いや、似たような事は俺が話したな。
 いくら変態紳士のファウスト先生の言葉でも、初対面の人の一言よりも俺の一言の方が説得力がある。
 何処かから盗み聞き…いや出待ち……えーと、雰囲気を壊さないようにタイミングを計ってたなら、俺が言ってた事も聞いてたんだろうし。
 ……いいや、考えるだけ無駄だ。
 大丈夫と確信してるから、何も言わなかったと解釈しておこう。

 じゃあ、家まで「ナッシュ」…?

 帰ろうとした時、ディズィーが笑顔で手を差し出してきた。
 ちょっと戸惑ったが、すぐに何をしたいか理解できた。

 手を繋いで帰る。

 …普段、日が暮れるまで村の子供達と遊んで、何気なくやっていた一日の終わりの合図。
 兄と妹として、家族が待つ家に帰る。
 …日々、内心で色々と悶えていたのは言うまでも無い。
 んだが。


 ギュッ


「お、お?」

「………」

『ディズィー…大胆ですわ…』

『我々は…まぁ、別の機会でいいだろう。
 それよりもウンディーネ、さっさと引っ込むぞ。
 村人に姿を見られたくない』

『む、確かにそうですわね。
 お邪魔虫扱いされるのも嫌ですし。
 それではディズィー、兄様、ごきげんよう』

『俺ももう寝るぞ』

「あ、え?」


 俺が混乱している内に、ネクロとウンディーネはさっさと羽の形に戻ってしまった。
 それはいい。
 今更なんだが、夜更かしは子供に良くないからな!
 問題なのは…いや別に問題がある訳じゃないんだが、俺が戸惑ってるのは、ディズィーだ。
 ディズィーが、予想と違って手を握るんじゃなくて。
 いや、手も握ってるんだけど。

 腕を抱きしめてきたからだ。

 こう、恋人同士がイチャつきながら歩く時みたいに。
 …おおぉ、この表現いいね、俺とディズィーが恋人みたく?
 …イイ、スバラシィスバラシィィ!
 俺は今、顔フラッシュ並みに輝いているゥゥ!
 …こんな事考えてると、股間の(イヤな方面の)浪漫砲が目覚めた時みたいに本当に顔フラッシュが目覚めそうだから止めよう。

 差し出した手を握って、そこから腕をギュッと。
 腕を抱きしめながらも、しっかり互いの手は絡まっている。
 一歩間違えれば関節技に持ち込まれる体勢だが…それはそれで一興。
 と言うか、ディズィーの膨らみ始めたチッパイが!
 ほんのり感触感じるんですけどね!
 …服が通常モードに戻っててよかった。
 バトルコスチュームのままだったら、無理やり指を捻じ込んでいたかもしれない…何処に、とは聞くな。
 え?
 いや体の中にじゃないよ、服の下にだよ、聞くなっつってるじゃん!
 シスコンや炉の称号はともかく、マジ鬼畜は勘弁してほしい。

 俺はちょっと戸惑ったけど、そして内心で盛大に悶えていたけど、とりあえず空いてる方の手でディズィーの頭をそっと撫でる。
 やっぱりこれが一番落ち着くのか、ディズィーは安らかな表情で俺の方に頭を乗せる。
 …ぬぅ、歩きにくい…けど心はヘヴン!

 そのまま、ディズィーと二人で歩調を合わせて、ゆっくり村に帰って行った。





 その後の事は、正直思い出したくもない。
 村に帰った途端、待ちかまえていたお婆さんを筆頭に、盛大に歓迎を受けた。
 と言っても、俺達はお婆さんやお爺さんに抱きしめられて、「無事でよかった」と口々に声をかけられただけだ。
 一緒に探してくれてた村の人達も、口々に安心したとか心配したとか手間をかけさせるなとか言ってくれて、目頭がかなり熱くなったよ。
 いやもう照れ臭かったのなんの。
 羞恥で死ねるレベルにまで達するくらいだ。
 …ただ無事を喜んでくれるだけなら、嬉しさと申し訳なさが当分にあるんだろうけど…戻った時に、ディズィーが腕に張り付いたままだったからなぁ…。
 冷やかしが飛ぶのなんのって。
 まさか、ディズィーに「恥ずかしいから腕を離してくれ」なんて言えないし。
 そういうのは、もっとこう…最低でもディズィーの方に余裕がある時にしか言えない。
 今言ったら、突き放されたと思われるかもしれん………こういうのも、ディズィーを信じてないって事になるのかな…?

 まぁ、それはともかく。
 疲れているだろうって事で、まずは熱いシャワーで体をサッパリさせて、そのままベッドに放り込まれた。
 ディズィー、即爆睡。
 まぁ、いつもだったらとっくに夢の中な時間だしね。
 人生初めての大暴れもしたし、本気で疲れたんだろう…それでも寝ている間に抱きつかれたけど。
 実際、次の日は物凄く筋肉痛だった…俺も。
 なのに、ディズィーは何故か「一緒だねっ」とご機嫌だったし…何故に?
 まぁ、確かにある種の面白さというか滑稽さは感じたけどさ……マンガのオチみたいな。

 その日の午前中は、まぁ良かったさ。
 何だかんだ言っても、ディズィーも無事だったし、お爺さんお婆さんも喜んでたし。
 ちゃんとディズィーと向き合って、あの時自分はこう考えていた、私はこう感じた、その他諸々の事をお互いに話して…うん、やっぱ家族だなって思えたよ。
 心配があったとしたら、村の人達の今後の反応。
 ファウスト先生の助力もあって、ギアだって事は何とか誤魔化せたらしいんだが…燻っていた疑念が、本格的に炎上し始めているのは確からしい。
 ま、所詮は早いか遅いかの違いだわな…と言うか遅すぎるくらいだ。
 …ギアだとハッキリ言われない代わりに、ファウスト先生の同族なんじゃないかと噂されているよーだが…ギアとどっちがマシかなぁ…。
 狙われないんだから、ファウスト先生の同族の方が平和ではあると思うんだが。

 それよりもキツかったのは、午後からだった。
 ディズィーもね、午前中のお話のおかげで、かなり安定したと言うか、家族の絆って奴を信じられるようになった。
 自分で言うのもなんだけど元々仲のいい一家だし、すれ違った時の対応が分からなかっただけだから、当然と言えば当然の帰結ではあったんだろう。
 腹を割って話せば、お互いの事は感じられる…幸いにして、今回のすれ違いは主義主張の領分じゃなかったしな。
 勘違いしてたのを正せば、後はそれを信じる信じないの問題でしかなく、信じると言う事ならこの場に問題がある者は一人も居なかった。

 だけどなぁ……ちゃんと仲直りした後、思っクソ叱られた。
 それはもう、三軒先の家に響くくらいの怒声を食らった。
 勿論俺も。
 そらそーだ、ディズィーはいきなり家出して心配かけた挙句、俺とドンパチやって森の一部を灰に変えたし。
 俺は俺で、入るなと言われていた森の奥にまで、何も言わずに入って行って連絡もしなかったし。
 …まぁ、森の一部を灰に変えた、の部分は噂になると困るんで、そこだけは声を抑えてたけど……マジで怖かった。

 ギアがどうの人間がどうののレベルじゃ断じてねぇ、もっとどうしようもない格の違いを見せつけられたぜ。
 しかも、それがぶっ通しで続く。
 キタムラ式説教みたいに延々と続く。
 …いや、あれはどっちかってーとホワン・ヤンロンの説教の方かな…お爺さんが喋りつかれたらお婆さんが喋って、お婆さんが喋りつかれたらお爺さんが喋って、こっちの意識が朦朧としてきたら二人がかりで喋って…。
 中国故事じゃないが、二人の長年の経験から来る事例には事欠かないし。
 俺のみならず、ディズィー・ネクロ・ウンディーネが素で土下座したくらいだ。
 いやぁ人間って強いわホント………。
 思い出したくねぇ…。

 そんなこんなで、今回の一件は後を引きつつも、何とか落着したのだった。
 






ふと思った。
初投稿字のPV数を記録してみようかな、と。
投稿直前、60142。

今回だけ内容が2倍くらいの量になりました。
ただし文章に反比例して、内容は薄いというかナッシュに都合が良すぎる感があり。
こーいうシーン、苦手なんですよね…。



[17288] 10
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/10 13:28

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 先の大・説教から、お爺さんお婆さんに頭が上がりません。
 何かトラウマみたいなものを作ってしまった気がします。
 それはディズィーも同じらしく、なんかこう……微妙に怯えているような気がする。
 まぁ、それでも構わず甘えに行くのがディズィーらしいっちゃらしいんだが。


 ネクロとウンディーネも、しっかり甘えている。
 『ネクロまで…?』って思うかもしれないが、意外と…いや、今までの様子を見るに意外でも何でもないとは思うんだが…あの子甘えん坊さんだった。
 ひょっとしなくても、俺の教育の成果なんだろーか?
 それとも元々こういう性格で、寂しさが募りに募った結果好戦的に見えていただけだったのか…。
 ま、どっちでもいーけどね、今更だし。

 お婆さんに撫でられ、お爺さんと遊んでいる二人を見て、ディズィーがまた拗ねるんじゃないかと思ったが…無用な心配だった。
 やっぱりお姉さんと意識させたのが良かったんだろうか?
 お爺さん達を取られた、なんて思わずに家族のスキンシップを眺めていた。
 暇そうにしている時は、俺も一緒にジャレていたりする。
 ネクロがお婆さんに、ウンディーネがお爺さんに、そんでディズィーが俺と遊ぶ。
 おお、3方に死角なし…見事な連携プレイだね。

 ところで、ディズィーだけど…なんか最近、様子が変わってきた。
 何処が、と具体的には言えないんだけど……なんかこう、今までとテンションが違うような……甘えっぷりが激しくなってきたような…。
 嬉しいんだけどね、俺としては!

 俺が送った黄色いリボン、いつも付けてるし。
 …実はもう一つ、シッポ用にリボンを確保してるんだが…これは秘密にしてある。
 何せディズィーのシッポはまだそれ程長くないから付けられない。
 と言う事は、もう一つのリボンは事実上宙ぶらりんな状態になっている訳だ。
 これをディズィーに知られてみろ。
 …ペアルックを強要されるかもしれん。
 その時は、きっと髪を結ぶんじゃなくて角に付けるんだろうな…ち○こ並みに敏感な角に。
 しかも多分根元に。
 ……なんでいきなりSMプレイになんのよ。

 とにかく、ディズィーは前にも増して俺にベッタリになった。
 嬉しいんだけど、嬉しいんだけど……良くない傾向、なのかなぁ…?
 いくら俺が嬉しくたって、それがディズィーの為になるかと言われると考え込まざるを得ない。
 単純に好意の表れと見るべきか、それとも一種の依存と考えるべきなのか…。
 年代的に言えば、まだまだ親兄妹に依存していたっておかしくない年齢なんだが…実年齢的にも、精神年齢的にも。
 ………それで思いだした、反抗期どうなるんだろう。
 俺が3人の兄…でも親代わりでもいいけど、この3人から反抗されんの?
 いやそれだけじゃなくて、多分3人の間で仲違とかも起こるだろうし、それを仲裁するのも俺…?
 ………な、ナデナデが何処まで通じるかがカギだな…。





 さて、それはそれとして近況報告です。
 ディズィーの家での後、一見すると大過なく過ごしています。
 あれから大体2カ月…肉体年齢、10~11歳ってところです。

 ただ、あくまで「一見すると」大過なく、でしかないんだよね。
 ファウスト先生が上手く誤魔化してくれたからか、それとも単純に同族認定されかけているからか、まだギアだと断定はされてない。
 でも、俺達が普通の人間じゃないっていうのは……前々から公然の事だったけど、破壊力的な意味でも普通じゃないって事はほぼ知れ渡ってしまった。
 ディズィーの大暴れで被害にあった森は、俺が思っていたよりも広範囲だったらしい。
 翌日に聞いてみると、森の一角がえらい惨状になっていたらしく、村人達が怯えているとの事だった。
 そして、その時に森の中にいたと思しき俺とディズィーがやったんじゃないか、と……余計な所で鋭いな。
 と言うより、コジツケが偶然的中しただけか。
 ま、流石に俺達みたいな子供にあんな事が出来る訳ない、という見方もあって、半信半疑と言う所なんだけどな。

 ともかく、俺達を本格的に異物と見なす見解が広まりつつある。
 もしこれを防ぐ事が出来たとしても、どの道俺達は遠からずこの村を出る事になるだろう。
 何せ、森の一角が消えた事はこの村だけじゃなく、他の村まで届いている。
 この前なんか、記者が大挙して森に入って行った…帰ってきた時、何人か足りなかったような気がするが……誰も何も言わなかったし、気のせいだろう。
 まぁとにかく、『怪奇! ○○の森、消失の謎』みたいな感じで三流ニュースペーパーとかで話が流れまくっている訳だ。
 さっさと忘れ去ってくれればいいものを、三流だけあってネタに困っているのか何度も同じ記事を繰り返しやがる。
 当事者としては、捏造でもいいから他の話題を扱え、と言ってやりたい。

 三流ニュースペーパーに乗るだけならまだいいが、実際に森が消失しているというオマケ付き。
 何かあったと勘繰られても仕方ないだろう。
 今はまだ村人から情報漏洩もしてないが、それも所詮は時間の問題。
 森の消失に関係なくとも、二年足らずで10歳くらいまで成長した子供がいる…なんて嗅ぎつけられたら目も当てられん。
 この辺、お爺さん達も苦々しく思ってはいるようなんだが、所詮は金も権力もない一般ピーポー。
 有効な対策なんか、打てる筈も無かった。

 そういう訳なんで、お爺さん達を余所に、俺は避難の準備を着々と進めていた。
 いっその事、お爺さん達も悪魔の森に住めないかなーと思ってたんだが…無理だわ。
 調べてみたら、思ってたよりも過酷な森のようだ。
 サバイバル習っといて正解だったな、これは…。





 んじゃ、そろそろ気持を切り替えて、ディズィー自慢と行きますかね!
 と言っても、今回はちょっと趣向を変えて、新しい家族のネクロとウンディーネ自慢になっちゃうけどね。
 いやーもう、二人とも賢いのなんのって。
 生まれて半年も経ってないとは思えんわぁ。
 て言うか、ディズィーより賢いんじゃないのか、と思えてきた。
 まぁ、実際には賢い云々じゃなくて、精神的に成熟しているが故の落ち着きなんだろうけどね…その代り、ディズィーみたいな子供らしさが殆ど見られないけど。
 いや、そうでもないかな?
 少なくとも俺の近くに居る時は…口調とかは子供らしくないけど、甘えん坊さんだし。
 ま、年齢云々はともかくとして、賢い子なのは間違いない。
 とゆーか、人間社会の中で過ごした時間は長くてディズィーと同等、普通に考えればもっと短いのに、ディズィーよりも余程人間社会の常識を知っているというこの不思議。
 まぁ、常識を知ってたからって、それを守るネクロじゃないんだが。
 ヤンチャさんだなぁ。
 ウンディーネの方はと言うと、意外に…と言うべきか、それともおしゃまなょぅι゛ょキャラのままにと言うべきか、ある程度は常識に沿って行動しているようだ。
 …まぁ、常識に沿る沿らない以前に、この二人は人がいる所では出て来ないんだけどな。

 うーん、人がいない所でしか出て来れないっていう制限は何とか取っ払ってやりたいんだが…こればっかりはなぁ。
 ジョニーんトコに行くまでどうにもならない。
 …正直、行かせるべきか行かせないべきか、物凄く悩んでるんだけどね。
 行かせる…べきなんだろうなぁ、色々な世界を見られるから。
 でも、個人的にはディズィーを自分の元にずっと置いておきたいという欲もあって…それが我儘でしかない事も理解してるつもりだ。
 例え、ディズィーがそれを望むとしても、その通りにしていいものだろうか…。

 正直、俺個人の意見としては………別にジョニーの所にも行かずに、森に閉じこもったままでも別に問題はないと思うんだ。
 いや、これは俺の我儘とか独占欲とかから来る意見じゃない。
 そういうのを退けておいても、俺はこう考える。
 人間…にしろギアにしろ、別に外の世界に漕ぎだしていかなければいけないというルールは無い。
 自分で自分を養っていけるなら、何処か一か所、自分のテリトリーに留まっていても責められる筋合いは無いと思うんだ。
 一か所に留まり、自分の殻に閉じこもる…と言うと人聞きは悪いが、裏を返せば平穏な生活が保障される、と言う事でもある。 
 勿論、それで閉じこもり続けていた場合、人間が小さくなってしまうというリスクはあるが。

 …でもなー、その平穏をぶっ壊す連中がワラワラ来るしなぁ…。
 それに、ゲームの方では結局ディズィー自らの意思で、外の世界に踏み出していったし…もしもウチの妹が同じ決断をすると言うなら、止める事はできない。
 止める事はできないにしても、俺はどうするべきだろうか…一緒に行きたいが、それじゃディズィー達が自立できない気がするし…。

 話が逸れた。
 まぁ、本人達は出て来れない状況にあっても、別段気にしていないらしい。
 と言うより、デフォルトの状態は羽の姿らしく、むしろ用事もないのに人型になるのは面倒だ、との事。
 実際、家に居る時でも普段は羽型だし、俺達の気を楽にする為の強がりと言う訳でもないらしい。
 …それでも甘える為だけに人型になるんだから、ホントもうあらゆる意味で可愛い子達だよ全く!
 ちゅーか、デフォルトが羽…って事は、人間型も、他の形態も意識して変われてる訳で…よく考えたら、ウンディーネのょぅι゛ょ形態も創った姿なんだよな。
 確かガンマレイする時に、ウンディーネの姿は………な、なんか白くて牙がトゲトゲのデカい狼っぽかったような…。
 …うん、ょぅι゛ょがワンコ、イイね!

 で、その可愛い子達だけど…精神的に成熟しているように見える一方で、やはりまだまだ子供。
 見る物聞く物、全てが珍しいらしい。
 何か興味を惹く物を見つけた時は、ディズィーに頼んでそれに近寄ったり、持って帰ってから矯めつ眇めつして眺めていたりする。
 こういう所を見ると、やっぱり人がいる所でも出て来れるようにしてあげたいもんだが…無理なものは無理だ。
 少なくとも今は。
 いずれはどうにかしてやるけどな!
 本人達は不要と言うかもしれないが、行動の選択肢の幅は広いに越した事は無い。
 …森に閉じこもる、なんて選択肢の幅を縮めるような事を考えてる俺が言うのもなんだけどね。

 とにかく、ディズィーは二人に頼まれ、村の中をあっちに行ったりこっちに来たりと忙しい。
 ディズィーとしては、お姉さんぶって面倒を見れるのが嬉しいんだろうな。
 そして俺はそれに必ず連れて行かれる……んだが、俺はここで毎回毎回、非常に遺憾な思いをする事になる。
 素直に『悔しい思い』ではなく、政治家が使うような無駄に小難しい『遺憾な思い』と表現しているのがポイントだ。
 それだけ悔しく、しかしそれ以上に納得できず、何よりも妄想を刺激されるイベントがあるんだよぉぉぉ!

 いや、イベントって言う程大した事じゃない。
 むしろディズィー達にとっては普通の事だし、何か大きな騒ぎに発展する訳でもない。
 ただ俺に不都合があるだけだ。
 それは何かって?

 会話だ。

 ディズィーと、ネクロと、ウンディーネの会話だ。

 家の中だったら、羽じゃなくて人型になって話すから、何の問題も無いんだが…外だと二人の存在を知られる訳にはいかないから、自然と羽型オンリーになる。
 でも、そうなっててもディズィーとだったら話せるんだよ。
 テレパシー的な何か…と言うよりは、物理的な接触によって、なんだろうな。
 信号とかの送受信なら、俺にも出来る筈なんだが…全然反応が無かったし。
 まぁ方法はともかくとして、俺には聞こえないやり方での会話がデフォルトなんだと思ってくれ。
 やろうと思えば、法力を使ったテレパシー的な送受信での会話も可能……だと最初は思ったんだが、そっちは何故かディズィーが出来なかった。
 本人がギアって自覚を持っても、その機能を殆ど知らないんだしなぁ…。
 俺と違って、体の中にスイッチがあるなんて考えも感じもしなかったらしいし。

 ネクロ達に頼んで、ディズィーに言っているのと同じ事を俺に向かって送信してもらう…という手も考えた。
 でも却下…と言うより結果的に実行不可能。
 本人達にしてみれば2度手間で、大した労力は必要ないにしても一々やっていては面倒な事に変わりは無い。
 何より、珍しい物を見てテンションが上がっている時とかは、俺に向かって送信するのを忘れてしまう。
 特にネクロが。
 
 ウンディーネは、何だかんだ言っても面倒臭そうにしながら一々俺にデータを送ってくれたりもしたのだが…その内容はディズィーに言った事と微妙に違う。
 具体的に言うと、送信される言葉の一つ一つにツンデレ要素が入っている。
 『ほ、本当は兄様には聞かせないんですからね!』とか、『女性同士の会話を聞かせろだなんて、兄様…そ、そんなに私達に興味があるので?』とか、『兄様…そろそろナデナデしてください』とか。
 これで俺がダメージ受けない訳が無いだろう!
 時々本当に血反吐を吐く……いや、鼻血だけどね……んだが、それをディズィーに隠す為に唐突に明後日の方向を向いたり、蹲ったりしている。
 それを見て、ディズィーが小首を傾げてるんだが…これまた俺がダメージを受けない訳が無いだろう!
 …俺はいつかウンディーネに、白昼堂々暗殺されるかもしれん、萌殺という方法で。 
 うん、本望だね!


 ま、まぁそんなこんなで、とにかく、俺はディズィー達の会話を部分的にしか聞き取れないのだ。
 可愛い妹分達にハブられているようで、これがまた悔しいの寂しいのって。
 ああ、そう言えば小学校の頃、自分だけ内緒話(しかも目の前で)の仲間外れ(しかも名指しで)にされて泣いたなぁ…。
 しかもその場で涙が止まらなくて、次の授業時間にポロポロと……あまつさえ、その時授業参観だったんだぜ?
 どんだけ悪夢だよ。
 思い返すと、あの時の先生には迷惑かけたんだなぁ…授業中にいきなり泣き出すとか、学級崩壊の前触れだと思われなかったか?
 そうでなくても先生の管理能力に疑いがもたれただろうし…今更ながらに申し訳なかった。
 虚空に向かって土下座します。
 忘れていたい思い出だったのに、ギア的記憶力のおかげで思いだしちゃったよ。

 それはそれとして、ディズィーも俺が話を聞こえてない事は気にしていて、ヒートアップしたネクロを落ち着かせようとしたり、激しくツンデレしすぎて暴走しているウンディーネを宥めようとする。
 ……ナデナデで。
 うん、勿論言葉は付いてるよ?

「じっとしててね…?」とか。

「きもちいー?」とか。

「優しくするから、大人しくしててね…」とか。

「あ、ここがいいんだね」とか。

「ふふ、気持良くなってきたんだ…」とか。


 …何でこっち方面の言葉しか出てこんの?
 ディズィーのょぅι゛ょなエンジェルスマイルが、お姉さま的なアダルトスマイルに思えてきた。
 しかも、ネクロ達の声…と言うか送られてくるデータは途切れ途切れで、一番多く送られてくるのが喘ぎ声なんだよ!
 喘ぎ声ってーか、こう…例えば熱い湯船に体があったまった時に出る、「はふぅ…」みたいな溜息と同じような感じで、ディズィーに撫でられて気持良くなった声。
 エロい声じゃない筈が、「う……ん…」とか「あ、そこ…」とか中途半端にしか聞こえない分、俺の脳ミソが勝手にエロい方面へ持っていってしまうんだよ!
 空腹は最高の調味料って言うけど、聞こえないって事は最高の材料だね…妄想の。
 

 ふふ…下品な話なんですが…勃起………しないんだよまだ、冗談抜きで男としての機能があるのかこの体?

 …いや待てよ、まさかとは思うんだが……未だに一時ネタであってほしいと願っている股間の浪漫砲。
 あれが男としての機能と密接に結びついているんじゃあるまいか。
 俺があれを忌避しているから、それに関連して勃起もしない……あの中華キャノンの封印が解かれた時に感じたエネルギーを鑑みると、案外ありそうな気がしてきた。

 海綿体に血液が集中するように、エネルギーが中華キャノンに集中する…と言うより、本来なら海綿体に行かなきゃいけない血液エネルギーその他が、まず中華キャノンに流れていってしまう。
 勃起させようと思ったら、中華キャノンを十二分に充填しないといけない、とか…うお、なんか本格的に説得力が出てきた!
 だってさ、中華キャノンはナニが勃起しなきゃ欠陥兵器だぜ?
 …いや、最初から欠点だらけだって意見は置いといてだな、とにかく中華キャノンを撃つ時には、ナニで狙いを付ける訳だ。
 照準も目分量でやらにゃならんのだろうなー…いや、もしかしたら専用の視点が用意されてるのか、スコープみたいな感じの視点が。
 だとしたら尚更最悪だ。
 だって、もしそうだったとしたら、その視界はチ○コの先端か根元辺りから見る事になるんだぞ?
 そんなトコに目があるなんて考えたら、欝で死にたくなるわ…あーでも、なんか憑依前に小説でそんなのあったなぁ…悪魔17だっけ。

 …うん、ここは一つ、いつかエッチぃ事をする時に色々と使えるかもしれないって事で自分を騙しておこう。
 …とにかく、ナニで照準を合わせる訳だが……その時、フニャチンで敵を狙うなんて出来るか?
 いや、硬くなって勃って、それで敵を狙えるかと言われるとそれはそれで難しいんだが………あと、誤字じゃないぞ。
 少なくとも、自分の手を添えて方向を調節しても、ちょっと力を入れるだけでクニャッとなってしまう状態より、多少角度が制限されても真っすぐになっている状態の方が狙いやすいのは事実だと思う。
 勃ってる状態で撃った方が、破壊力ありそうだしな…。
 ……あーとにかく、俺が何を懸念しているかっていうと…中華キャノンの発動順番は、こんな感じになってるんじゃないだろうかって事だ。

 ① 一撃必殺技準備・コマンド入力
 ② 右脇腹の浪漫回路フルドライブ(予備動作。ゲーム的に言えば、当て身判定はこのタイミング)
 ③ 中華キャノンに②のエネルギーが全て注ぎ込まれ、フル充填される(ゲーム的に言えば、カットインの演出あり。無論股間の)
 ④ 照準・トリガーのロック解除(つまり勃起の準備よし)
 ⑤ 中華キャノン充填で余ったエネルギーが注ぎ込まれ、ここでようやく勃起(ここはカットイン無し。入れたら何か誤魔化しを入れておかないと規定に引っかかる)
 ⑥ 硬くなったナニで照準合わせ
 ⑦ ぶっかけ…もといファイア!

 …あまつさえ、③の動作をしないと勃起準備ができない、と。
 …なんか本気で有り得そうな気がしてきた。
 元から浪漫砲なんて代物を搭載しているボディだ、どんなアホな能力があっても不自然ではない。
 …訂正、不思議はないけど不自然だらけだ、あらゆる意味で。


 ……………こ、怖い事考えてないで、ネクロとウンディーネ自慢の続きだ続き!
 あー、俺からは二人が何を言っているのか理解できないけど、気持よさそうっていのは分かる。
 ディズィーも自分の羽でもあるんだし、感覚繋がってるから本人も気持ちいいんだろうね。
 うーん、そう言えば公式の設定資料でディズィーの趣味が羽(?)の毛繕いだってあったが…こういう切欠で趣味になったのかもしれない。
 それにしても、ディズィーってばナデナデ上手だね。
 ディズィーは専ら撫でられる方で、俺やお爺さん達を撫でる経験は少ないんだけど…やっぱり日々撫でられてたから、ある程度コツが分かるんだろうか?
 角度よーし。
 速度よーし。
 力加減、ちょっと弱いかな?
 それと、時々撫でるペースが乱れるのは……ああそうか、ディズィーと感覚繋がってるから、自分で撫でて自分でも気持よくなってるんだ。
 …それってオナ……煩悩退散!煩悩退散!妄想、色欲、困った時はローマン!オーマン!ローマン!オーマン!発散しましょう(pi-----)、れっつごー!
 ……要らん電波受信した、何だよオーマンて。
 ローマンは浪漫だとして、オーマンは………色欲に、だから…後ろにコが付くと………駄目だ…俺は本格的に駄目だ…。
 と言うか某洗脳ソングが何でこの時代に電波になってんだよ、呪いになって残ってるのか?
 陰陽師だけに。


 と、とにかく、見てるだけでも気持ち良くなってくる、ネクロとウンディーネ。
 にしても、ウンディーネはディズィーにはツンが無いな、俺にだけだ。
 別に寂しくなんかないぞ、ウンディーネのツンデレを堪能できるのは俺だけだからね!
 そう思ってれば本当に可愛いモンよ。
 まぁ、ツンデレと言うにはツンが少ないが、多くなってもらっても俺が困る。

 撫でられているネクロ達を見ていると、時折ウンディーネ(羽型)がピクッピクッと動くんだよ。
 しかも、なんか俺の方に。
 何ぞ?と思ってたけど、すぐに思い当たった。
 あの動き方はアレだ、まだ人型になれなかった頃、ディズィーだけをナデナデしてた時の動きと同じだ。
 俺にも撫でてほしいって催促してんのか。
 でも何も送信してこないな…うん、焦らしてやれ。

 時間が経つ毎に、ウンディーネの揺れ方が激しくなる。
 ディズィーは戸惑っているみたいだ。
 元々落ち着かせる為に撫で始めたのが、一度は落ち着いてすぐに逆効果になっちゃったからなぁ。
 そりゃ戸惑うわ。
 でももうちょっと見物。


『兄も撫でてくれないか?』


 なんて思っていたら、ネクロからダイレクトに催促が来たよ。
 流石素直クール、照れもなけりゃ躊躇いも無い、ただ可愛さがストレートに飛んでくる。
 ふっ、しかしディズィーに撫でられながら俺にも撫でられたいとは…欲張りさんめ。
 これはアレだ、セクロスで言うサンドイッチだね?
 …一応言っておくが、セクロスっちゅーのはセパタクローとラクロス…ではなく世界食物浪漫素…世食浪素の事で、サンドイッチとは「あちらも欲しいこちらも欲しい、だったら二つとも挟んで食べちゃえばいいじゃない」という思想の元に生まれた、複数の要素を同時に扱う技術の通称である。
 別に特に意味がある事じゃないけど、そういう事にしとけよ、な?

 この期に及んで、ウンディーネはまだ言い出せない。
 羽は激しく揺れるけど、ディズィーが撫でにくくなっていると苦情を言うと鎮静化した…けどまだ時々プルプル震えている。
 …ちょっと可愛そうになってきた気がする………ニュアンスを間違えるなよ、可哀想ではなく可愛そうだ。
 まぁ、いつだってウチの妹達は可愛いんだが。
 しかも、おおおおおおおお持ち帰りぃぃぃぃぃぃ~~~~してもいいんだぜ?
 信じられるか!?
 …まぁ、住んでる家が一緒だから、お持ち帰りしなかったらそれはそれで問題なんだけどね。

 ネクロを撫でてやると、ディズィーも気持良さそうに目を閉じる。
 感覚が繋がってるってイイね。
 ただ、ネクロとディズィーの感覚は繋がってても、ネクロとウンディーネ間での感覚は繋がってない。
 故に、「私も撫でて、お兄チャマ♪」と言いだせないウンディーネとしては蚊帳の外で居るしかない訳だ。
 …しかし、ちょっと焦らし過ぎたかなこりゃ…。
 ディズィーのナデナデも、撫でられるのに気を取られてちょっとずつ疎かになってきてるし。
 うーん、この辺にしとこうか。
 泣かれでもしたら、罪悪感とゲンコツと飯抜きのコンボで俺が死ぬる。
 俺が死んだらディズィーが悲しむ⇒悪魔の森に住むようになってからも当分一人っきり⇒そこで優しくしてくれたテスタメントとかカイとかジョニーに懐く⇒誰だ俺の妹に手を出す輩は!、の前に多分ネクロとウンディーネが反発する⇒ディズィー達が不仲になる⇒いくえ不明となるのは確定的に明らか。
 それだきゃー死んでも阻止すっからな! 
 …いや死んだら阻止できなくなるんだよ、今の無し。

 黙ってウンディーネの方に手を伸ばしてやると、なんかビクンとなって、すぐに大人しくなった。
 ………おい、なんか泣いて…はいないけど、半べそになってないか?
 人型じゃないから涙流れてないけど、カタカタ震えてるんですけど。
 ぐっ、罪悪感……これはコンボに入りかけているのか!?
 萌殺じゃなくて、こっち方面から俺を暗殺に来たのか!?
 しかしどうせ死ぬなら萌殺によって俺は死ぬ。
 だからウンディーネをもっと撫でるのさ!
 そうすりゃ嬉しくなったウンディーネの笑顔で萌えられるからネ!


 ひしっ


 …今何か妙なリアクション入った?
 ていうか、ウンディーネに伸ばした手が動かないんですけど。

 目をやってみると………なんじゃコリャ?


「…なぁディズィー、羽から手が生えてるんだけど」

「……ふぁー……」

「…ネクロ?」

「……うむ…俺も……できるぞ…」


 …揃って惚けてやがる……早く何とか…しねーよ。
 このままでおkだよ。
 
…いやそうじゃなくて、これウンディーネの手だよな?
 羽の部分から、手だけ人型になってるのか。
 器用な真似するな…ネクロもできるのか。

 いや、よく考えたら二人とも体の一部だけを変型させられるんだから、これくらい出来ても不思議は無いのか。
 と言うかナデナデなんかできないくらいに思いっきり掴まれてんですが。
 しかも微妙に震えてるし。
 ちょっと送信してみたら……何か嗚咽混じりで返事が返ってきた。
 …自分だけ俺に撫でてもらえないのが、寂しくて悔しかったらしい。

 マジごめんなさいウンディーネで遊びすぎました。
 こんなに涙腺が弱いとは……ツンデレにしたって流石に予想外でした。
 …言い訳ですね、もうやりませんごめんなさい <(_ _)>


『あ、あに、あに、あにさまの、……ばかっ、ばかっ…!』

『いやもうホントごめんなさい私が悪うございました今度夢の中で気が済むまでナデナデしまくりますのでどうか機嫌を直してくださいお願いします』


 …どうしよう。
 中々泣きやまない。
 ぬぅ、この状態で手を離せなんて言えね~よ。

 ……ああ、それと今更何だが、ウンディーネが俺を呼ぶ『兄様』は、『にいさま』ではなく『あにさま』だからな。
 重要なポイントだ。
 まぁ、俺的にはセーフだったと言える。
 もしも『「ほ」にいさま』、なんて舌っ足らずな口調で言われていた日にゃー俺はもうっ、俺はもう…いや、『もう』では足りん、俺は既に、既に、当の昔にっ……!
 どう読むかは個人の自由と言えば自由なんだが、俺的に譲れない点なので今更ながらに明記しておく。
 とゆーか、読むも何も俺の思考ログを他人に見せるとか普通に羞恥プレイですけどね!
 …あれ、今まさにその羞恥プレイしてるような気がしてきたんだが…何でだ?

 結局、その後は延々とウンディーネを宥め続けた。
 その間も、空いている方の手はネクロとディズィーを交互に撫で続けてたんだから、俺のナデナデレベルもかなりの所に達しているなぁ。


 結局、何とか宥めて帰ってからも、人型になったウンディーネの顔にベソの跡があって、お婆さんから何があったのか白状させられた挙句、ゲンコと晩御飯抜きの刑を食らいました。
 …ウンディーネ達が後からこっそり差し入れしてくれなかったら、罪悪感とタンコブと空腹のコンボで三途リバー逝きあの世へハローしてたトコロだったよ。

 可愛いだけじゃなくて優しくもあるなぁ、あんな風に泣かせた俺を心配してくれるんだから。
 …ああでも、その後ディズィーにもネクロにも叱られたな。
 仲間外れは良くない、自分がされて嫌な事は人にやっちゃいけません。
 ……体は10歳児、中身は2歳にもなっていない子供に説教される俺(体は10歳児、中身は憑依前を加えて20代後半)…ほんっと、俺ってダメダメですね!
 でも反省はするが後悔はしない!
 これが俺の生きる道だ。


 さて、まだまだ自慢し足りないんだが、今回はこれくらいにしておこう。
 次からはディズィー自慢だけじゃなくて、妹自慢と言った方がいいかもしれんなー、一人だけを自慢するって事ができそうにない。
 うん、次からは3人の絡みを自慢する形にしよう。

 じゃ、そういう事で、今回はバイビー…………年代がバレるかな…。







初投稿時、PV67380。



[17288] 11
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/17 17:04
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 今日も今日とて、日々成長してくマイボディ。
 現在11~12歳ってトコですな。
 小学校卒業の時期は近い。
 同時に村に居られなくなりそうな時期も近い。
 村の皆からの視線が、胡散臭い物を見る目になってきているっていうのもあるけど…それ以上に、ヤバい連中がこの村…と言うより、あの森の消失事件に目を付けたみたいだ。

 所謂賞金稼ぎとか、そうでなくても揉め事で飯食ってるような連中だな。
 森消失のような事件が起きれば、何故かそこに野盗の類が集まってくるらしい。
 『あの事件は俺達がやった!』と犯行声明を出して、ハッタリ効かせる事が多いんだとかなんとか…。
 で、それを本気にしたかどうかはともかくとして、盗賊の類である事は確かなんだから、賞金稼ぎがそれを狙ってくる、と。
 わざわざこんな僻地に来んでも…とは思ったものの、インターネットでちょいと調べて見ると僻地だろうが未開の土地だろうが都会のド真ん中だろうが、金になりそうな事があったら大陸横断してでも集まってくるような連中が多いらしい。
 流石はこの世界、無暗矢鱈とバイタリティに溢れている。
 と言うか、大陸横断できるだけの金があるんだったら、大人しくそれで定住して職についてりゃいいだろうに。
 いや、盗賊に比べりゃ賞金稼ぎの方がまだマシだから、退治に来てくれるのはありがたいんですけどね。
 その結果、村の治安が低下するのはなぁ…。
 村も危ないが、俺達も危ない。
 特にディズィーが。

 可愛いから。
 可愛いから。
 可愛いからッ!

 大事な事だから3回言ったぞ。
 そろそろ本格的に二次性徴を迎える時期でもある訳だし、青い果実というその趣味の人には堪らないカテゴリーに片足を突っ込んでいる。
 そういう趣味の人たちが、全て変態と言う名の紳士であるとは思えない。
 特に賞金稼ぎだの盗賊だのは。

 …でもなー、本当に命が危ないのって、そうやってちょっかいかけてくる連中の方なんだよね。
 ディズィーに余計なちょっかい出す亀のフンどもがお陀仏したって俺は何とも思わないけど、ディズィーは違うだろう。
 あの子はやっぱり、人を傷つけたり暴れたりするのは好きじゃないらしい。
 その分ネクロが好戦的な節はあるんだけどね。
 あれでウンディーネも、一度闘うとなったら容赦しない所があるし…『もしそうなったら、急所を一撃して気絶させます』と言っていたのを聞いた事がある。
 …その時、自分に足が無いのを残念がっていたんだが………急所+足……で、標的は大抵男…と来りゃ………なぁ?
 妙な趣味に目覚めない事を祈る。
 俺のを蹴らせてくれ、なんて言われたら、本気で世を儚んで三途リバーで行水してくるぞ。
 …確か三途リバーの水って、飲んだら生前の記憶が無くなるんだっけ?
 いやそれはエジプトかどっかの忘却の川だっけか。
 三途リバーのは…そうだ、川に沈んだら浮かんで来れないって方か。

 あーとにかく、ディズィーに手を出そうとした奴は、ネクロとウンディーネの方から盛大に徹底抗戦を受ける事になる訳だ。
 それはそれで構わないんだが…その結果がな…。
 まず間違いなく、二人の事が村の皆に露見する…そうなったら、流石に言い逃れは不可能だ。
 うーむ……あまりこの村に拘って迫害されるのもイヤだし、時期を見計らって自分から出て行った方がいいかな…。
 でも、お爺さん達とも一緒に居たいし……悩みどころだ。



 さて、話は変わるが近況報告。
 さっきまでも近況報告だったような気がするが、あれは情勢を語るって事で日常の近況報告じゃないね。
 特に突っ込まれるような話でも無いけど。
 えーとね、まずファウスト先生が常連と化しました。
 最初は警戒気味だった村の人達やネクロとウンディーネも、今では見かけたらオイッスで挨拶する仲です。
 それに村にはちゃんとした医者がいなかったから、定期的にかよってくれるのはリアルにありがたいそうな。
 …もはや、彼の怪しい…妖しい………妖しく怪しいと書いて妖怪な挙動にツッコミ入れるのは、俺以外に誰も居ない。
 慣れって怖いな…。
 俺もいい加減、内心でツッコミ入れるのに疲れてきたし。
 ファウスト先生本人は、ツッコミがなくてちょっと寂しそうだった。
 あの挙動はウケ狙いでもあったんだろーか…。

 そういや、ファウスト先生って空間系の法力使えるんだよな。
 俺の機能…ほら、旗艦型のギアで、他のギアを俺が創った空間に入れて移動できるっていう…もまだ使えてないし、ご教授願えないかな。
 でも何の為に習うって言えばいいのやら。
 闘いの為…でもあるし、生き残る為でもあるし…真摯に頼めば、あの人なら教えてくれると思うんだが。


 んで、そのファウスト先生が来るようになった事で、俺はちょっと一念発起した。
 別に大した事じゃない。
 村の皆の手伝いと言うか、溶け込む努力をしてみよう、と思ったんだ。
 今までだって、別に溝があった訳じゃないんだが、そうじゃなくて……うん、今からでもギアの安全さをアッピルしたり、俺達は村に有益だ、と示しておこうと思った。
 そうすりゃ、迫害を受けるにしてもある程度は俺達の居場所も確保できるし、何よりお爺さん達の立場も悪くはならないと思うんだ。
 まぁ、人生経験30年にも及ばないガキの浅知恵って言われリャそれまでだがね。

 そうそう、俺が村の人達の手伝いをしてる時、ディズィーはお婆さんに料理を習ってるみたいだ。
 俺が毒見…じゃなかった、味見役に任命されている。
 しかし、何で突然?
 まぁ、前から夕飯の手伝いをする事はあったし、そろそろ包丁を持たせてもいい頃じゃないか、って話は出てたんだが。
 あまつさえ、ネクロとウンディーネも興味津々で包丁の扱いを学ぶ始末。
 『料理』を、ではなくて『包丁の扱い』を、なのがポイントだ。
 ネクロなんか意外と器用で、大根のカツラ剥きが神懸かり的に上手いとかなんとか。
 …台所のマナ板の上に、大量のティッシュが置いてあると思ったら…それがネクロがやったカツラ剥きだった。

 ウンディーネは…ありゃ何だろな、包丁の扱いは上手くもなく下手でもないんだが……凍らせるんだよ。
 法力的な何かで。
 保存に使えるな…うん、これはイイね。
 悪魔の森に住むようになったら冷蔵庫なんて無いだろうし、食料の保存に多大な効果を発揮するだろう。
 あと、切り刻むのがやたら得意だ。
 ネクロのように、異様に正確な包丁さばきこそ持ってないものの、野菜も肉もやたらとスパスパ切ってくれる…と言うか斬ってくれる。
 一度、大根を真っ二つにさせて、それをくっ付けたら元に戻った時は本気で驚いた…お前はどこの抜刀斉だ。
 と言うか、あの包丁は手入れがいいだけで市販品なんだが…戻し斬りって、使い手の腕と刃物の切れ味が一級品じゃないと出来ないって聞いたぞ。
 うーん、ウンディーネが使う法力っぽいのって、ゲームじゃどっちかと言うと電撃っぽかったような…まぁゲーム=ここの現実じゃないし、考えなくてもいいか。

 さて、肝心のディズィーだが…見ていて危なっかしい。
 いや、これは単に俺の贔屓目と言うか心配し過ぎなんだけどね。
 お婆さんに言わせると、初心者にしては上出来、との事だ。
 逆に言えば、まだまだその程度でしかないって事でもあるんだが。
 創った料理は、必ず俺に一番最初に食べさせてくれる。
 しかもその時にね。

「ナッシュの為に作ったの!」

 だぜ!?
 今までバレンタインのチョコレートも貰った事もない俺に、このセリフはキツすぎた…耳血出るかと思ったぜ。
 まぁ、時々失敗して、エライ物が食卓に出てくる事もあるが…そういう時は、お爺さんお婆さんディズィーには食べさせずに、俺とネクロとウンディーネで全て食い尽す。
 勿体ないしね。
 「勿体ない」は世界的に有名になった言葉なんだよ?
 日本人の魂だね。

 …日本人と言えば、この世界の日本人ってどうなってんだろーな。
 良く分からんけど、他の民族には無い特別なポテンシャルがあるっぽい事を、チラホラ聞いてたような…。
 まぁ、確かにメイとか、あの小柄であんだけデカい得物を振り回してるし、そうでなくても他の連中もイカレたやつばっかり。
 梅喧、闇慈、それにチップの師匠だったツヨシに至っちゃあの世から様子を見に来る始末。
 基準にしてる奴らに問題がありすぎるけど、やっぱ憑依前の日本からして世界的に見て色々とイカレた技術力を持ってたしな。
 あんまり政治とか技術とかに関心が無かった俺だけど、やろうと思えば国内だけで核兵器(しかも多分新型)を1ヶ月で創れるだの、何年か前に打ち上げた探査機「はやぶさ」なんてトラブルが連続しながらも「こんなこともあろうかと!」の連続で結局帰還できそうだったし。
 他にも友人から聞いた、戦争時代の「マジかよ!?」な話が色々。
 世界各国…特にご近所さんの中国やら韓国やらからは、「頼むから大人しくデジカメ作っててくれ」とまで言われる始末だとか。
 実際、第二次世界大戦の頃のアメリカとかも、「コイツら放っておくと何やらかすか分からん」みたいに心底警戒していたそうな。
 一例として、「風船爆弾」なるモノが挙げられる。
 名の通り、風船…というか気球に爆弾引っ付けて飛ばすんだが、これが日本で飛ばした奴がアメリカ本土まで届いて、飛ばした9300発の内360発くらいが本当に着弾しやがった、とか。
 聞いた時には冗談だと思ったもんだが、本当に資料があるって言い張ってたし、実際Wikiにも乗ってたし…アメリカの方にも記録があるって話だったしなぁ。
 最初は誇張表現だと思ってたし、仮にその風船爆弾が10倍の効果を上げてたって日本は物量で押し潰されてたと思うが、確かに世界的に見ても日本の技術力と言うか発想とか執着心は異常だよな…。
 実際、あんなちっぽけな島国が、おフランス辺りの無敵艦を、どうやってかブチのめしてしまったって話もあった。
 世界大戦で、大国相手に日本がある程度の勝ち星をあげていた事は小学校で習ったし、この辺は事実だと思う。
 ある意味チートといっていいレベルだ…いや、そこまでの技術を確立した技術者さん達にしてみれば、チート…ズルだって言われるのは心外なんだろうけどさ。

 …ん、待てよ?
 ひょっとしたら…ちっぽけな島国だから、か?
 ちっぽけな、というのがポイント。
 それも、国の土地が無いと言う意味ではなく、海で隔てられた孤島という意味で、だ。
 日本に伝わる呪術の一つに、蟲毒という手法がある。
 細かい事は抜きにして言うと…と言うか細かい事知らないんだが…一つの壺に、中を一杯にする程の毒虫を満たし、蓋をして放置する。
 中に居る虫は、他に餌が無いから違いを喰らい合い、死に、その躯を喰らい、そして数を減らし…その身に宿る毒を強くしていく。
 その結果、生き残った虫の毒は強力無比な物となる。
 己自身が持つ毒と、喰い尽され恨み呪って逝った虫達の怨嗟を一身に受け、どうしようもない程に強力な毒が出来上がる。 
 それと同じ事が、日本人に起きたのではないだろうか?
 狭い日本という国土の中、毒が…毒ではない何かが、凝縮され受け継がれ、そして昇華される。
 そうやって、日本という閉ざされやすい島国の中で、『何か』が出来上がって行ったんじゃないだろうか。
 例えば、これは2次元の話だが…幻想郷のような、規格外品が集う途方も無い閉ざされた土地が出来上がるように。

 とにかく、憑依前の世界でさえ、そんな感じだったんだ。
 …生物学的ポテンシャルがアホみたいに高い、こっちの世界のジャパニーズって、一体どんな生物だったんだ?
 事によっちゃギアより恐ろしいぜ。
 ………待て、まさかとは思うが、ジャスティスとかギアの作成に、日本の技術力が一枚噛んでたなんて話は無いよな?
 それでジャスティスことおかーさんが恨みに思って日本を最初に消し飛ばしたとか、或いは「コイツら放っておくとギアを無力化させる兵器くらい作ってきそうだ」なんて思われたとか…?
 ………………あ、ありそうな気がする…。

 ………ん、待てよ?
 世界が違うとはいえ、俺もジャパニーズなのは事実。
 てー事は、ひょっとして俺にもそんなバイタリティが…?
 いやいや、流石にそれは安直じゃないかい?
 俺は何処にでもいる一般人だったんだよ?
 …でも、先の例に上げた人たちだって、最初は単なる一般人だったんだしな……『あの』ソル・バッドガイだって、法力理論を学び始める前は多分一般人と言えたんだろう…図抜けて頭は良かったにしても。

 大体、同じジャパニーズっつっても、俺はこの世界のジャパニーズじゃない。
 仮に秘めたるポテンシャルがあるとしても、この世界の人間程じゃない…………よな?
 うーん、しかしジャパニーズはやっぱりジャパニーズ…憑依前の世界の人達が異常だっていうのは、あくまで技術力の方。
 つまりは、オツムとその精神的なあり方…タフさの問題だ。
 だったら、俺にだってそういう素質…あくまで『素質』…があってもおかしくない。

 俄かに自分では信じられない話だし、信じたら信じたである意味痛い内容だけど、これは頭の中に留めておいた方がいいかもしれないな。
 自分の秘められたポテンシャルを信じているのといないのとでは、何をやるにしたって結果は大違いになってくるだろう。
 …ところで、これってもし信じても厨二病には分類されないよな?
 特別な力が秘められているって言っても、チート系と言うか『強い能力』みたいな力じゃなくて、『誰もが使っている能力を徹底的に高められるかもしれない』って方面の力だから。
 なんつーか……真っ当な力っていうのかね、努力の末に得られるかもしれない能力。

 そもそもからして、俺は『才能』という言葉をあんまりアテにしない人間だ。
 これだけポテンシャルについて長々と考察しておいて何だが、例えば野球の才能と言ったところで、ピッチャーの、バッターの、どの分野の事を指すのか。
 ピッチャーだったとして、ストレートに適性があるのか、それともカーブか、フォークか、或いは勝負勘か…そのどれかの才能があったとして、それはどれ程の才能なのか。
 才能だけで考えても、上には上が幾らでもいる。
 初期段階が順調で天才だと持て囃されていても、途中で行き詰ってしまえば、そこから先の段階へ進むのに必要なのは努力。
 だから…なんつーか、『それが上手』『習得が早い』というのは、俺から見るとあくまで『適性』にすぎず、『才能』というのは……『執着』だと思っている。
 上手くできなくても、サッパリ分からなくても、延々ともがいて、対象にどれだけ食い付けるか、諦めてもまた手を伸ばさずにはいられないだけの想い…『執着』を持てるかが、本当の『才能』だと思っている。
 んで、『適性』に『執着』によって得たモノを上乗せした力量を実力と呼ぶ、と。
 ……………何で語ってるんだよ、俺。


 あーくそ、余計な事語ったよ、自分語り痛いよ。
 と言うか、大した努力も夢も目標もなく、ただ生きていただけの俺が才能だの努力だの執念だの、そんな御大層なモノを語れる人間かっつーの。
 これドラマ漫画小説を読んでる時にツラツラと思いついた適当な言葉なんだよ。

 もういいよ、このまま余計な事考えてると、もっと余計な事を語る羽目になりそうだ。
 そんな時こそディズィー自慢改め妹自慢!
 貴方の沈んだ心を沸き立たせ、地に落ちた想いを浮足立たせ、ドラッグなんかメじゃないくらいのヘブン状態まで連れて行ってくれます!
 ……よく考えたら、俺ってディズィー達に執着してるし……俺の考え方に分類すると、これって才能?
 ディズィー達の才能!
 イイね、うえきの法則の、○○の才に登場したら絶対無敵の才能になるぜ!
 でもその才能を当てにして、チートだと思って浮かれてると地獄行きだぜ!

 今日の妹自慢は、寝起きのディズィー達だ!
 ディズィーは意外と低血圧で、朝に弱い。
 目を覚ましても、そのままじっとしていたり、布団に潜り込もうとする…と言うか、俺を抱き枕にしたまま動かない事が多い。
 俺の方はと言うと、実は大抵ディズィーよりも先に目を覚ましているんだけど、ディズィーを振り払う事なんか出来る筈もなく、大抵抱き枕にされたままじっとしている。
 例外はトイレに行きたい時くらいだ。
 と言うか、一晩中抱き枕にされてるから、実を言うと手足が痺れて動くに動けないんだよね。
 ちょっと前までは、痺れる程の力で抱きつかれるような事はなかったんだけど……以前の家で騒ぎの頃から、寝る時に最初から俺に抱きつくようになっていた。
 …トイレに行きたい時に手足が痺れてると、そりゃーもう凄い地獄になるけどね。
 何とかディズィーを振り解いて、えっちらおっちら感覚の無い足で歩いて、その内に段々感覚が戻ってくるんだけどその時はこう…ちょっとツンツンしただけでもビリビリビリってくるあの状態になってんのよ。
 一歩歩く度に足がスタンガンくらったみたいになって、その度に膀胱が緩みかけるし、だからって止まってたらそれはそれで膀胱が破裂しそうになるし…。
 これはつまりアレだな、ディズィーに抱きつかれるという天国みたいな状況を一晩堪能していたから、その対価って事だな。
 うんうん、等価交換の法則とはよく言ったものだ…俺にとってはメリットの方がずっとデカいけどね!
 ディズィーのハグだぞ、漏れそうなくらいがなんやねん。


 それとは対照的に、ネクロやウンディーネは朝に強い。
 と言っても、スッキリした状態で目が覚めるってだけで、朝が早い訳じゃない。
 ディズィーが目を覚ますまで、大抵二人は眠っている。
 まぁ、この二人の場合早起きしたからってどうなる訳でもないんだが…精々朝飯くらいだね。
 相変わらず、外では人型になれないしな…。


 さて、朝に目を覚ましたら、まずする事は決まっている。
 朝一番のナデナデだ!
 …いや、冗談だけどね。
 別にやってもいいんだけどね。
 ボーッとしてるディズィーを撫でると、そのまま眠っちゃうのよ。
 だからまずは洗面所に連れて行って顔を洗わせる。
 この時、フラフラしてるディズィーを手を引いて連れて行くんだけど…頭は寝ぼけているのに俺の手をギュッと握るのだけは忘れない、このいじらしさ。
 これだけ懐かれるとは、兄冥利に尽きるね!

 さて、ここで一つ萌えポイントがあったりする。
 日によってマチマチなんだけどね。
 今日は残念ながら、外れの日のようだ。
 一体何があるのかってーとだな。

 ディズィーが寝惚けて、俺を「兄さん」と呼んでくれるんだよ!
 いやぁ、初めて呼ばれた時はその場でトリップした挙句、ネクロにパンチ入れられるまで戻ってこなかったなぁ。
 ディズィーと兄妹になって一年以上経ったけど、それまで兄さんだなんて呼んで暮れなかったし。
 別に催促もしてなかったからな、ナッシュと呼ばれるだけでも充分だったし。
 それが寝惚けた時だけとはいえ、自分から兄と呼んでくれるんだぜ?
 っとと、いかんいかん、トリップしたらまたネクロに張っ倒される。
 ちなみにネクロは、「俺達が兄と呼んでもそんな反応はしないのが癪にさわった」と悪びれずに堂々と言ってくれた。
 もう、ヤキモチ妬きさんめ。



 洗面所に向かう時、手を引いてるだけじゃバランスを崩して倒れそうになる事があるんだけど、そういう時はネクロとウンディーネがちゃんと支えてくれる。
 朝っぱらからお疲れさんと言ってやりたい。
 …余談だが、ディズィーが俺の方に向かって倒れ込む時には、ウンディーネが物凄い勢いで支えている。
 …これはアレか、ひょっとしてヤキモチの類か?
 でも普段のナデナデとかハグには無反応だしな…自分もやってくれ、と顔色で語る事はあるが。

 洗面所まで到着し、4人順番に顔を洗ったら、次は身だしなみ。
 俺は軽く髪型を整えて、後は角を隠す為のヘアバンドを付けるだけ。
 なんだけど、それを何故かディズィーがやりたがる。
 櫛を持って、俺の頭をナデナデするように髪型を整えて…そしてネクタイを付ける、じゃなかったヘアバンドを被せてくれる。
 新婚さんみたいだね!
 ネクロやウンディーネもやりたがる事はあるんだけど、何か知らんがディズィーとが異様な程に譲らないので、まだやってもらった事はない。

 それが終わったら、今度は俺がディズィーの身だしなみを整える。
 こっちは女の子だからなぁ、正直慎重にならざるを得ないよ。
 つっても、元が粗忽者の俺だし…最初は上手に髪のセットなんかできなかった。
 何度お婆さんやウンディーネに駄目出し食らった事か…。
 ディズィーはそれでもいいって言ってくれるんだけど、お婆さん達に言わせるとダメダメらしい。
 指示に従って髪をセットする訳だが、正直な話、俺が自分でやるのとどう違っているのか分かりません。
 それでも仕上がりを見ると確かにイメージが違うと言うか、細かい所が修正されている。
 …何か理不尽な気がすると共に、女って大変だなぁと心底思った。

 髪型のセットが終わったら、今度はリボンを結ぶ。
 家出した夜にプレゼントした、あの黄色いリボンだ。
 まぁ、流石に毎日毎日同じリボンを付けてるんじゃなくて、リボンを洗う日にはお婆さん達から送られた色違いのリボンを付けている。
 ちなみに色はクリーム色だ…微妙に黄色とは違う。
 髪型には細かい事を言わないディズィーも、こっちは何やら拘りがあるようで、色々と注文を付けられる。
 ちょっとズレてるとか、形が崩れてるとか…まだ寝惚けた状態なのに、妙に正確な指示を出しおる。
 まぁ、俺に結ぶだけ結んでもらって、細かい調整は自分でやってるから俺は楽なんだけどね。
 『ナッシュに結んでもらいたいの!』って言われた時には、『これ何かのプロポーズ?』なんて本気で思った。
 思いはしたけど、本気にはしてないからね。
 リアルと妄想の区別くらいつくよ。
 それができなきゃ、ロリコン・シスコンを名乗る資格なんかないって。


 さて、ディズィーのセットが終わったら、次はウンディーネだ。
 髪のセットにヒジョーにうるさい。
 妙なところで女の子してるなー。
 と言うか、ウンディーネもネクロも本当は髪のセットなんか必要ないんだよ。
 そもそもからして形を自分で変えられるし、形を整えたって結局羽型になっちゃうしな。
 それでもやって欲しいっていうんだから、兄としちゃ断れないだろう愛情表現的に考えて。

 それと、ウンディーネは少々嫉妬深い傾向があるようだ。
 ツンデレの典型というべきなのか、自分には無い物、と言ってもディズィーのリボンにチラチラ視線を向けている。
 代わりって訳じゃないんだが、そのうちプレゼントとかした方がいいかもしれんなー。
 今回はディズィーの分しか用意できなかったから仕方ないけど、不公平っちゃ不公平だし。
 うーん、でもなぁ。
 普段羽型になっているあの二人に、何をプレゼントすりゃいいんだか。
 同じようにリボンを送ったとして、何処につけられる?
 頭につけたとしたら、羽型になった時どーなるんだ?
 別にリボンに限った事じゃ無いが、俺がプレゼントできるのはギア的な何かじゃ無くて普通のアクセサリだ。
 FF的な、防御力アップとか回避率が上がるような効果は無いし、使用者のボディに合わせてサイズを変えるような素敵機能だってない。
 或いは、法力でどーにかできるんだろーか?

 ま、プレゼントに関しちゃ後々考えるとして、今は髪のセットの話だ。
 ウンディーネの細かい注文に悪戦苦闘しながらも、俺は何とかウンディーネが満足する形に仕上げることができた。
 その時のウンディーネ曰く、


「まぁまぁですね、兄様。
 今後ももっと精進なさいませ」


 だそうだ。
 タカビーな台詞に聞こえるが、鏡を見ながらやけに嬉しそうに言うからデレた台詞にしか聞こえないぜ。
 実際、その後は極力セットを崩さないように動くしな。


 それに対して、ネクロのセットは非常に簡単だ。
 と言うか、髪の毛無いし。
 精々、被ってるフードのブカブカ具合の調整程度。
 これまた大した拘りがある訳でもなく、むしろウンディーネ達がセットに時間をかけるのを見て呆れているくらいである。
 この辺の感性は、やっぱり男の子よりなのかねー。

『兄に余計な手間をかけるのは本意ではないしな』

 本当に君はいい子だよ、ネクロ。
 ただ。

『それは私やディズィーが兄様に余計な手間をかけていると言いたいのですか、ネクロ』

 何故かウンディーネが喧嘩腰になっちゃうんだけどね!
 頼むから落ち着いてくれ二人ともッ!
 なーんて慌ててたのも今は昔。
 もうこれは二人のスキンシップなんだと割り切っている。
 だって毎朝似たようなネタで何度も何度もリピートするんだぜ?
 一々気にしてたら飯に行けないよ。
 それに、ここで暴れたら俺達にも被害が大きいって理解してるしな。
 家族には本当に優しいんだよ、こいつら。
 みんな自慢の妹だね!

 この頃になるとディズィーも目付きがはっきりしてくる。
 んで、ちょうど朝ご飯ができあがる頃合いなんで、ケンカしている二人を宥めながらダイニングへ行くって寸法だ。


「おはよ、お爺さんお婆さん」

「おはようございまーす!
 のら、ネクロとウンディーネも」

『む。 おはよう、爺、婆』

『お見苦しいところをお見せしました。
 おはようございます、お婆様、お爺様』

「ああ、おはよう。
 今日もみんな可愛いねぇ」

「おはよう。
 元気で何よりですよ。
 ほら、早く食べないとパンが冷めますよ」

「はーい。
 いただきまーす」

「「『『いただきます』』」」


 さて、ご飯ご飯。
 食べることに集中するんで、今回の妹自慢はここまでだよ!







アトガキ
そろそろ、某掲示板の別作エピローグで予告していた作品の1話が書きあがりそうです。
UPするならまず自分のHPで、それから何話かストック作ってから某掲示板に…かな。
初投稿ちょっと後、PV75059くらい。



[17288] 12 …外伝? 
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/23 23:18
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 唐突に何だけど、今回の思考ログは異色のログになるかもしれない。
 なんたって、

 妹 自 慢 が 無 い ん だ か ら な !

 信じられるか?
 この俺が、ディズィーやネクロやウンディーネの事をべらべら自慢しないんだぜ?
 だから外伝扱いだ!

 …あくまで予定だけどね。
 なんだよ、その「やっぱりね」とか「無理無理」って目は。
 俺だってたまには煩悩抜きで真剣に考える事ぁあるよ。
 何せ考えるべき事は山ほどあるんだ。
 ディズィー達の為にも、俺自身の為にもね。

 今回の議題は3つ。

 ① やってくるギルギアキャラ達にどう対応するか。
 ② 俺が元々居た世界への帰還方法。
 ③ ディズィーが家出した時に、ファウスト先生がおっしゃって居た事の意味。

 他にも山ほどあるんだが、全部一気に考えようとすると頭が保たん。

 さて、議題は三つ、となるとやっぱり議員も3人がいいだろうか。
 あんまり多いと誰が喋ってるのか分からなく、もといねじれ国会みたいにどんどんワケの分からない方面に進んでいってしまいそうだ。

 そうさな。
 それじゃ議員は、

 A. ナッシュ
 性格は直情的でシンプルな回答を好む
 あまり物事を深く考えないが、それだけにストレートな意見を述べる事が多い。
 口調は割と荒々しい。
 シスコン。


 B. なっしゅ
 性格は楽天的で温和な結論に落ち着こうとする。
 保守的な面が強いが、一見不利な選択しに対しても多少なりともメリットを見つけだす事ができる。
 基本的に穏やかな口調で喋る。
 シスコン。

 C. 夏朱
 性格は理屈っぽく小難しい理論を重視する。
 論理的に思考しようとするが、途中で脱線したり考え過ぎて混乱する事がある。
 小難しい表現や古臭い言い回しを多用したがる。
 シスコンかつ厨二病。


 こんなところかな。
 議長は、そうだなぁ。
 夏朱に頼もう。
 厨でも一応理論派だし。


「承った。
 さて、まず何よりも先に考えるべきは、議題1・やってくるギルギアキャラ達にどう対応するか、だ。
 これに決まっている。
 一応聞いておくが、何か反論は?」

「いや、無い」(ナッシュ)

「妥当だと思うよ」(なっしゅ)

「結構。
 その中でも更に優先されるべきは、マイエンジェルを奪って行くかもしれない、憎きカイ・キスク!」


 夏朱は、その手を血が出る程に握りしめ、ギリギリと歯ぎしりしながら宣言する。
 …が、すぐにその力を抜いた。


「…ではない。
 遺憾ながら、奴は強い。
 社会的にも個人としても、だ」

「んー、でも割りとヘタレなイメージが無い?」

「そういうイメージがあったとしても、奴は幾多のギアをブッ潰して、聖騎士団を率いて聖戦を生き残った男だ。
 潜った修羅場の数も、俺達とは比べ物にならない。
 ムカつくけど、男としても闘う存在としても、俺達より遥か上にいると言えるだろう」


 ナッシュが吐き捨てる。
 事実、コミックアンソロジー等ではソルに付き纏ってはボコられているイメージがあるが、それは相手が相手だし、自分達とやっても同じ結果になる筈が無い。
 そもそも、まともな戦闘経験が無い自分達が、聖騎士団の団長とガチで互角にやれると思う程、トチ狂ってはいない。
 ディズィーが絡むと問答無用で殲滅一択になるとはいえ、冷静に議論すべきこの場でそれに呑まれるようでは話にならない。


「しかり。
 故に、忌忌しくはあるが有事に際して我々よりも戦力となるのは事実。
 もしもディズィーとこっこここここ懇意ととととなったななななら、しっかりととととと護ってくれるだろろろろろろろろろろるるるる。
 今はまだ排除対象にはできぬ……今は、まだ、今はまだなッ!」

「面倒な話だ。
 とは言え、奴とは最初の一当てさえどうにかすれば、和解のチャンスは大いにある訳か」

「その一当てをどうにかする為に考えてるんだけどね」


 結局そこへ行きあたるのだ、となっしゅは肩を竦めた。


「うむ、だがしかし奴は生来のお人好しと言える。
 何のかんの言っても、ディズィーを問答無用で斬り捨てるような事はできまい。
 情けに訴えかければ、多少の交渉の余地は確保できるだろう。
 …故に、問題なのは別の連中だ」


 夏朱はギリッと視線を強め、本題に入ったと強調する。
 それを受け、ナッシュは顎に手を当て考え込む。


「本気で命ないし体を狙ってくる連中。
 …ソル、梅喧、イノ、それに終戦管理局…か。
 ああ、そう言えばザトー=ONEもそうだったな。
 正確に言えば、禁獣のエディか」

「エディに関しては、同胞が欲しいって事だったよね。
 それに、新しい体も必要…。
 この辺は、ファウスト先生にどうにかしてもらえないかな」


 幸いな事に、ファウストとの繋がりは既にできている。
 後は上手く来訪のタイミングがカチ合ってくれるかだが…これは、事前に逗留してもらっておけばいいだろう。
 他の面々ともドンパチやらねばならないだろうし、戦力は大いに越した事は無い。


「…不可能ではないな。
 だが、他ならぬエディがそれを是とするかが問題だ。
 奴が人間の手を借りるか…。
 いや、それは一端置いておこう。
 最初に、闇慈やチップ、蔵土縁紗夢等の対応が先だ」

「え?
 あの人達、ディズィーの所に来るかな?」

「来ないかもしれんが、来るかもしれん。
 分かりやすく言うと……そうだな、『ストーリーモード』ではなく『アーケードモード』だった場合だ」


 肩をすくめる夏朱。
 彼にとっても、この言い方は不本意だ。
 この世界はゲームの世界ではない。
 自分達にとっては、間違いなく現実。

 その言い方に、なっしゅも頭を抑える。


「…納得。
 もしそうだったら、来るのは一人だけ……なんて美味い話はないよね」

「だろうな。
 …しかし…」


 腕組みして、眉間に皺を寄せてナッシュは夏朱を睨みつける。
 それを平然と夏朱は受けて立った。


「何かね、ナッシュ」

「…いや、肝心の連中の問題を先送りにするのはどうかと思っただけだ。
 しかし、片付けられる事から片付けないとどうにもならんな。
 …忘れてくれ」

「ふむ…理解が得られたようで何よりだ。
 では、簡単な所から行こう。
 まず蔵土縁紗夢。
 彼女の目的は、悪魔の森に存在する食材だ。
 余計な勘違いを挟ませず、温厚に話せば目的を遂げてお帰りいただけるだろう。
 もしかしたら、賞金目当てに襲ってくるかもしれないが…俺達を倒した事にする、という方向で手が打てると思う。
 ゲームの方でも、同じような事になっていたしな」


 ナッシュがすぐに挙手して意見を述べる。
 あまり深く考えた発言ではないが、今は可能性を探る段階なので、とにかく意見の数が欲しい。


「紗夢さんに協力してもらう事はできないかな?
 勿論、出来れば…の範囲で。
 あれで義理人情には強いみたいだし、取引材料は…そうだね、森にある食材を定期的に届けるのでどうだろう」

「…可能性はあるな。
 ただ、彼女は性格に難ありだ。
 優柔不断を嫌い、自分に甘く、美男子に弱い。
 俺達が美男子に入るかはともかくとして、毅然とした態度で臨まなければ不可能だろう。
 それが可能かどうかは、当人に会ってからしか判断のしようが無いな。
 彼女については以上だ」


 何か問題は、と睥睨するも、二人は首を横に振った。
 紗夢については、正直この二人には予想のしようがなかった。
 憑依前の人生においても、あの手の女性とは縁が無い。
 あの手の女性でなくても、縁が無い…ちょっと泣けてきたが、ディズィーの笑顔を思い浮かべて我慢する。


「次、闇慈について」

「奴さんについては、一つ二つ手合わせすればそのまま帰ってくれるだろう。
 ギアの秘密を知ろうとしているようだが、怨恨からでもないし、その秘密にしたって俺達は何も知らん。
 むしろ、ちょうどいい模擬戦の相手になってくれるんじゃないか?
 コイツには…正直、取引材料は無いな」


 強い執着を持つのでもなく、ただ好奇心のままに行動する…。
 取引相手としては、厄介極まりない。
 何が有利に、何が不利に働くか、予想もできなかった。


「そんな細かい事しなくても、妹を護るためだって言えば力を貸してくれるんじゃない?
 暑苦しい性格だし、その男気が気にいった、とか言って」

「…そうだな。
 まぁ、基本的に無害、よしんば取引できなかったとしても敵にはなるまい。
 闇慈については以上」


 二人からも、話の続行を求める声は無い。


「次、チップはどうだ?」

「闇慈と似たような傾向はある…が、模擬戦で治まるかどうか…。
 特に俺達自体に執着は無いにしても、好戦的極まりない。
 何より人の話を聞かん」


 頭痛を堪えるように、ナッシュが頭に手をやった。
 彼の短気っぷりは、戦闘中のセリフを聞くだけでも十二分に明らかである。


「それは全員に共通してると思うんだけど…。
 取引材料を上げるなら、こっちに付けば強い奴と何人も戦える、って辺りかな。
 修行中なんだし、強敵との闘いは望むところだと思う。
 ま、これも結論は闇慈と同じでしょ。
 基本的に無害、少々危険だけど本格的に敵にはならない。
 …ああ、そーいえばチップにジャパニメーション文化を布教するって夢があったね」

「それはやりたい所だが…どうやってやるんだよ。
 もうジャパンのアニメは残ってないぞ」


 それは実に残念な事だった。
 …が、意外にもなっしゅがニヤリと自信ありげに笑う。


「なぁに、そんなの簡単だよ。
 他ならぬ俺達自身の頭の中にあるじゃないか!
 しかも、今の俺達はギア能力のおかげで、それらを正確に、細部まで思い出せる。
 それを…そうだなぁ、何かの通信装置に送信して、それを記録媒体に移せば…」

「…………」

「…………」

「…………素晴らしい」

「…………びゅりほー。
 これでチップは、二重の意味で堕ちたも同然。
 ナイスだ、なっしゅ!」


 テレ笑いするなっしゅ。
 これは対チップにだけしか使えない技術ではない。
 何となれば、記憶の中にあるジャパニメーションをどこぞの会社に持ち込み、放映して大儲けする事だって考えられるのだ。
 流石にそう簡単には行かないにしても、収入のアテが出来る。
 アニメが駄目なら小説で、小説が駄目ならコミックで…世代のギャップがあるにしてもきっと大当たりする。
 …とはいえ、ある程度は変更を加えなければならない。
 ガンダムあたりなんぞ、モロにブラックテックの産物だ。
 法力的な何かで動く存在に変更を加えねばならないだろう。
 それに、出来る事ならギアとの友好を示すような内容を織り込んでおきたいが…これは欲張りすぎか。


「よし、チップは暫定だが味方と考えていい!
 この勢いで次に行くぞ!
 今度はちょいと難しいぞ、ザトー=ワンことエディだ。
 こいつ一人ならファウスト先生と協力すれば何とかなるかもしれんが、彼に付随してくる問題の方がやっかいだ」

「…ヴェノムとミリアか。
 俺達自身に関係はないけど、この3人に割って入るのは無理だろう。
 何とかして余所でやってもらうしかないぞ」


 これには3人とも頭を抱えてしまった。
 あの3人の間にある感情がいかなるモノか、彼らには想像もつかない。
 ならば…取り込む事は考えず、ただ遠ざけるのが最善手か。
 エディ以外には、ディズィー達に執着する理由は無い。


「…まず、エディはファウスト先生の助力でザトーから切り離すとして…。
 ああ、それにしたって戦闘は必須だな。
 エディが大人しく離れるとは思えん。
 その間に二人が到着したら…」

「三つ巴、いや四つ巴の乱戦だ。
 これは避けたい。
 格上の相手との乱戦なんぞ狂気の沙汰だ」

「もしそうなった場合…協力できそうなのは、ミリアかヴェノムかの二者択一だろうね。
 捕獲か、或いは殺害か。
 …ファウスト先生にも助力を得ている事を考えるなら、捕獲…と言う事になるか」

「どうにかエディとザトーを止められたとしても、その場で殺そうとするミリアと阻止しようとするヴェノムの闘いに巻き込まれる…か。
 こりゃ3人をどうにかするだけの取引材料を見つけないと、どうにもならないな。
 これは次の議会までの課題と言う事にしておこう」


 問題の先送りだが、これ以上考えても仕方ない。
 いつか天啓が閃く事を期待して、一度別の事に移るとしよう。
 会議は1時間以上続けるものじゃない。


「なら次、ポチョムキンはどうだ?」

「命の危険は無いな。
 仮にツェップに連れ去られたとしても、問題は無い。
 …むしろ、カイに連れて行かれるよりゃずっとマシだ」


 …本音がポロリ。
 ジトっとした、しかし賛同の視線を送られて、ナッシュは咳払いして誤魔化した。


「ただ、その後ジェリーフィッシュ快賊団に行く可能性が非常に高い。
 そうなってしまえば、恐らくゲームの展開通り、いずれイノや終戦管理局に狙われる…が、それは何処に居ても同じだな」

「むしろこの場合の問題は、ディズィー達と離れ離れになる可能性が高いって事じゃないか?
 ジェリーフィッシュ快賊団は男子禁制って事になってるし、俺達がツェップ、ディズィー達が快賊団って感じで」

「…戦力的には、どちらも申し分無し…。
 心情的にはともかく、視野に入れておくべき進路ではあるな。
 それに、もしも二人ともツェップに置いてもらえれば、それだけカイとの接触が………いや、何でもない忘れてくれ」


 やっぱりジトッとした視線は向けられたが、何も言わなかった。
 3人とも、考えている事は同じだったからだ。
 まぁ、ポチョとディズィーじゃ恋人になったとしてもナニはできねーよな、と。
 そもそもポチョムキンにとって、ディズィーは恋愛対象じゃなくて年下の友人だろう。

 ともあれ、危険は無いと判断していいだろう。


「よし次、メイとジョニーは?」

「こっちも命の危険は無いな。
 むしろ、ディズィーの成長を考えるなら、最も推すべき進路だろう。
 …ゲームの通りに話が進むなら、だけどな」

「そのゲームにしたってバッドエンドはあったさ。
 …とはいえ、ジョニーの人脈や頭脳は魅力的だ。
 それにホラ、あれだ…GGXのディズィーストーリーモードのエンディングで、100年後くらいのやつがあっただろう。
 アレを見るに、ツェップと聖騎士団とジェリーフィッシュ快賊団、おまけにソルまで集結して何かとやり合う場面が訪れるって事だぞ?
 しかも、多分それだけの戦力を揃えてようやく互角ってくらいの。
 確か『あの男』がギアを開発した目的も、そいつらとの闘いみたいな事を言ってたし…」

「………ちょっと落ち着こうよ。
 そこまで話を広げても、どうしようもない。
 この2人やポチョムキンに関しては単純に進路の問題なんだから、成り行きに任せるしかないんじゃないかな」

「…仕方ないか…」


 実際、命の危険が無いというなら、無理して結論を出す必要も無い。
 一端保留と言う事にして、次に進む。


「次、アクセル」

「…………」

「…………」

「…………何かする必要、あるか?」

「……無いね、多分」


 本人自身が『死』を非常に嫌い、どんな悪党に対してでも殺すような制裁はしない。
 無論、自分達は悪党などではない。
 死の危険は、この時点で無いと言える。
 こっちからいきなり攻撃を仕掛けるような真似をしなければ、闘う必要も無いだろう。


「…ディズィーを口説いてきたら、どうする?」

「兄としての拳厳を発動する!」

「…権限、だろ」


 そこだけが、問題だった。
 でもまぁ、概ね問題は無し。
 元の時代に日本人の彼女も居るし、本気でコナかけてくるような真似はしないだろう。


「じゃあ、そろそろ物騒な話になってくるが…梅喧は?」

「…第一級危険人物、だな。
 明確な殺意、執着、戦闘力…正直、どうしようもない」

「この人は、ねぇ…。
 ディズィーを見逃した理由だって分からないし、『死にたければ自分で死ね、俺をダシにするな』みたいな事言ってたけど」

「博打にしちゃ分が悪すぎる…キョウスケ・ナンブだって躊躇うレベルだぞ、そりゃ」


 梅喧に対して、無抵抗主義は無駄以外の何物でもない。
 となると、実力で追い返すか、或いは取引するかだが…。
 実力に関しては未知数。
 強いだろうが、それ以上に恐ろしいのは向けられるだろう敵意、執念、憎悪。
 元が一般人の俺が、どこまでそれに抗えるか。


「…取引の方向で進めるべきだろうな。
 無論、失敗する事を視野に入れてだ」

「取引材料に使える物と言えば…一つだけ、だな」

「『あの男』の情報…ね」


 梅喧の最大の標的。
 ギア全体に向けられる憎悪よりも、『あの男』に対する憎悪は更に強い筈。
 もしも取引できるとするなら、これを置いて他にない。
 ただ、聞くだけ聞いた後でズンバラサとやられては堪らない。
 ある程度の情報は与え、小出しにして……いや、それだと情報全部吐き出すまで刺され続けたりしないか?


「…この方法は、ソルにも使えない事は無いな。
 ものスゲー危険だけど」

「…そうだね。
 危険だけど、他に手は無いと思う」

「…梅喧とソルには、この方法で何とか行ってみるか。
 藪をつついてジャスティスが出るような事にならなきゃいいんだが…」


 これ以上は考えても仕方ない。
 どうにもならない事は、どうにもできないのだ。


「次、テスタメント。
 …まぁ、問題は無いよな」

「だな。
 最初の一戦にしたって、ディズィーとの闘いになったら俺達が仲裁に入ればいい。
 逆に俺達との闘いになったなら、自分もギアだと示せば話し合いの余地はできるだろう。
 後は、そのまま俺達の力になってくれるか、だけど……」

「そっちは大丈夫だろう。
 だってディズィーだよ?」


 …理由になってない。
 理由になってないが、彼らにとってはそれで充分だった。


「さて、これが最後…イノだが。
 正直、こっちからは手の打ちようがない。
 GGXXの時まで登場しないかもしれんし、そもそも今何処に居るのか、いつ現れるのかも予測が付かん。
 『あの男』に頑張ってもらうしかないだろう」

「でもよー、こっちから手が出せないんじゃ、それこそちょっかいを掛けてくるのは確定事項みたいなものじゃないか?」

「そう思うよ。
 だが、ここで一つ情報がある。
 俺達は『あの男』の計画の内には恐らく含まれていない。
 現時点では、という注釈は付くがね」

「…そう言えば、GGXのソルのエンディングで『まさか娘が居たとは』みたいな事を言ってたね。
 今は僕達は存在を気付かれていないって事か…。
 それに、イノの襲撃だって独断だったみたいだし、次元牢か何かに閉じ込めてたっけ」

「イノに対しては、可能であれば…出来るならソルをぶつける。
 第一波さえ凌げば、『あの男』がイノを幽閉してくれるかもしれん。
 『あの男』に繋がる糸だ、ソルにしてみれば最優先事項と言っていいだろう。
 …しかし、これまた問題アリだな」

「ゲームでは、ジョニーの元で暮らしているディズィーの所に現れたからな。
 待ち伏せをかけるなら、同じようにジョニーの元に居るのが望ましい…まぁ、ツェップでも悪魔の森でも、戦力が整っていれば構わんがな。
 だが、そうしたとしてもやはり時期が分からん。
 ソルをディズィーの側に引き止めておくのが望ましいが……色々な意味で心臓に悪い」


 ネクロ辺りがドンパチ始めないか、或いはソルとディズィーがくっつかないか。
 心配事の種は尽きない。


「イノについては、これくらいしか話せんな…取引の材料もまるで見当たらない。
 よし、議題1はこれで終了だ。
 議題2、俺が元々居た世界への帰還方法について。
 …と言っても、まだ目に見えるくらいの進捗は出来ないんだよなぁ」


 夏朱はお手上げ、と言わんばかりに両手を投げ出した。
 少々ダレてきているようだ。


「法力理論、学んでも学んでもキリがないからなー」

「ファウスト先生に教えてもらおうって話はどうなった?」

「教えてはくれるって約束してくれたけど、俺の頭の中に理論が一通り入ってるって言ったら、まずそれを全て確認してからって言われた。
 俺達がやってるのは、まだ基礎の部分らしいぜ。
 …これ、憑依前の世界だったらどーいう扱いになる理論だろうな」

「多分、学会で発表したら金貰えるレベルだよ。
 ま、いくらチート頭脳だからって、そうそう簡単に学び終えられる理論じゃないってのは分かってたしなぁ。
 気長にやるしかねーべ。
 ………あれ、ひょっとして議題2は終わり?」

「終わりだな。
 これこそ本当にどーしようもない」

「いや待った。
 …なぁ、ファウスト先生に本当の事を話すのはどうだ?
 あの人なら、馬鹿にせずに聞いてくれるだろ」

「そうだな…………。
 俺は………正直、何とも言えん。
 ただ、アクセルの体質を研究すれば何かしらの手掛かりがあるんじゃないか、とは思う」

「アクセルの…って事は、確か同じ存在とかいう……レイヴンだっけ?
 なんか痛覚が無いみたいな事を言ってたやつ。
 アイツの事も研究せにゃならんだろ。
 …たしか『あの男』の側近なんだろ?
 つー事は、イノとも接触する事になるだろうし…」


 沈黙が下りた。
 …確かレイヴン、ソルの炎をまともに食らって平然としていたような…。


「…パスだ、リスク高すぎ」

「同感。
 研究するにしても、アクセルの方だけにするべきだ」

「だな。
 ファウスト先生でも、アクセルの体質はどうにもできなかったし、多分現段階では話しても無駄だろう。
 とはいえ、話してもデメリットも無いんだよな…。
 しかし……ディズィーにも話してない事を、ファウスト先生に話すっていうのはなぁ…」


 別段、ディズィーに全てを話さなければいけないという理由も無いのだが、どうにも気が引ける。
 我儘だとは思うが、どうしても気が乗らない。


「…これは次の議会に回そう。
 帰還の方法とは、また別のカテゴリーだ。
 ただ、話しても問題ないという事は重々承知しておいてほしい」

「了解」

「承知」


「じゃあ、今度こそ議題2は終了だ。
 最後の議題、ディズィーが家出した時に、ファウスト先生がおっしゃって居た事の意味について考察する。
 さて、一言一句残らず再生すると…こうだ」


 虚空にでっかい掛け軸が現れる。
 そこには妙に達筆な字で、あの時ファウストが言った言葉が書かれていた。

『ふむ…やはり、ですか。
 話を聞く限りでは、共依存…と言うよりは…。
 その愛情は素晴らしいものです。
 ですが、それが何処から来るものなのか…貴方は一度考えねばいけません。
 荒療治が出来るほど、貴方は自分を持てていない』

『走りながらでもいい、考えてください。
 何故、妹君が家出をしたのか。
 何故、貴方の愛が何から来るのか考えてほしいと言ったのか。
 何故、私の言葉を聞きたくないと思っているのか。
 …それを放置したままでは、いずれ妹君は自分を不幸とも思わずに不幸になります。
 何、貴方の症状はまだ軽いものですから、気付けさえすれば問題はありません。
 貴方の愛情その物は、きっと本物なのですから』


「…この際、何故家出をしたのかは、もういいだろう。
 一応解決したんだしな。
 さて、何処から考えたものか…」

「…と言いつつも、心当たりはないわけじゃないよね?」


 なっしゅの一言に、沈黙が落ちる。
 …実は自分でも、おかしいと思った事はあった。
 憑依前と比べて、自分の性格が幾らなんでも違いすぎる。
 俺は…自分でも家族を大事にする方だと自認していたんだが、今現在ディズィーにしている程じゃなかったように思う。


「…人間、何が切欠でどう性格が変わるか分からないものだけど…俺達の場合、ちょっとばかり極端すぎなかったか?
 ディズィーがそれを可とする程可愛くて可憐で純粋で以下略ってのは置いといて、だ。
 …そもそもの話、ファウスト先生は俺と…多分ディズィーの間に、共依存っぽい何かを見出したって事だよな?」

「…その共依存ってのからして何なのさ」

「さぁ…」


 揃って首を傾げる3人。
 心理学とかその辺の言葉かな、とは思うのだが…細かい内容は全く知らない。
 字面からすると、共に依存しあう関係…要するに両者とも、対象者の存在無しには自分を保てないとか、そういう事だろうか?


「GGX時のディズィーとテスタメントとの関係、だよな?
 それがそのまま俺達にも適応されるかはともかくとして…俺達、ディズィーに依存してるのか?」

「確かに、ディズィーが居なくなった時に物凄い不安を感じたけど…」

「ディズィーは俺達の精神安定剤みたいな役割を担ってるのは確かだな。
 顔が見えないってだけで不安になる傾向がある辺り、確かに依存と言われても仕方ない…」


 確かに、問題と言えば問題だ。
 ディズィーにそんな俺達の性質を悟られれば、俺達を気にして…つまり縛り付けられて、外の世界へ目を向けなくなってしまうかもしれない。


「うん…でも、ファウスト先生が言ってたのってそれかな?」

「さぁ…こればっかりは直接聞いてみない事には…と言うか、誰か聞いた?」

「誰かも何も、結局のところ我々は同一人物じゃないか。
 誰か知ってるなら、全員知ってらぁ。
 …実際、何度か聞いてみようとした事はあったよなぁ。
 はぐらかされたけど」

「ああ、だからこうやって考え込んでる訳だ。
 …でも、俺達だけの脳内会議で答えが出るかな?
 オツムの中だけで理屈捏ねまわしても、仕事に疲れたOLが自分探しとか言って一人旅するの大差ないだろ」

「…その心は?」

「自分に都合のいい結論しか出ない。
 何故なら、一人で居たら尚更自分に都合の悪い事に目を向けないから」


 …なっしゅにしては辛辣な意見である。
 会議が長引いて疲れが溜まってきたのかもしれない。


「んー、確かに…。
 でも、他にどうしろと?
 問題を他者との関わり合いとの中で見つけるって事だろ?
 …自慢にならんが苦手だぞ、人付き合い」

「ディズィーとの関わりの中で、じゃ駄目なのか?
 それなら世界で一番得意だろ、俺達。
 そもそも、ディズィーとの関わりに関してマズい事があるってんだから、その中で問題を探すべきでは?」

「逆だ。
 得意な事、楽な事に集中してると主観でしか見れなくなる。
 大体、ディズィーと関わっている内に理解できるってんなら、俺達はとっくにそれを理解しててもおかしくない。
 それがまるで無いって事は、他の誰かとの関わりの中でそれを見つけるか、少なくとも視点を変えなきゃどうにもならんって事だろう?」

「んー……」


 ナッシュは難しい顔をして唸っている。
 屁理屈で丸めこまれているような気がして、どうにも納得できないのだ。


「あ、もう一つ手掛かり、あるんじゃないかな?
 確かあの時、ファウスト先生にああ言われて…それで、耳を塞いで走りだしたくなったんだよね。
 それって手掛かりにならない?」

「なる事はなるだろうが…じゃあ聞くが、どうして耳を塞ぎたくなったと思う?」

「そりゃあ……ファウスト先生に何か言われるのが怖いから…」

「あの時、我々は自分に何かしらの精神的な依存・問題があるとは考えていなかったし、気付いてもいなかった。
 その状態で、どうしてファウスト先生の言葉に恐怖を抱く?」

「それは…心のどこかで、そういう問題があるって気付いてて……あれ?」

「な、同道巡りだろ?
 手掛かりにならない事はないけど、それだけじゃどうにもならん。
 それを俺達だけで話して解決しようとしたって、それこそ仕事疲れのOLの自分探しと大差ない」


 とはいえ、心に留めておくべき事ではある。
 恐らく、大きな手掛かりになるのは間違いない。
 自分達に精神的な問題があって、そこから目を逸らし続けていて、なおかつ気付いた時に多大な恐怖を伴うと考えられる。


「しかし、他の誰かねぇ…。
 お爺さんとお婆さん、後は村の人達くらいしか居ないなぁ」

「その村の人達にしても、ちょっと距離とられてるしな…。
 友達も、最近あんまり遊んでくれなくなったし」


 せめて、もうちょっと早くにこの問題に向き合うべきだった。
 今からでも遅くは無いかもしれないが……何と言うか…ちょっと人見知りするタチなもので。
 …いや、冗談だよ冗談。
 人見知りするタチなのは本当だけど、この期に及んでそんな事言わないって。


「…なぁ、さっきからノイズ入ってない?
 ノイズというか、『ナッシュ』の思考が」

「あー、そろそろ知恵熱が出そうになってるんだろう。
 意外と会議も白熱したし、そろそろ限界か?」

「一番肝心な、今後の対応自体は何とか目処がついたし、今日はこれくらいにする?」


 うむ、是非ともそうしてほしい。
 そろそろ3人分の思考をシミュレートするOS的な何かがフリーズで熱が溜まっててハングオンでロック的な何か。


「…本格的にダメだなこりゃ。
 んじゃ、今日は最後にアレやって終わりにしますか。
 準備はいいな?
 それじゃ……」



「「「ディズィーディズィーディズィーディズィーネクロネクロネクロネクロウンディーネウンディーネウンディーネウンディーネ!!!!」」」


 …妹自慢が無かったから、名前を呼ぶので我慢するよ!







あとがき
いつか浪漫砲をブッ放つナッシュの姿を、AAにして晒してみたいと思う今日この頃。
投稿時PV81871。



[17288] 13
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/30 20:36
今回、普段以上にロリペド成分が強く、自分でも「ちょっとどうかなぁ」と感じた節がありますので、ご注意ください。
「だったらパス」と仰る方は、そういう方の為に2話同時投稿にしてますので、14話をどうぞ。



 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 現在12~13歳ってトコです。
 あと一年分(と言うか2カ月程度)でリアル厨坊!
 つまり、冗談抜きで厨二病な言動をしても、(割と)恥じゃない!
 だって多感なお年頃だから。
 厨二病は誰だって一度はかかる病気だよ、オタクじゃなくても小説読んでなくてもね。

 大体アレだ、厨なSSを見つけた時に限って感想書いて、しかも大上段から見下げる事しかしない奴!
 明らかに格下の相手にしか文句言わないのに、やたら偉そうな奴!
 そして厳しい意見だけ言って自分が良識者だと思ってる奴!
 それが真の厨二病患者なのだ!
 厨二病患者は、自分が厨二病だと気付かないからなんだよ!
 そうでない奴は、ポーズ決めてるようなもんだって。
 具体的に言うと過去の俺の事だがなッ!
 つーかさ、憑依前の日本の国会議員とかは厨二病患者だらけだと思うんだが…無論、自分で気付いてないだろうけど。
 やたら小難しい言葉使うし、景気のいい事言ってその実ダメダメだったし……まぁ、友人から普天間問題の報道の裏側の事を話されるまで、アメリカ軍基地の海外移転の何が問題だったのか、理解してなかった俺が言うのもなんだけど。
 海外に移転すれば、沖縄県民の負担にならない…って小学生並みの発想で考えてたんだよなぁ。
 しかも某無責任な首相…間違ってもタイラーじゃない…が何処の党か、他の党にどんな人が所属しているのか結局覚えきれなかったし。


 …まぁ、それはそれとして、近況報告だ。
 そろそろ本格的に悪魔の森に移住する計画を立てている俺。
 お爺さん達にも一度相談して……ああ、相談はディズィーも一緒だぞ……逃亡計画の立案中。
 つーても、悪魔の森は割とこの村に(俺達基準で言うと)近い場所にあるし、村の人達の中には気配を察知するなんて器用な芸当ができる人も居ないから、里帰りするのも難しくはないんだけどね。

 ディズィーはお爺さん達や、村の友達と別れる事になるのを悲しんでいるけど、我儘を言える状況じゃないって事までも理解している。
 ほんと、賢い子だよ……泣き喚いたっていいのになぁ…。
 ……ただ、逃亡計画の事を話した時の反応がちと気になる。
 最初は俯いてたよ。
 ネクロもウンディーネも、心配そうにしてたし、悲しんでたのは確かだ。
 でも、次の一言。

「ナッシュは一緒なんだよね?」

 に「当然だ」って言ったら、いきなり満面の笑みになった。
 …な、何事?
 そりゃ一緒なのが嬉しいのは分からんでもないが、と言うか俺自身も非常に嬉しいが、この反応は極端すぎないかい?
 それでも友達や、お爺さん達と別れなきゃならんのは変わりないんだが…。


 …それはそれとして。
 逃亡計画に必要な物は多々あった。
 まず悪魔の森の地図。
 何はなくとも、これが無いと道に迷ってどうしようもない。
 互いの位置は、レーダーで確認できるからいいとして、水場や寝床の場所を特定しておきたいからな。
 あとコンパスも欲しいっちゃ欲しいんだが、お爺さんの言によると、あの森はコンパスの類は一切使えないらしい。
 富士の樹海か。
 そもそも地図と言っても、大雑把な森の形しか描かれてない。
 どうやら、飛行船か何かで空から撮影した資料を元に描かれているようだ。
 細かい水場の位置などは全く分からない。

 それから、水を確保する為の水筒と、泥水をろ過する為の道具。
 見つけた水が飲める水だとは限らないし、一度沸騰させてから使う必要があるね。

 更に、火を付ける為の火打石…は要らない。
 火を付けるくらいの法力なら、俺やネクロでも使えるからだ。
 火は一番単純な法力の使い方って聞いたが…それでも、実を言うと明確な理論はまだ理解できておらず、感覚で使っている。
 でも使えるかもしれないから、荷物に詰め込んでおく。

 続いて、住居が無かった場合のテントと寝袋。
 ゲームじゃ住居と言うか、何やらディズィーのステージに妙な遺跡があったような気がするが…本当にあるかどうかは未知数だし、用心に越した事は無い。
 幸い、今回はサバイバルする準備期間が非常に長いし、必要最低限のものだけを持っていく必要もない。
 使えそうな物は、どんどんつぎ込めばいい。

 その他、サバイバルナイフやら防寒具やら虫除けやら、色々と。
 お爺さんに、「ウチの道具を全部持っていくつもりかの」と苦笑されるくらいの勢いだ。
 まぁ、構わないから持って行けとも言われてるんだが。

 ただ、その中でどうやって持っていくべきか四苦八苦している物がある。
 と言っても、これはサバイバルグッズではない。
 むしろ、物理的に持っていくのは不可能に近い。
 それは何かって?

 …インターネットだ。

 これがなけりゃ、憑依前のジャパニーズだった俺はまともに生活していけない。
 とにかく暇が潰せない…いや、暇は全部ディズィー自慢に注ぎ込めばいいんだけどもね!

 パソコン(この世界じゃ名前違うけど)の端末を持っていく事は出来るんだよ。
 当然のように普及されてるとは言え、お爺さん達あんまり使わないし…かなり旧式の代物らしく、値段を考えてもそんなに損害にはならないらしい。
 ひょっとしたら、聖戦で死んだ息子さん達の形見なんじゃ…と思ったが、それも違ったらしい。
 とにかく、パソコンを持っていく事は出来ても、悪魔の森の中じゃまるで使えないのだ。
 中継機器が無いと言うか、そもそも電波が届かないと言うか。
 一体何があるんだ、悪魔の森。
 インターネットに接続できないなんて……本気で悪魔がいるよ!

 とにかく、端末持って行っても意味が無い事は確定事項だから、何とかできないかと試行錯誤の最中だ。
 こっそり森を抜け出して、近所の村まで使わせてもらいに行くとか……この世界、共有端末みたいなのがあっちこっちの飲食店にあるんだよね。
 …ただ、金が無いから俺は使えないけど。

 そういう訳なんで、今の俺は自力で…つまり自分自身の機能で、インターネットに接続できないかと考えている訳だ。
 出来ない訳じゃないと思うんだよね、同じギア同士でテレパシーっぽいの出来るしさ。
 ネクロ達に聞いてみたら、俺達が信号を送ったりするのは…なんだ、その、ネット通信で使用されるような電波じゃなくて他の物らしいんだが、それでも理屈の上では不可能じゃないらしい。

 まぁ、当然っちゃ当然だわな。
 聖戦において、人間同士の連絡を取る為の無線なり何なりを傍受できれば、それだけでギア側にとって有利に働くだろう。
 更に、暗号解読の必要があるにせよ、傍受したデータを改竄して流せば、あっという間に人間達は大混乱に陥るだろう。
 その機能が全く無いとは考えられない。

 つまり、俺は理論的には生身でインターネット接続ができる人なのだよ!

 退屈な授業中にも眠たくなりそうな会議中でも、分からない事を調べるなり動画共有サイトで映画を見るなり、誰にも気付かれずにやりたい放題!
 何て素晴らしい能力だ!
 …まぁ、動画共有サイト無いけどね。

 それに、送信されてくるデータを受け取ったところで、俺がそれを翻訳できなきゃ意味ないし。
 OSやらブラウザやら、どうすっかなぁ…俺の脳ミソにインストールできるのか?
 憑依前では一通りの知識くらいなら持ってたんだけど、その構造や内容まで知ってる訳じゃないし、そもそもからしてこの世界のインターネットはもう丸で別物になってしまっている。
 ぶっちゃけて言うが、俺がインターネットって呼んでるだけで仕組みは完全に別物だ。
 一から勉強せにゃならんのかなぁ…。
 と言うか、ウイルス取り込んだらどーなるんだろうな。

 ところで話は変わるけど、よくテンプレSSである「ファンタジー世界に憑依or転生・最強・ヒャッホー」な設定だけどそういう人ってインターネット要らないのかね?
 俺なら耐えられんぞ。
 今の俺もギリギリで耐えてる状態に過ぎない…何でかって?
 …二次創作の小説が無いんだよ、二次創作じゃなくても面白いSSが無いんだよ!
 聖戦の復興直後でまだまだ人々の精神に余裕が無い為か、そう言ったサブカルチャーは燻っている状態だった。
 …ここは一つ、俺が一念発起せにゃなるまいて!
 …とは思ったものの、やっぱりジャパニメーションの普及が無いとどうにもならん。
 俺が小説書くとしたら、あっちこっちのジャパニメーションのネタを引用して飾り付ける形になるからな…元がオリジナリティ無い、平凡で朋友…もとい、凡庸な人間なのよ。


 ああそうそう、一つ意外な事があった。
 我が家のインターネットの使用率だが…つい先日までは、ダントツで俺がトップだった。
 俺以外には、精々お婆さんが料理の献立を調べるのに使うくらいだ。
 別に使い方が分からないんじゃなくて、単純に使う必要が無かったから使ってなかったんだとか。

 でも、先日の家出の一件以来は…俺を抜いて、何故かウンディーネが使いまくっていた。
 ディズィーが昼寝している最中とか、ぶっ通しでインターネットに接続して何やら調べまわっているようだ。
 何度か、何を見ているのか尋ねた事があるんだが…妙に慌てた仕草で、タカビーな仕草で追い返される。
 ……が、あの慌てた様子を見るに………俺に可愛がってもらう為の役作りの下調べと見た!

 …いや、自意識過剰じゃないと思うよ?
 チラッと見えた画面には、「賢い女性になるには」とか「男性のツボ」とか、その手の胡散臭そうなタイトルばかり見て取れた。
 …ここで、「妹キャラに萌える男性の心理」とかが無い辺り、やはりサブカルチャーは繁栄していないようだ。
 …………森の奥に引っ込んだら、冗談抜きでインターネット経由で布教してみるのもいいかもしれんな。
 何せ、ここにはブラコン・クーデレ・ツンデレの三巨頭が揃っている。
 そしてそれを自慢する俺は、まだまだこのシスコン坂を昇り始めたばかりとは言え、それなりの功徳(?)を積んでいると自負している。
 この情熱を以てすれば、未だにインターネットに生身接続できないなどという問題など、三日もあれば解決できるわ!
 冗談抜きで、股間の浪漫砲が目覚めた時と同じように何か機能が目覚めると思う。
 旗艦型ギア(暫定)の俺ならば、その手の情報戦能力は他のギアに比べて幾らか高い筈だしな。
 無かったら無かったで、自力で進化するくらいやってやるぜ。

 他にも、ディズィーの使用率も随分増えた。
 こっちはこっちで、何を調べてるのか分からないんだよな。
 盗み見しようとしたら、ネクロにデコピン食らったし…割と痛かった。
 うーん、まぁこの世界には2chみたいなトコは無いし、サブカルチャーも発展してないし、妙な事は覚えて来ないと思うんだけどね。
 …ところで、俺は2chをあんまり使わない人間だったんだけど、最初は口が悪いだけで批判するだけの人間の集まりだって考えてた時期があって……いやもう、本当に自分の浅はかさが恥ずかしい。
 俺よりずっと真面目で、政治とかも深く考えている人達の集まりでもあったのに…。
 ああいう先入観って、俺どこで覚えてきたのかなぁ……ある意味、青少年健全育成法とかほざくアホ共と同じ思考回路をしてたのかもしれない。





 さて、近況報告はこれくらいにして、今日の妹自慢だね。
 …え、何?
 今日はテンションが低い?
 ……何を仰る。
 君達は、本当に熱い炎は青く燃えるという格言を知らんのかね?(イミフ)
 何せ、前回はクソ真面目な会議で妹自慢が出来なかったからなぁ…。
 その分、今回の妹自慢に熱が入りまくって臨界点突破してんのよ……騒ぐまでも無く、冷たく燃え盛る炎と化してんのよ…ッ!
 大体だな、俺は一日一回は妹自慢をしないと精神的に落ち着かないんだよ!
 あまつさえ本当に気分悪くなってくるんだよ!
 皆が見てないだけで、毎日一度はやってるんだぜ?
 思考ログを公開してないだけで、もう500個くらいの妹自慢の記録が溜まってるんだよ…公開はしないぞ、俺のトップシークレットだからな。
 …ん?
 前回の会議から何日経ったって……2日。
 その間に妹自慢?
 したよ。
 でも一人で頭の中だけで自慢するのと、人に向かって自慢するのとでは熱が違ってくるでしょ。
 だから、前回の会議で人に向かって自慢する機会が潰れちまって、不完全燃焼なんだってば。
 そーいう訳だから、今回も付き合ってくれ拒否権をコロス!

 さてさて、今回はちょっと…なんつ~か、自分でもコレ自慢していいのかって思う内容だ。
 デリカシーが無い事を自任する俺でも、ちょっと…なぁ?
 思いっきりプライバシーの侵害…と言うか個人情報の漏洩っぽいんだが。
 なら止めろって?
 いや…そりゃそうなんだけどね、さっきも言ったように妹自慢の熱が溜まっちゃってて…止まるに止まれん。

 その内容とは………。


 す り い さ い ず


 なんだよ!
 具体的な数字は伏せるがな!

 いやもうなんつーか、自分でもこーゆー事言っちゃダメだってのは分かってる、分かってるんだが!
 日々貯め込まれていく俺の懊悩が、そんな冷静な事言わせてくれんのだ。
 無神経でもデリカシーが無くても、叫ばないと溜まりに溜まったナニかが暴発しちまうんだ!
 先日の家出の一件以来…もう5カ月近く前になるのか…ディズィーからのスキンシップが密度を増しててな。
 こう…全般的に、自分から引っ付いてくる訳よ。
 嬉しいよ?
 そりゃ嬉しいさ。
 妹に甘えられて、突き放せるような性格しとらんのでな。

 でもさ…ディズィーはね、今丁度成長期なんだよ。
 元からバトル漫画主人公も真っ青なくらいの成長速度だったけど、問題なのはそういう成長の仕方じゃない。
 二次性徴って奴だ。
 遂に来ちまった…って感じだよ。
 正直な話、ログをそろそろ別の形で纏めるべきじゃないか、って気がしてきた。
 幼年期は第一章、少女期は第二章、そんで淑女期の第三章って感じで。
 そっちの方が、姿形を正確にイメージできると思うんだ。
 みんな、未だにディズィーをょぅι゛ょの姿で想像している気がしてならない。
 みんなって誰だという疑問は残るがそれはさておいて、ディズィーは本気で発育がいいぞ?
 未来の姿を一応知っているからむしろ納得できるくらいだが、そうでなければ同年代(?)の日本人と比べると思わず涙が出てきてしまうくらいだ。
 身長を無視してスタイルだけで言えば、あと1年程度でヘタすると高校生くらいと間違われるようになるかもしれん。
 今だって、ちょっと胸の発育が遅れている高校生って言われたら「そうかも?」って思っちゃうくらいだ。
 …え、むしろ想像しづらくなったって?
 そーだな、全体的にエヴァのレイ、乳だけアスカになりつつあるとか…。
 …………もーいいよ、とにかくょぅι゛ょじゃなくて少女…しょうι゛ょだと思っててくれ。


 でも生理はまだらしい。
 チッパーイだったオパーイも、段々…というかどんどん大きくなってきている。
 …何で俺がそれを知ってるかって?
 そりゃーアンタ、抱きついてくるから…だけじゃなくて、風呂にも一緒に入ってるからに決まってるじゃアーリマセンカ。

 …変態?
 …俺が?
 ………いやいい、反論はあるが敢えてその汚名を受け入れようじゃないか。
 何でって…これだけ役得があるんだから、多少のシィィィーーーット!を受け入れるのは義務じゃないかね!
 袋叩きまでなら許す、ただし報復としてその後は妹自慢を聞かせてやらんからな!


 んー、まぁ実際ね、俺もいい加減に…抱きつくのはまぁスキンシップの一環として割り切るとして、未だに一緒にお風呂に入ってるのはマズいかなーと思わなくもないのよ。
 俺の煩悩がどうとかいう以前に、ディズィーの羞恥心ってものがまるで育ってない。
 マッパを見られても全然平気…そういや、ネクロとウンディーネって服着てるのかな…あの服も変化させた体の一部だとしたら、常にマッパ状態?
 …まぁ、まともな羞恥心を持ってたら、あのバトルコスチュームは着られないような気がするけどね。

 ちなみに、あのコスチュームには家出の時以来一度もなってない。
 一度、自分で意識してコスチュームチェンジが出来るのかと聞いてみたんだが……下心は無い、単純な疑問だぞ……自分ではまだできないらしい。
 変わりにネクロ達がその辺を制御できるとか何とか。
 なお、コスチュームの設定は二人がやったのではなく、やっぱりデフォルトらしい。
 …コスプレさせるなら、自前で作らなきゃいかんな…お婆さんに裁縫習っておけばよかった。

 そんでな、風呂なんだけど…ディズィー、相変わらず背中を流してくれたり、そのままペトッと抱きついて来たりするんだ。
 そしたらさー、当然っちゃ当然なんだけど、膨らみ始めたオパーイが背中に当たって…神経がそっちに集中するのも無理ないだろう!?
 しかも、「ナッシュ、あったかい…」なんて言いながらグリグリしてくるんだよ!
 冗談抜きで泡の国になりかけている。
 どうにかせねばと思うんだが、体が動いてくれない…。
 いや、一応ね、止めさせる為の活動はしてるんだよ……非常に乗り気じゃないんだが。
 何をしているかって言うと、ディズィーの情操教育。
 俺が「止めてくれ」って言ったら、ディズィーは悲しむかもしれないが…恥ずかしくなって自分で止めれば、ディズィーは悲しまないだろう。

 つーても、こういうのって年頃になれば自然と身に付く物だとは思ってるんだけどね。
 それを何とかして助長する為に、「男性とは」「女性とは」を教えてるんだよ……漫画のストーリーを元にしてな!
 ちなみに、主な教材はらぶひなだったりする。
 ご都合主義がどうだの、主人公が殴られたり斬られたりしても不死身だから平気だの、その辺の事は主題じゃないのでパス。
 男性が、女性の裸や下着姿を見る⇒ぶっ飛ばされる、これが重要。
 その辺を重点的に教え込んでいる為、ディズィーも「世の中とはそういうものだ」と覚えつつある……覚えてるだけで、感覚的に理解してる訳じゃないけどね。
 ククククク……この教育が実を結んだ暁には、将来カイとかとナニかするような雰囲気になったとしても、条件反射でぶっ飛ばしてお流れになる筈…ッ!
 ディズィーはやらん、やらんぞ…!


 …ちょっとクールダウンしよう。
 俺は別に、ディズィーの胸だけについて語ってるんじゃないからな。
 胸が好きなのは事実だが、それは別にディズィーの胸に限った話でもないしね。

 成長がみられるのは、胸だけじゃない。
 こう…お腹と言うか腰と言うか、幼児体型だったのがいつの間にかくびれが出来始めてる。
 なんかね、こっちもこう……グッとこみ上げるものがあるんだよ。
 くびれって言っても、まぁ、ょぅι゛ょから少女への過渡期にある程度だし、そんなにハッキリしたものがある訳じゃない。
 こう…ジャレあってる時とかにね、ふと気付く事があるんだよ。
 で、そういう時に…ちょっとだけ、本当にちょっとだけドキッとする。

 流石にこのレベルのくびれにドキドキするのは駄目だろう、と思うんだが…ドキドキじゃなくて、ドキッだからタチが悪い。
 そうさなー、例えて言うなら……煩悩を捨て去ろうとするお坊さんが居て、9割ほどそれが成功しているくらいの時に、ふとエロい妄想が湧きあがりかけて、それが形になる前に消えてしまった…みたいな感じだろうか。
 分かりにくいって?
 …衝動とか湧きあがる劣情が小さすぎて、それを感じた時にはわざわざ否定する程のモノじゃないって感じられるんだよ。
 『そんなの感じてない!感じてなんかいないんだぁぁぁ!』って、大声で否定するって事は、それくらいしなきゃ否定できないって言う『肯定』がある訳だ。
 そもそも、本当に何も感じてないなら否定なんかする必要も無いし、そもそも出来ないもんな。
 生きていないモノを死なせる事はできない、と同じ理屈だ。
 でも、俺が感じるのは…こう、ちょっとだけ……針…いや爪楊枝でチョンと突かれた程度の、ドキッなんだ。
 痛くは無いし、無視もできるくらいだし、後も引かない……でも、一度それを意識してしまうと、逆に頭の中から中々消えてくれない。
 そういう事って、無いか?
 静かーな部屋の中で、不意にコトッと音がしたら、妙にそれを意識してしまうような感じかな。

 そもそも、男はくびれに対して、性的な魅力を感じるのは正常な事だ…程度はともかくとしてね。
 確か、くびれが出来ている女性は、ぶっちゃけて言うと子供を産む準備ができているくらいに成長しているって事で。
 んで、実際に子供が腹の中に居る場合、腹が膨れてくびれが無くなるから、自分の子供を産んでもらえない訳で。
 …要するに、人間が獣だった時代から延々と続いてきた、生物学的な本能って奴らしい。
 くびれが在る=子供を産んでもらえる相手、って訳だね…合意云々のレベルじゃなくて、そういう対象として見るかって話な。
 この辺、女性の人権がどうのを語ってるんじゃなくて、そーいう生理的反応がだな……いいや、もう。
 ディズィーは可愛い、腰もセクシーになりつつある、以上!

 とにかく、くびれを感じてドキッ!が何度も何度も重なって、嫌が応にも意識せざるを得ないんだっつーの!
 これ仕方ないのよ!
 誰だってね、変態的な素質というか、普段は全く表に出て来ないけど隠れた性癖や欲望っていうのは確かにあるのよ!
 俺の場合、その隠れた……まるで隠れてない気もするけど……欲望がコレで、ピンポイントで狙撃されてる。
 これ、出家して一生修行して、やっとこさ捨てされるレベルの根源的欲望だよ…。



 …えー、話は変わりまして、今度はヒップです!
 …相変わらず、キャラクターぱんつだけど。
 形的には、かぼちゃパンツで非常に微笑ましいです……パンツ見て微笑むのは、ギアとしてどうかと思いますが。
 つーか、悪魔の森に移住するまでこのパンツのままだったら、どうなるんだろーな…。
 俺は女性の下着について全くと言っていい程無知なんだが、それでも妙齢の女性がかぼちゃパンツというのはどうかと思うんだが。
 俗に言う、パンティーだかショーツだかに変えた方がいいと思う、俺の煩悩を抜きにしても。
 …ちなみに、俺はとっくの昔にブリーフからトランクスに変えてるよ。
 ブリーフって窮屈なんだよね。

 あー、これ以上ぱんつについて語るのは止そう、様々な意味で深みに嵌って出て来れなくなりそうだ。
 じゃあお尻について……語らねーよ!
 お尻のサイズだけならともかく、この勢いのまま行くとヘタしたらディズィーの大事な部分の自慢とかしちゃうかもしれないじゃないか!
 そんな事したら俺が死ぬ、マジ自殺する。

 …だから、今回自慢するのは、正確に言うとヒップじゃなくて、そこから生えてるシッポだ。
 以前、ディズィーが大暴れした時に思いっきり握ったら、それだけで絶叫して気絶してしまったシッポ。
 あの時は片手で何とか握れる程度だったのだが、最近成長が著しい。
 二次性徴を迎えたせいだろうか?
 徐々に伸び始めていて、今では膝まで届くくらいの長さになっている。
 …コレ、自力じゃ消せないから、外を出歩く時は物凄く注意しないといけないんだよね。
 どうしているのかと言うと、スカートの中で自分の足に巻き付けているのだ。
 野暮ったいロングスカートのおかげで、辛うじてバレてない…スカート捲りしようとする愚者は、俺が率先して潰してきたしな!
 動きにくいんじゃないかと思っていたが、ディズィーは割とあっさり慣れてしまったようだ。
 とはいえ、敏感である事には違いなく、自分で巻き付けたシッポと足が擦れて、ビクッとなる事が多々ある。
 …ひょっとして、シッポだけじゃなくて太股も性感帯なのかなぁ…と思ったけど、何かアヤしい気分になってきそうだったので止めた。

 まぁ、日常生活での苦労はさておいてだな。
 家の中に居る時は、ディズィーは普段通り「撫でてほしい」とか言ってくる訳ですよ。
 頭を撫でるのは、いいよ。
 いつも通りの愛らしさ、この子は俺の最高の清涼剤だ。
 色々と天元突破しそうになる事もあるけど、これが無ければ俺はもう生きてはいけまい。  

 他に、肩とか手とか背中とか…お腹とか。
 …あとね、胸とかもね、撫でてほしいってね、言われる事がね、あるんだよね…。
 流石にそれはマズいだろう、俺の手は勝手に動こうとするけど。
 そういう事を言いだした時には、ネクロやウンディーネに頼んで止めてもらっている………ウンディーネはディズィーを説得して、ネクロは俺の腕に関節技をかける。
 ちなみにネクロに「こうやって止めてくれ」と頼んだら、「兄を痛めつけるのは本意ではないが、リクエストされたのだから仕方ない」と渋い顔で了承してくれました…すまんね、苦労をかけて。
 ぬぅ、女性としての慎みとか、そういう事教え込んでる筈なんだけどなぁ…なぁんで効果出ないのかなぁ…………天然さんだからか?
 勿論、止めてくれた二人にはお礼のナデナデするよ!
 ディズィーの二次性徴に連動しているのか、最近富にドクロらしく、そして女性らしくなってきた二人の可愛らしさも特筆すべきものがあるのだが、今はディズィーのシッポが先だ。
 また別の機会に、タップリドップリネッチョリと語るけどな!


 さて、話は逸れたが、シッポの事だ。
 ディズィーのシッポは非常に敏感だ。
 思いっきり握った時、奇声を上げてバタンQしてしまった事から考えても、それは間違いない。
 サイヤ人のシッポ並みの弱点である。
 個人的には、アレだ、女性の一番敏感な小豆ちゃんと同じような感じじゃないかと思ってる。
 そんなモンを思いっきり握ったんだと思うと罪悪感が湧いてくるが、まぁディズィーだって俺の角よく握るしな。
 お互い様って事にしておこう。

 最初にシッポを撫でてくれと言いだしたのは、ディズィーではなくネクロだった。
 その頃には、シッポが徐々に長くなってきていて、尻を触っているんだと誤解されるような体勢にならなくても済んだんだが……残念だなんて思ってないぞ。
 その時のディズィーは、思いっきりハテナ顔だった。
 確かにシッポは今まで撫でた事なかったし、ディズィーもやってほしいとは言わなかった。
 とても敏感な部分だから、本能的に避けていたのかもしれない。
 それでも、一度気になったら撫でてほしくなったのか…期待と不安が入り混じった目で見られたよ。

 そんで撫でる事になったんだけど、前にネクロから『シッポを掴む時はもっと優しくしてくれ』と言われていたし、握った時の反応を考えるといきなりは不安が残る。
 そこで、まずは小手調べ…とばかりに、村のニワトリ(メチャでかい)から拝借してきた羽毛を使う事にした。
 …何、くすぐりプレイ?
 ………言うな。
 実際、そんな感じになったんだ。

 ディズィーのシッポの敏感さは、予想以上だったと言える。
 羽毛をそっと触れさせるだけで、なんかこう……ディズィーもネクロもウンディーネも、ビクンビクンと。
 なんだろなー、見ている分には……そうだな、痺れた足をツンツンされたのが全身に走り回ったような感じ?
 本人達にしてみると、もっと別の感覚らしいんだけど。
 気持いいというか、小さな波が体を駆け抜けるというか………俺、波紋を流し込んだのか?
 …戯言はともかくとして、羽毛を使うのは思った以上にツボだったらしい。
 代わりに俺の手でそっと…所謂フェザータッチで触れてみたところ、ディズィーの髪の毛が半分くらい逆立った。
 ネクロとウンディーネも何やら逆立っていた。
 敏感すぎて、心地よいとかのレベルを逸脱してしまったようだ。
 …これ、日常生活じゃともかく戦闘にゃ使えないよなぁ……半分とはいえギアなのに、何でこんなに無駄に敏感になってるんだろ…。

 何れにせよ、自分の手では駄目だったとしても、羽毛を使ってのナデナデが気にいられたのは事実。
 よくせがまれている。
 ただ、他のナデナデと感覚が違いすぎるから、シッポを撫でる時は他の所を撫でてもあんまり気持よくないらしい。
 シッポ以外を撫でられると、そこから段々暖かくなって溶けて行くような感じだけど、シッポはビリビリと気持ちいいのが駆け抜けて行く感じ。
 シッポのビリビリが、撫でられて暖かくなる感覚を吹っ飛ばしてしまうのだとか何とか。
 むぅ、ディズィーもナデナデの、撫でられる方の達人の風格を出してきたな。


 …ただなー、ちょっと気になってるのが…シッポを撫でた後、ディズィーの様子がちょっとおかしいっつーか…。
 気持良くなってるんだから、顔が赤くなるのは分かるよ。
 シッポ以外でも何だかんだ言って赤くなるのは確かだしさ。
 ただ、その紅潮具合が…他のナデナデとは、何か違うような気がする。
 全身がこう…段々赤くなっていって、息が乱れて……そう言えば、シッポをナデナデした後に頭や肩を撫でたら、普段と反応が違ったなぁ…。
 目が潤んでて、ネクロとウンディーネも何やら程良い脱力具合でヘニャッとしてて…。
 その状態で、揃って俺を上目遣いで見つめて、「もっと」なんて言ってくるんだぜ?
 体をモゾモゾ動かして、何かもうじっとしていられません、って顔で。
 「体が熱いの」なんて言われた時は、成層圏まで生身で飛んでいく所だった…ファウスト先生もビックリだ。
 そういやお母さんことジャスティスは、一撃必殺技で空まで高速飛行していたな…爆発があったから、大気圏外までは飛んでないと思うが。
 更に付け加えて言うと、ディズィーだけじゃなくてネクロもウンディーネも、こう…何か興奮したようにソワソワと…。

 ………………こ、このリアクションは様々な意味でヤバくないかい!?

 とはいえ、一番ヤバいのは、ヤバいと分かっていながらディズィーに強請られるとあっさり了承してしまう俺なんだよなぁ…。
 最近は流石に自重しようとして、4回に1回くらいの割合で駄目出しする事に成功しちゃいるんだが。

 幼い身だから、明確な性感は感じちゃいないと思うんだが…それも段々開発されてきてしまっている気がする。
 そもそもからして、年代的に考えれば自慰行為とかを自然と覚えだす頃だ。
 確か俺はこのくらいの年代だったと思う…正しいやり方を知らずに、フニャチンをグリグリ弄ってたら妙に気持ち良くなってきて更にベッドに擦りつけて、パンツの中に出して…そんで慌ててトイレに駆け込んだっけなぁ。
 後始末の事も知らなかったし親に言える筈も無かったから、気持ち悪いの我慢してそのまま寝たっけか…次の日には乾いてるのを見て、心底安堵したもんだ。
 …アレのお陰で、皮が伸びてたような気がする。
 今回はやらねーぞ…ムケたって勃たなきゃ意味ないけど。

 …いや、俺の事はどうでもいいんだ。
 それよりもディズィーだよ。
 こうして改めて考えて見ると、思っていた以上にヤバい事やっちまったかもしれん。
 年代が年代だから(中身は3歳児だけど)性的な行為や衝動を覚えるのは、まぁ仕方ない。
 俺の手でその切欠を作ってしまったかもしれんというのは、名誉な事のような不名誉な事のような、そーいうレベルじゃないような。
 …このまま自慰を知らずに、シッポナデナデで発散するようになっちまったら、俺はどうすりゃいいんだ!?
 …でもそれだと、自分でするんじゃないから自慰じゃねーよな…。

 ぬぅ……こりゃ、恥を忍んでお婆さんにその辺の教育がどうなっているのか聞いておくべきか?
 うーん………悩む所だ……。
 今日の妹自慢はこれで切り上げて、今後の方針に頭を悩ませるとしよう。
 うぬぅ……。





[17288] 14 転章
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/05/30 20:48
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 現在13~14歳ってトコです。
 とうとうリアル厨二!
 ああ、なんだろう、この踏み込んではならない場所に踏み込んでしまったような「やっちまった」感と、それとは逆に「ああもういいや」的な吹っ切れた感。
 どうせこの世界には厨二病なんて言葉は無いし、いっそイタイ言動も演じて受け入れてしまえって自分で思ってんのか?

 さて、物は試しだ。
 まずは邪気眼やってみっか。


「っぐわ!…くそ!…また暴れだしやがった…」

「奴等がまた近づいて来たみたいだな…」

「っふ…ギア細胞を持たぬ物にはわからんだろう…」

「うっ…こんな時にまで…しつこい奴等だ」


 等のように、ディズィーも誰も居ない森で一人でやってみた。
 
 ………無理でした。
 吹っ切れたと思ってたけど、俺には無理でした。
 俺のレベルが低すぎます。

 暫くリアルでorzしてましたよ。
 …い、いや、折角の機会なんだ、もう一回チャレンジするぞ!
 痛いのは仕方ないと、この際割り切ろう。
 仮に楽しくもなんともなく、痛いオンリーの結果しか待っていなかったとしても、それはそれで今後の戒めになる。
 厨二病が未だに完治してない典型的な日本人(オタクに限らない)の俺としては、ある意味じゃ丁度いいリハビリにもなってるんだ。
 これ以上ない程痛い思い出になってくれれば、厨二病再発に対する免疫力になる!
 多分な。

 と言う訳で、レッツリトライ!


「っは……し、静まれ……俺のギア細胞よ……怒りを静めろ!!」


 …………初っ端からギブアップしていいですか?
 やっぱり俺には無理だよ…。
 SHU☆ZOが応援してくれたって無理なんだよ…。

 ああもう!
 この羞恥!
 このやるせない怒り!
 何処に向けろとゆーのだろうか!

 全く持って意味の無い自傷行為だと分かっちゃいたものの、俺は頭をガンガンその辺の岩やら木やらにぶつけて、「もう無理や!もう無理なんやー!」って魂の叫びを迸らせていた。





 結局、失意に肩を落として家に帰った俺は……お爺さん達に、えらい剣幕で詰め寄られた。
 森で何をしていたのか、ってね。
 …いくらお爺さん達が相手でも、これは言えねぇよ…。
 まぁ、具体的じゃないけど「ちょっと遊んでた」って言ったよ。
 別に嘘じゃない。
 思いの外、面白くなかっただけでごっこ遊びだったのは事実だしな。

 そしたら益々難しい顔になって……前から準備していた家出グッズ…もといサバイバルグッズをすぐに纏めて持ってきて、ディズィーと一緒に連れだされた。
 俺もディズィーも、この時は全く事態を呑みこめていなかった。
 何だか人目を避けるように村を出て……この辺になると、俺はイヤな予感を感じていて、ディズィーは初めて村の外に出た(家出時除く)事ではしゃいでいたものの、大人しくするようにお婆さんに窘められた……、馬車で進む事数時間。
 ちなみにこの馬車、村の共有財産である。
 月に一度くらいの頻度で、都会(?)に足りない物資を調達に行く。
 まだ事態が把握できていなかった俺は、こんなモノ勝手に使っていいのかなぁ、なんて呑気に思っていたもんだ。

 どれくらい時間が経ったかな…時計が無かったんで良く分からんが、太陽の位置はかなり動いた。
 最初はハシャいでいたディズィーも、お爺さん達の尋常じゃない雰囲気に気が付いて、いつの間にか押し黙っていた。
 ちなみに、ネクロとウンディーネは翼のままじっとしている。
 家の外では大抵そうだったけどね。

 そんで、カッ飛ばして馬が大分バテてきた頃、ようやくお爺さん達は馬車をとめた。
 ケツが痛い…クッションも無いのか、この馬車?
 ブラックテックは封じられてるにしても、技術的には憑依前の時代よりずっと進んでる筈なんだが…。
 物資調達で仕入れた物が痛まないんだろうか…。




 それはそれとして、馬車が止められたのは、真昼間からおどろおどろしい空気を発散している、深い森の前だった。
 …言われなくても分かったよ、これが悪魔の森だってね。
 つまり俺達は、今からここで暮らさなきゃいけない訳ですね、わかります!

 しかし、それでも俺は把握できなかった、わかりません!
 ゲームの知識によれば、ディズィーが村に居られなくなるまで3年。
 全部が全部ゲームの知識通りになるなんて微塵も思っちゃいないが、お爺さん達に拾われてからまだ2年ちょっとしか経ってない。
 その辺の誤差は俺が居たからだと割り切る事として……何せ、俺が居たからディズィーが家出して大暴れする展開になっちゃったし……この急転直下の展開はなんぞ?
 確かに出て行く準備はしてたさ。
 でも、今すぐ出て行くなんて言ってなかったし、どっちかと言うと村の居心地が本格的に悪くなってきた辺りで出て行こうと思っていた。
 なんつーか、距離感って大事だからね。
 互いの存在や悪意に怯えて悪い感情を増幅させるよりも、ある程度距離を取って怖くない程度に付き合いながら親睦を深めた方がいい。
 そもそも、まだ準備整ってないし。
 使い方を知らない道具とか、一杯あるからな。
 悪魔の森の地図だって、まだ手に入ってないし。

 何だかんだ言っても村の人達も何も言ってこなかったし、森の一角が消し炭になった件からもマスコミは手を引いてきてたし、ひょっとしたら出て行かなくてもいいんじゃないか…って考えた事もある。
 それが、何だっていきなり……?

 首を傾げる俺と、俺の腕を掴んで離さないディズィーを前に、お爺さんとお婆さんは語り始めた。


 俺達を、村に置いておけなくなった…と。
 …やっぱりね、と思う反面、結構なショックを受けた。
 でも、俺以上にショックだったのはディズィーである。
 ブラコンであると同時に、ヤンデレ……なのは俺の妄想(であってくれ)だから置いといて、お爺ちゃん子お婆ちゃん子のディズィー。
 それが突然別れを切り出してきたのだから、平静で居られる筈が無い。
 パニックを起こしかけるディズィーを宥めすかして、俺はその理由を聞いた。





















 ………正直に言います。
 生まれてきてゴメンナサイ。






 事の発端は、村人の一人が家に駆け込んできた事だった。
 んで、そいつは聞いたんだよ。
 「ナッシュはギアなのか!?」ってな。
 信じたくない、でも思い当たる事例が多すぎて信じざるを得ないって表情だったそうだ。

 えらい唐突というか直球な聞き方だ。
 今まで誰も、真っ向切って聞いてくる気配なんか無かったのに。
 驚きながらも、お爺さんはその村人を拉致って縛ってサバイバルナイフで脅して(この辺、異様に手馴れていたとお婆さんが言っていた)、何でそんな事を聞くのか尋問した。

 そしたら、「森の中でナッシュがこんな事を言って暴れていた」という発言が出てきたらしい。




 …ちょっと思い返してみよう。


 Q.森の中で俺は何をしていた?

 A.邪気眼ごっこ…を断念しました。


 …血の気が引いたね、人生の恥的な意味でも、取り返しがつかない的な意味でも。

 最初は、確かにちゃんと周囲に誰かいないかを確認して、そんでレッツ邪気眼してたのよ。
 人に見られたら、大変イタイからね。
 思い出や戒め云々のレベルじゃなしに、俺の精神が死んでしまう。
 だから、確かに、念入りに確認した。
 10秒置きに6回くらい確認したぞ。
 その結果、周囲に人間の反応も動物の反応も全く無しだった。
 そうでなけりゃ、レッツ邪気眼しないからな。

 でも…誤算が一つ。
 と言うより、不注意かな。
 最初に邪気眼やった後、あまりのイタさに俺はorzした。
 それ、自分で思ってるよりもずっと長い間打ちひしがれてたみたいなんだよね。
 …具体的に言うと、人が近寄ってこれるくらいに。
 後は分かるな?

 村人の誰かが、打ちひしがれてる俺を発見して、一体何事かと見物している内に、俺のレッツリトライのセリフ。
 この時、もう一度事前に周囲を確認しなかったのが痛恨だった…ッ!
 しかも、よりにも寄ってセリフがあれだ。
 ギア細胞っつーキーワードもはっきり言ってるし、あまつさえ『怒り』だぜ?
 聖戦で反乱を起こしたギアが『怒り』だぜ?
 それを聞いた奴が、「また反乱を企んでるんじゃないか」って思っちまうのも無理は無いだろ。
 しかもその後、自分の頭で破壊活動しながら、「無理」って……それはつまり、ギアの本能だか何だかを抑えるのが無理だって言ってるように取られるって事で。

 詰まる所、俺は「年齢にカコ付けて邪気眼ごっこしようとしたガキ」だったのに、「人間社会に潜伏しているギアで、その圧倒的破壊力をすぐにでも暴発させかねない危険分子」として認識されてしまった訳だ。
 これが憑依前の世界だったら、「ああ厨二病だな」って一言で済ませてくれたかもしれない。
 仮に厨二病という言葉を知らない人でも、ネットで「こういうのがあるんです」と実例付きで見せれば誤解は解けた……物凄い苦行になるだろうが。
 が、この世界に厨二病なんて言葉は無い。
 ギア細胞の怒り云々が、単なる嘘だと証明する方法なんか無かった。
 せめて、このボディの異常な成長速度が無ければ、ファウスト先生の同類って事で何とか誤魔化せたかもしれないのに…。


 誰が俺を見てたのかは知らないよ、そこまで確認する勇気は無いから。
 この「誰かが見ていた」って話だって、後から聞いた話でしかないんだ。
 アレを誰かが見ていたと思うと、そいつを今すぐ抹殺するか、メルトダウンしてマントルまで沈み込んでしまいたくなる。
 が、実際に本当にそんな事をする余裕も無し。


 もしもこれが村に広まれば、俺達は確実に排斥される。
 そしてお爺さんが拉致緊縛に尋問までやっちまった以上、村人は俺達をギアだと確信しただろう。
 …もう誤魔化しも効かねぇよ。
 よりにもよって厨二病で人生変わるって、どんだけ重病なんだよ。

 そんな事考えて現実逃避しちゃいたんだが…お婆さんが、俺の肩をガッチリ掴んで、目を逸らす事を許さない迫力で語りかけてくる。


「いいかい、ナッシュ?
 ナッシュもディズィーも、ギアの衝動なんかに負けやしない。
 私達の自慢の子供だ。
 今はまだ衝動を抑えられないかもしれないけど、きっと大丈夫になる日が来る。
 人間と一緒に暮らそうと思ったら、その日を一日でも早く迎えなきゃいけないんだ。
 その日はきっと来る。
 二人が頑張れば、きっとその日は早くなるんだ。

 …まだ幼いお前達に何もかも託して、守って上げられない私達を許しておくれ……」


 ちょ!
 ちょ、ま!
 待って待って待って!
 アレ単なるごっこ遊びですから!
 ギア的な衝動なんぞありませんから!
 あっても妹ズへの愛情で捩じ伏せてますし!

 ………でも………い、言えねぇ…あれが単なるゴッコ遊びだったなんて、言えねぇ……!
 恥がどうのってレベルじゃなくて、単なるゴッコ遊びだったとしても、後戻りできない状況である事には変わりない。
 しかも、お爺さんにとっても物凄ーく危険な状況である事には変わりない。
 何せ、お爺さん達は俺達を匿い育てていた……言ってしまえば、ギアに味方する裏切り者と呼ばれかねない。
 それを避ける為だろうか、よくよく見て見れば、お爺さん達の荷物も馬車に積んであった。
 つまりは、あの村から別の何処かへ移るつもりなのだろう。
 …そこまでさせてしまったのが、俺のゴッコ遊び……しかも時代によっては恥の代名詞とさえ言える内容で。
 せめて俺が、厨二病が演出の最先端だと言いきれる時代に生まれていたら言い訳の一つも出来たかもしれんのに…。


 …………い、言えない……!
 俺が恥ずかしいってのも確かにあるが、それ以上に二人に悲壮な決断を強いてしまったのがそんな理由じゃ、幾らなんでも浮かばれないだろう…こういう言い方すると、死んでるみたいで嫌だけど。
 心配はかけてしまうだろうが、アホな理由で人生崩されたよりも、シリアスな理由で人生が崩れたと考えた方が、少なくとも俺はナンボか精神的に安定する。
 織田信長は父親の葬儀で遺影に焼香だか塩だかを叩きつけたっつーが、もしもその手に持ってるのが小型ぶーぶークッションとかだったら叩きつけるに叩きつけられまい。
 遺影に向かってブン投げたら、ポコンと軽い音がするだけで迫力全く無し、あまつさえ何かの拍子に『ぶぅ~』なんて間抜けな音が出た日にゃ、父親が浮かばれないどころの話じゃねぇ。
 その場の家臣が血涙流しながら襲ってくるだろう。
 ひょっとしたら父親…織田信秀だっけか?…がその場でやるせない怒り…じゃない、哀しみのあまりに蘇るかもしれない。
 北斗神拳伝承者だって、この哀しみは刻めまい。
 もしそーなったら、日本の歴史はどう変動してたんだろうか…………あんまり変わりない気がするな、織田信長はその程度でどーにかなる人種じゃない気がする。

 いやいやいや、それはともかくとしてだね!
 こんな事になった原因は退かぬ・媚びぬ・顧みぬの帝王三原則(3つ目が超重要)でスルーするとして、これからの事だ。
 お爺さん達は、親族は誰も残っていないが、昔の友人と一緒に暮さないか、という誘いを受けていたらしい。
 えらいご都合主義、と思わなくもないが、まぁ都合がいいのは良い事だ。
 都会という程じゃないが、今までの村ほど田舎でも無い、そんな場所らしい。
 住所を教えておくから、落ち着いたら手紙を出せって…んなコト言われたって、ハガキも切手も……え、荷物の中にある?
 そうですか。


 …まぁ、俺のその時の感想は、大体こんな感じだった。
 自分でも、正直薄情だと思うよ。
 寂しいとか別れたくないとかじゃなくて、こんな「厨二病ごっこでこんな事態を引き起こすとは……ッ!」みたいな、他人事じゃねーんだぞと言ってやりたくなるような事しか考えてなかった。
 一種の現実逃避だったのかもしれないが、それだと帝王三原則に抵触してしまうので考えない。
 ただ、一応な……いつか別れが来る事は覚悟してたし、何よりこちとら元独り暮らしの社会人だ。
 一人暮らしじゃなくて独り暮らし。
 元々友達いなかったし、飲みに行くときも一人酒ばっかだったしなぁ…。
 まぁ、なんつーか、元々人が居ない暮らしには慣れてっからね。
 あの頃に戻るんだと思えば、同居人が居てくれるだけでも気楽なもんさね…それがディズィーなんだからむしろ天国かもね!

 …とはいえ、俺にとっては天国かもしれんが、ディズィー達にとってもそうなのかと言えば、答えはやはりノー。
 俺の服の裾を掴んだまま、ディズィーは涙を堪えていた。
 …こんな時でも泣きださないんだから、本当に賢すぎる子だよ……もっと喚き散らしてもいいくらいの年齢なのにさ。
 この年代の子供って言ったら、もっと我儘で生意気盛りが一般的だろうに。
 悲しさと混乱を一身に封じ込めて、ディズィーは黙って泣いていた。
 明らかに状況を理解している。
 元々、いずれ出て行かなきゃいけないっていうのは、ディズィーも薄々勘付いてはいた。 
 それが突然やってきた事で混乱しながらも、お爺さん達と別れざるを得ない状況にあると、はっきり理解していた。

 ネクロとウンディーネは、何も言わないままだった。
 涙も見せず羽型のままだったが、何処となく寂しげな雰囲気が伝わってくるのは気のせいではないと思う。
 二人もお爺さんお婆さんに懐いてたしな…。
 それでも何も言わないのは、ディズィーの守護の為だと割り切っているからだろうか。

 ……こ、心が痛む……良心の呵責以外でも痛む………。
 でもこの状況で出来る事が何も無いっつーのが、本当に痛い。


 ………俺達は、それから暫く悪魔の森の前で立ち尽くしていた。
 言葉は無い。
 ディズィーの嗚咽が時々聞こえるだけで、誰一人動かず、また誰一人通りかかりもしなかった。
 互いに姿を目に焼き付けるように見つめ合う。
 ……以前の俺なら、どんな感動シーンでも愁嘆場なシーンでも、確実にダレてた時間である。

 そんな時、俺はふと思いついた。
 頭のヘアバンドを外す。
 角をアクセサリだと誤魔化す為にいつも付けていたヘアバンド。
 その真ん中には綺麗に穴が一つ空いている。


「…これ、返す……違う、預けるよ。
 いつかまた、取りに行くから」

「ナッシュ……」


 お爺さんは、ヘアバンドを黙って受け取った。
 手が震えていたのは、見なかった事にした。
 もしも、「返す」或いは「あげる」と言っていたら、お爺さんは受け取らなかったと思う。
 また人間社会に戻る時の為に、持っておきなさい…と。
 でも俺は「預ける」って言い直した。
 俺だって、このまま永遠のお別れにするつもりはない。
 …そうなったら、切なすぎるじゃないかイロイロと。


「そう…それなら、私も預けようかしらね、お爺さん」

「そうじゃの、黙って荷物に入れておくつもりじゃったが」


 二人は笑って、俺達の側に置いてあった荷物から何かを取りだした。
 四角いものと…黄色いヒラヒラ?


「ほら」


 お爺さんから受け取ったのは、四角い……写真立て。
 中身を見てみれば、それはまだネクロとウンディーネが出てきて無かった頃に撮った写真。
 …そう言えば、羽コンビが人型になってる写真撮ってねーな。
 そもそも写真を撮ろうとしても、何か二人がイヤがって羽状態に戻っちゃうんだけど。
 何だろね、魂が抜けるとでも思ってるのかな?
 …それとも、単に自分達の情報が流れる可能性を少しでも低くしようとしているのか…。
 ウンディーネだったら、単に恥ずかしいからかもしれんけど。


「儂からは、これを預けておく。
 いつか……ネクロとウンディーネも一緒に、写真を撮ろう」

「…嫌がるだろうけどね、一度くらいはいいか」


 ニヤリと笑いを交わし、一度だけコツンと拳をぶつけ合う。

 その隣では、お婆さんが黄色いのをディズィーに渡していた。
 それは……ちょっと大きめの、黄色いリボン。
 俺が渡した分と合わせて、これで三つめか…他の色のリボンは幾つかあるけど、ディズィーの一番のお気に入りは黄色だ。
 最初に俺がくれたから、ってはにかみながら教えてくれた。


「同じモノを三つっていうのは、女の子としてどうかと思ったんだけどねぇ。
 あの村には、このくらいの物しかないから。
 だからサイズを変えて、三つめの黄色いリボンにしたんだよ」


 …あー、俺一応シッポ用のも準備してたんだけどな…被っちゃったか。
 まぁいいや。
 どうせ手元には無いんだし、取りに戻ってる時間も無いし。


「あ、あり、あり、が…と…」

「ネクロとウンディーネには、悪いけど用意出来る物が何にもなかったんだ。
 何にしようかってお爺さんと相談してるうちに、いきなりこんな事になっちゃったからねぇ…。
 作りかけだったアップルパイを特急で作って荷物の中に入れているから、大事に食べておくれ。
 もう冷めちゃってるけど、ね…」


 ゲハッ!?
 …こ、心に不意打ち食らいました…。
 アホな理由で村に居られなくさせてしまった罪悪感が…。


『いいんですよ、お婆様…・今まで御世話になりました。
 またいつか、貴方の作り立てのアップルパイを食べられる日を楽しみにしています。
 それまで、どうか息災の程を…』

『爺、婆…世話になった。
 生涯、二人の事は忘れまい。
 例え人と相容れぬ道を歩む事になっても、受けた恩は決して忘れはせん。
 またいつか、家族として会える事を祈っている』

「っ、ぐ……ぅ……あ、あり……が……、ま、た……」


 ディズィーはお婆さんに抱きついて、涙やら鼻水やらで顔をグチャグチャにしながら、お別れの言葉を口にする。
 みっともなくても、ちゃんと言葉にできなくても、それが今のディズィーの精一杯。
 言葉にならない言葉も、ちゃんと伝わった。

 お婆さんは優しく、お爺さんは力強くディズィーを抱きしめ、ネクロを抱きしめ、ウンディーネを抱きしめて…最後に俺と。


「…ナッシュ…お前はお兄さんだ。
 皆を護ってやってくれ」

「分かってる…俺に出来る事なら、何でもするよ」


 半分以上、俺のせいみたいなモンだしな。


「ナッシュ、ごめんなさいね…貴方達を、もっと長く私達が育ててあげたかった…」

「充分すぎるよ…自立は時間じゃなくてタイミングだ。
 大丈夫、これからも、俺達は支え合ってやっていけるから」


 …リピートするが、半分以上、俺のせいみたいなモンだしな。


 ギュッ、と抱きしめられる感触。
 何故だろう、体温よりもずっと強い熱を感じた。
 …死んだひい婆ちゃんと、命日の前日に手を握り合った事を思い出した。
 あの時、力を感じられない指は、だけどとても熱かった…命の熱さ、だったんだろうか。
 まさか二人が明日死ぬなんて事はないだろうけど、この熱を…一生覚えておきたいと思った。
 ギアのメモリーとしてじゃない、俺の感覚として。







 結局、そのまま抱き合って…文字通り日が暮れるまでそのままになりそうだったので、「せ~の」でお互い背中を向けて出発する事にした。
 見送りたいって気持は互いに分からないでもないけど、それで膠着してちゃ世話ないしね。
 「せ~の」の掛け声は、俺…じゃなくてお爺さんが出した。
 意外と明るい声だったが、カラ元気だったのかもしれない…お爺さん、あれで結構神経図太いし。
 …俺達を平然と育ててる時点で、結構どころじゃなく図太いのは確定的に明らかだったね、うん。

 互いに名残り惜しかったが、「せの~の」の掛け声とともに、180度方向転換。
 俺とディズィーの目の前に広がっているのは、昼なお暗い…もう暮れだけど…・悪魔の森。
 ディズィーが怯えたように俺の手を握った。
 …いや、俺的にはこの程度の暗さは全く問題ないんだけどね。
 まぁ、確かに不気味だけどさ。


「それじゃあ、元気でな」

「また一緒に暮らしましょうね」

「おじーさん達こそ、体に気を着けてね」

「う、ぐしゅ……い、いってきます」

『またな、爺、婆』

『また合う日まで、お元気で』


 互いに振り返らずに、最後の挨拶を交わす。
 俺はディズィーの手を引き、悪魔の森に入って行く。
 お爺さん達は、馬車に乗り込んで出発しようとする……んだと思ってたが、どうやら俺達を見送っていたらしい。
 後からウンディーネに聞いたら、「せ~の」の時に180度反転したんじゃなくて、360度回転して同じ向きに戻っていたらしい。
 …ぬぅ、その後振り返るような気配が無かったんで気付かなかったぜ…大人ってズルイよ!
 中身は俺も大人だったなぁ…。










 まぁ、何だ。
 結局お爺さん達に見送られながら、ディズィーの手を引いて進む事30秒。
 ………俺達は完全に異界に居た。

 別に特別な意味じゃない。
 森の中に居るって意味なんだが……いやもうホント、ここは異界だ。
 悪魔が棲む森って言われてるだけの事はある。
 昔の人は森や山を異界の入り口だとしていたらしいけど、こんな森見ればそれも納得ってものだ。

 ふと振り返って見れば、既にお爺さん達の姿が見えない。
 木々に視界を覆われて、森の外が全く見えなかった。

 …マジ?

 幾らなんでも早すぎだろ。
 いや早すぎってーか森が濃すぎってーか。
 たった30秒、しかもディズィーを連れてだから100メートルも進んでないんだぞ。
 …こりゃ、泣いてる暇があったら早々に気を引き締めなきゃいかんな…。


 俺はお爺さん達と別れた寂しさもそこそこに、とにかくこの森で活動する拠点を探す事を決めた。
 …取りあえず、もっと深くまで行くのは後回しだ。
 かと言って、森の浅い所で生活する気は無い。
 森って言うのは、それだけで天然の要塞みたいなものだからな。
 賞金稼ぎとかが来た時、いい砦になってくれるだろう。
 …今からその要塞・砦に入り込まにゃならん訳だが。


 虫以外の気配が無い森の中を、まだ嗚咽を漏らしているディズィーの手を引いて歩く。 


「ネクロ、ウンディーネ。
 近くに水場があるか、分かるか?」

『いえ…分かるのは動物の気配くらいで、地形を把握するのは不得手ですので…』

『俺もだ。
 兄は分からないのか?
 旗艦型ならば、その手のレーダーもある筈だが』

「あるにはあるみたいなんだけど、精度がな…。
 まだ使い慣れてないし、ディズィーを探す時くらいしか使ってなかったし。
 そうだな…今日はもう日が暮れるし、とにかく寝床を確保しよう。
 昼なお暗いっつっても、夜よりは明るいだろうし、歩き回るのは明日からだ」

『承知した、兄よ』

『晩御飯は、お婆様が入れてくれたアップルパイですね。
 冷めてしまっていますが……味わって食べましょう』

「明日からは、森探索のついでに喰い物も確保せんとな…」


 いやはや、問題課題が山積みだ。
 これはアレか、妹自慢メインからサバイバルメインの話に切り替えろとでもゆーのか。
 だが断る。
 あくまで主眼は妹自慢、これガチ!
 …まぁ、その妹を何とか泣きやませないといけないんだけどね。

 いや、この場合、逆に気が済むまで泣かせた方がいいんだろうか。
 涙は流し続ければ心が沈むけど、無理に止めれば心が淀む。
 うん……取りあえず、泣き疲れて眠るまではこのままにしておこう。
 勿論、繋いだ手もそのままで、ね。




 結局、この日は用意していたサバイバルグッズの中にあったテントを張って、そこを寝床にした。
 ディズィーと手を繋いだままテントを建てると言う離れ業をマスターしたぜ!
 …まぁ、実際はネクロとウンディーネが手伝ってくれたんだけどね。

 灯りは…ネクロが何か出してくれたよ。
 小さな灯みたいなやつ。
 …と言うか、いつか進化してゲームの技の「最初はただの灯りだったんです」になるんですねわかります。
 そして現在、本当にただの灯りである。
 実にありがたい。


 ちょっと歪なテントに潜りこんで、4人で冷めてしまったアップルパイを食べた。
 …流石に美味しくない。
 冷めてるし、硬いし、それにお婆さんは大慌てで作ったらしくて火の通りもバラバラ…。
 それでも、誰も文句なんか言わず、欠片も残さず食べ尽くした。

 飲料水は、なるべく節約する事にした。
 はやく水場を見つけないと。
 水の少ない所で水を集める方法もあるけど、まぁ節約するに越した事は無いしね。
 他に何に使うか分からないし。

 …なんつーか…味気ねぇなぁ……。
 涙出てきそうになったけど、意地で堪える。
 男だったら、妹達の前で悲しい涙は見せちゃいけない。





 アップルパイを食べたら、何もせずに布団…と言うか寝袋に潜り込む。
 別に布団でも良かったんだけど、折角入ってるんだし、ディズィーが珍しがって使いたいと(まだ泣きやまずに)リクエストを出してきたので、その通りに。
 …でもね、ディズィー。
 普通、寝袋っていうのは…一人用なんだよ。
 俺とディズィーが一緒に入り込むような構造になってないんだよ。
 ちなみにネクロとウンディーネは、寝袋の中で形を変化させて窮屈じゃないように調整していた。
 まぁ、大人用の寝袋だからね。
 少年少女が2人入っても、まだ多少のスペースはあった。

 ディズィーはいつも以上に俺に強く抱きついてくる。
 …今回ばかりは、振りほどこうなんて考えられないよなぁ……いや、普段も全く考えないけどさ。
 ディズィーをギュッと抱きしめて、少しでも気が紛れる事を祈って背中を撫でる。
 流石に寝袋の中だから撫でにくいが。


 ディズィーは暫く泣いていたが、いつの間にか眠ってしまった。
 一言も喋らずにただ泣いていた辺り、ショックの程が窺える。
 …この原因を作り出したのが俺だって事を思い出すと、本当に罪悪感が…。
 もしも俺が憑依前のボディだったら、精神的ショックでオスとしての機能が駄目になっていたかもしれない。
 現ボディの場合、オスとしての機能云々以前の問題だが……中華キャノンの発射準備しないと勃起できないって何だよ一体…。


『兄よ』

『ん?』


 ディズィーが完全に寝静まった頃、ネクロが通信で話しかけてきた。
 声を出したらディズィーが起きるかもしれんから、その辺の配慮だね。
 これでネクロは結構デリカシーがあったり無かったり。


『一つ聞きたいのだが、いいか?』

『何ぞ?
 と言うか、質問の内容を知らない相手にその言葉はあんまり意味が無いと思う』

『尤もだ。
 で、聞きたい事なのだが…大丈夫なのか?』

『何が?』

『ギアの戦闘衝動だ。
 抑えきれなくなりそうだったのだろう?』

『………ああ、大丈夫だヨ』


 …心づかいが、痛い。
 ネクロの口調からして、真実には気付かれていないようだ。
 純粋に心配してくれている。
 それに安堵するのと同時に、心がすっげぇ苦しい……。


『ならばいいのですけど…兄様、また抑えられなくなりそうだったら、すぐに教えてください。
 兄様が我慢しようとしたところで、その衝動は発散しなければ強くなる一方です。
 ディズィーに被害が及ぶ前に、何とか対処しましょう』


 …こころづかいが、いたい。

 真実を言う勇気も無く、ただ只管俺は自責の念…と言うか自責(笑)の念に悶えていたのだった。




あとがき
13話だけだと単なるロリペド話になっちゃいそうなので、14話も投稿しました。
さて、やっとこさ家出まで漕ぎ着けた。
…でもここからはここからで、またストーリーが進まずにgdgdになりそう。



[17288] 15 (妹自慢:小)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/06/06 21:18


 どーもどーも昨日ぶり、ナッシュです。
 現在、真っ暗な森の中をひたすら進んでいます。
 一晩泣くだけ泣いたらディズィーも多少は落ち着いて、森の中を不安げに見渡しています。
 と言うか、陽の光も殆ど差し込まない程深い森なのに、生えてる植物はこれでもかって言う程育ってるんだが…普通、植物って太陽の光がないと育たないんじゃないのん?


 とにもかくにも、今日の朝ご飯は詰め込まれていた保存食。
 味気ない。
 ディズィー達と一緒にご飯というだけでも充分な調味料になりそうなモンだが、当のディズィーは景気の悪い表情だし、そもそも周囲が周囲だけに流石に楽しくお食事って気分にはならなかった。
 昼なお暗く、朝っぱらから亡霊とか出てきそうな森。
 この中で暮らさなきゃいけないと思うと、幾らなんでも気が滅入ってくる。
 せめて、もうちょっと人が居ればなぁ…。
 出来れば女性が望ましい。
 だってディズィーに余計なチョッカイ出さないからね!
 別にハーレムなんか望んじゃいないよ。
 むしろ妹3人に好かれてるんだから、今でも充分ハァ~レムだよ!
 マジック・サービスとは兄弟なんだよ。
 死んだ兄のルーザーとはあんまり仲が良くなかったんだよ。
 ケンタウルスホイミに一点賭けだね!

 と言うか、この子達以外のGGキャラでハーレムって……賭けてもいい、身が保たない。
 あの濃すぎる面子で修羅場ってみろ、即刻死ねるわ。
 今でさえ、反抗期とか3人がケンカした時の事を考えると胃が痛むというのに。
 …あー、でもソルとかカイとかがTSするんなら、(怖い物見たさで)目指してもいいよ?
 でもジョニーの場合、TSしても若本ヴォイスで頼む。
 そしてぶるぁぁぁぁ!と叫ぶ時には劇画調の顔になってくれ。
 ……うん、これで万が一その可能性が実現してしまったとしても、夢オチにできるフラグが立ったな。



 まぁ、そんな腹の足しにもならない空想はともかくとして。
 俺達は話し合って、これからの方針を決めた。
 と言っても、決定するのは殆ど俺だったけどな。
 ディズィーは基本的に俺に付いていくって考え方だったし、そうなるとネクロとウンディーネの基本方針もそれに沿う形となる。
 自分の意見をもっと強く持ってほしい、とかそーいう事はまた別の機会に考えるとして、これは結構なプレッシャーだ。
 自分の命だけじゃなく、3人の命・生活まで俺の意見に強く影響される。
 ぬぅ、典型的な事無かれ主義の日本人だった俺としては、責任重大な委員長役(?)は誰かに押しつけたい所だが、この場には俺達以外に誰も居ない。
 なら、サバイバル技術を多少なりとも習得している俺が適任…なんだろう。
 やりたくないけど。

 ともかく、まず確保すべきは三つだ。
 1、水場…できるだけ大きなものが望ましい。
 川と湖だと……湖の方が嬉しいな。
 お爺さんに習った技術は、湖でのものが主だった。
 村の外れの湖で練習したもんだ。

 2、食料の狩り場。
 毒があるかないかが問題だ。
 動物を見つけたとして、それを狩るのは俺の役目だろう。
 ディズィーには殺させたくない…偽善だとしても、意味が無いとしても、ね。

 3、ストレスを発散する方法。
 こんな森の中でずっと暮らしてたら、そりゃストレスでおかしくもなるだろう。
 寂しいし、陽の光は入ってこないし、何よりこうしている間にも後ろから何かに襲われそうな緊張感というか恐怖がある。
 レーダーには反応が無いのは分かってるんだけど、なんかこう…圧迫感があるんだよなぁ。
 こんな状況が続けばイライラも溜まる⇒イライラが溜まればケンカっ早くなる⇒ネクロ辺りを怒らせちゃって大乱闘⇒いくえ不明となりかねない。
 息抜きの場は必須なのだよ。

 その他、寝床や火種の確保に関しては問題ない。
 寝床は折りたたみ式のテントがあるし、火種やら風を凌ぐ壁やら、その他諸々は法力でどうにかできる。
 便利だね法力。
 まぁ、新聞とかインターネットでの資料を見ると、普通の人間にはここまで汎用性のある法力は使えないみたいだけど。
 要するに、ギアの計算能力で術の柔軟性をムリヤリ上げているんだろう。
 でもまだ理論が半分くらいしか理解できてないよ。
 それにしたって、憑依前の世界で学会に発表したら歴史に名を残せるレベルみたいだけど。
 ああそうそう、頭の中の理論にね、フレデリックの法則とか何とか、そんな名前があったんだよ。
 これ、もしかしなくてもソルがギアになる前に作った理論?


 とりあえず、以上の3つを近場に兼ね備えている場所を見つけたい。
 飯と水だけは、法力じゃどうにもできないからなー。
 いや、水は生み出そうと思えば生み出せるんだけど、湖には魚だっているかもしれないし、大きな水場があるならそれに越した事は無い。
 水浴びとか出来るだけの水を生み出すのは面倒だし、そもそも生み出したところで確保しておける容器は水筒サイズしかないしな。

 しかし、この辺で飯っつーたら…やっぱ木の実と動物か。
 動物…なんかトンでもないのが居そうな気もするが、そーいうのと会ったら逃げる一択だな。
 狙い目としては…やはりリスとかの小動物か…………殺した後に罪悪感で死ななきゃいいんだが。
 ギンギー辺りは狩っても罪悪感が無さそうだが、アレを食いたくはない。
 木の実…………………こっちの方こそ不安になってきた。
 毒云々以前に、木の実の方に口があって手を伸ばしたら噛みついて来たりしないか?
 ガチガチ草、なんてな。
 でももっと怖いのはイイモデードだ。
 その生態がある意味で怖い……特に話しかけようとして止める辺り、精神的ストレスが偉い事になりそうだ。
 …何、イイモデードを知らない?
 ググれ、こっち違ってそっちにはグーグル先生も居るだろう。
 …尤も、調べた所で限りなくドーデモイイ植物なんだけどな…。



 さて、深く生態を考えると頭痛がしてくるので、とにかく食えるか食えないかを主眼においてサバイバル。
 と言っても、ディズィーを放っておくわけにもいかないから、ウロウロしつつ喰えそうな果物(?)があったらそれを取る、って程度だけどね。
 …ディズィー、イイモデードに興味を示さないで……お願いだから…。
 と言うか、ゲームの方でもこの辺にはイイモデードが蔓延ってたんだろうか?
 …なんちゅーか、襲撃者がコレを見てやる気をなくして帰ってくれそうなんだけど。

 …………ああ、何か話そうとしているのをネクロが気にしている。
 と言うか、焦れったくて今にも爆発しそうになっている。
 頼むからヤメテ。


 しかし…このイイモデードだらけの地帯を抜けようとして進んでいるんだが、これがまた森の奥へ奥へと入って行っている訳だ。
 それは最初から予定の内だから、不安ながらもいいとしよう。
 …森の浅い部分でアレだったんだ。
 深い所まで入ったら、一体どんなブツが出てくるんだ…?
 森の深い所=猛獣やイカレた植物があるって言うのは、どっちかと言うとゲーム的な思考ではあるんだけど…。
 実際、その気持は分からなくもない。
 悪魔が棲む森なんて言われてるだけあって、この森生態系が狂いまくってやがる。
 イイモデードが生えてた時点で、分かりきってた事だったけどな…。
 こりゃー、お爺さんから習った動植物の知識もどこまで通じるか…。
 最悪、毒を承知でイイモデードを食べる事を覚悟しといた方がいいかもしれない。
 どうせ5秒で治るし。


 …取りあえず、黙りこくってても仕方ない。
 元気づける為にも、ディズィー達とちょいと話をしてみっか。


「なぁディズィー、どんな所に住みたい?」

「? どんな…って、どういう事?」

「だからさー、こう…例えば近くに川があるとか、太陽の日が気持いい所とかさ。
 何か無いか?
 個人的には、このイイモデードが生えてない所に住みたいんだが」

「え…そう?
 見ていると、結構面白いと思うんだけど」


 ……ディズィー、君にとってはそうでも、ネクロにとってはイライラする原因でしかないんだよ。
 ウンディーネは…………あ、サクッと狩り取ってる。


「でも、お日様の光は…この森の中じゃ……」

「ふっ、甘い甘い。
 ここでは無理でも、上ならどうだ?」

「上?」

『……木の上の方に小屋を作る、という事ですか兄様?』

「ピンポーン。
 この森なら、デカい木には事欠かないしな。
 小屋じゃなくても、寝床として使うには充分だと思うぞ」

「…木の上…」


 ディズィーが首を傾げて考え込んだ。
 イメージできないようだ。
 まぁ、木登りもやった事ないからなぁ、この子…。


「他には、そうだなぁ…滑り台なんか作ってみるのも面白いかもな。
 適当な板を作って…そうだ、ウンディーネがそれを凍りつかせればいい。
 尻は冷たいけど、きっといいスピードが出ると思うんだよ。
 …安全性に若干の不安が残るけどな…。

 ああ、それに森の動物とも仲良くなれるかもな。
 食う食われるの関係だけは否定できないけど、それ以外なら何とかイケるかもしれん。
 餌付けするって方法もあるし」


 …段々、ディズィーの目が輝いてきた。
 動物達との触れ合いを想像したらしい。
 上手くいくかどうかは別として、今後の生活に僅かながらも楽しみがあると知れば、誰だって元気になってくるだろう。

 …よくよく考えてみれば、外界との接触が完全に絶たれてしまうって訳でもなかった。
 見つかったら厄介だとは言え、やろうと思えば外に出る事もできるし、自分からは出なかったとしてもファウスト先生はきっとやって来てくれるだろう。
 俺個人については…まぁ、ディズィー達が居れば充分すぎるくらいだし、実を言うと機材を使わずインターネットの実現は、もうちょっとで可能になりそうなのだ。
 あと一月二月あれば、何とか実現できるようになるだろう。
 …細かい技術については聞くな。
 ディズィー達が居て、ネットが出来て…これだけで俺は生きていける。
 ヒキコモリとしてね。






 さて、それはともかくとして、森の奥に向かって道なき道を行く事、大体半日。
 歩きにくいったらありゃしないが、ディズィーも何とか慣れてきたようだ。
 それに、顔色と言うか表情も若干明るくなったような気がする。
 でも「…これから、二人きりなんだね」って言われた時は、その場で押し倒してしまおうかと本気で思った。
 まぁ、ネクロとウンディーネにヌッコロされるからやらないけど。

 そのネクロとウンディーネは、羽の姿になってディズィーの背中で折りたたまれている。
 まぁ、こんな木だの茂みだのが一杯のところで人型になってちゃ、歩くのにも一苦労だしな。


 何度目かの休憩で、ディズィーは久しぶりに自分から口を開いた。


「ねぇナッシュ、ずっと奥に向かってるみたいだけど、何か目的地があるの?」

「ああ。
 悪魔の森の中には、何か遺跡みたいな所があるんだ。
 そこが何なのかは分からないけど、取りあえず寝床には丁度いいかなと思って」

「ふぅん……あとどれくらい?」

「具体的な時間は何とも言えないなぁ。
 ただ、方角が間違ってる事だけはないよ」


 ディズィーもそうだが、俺も自分が歩いてきた方向がどっちなのか、正確に把握できる。
 何と言うか…感覚的に方角が分かるっていうのもそうだけど、自分が歩いた距離、手足と地面にかかった負担、その他諸々から総合的に距離と方角を割り出す事ができるのだ。
 ギアの制御プログラムだか演算能力だかで、錯覚してしまいやすい感覚以上に、正確に実際に歩いたルートを把握している。
 まぁ、そういう風にして計算しているって自覚できるのは、ディズィーと比べて生物兵器っぽい一面を強く持っている俺だけで、ディズィーは「何となく」としか説明できないみたいだが。


「遺跡に着いたら、まず何をしようかな」

「お掃除じゃない?
 汚い所で寝たら、病気になっちゃうってお婆ちゃんが言ってたよ」

「掃除にしても、まず水が無いと出来ないよなぁ。
 やっぱり水場の確保が最優先かぁ…。
 ああ、雨降った時はどうしよう」

「やっぱり…寒いよね。
 だったら、こうして…ぴったりしてよ?」


 はぅ!?
 ディズィーが俺に寄り添って、しかもネクロとウンディーネが羽を伸ばして俺とディズィーをギュッと……!
 右からディズィーの体温が、前からネクロの羽の暖かさが、後ろからウンディーネの羽の柔らかさが……俺を包み込みアッチ側まで持っていくッ!

 こ、これは究極合身ですか!?
 いつも抱き合ってたけど、このやり方は思いつかなかった!
 もう押し倒すなんて無粋かつ変態的な事は言わない、ただこの一瞬を出来るだけ長く……!

 俺がラリッているジャンキーみたくヘブン状態に陥っていると、ネクロとウンディーネがモゾモゾと動く気配がした。
 どうやら人型になろうとしているらしい。
 何事か…と思ったら。


『うむ、確かに暖かい』

『これが…極楽というものですか』


 …二人が同時に抱きついてきたよ!
 俺とディズィーを包み込むような感じで。
 …まさか、更なる奥の手があったとは……ディズィー、恐ろしい子…。

 やーらかくて暖かくて、3人分の体臭が混ざり合ってて、麻薬なんかメじゃないくらいのトリップに引きずり込んでくれる。
 …俺、これさえあれば飯食わなくても生きていけるような気がしてきた。
 重度のオタクは萌えから生命エネルギーを生産できると言うが、俺もその境地に達しつつあるのかもしれない。
 ところでマニアやオタクってアニメや漫画が好きな人だけを指すんじゃないよね。
 盆栽だって物凄ーく好きなら、立派な盆栽マニア・オタクだよ。






 …どれくらいそうしてトリップしていただろうか。
 カラスか何かの鳴く声でふと我に帰ると、辺りは真っ暗。
 慌てて体内時計(文字通り体内に時計有り)で確認してみると、もう午後の6時だった。
 …季節が季節だから、まだ暗くなるような時間じゃないんだが、森の中だしなぁ。

 さて、どうしたもんだろうか。
 やろうと思えばまだ歩いて行けない事もないが、多分遺跡までの距離はまだ遠い。
 森を歩きなれた大人の足なら一日で行けるのかもしれないが…俺達にはちょっと荷が重い。
 今からここを出発しても、今晩も野宿する事になるのは変わりないだろう。
 つまり急ごうがマッタリ行こうが変わりないって事だ。

 だったら、このまま妹達とのハグを堪能してたって何の問題もないよね!

 精神的に参っていたディズィーも、大分回復してきたみたいだ。
 やはり寂しい時には人肌の温もりよの、エロス的な意味じゃなくて。

 取りあえず、腹が鳴るまではこのままじっとしていよう。
 はぁ……よくよく考えたら、これからの生活では、きっとこうやってくっつく機会が多くなるんだろうなぁ。
 何だかんだ言っても、他に娯楽が無い暮らしになりそうだし。
 俺は…まぁ、そのうちインターネットを見られるようにするつもりだけども、ディズィー達に同じ事が出来るのかは甚だ疑問が残る。
 何より、他に人間が居ないからな…。
 流石に2人で鬼ごっことかかくれんぼとかしても面白くない、むしろ寂しい。
 『捕まえてごらんなさぁい』『抱きしめてあげるから逃げないデェェェ!』は恋人っぽくて微妙に惹かれなくもないが、こんな陰気な森の中でやってもむしろ落ち込むだけだろう。
 せめて花園でもあったらいいんだが。

 俺達に残された唯一の娯楽は、お互いの存在を確かめあったりジャレたりする事だけって訳だ。
 …ああ、そういえば小動物とかとの触れ合いも残ってたっけな。
 まぁ、そっちはそっちで結構だ。
 小動物と戯れる妹達。
 見ていて和むわぁ。
 ドクロ…もといネクロの上に小鳥が止まっている様なんて、シュールを通り越して鳥葬みたいじゃないか。
 萌える。


 うーむ、しかしこりゃちょっと問題があるっちゃ問題があるかもしれん。
 俺とディズィー達だけの世界。
 俺としては嬉しいんだけど、これは閉じた世界だ。
 色々な意味で人間が小さくなる……のは、個人的にはどうでもいい。
 小さくなろうが広くなろうが世界は世界だ、なるようになる。
 問題は、こうやってハグを堪能しつづけた結果、今回のように時間が経つのを忘れて一日の仕事をすっぽかしてしまう可能性が非常に高いと言う事である。
 具体的に言うと、朝のハグ…と言うか目を覚ましたら寝相で抱き合っていて、「よし起きるまでこのまま過ごそう」と俺・ディズィー・ネクロ・ウンディーネの全員が思っちゃって、結局夜までそのまま抱き合って寝ているとか。
 …うん、多少はね、自意識過剰だなーって自分でも思うのよ。
 俺はそうなってもおかしくないくらいにディズィーを愛でているけど、ディズィーも同じくらい俺を愛でているかは……………あれ、自信がない筈だったのに、何だこの確信?
 そりゃ兄として好かれている懐かれているという自覚はあるけど、そこまで好かれていると自惚れられるような性格してなかったと思うんだが。
 むしろ俺は、好きになればなるほど、相手から嫌われてるんじゃないかと不安になる、基本がネガティブな人間だった筈なんだが…。

 ………そう言えば、寝ている間に何かディズィーの声で「好き好き好き好き」ってエンドレスで囁かれたような。
 でもあれって夢だろ…微妙に声が病んでた気がするし。
 何より、俺は寝ている間でも意識があって、一緒に寝る時はディズィーの寝顔をずっと鑑賞してるんだぜ?
 少なくとも、その間にディズィーが寝ている俺に向かって睡眠学習させていた事は無い。
 むしろアレは俺の願望が生み出した幻聴だと思う。
 そもそも、ディズィーは仮に病んだとしても、そうやって耳元で囁くよりも異様なくらいに優しいフェザータッチでナデナデするタイプだ。
 何と言っても、ディズィーの行動の芯は幼少の頃からその身に染み込ませてきたナデナデだからな。
 食前食後の「いただきます」「ごちそうさま」の代わりにナデナデ、就寝前後の「おはよう」「おやすみ」の代わりにナデナデ、「いってきます」「ただいま」「おかえりなさい」その他諸々の代わりにナデナデ。
 …マジでやりかねんのだ。





 結局、その日は本当にずっとそうしたままだった。
 腹が鳴っても気が付かず、ふと気が付けば妹達は眠っていて、どうやら自分も眠っていたらしい。
 木陰の隙間から太陽の位置を見れば、既に東の方。
 …どうやら、本当に一晩抱き合っていたらしい。
 ぬぅ、愛でるのにも限度があるだろう俺……いや、やっぱり限度なんてない、愛情に限界なぞ無いのだ!
 それはそれとして、流石に腹が減った。
 名残り惜しいが一端離れて食事にしないと、また意識が飛ぶまでハグを堪能し続けて最終的には飢え死にって事になりかねん。
 心を鬼にして、3人がかりのハグから抜け出す。
 人型になっているネクロ達が地面に落ちないように支えて…。


『む…朝か…おはよう、兄』

『おはようございます、兄様。
 昨晩は何とも夢のような心持でした…』


 あ、起きた。
 でもウンディーネは別の意味で眠り始めたようだ。
 見事にトリップしている。

 まぁ、起きているのなら支える必要もないか。
 それよりも朝飯朝飯……。

 ガシッ

「…………」


 ディズィーから離れて、バッグに詰め込んである保存食を取りに行こうとしたら…突然足を掴まれた。
 …この手の感触はディズィーだな……しかし、この握力は何事?
 俺の知ってるディズィーは、こんなに筋力無かった筈だが…でもネクロの手の感触でもないし。
 振り返って見れば、予想通りと言うべきか、ディズィーが俺の脚を掴んでいる。
 そんでもって、ディズィー本人は………眠っているようだ。
 …この眠りは、狸寝入りじゃないな。
 ディズィーの寝顔ソムリエでもある俺が断定する。


「…ネクロ?」

『普通に眠っているだけだ。
 俺達もディズィーの体を操作するような事はしていない』

『ああ、兄様の暖かさときたら、まるで春の日差しのようでした…。
 ついつい周囲の警戒も忘れて没頭してしまい、夢の中でも私を優しく……』


 …未だにトリップから戻ってこないウンディーネはともかくとして。
 ネクロが何もしてないって事は、こりゃアレか、俺が離れて行く事を眠りながらでも察知して、置いていかれないように寝ぼけながらも手が動いたって事か?
 …まぁ、確かに時期が時期だしな…。
 お爺さんお婆さんも、経過はどうあれ…っていうか俺のせいだけど…離れて行っちゃったし、自分に触れていた物が無くなるって事に敏感になっていてもおかしくない。
 断じてヤンデレが発動しているのではない、と俺は主張しておく…俺が主張したところで、何も変わりゃしないけども。

 取りあえず、だ。


「ネクロ、悪いけどバッグ取って。
 朝飯にしよう」

『うむ』


 体を伸ばせるネクロは、こういう時に便利だね。






 今日も今日とて、遺跡に向かって行進。
 と言っても、その行進も昼頃には終わった。
 到着したからだ。


「おお…これはいい寝床になりそうだ」

「うん、お日様の光も入ってきてる…」


 辿り着いたのは、目指していた遺跡…と言うよりは、こりゃ聖戦前の時代の建造物だな。
 それも、コンクリートで出来た、憑依前の俺の時代で当たり前だったような代物じゃなくて…なんつーの、ローマのコロセウムとかパルテノン神殿とか…ああいう、当時でも遺跡扱いだった建物だ。
 流石に100年以上放置されていてボロボロになっちゃいるが…住居として使う分には、そう問題はなさそうだ。
 …掃除をすれば、だけどな。
 ここが俺と妹達との家族愛の城か。
 そう考えると、楽してマイホームを持ったような気分になってくるから不思議である。

 …とはいえ、こりゃちょっと誤算だったかな…。
 今はいいけど、いつか賞金稼ぎ達がやってくるようになったら、この遺跡の場所は非常に分かりやすい。
 詳細不明の悪魔の森と言えど、上空からの写真くらいなら市井にも出回っている。
 俺もその写真でこの遺跡の事を知ったクチだ。
 森の中で暮らすのと、遺跡で暮らすの…どちらが位置を突き止めやすいかと言われれば、言うまでも無く後者だろう。
 まぁ、地上から入ってくるような連中は、よっぽど根性が入っている連中じゃない限りはイイモデードあたりが追い返してくれるとして。
 問題は、ツェップとか聖騎士団とかジェリーフィッシュ快賊団とか、空から飛んでくる事ができる連中だ。
 遺跡に直接降りて来られたら、逃げ回る事も出来そうにない。
 命の危険は無さげな連中なのが救いだが…。

 うむ………うん、やはり当面はこの遺跡を拠点にしよう。
 襲撃を受けるのも今すぐって訳じゃないし、この遺跡にしたって周囲に水場とかがあるかは微妙な所だ。
 陽の光を浴びられる場所って事で、貴重な場所なのは間違いないんだし。


 取りあえず、wktkしているディズィーを連れて、この遺跡の探検だね!








 さて、遺跡に到着して数日が過ぎた。
 遺跡自体は、よくぞ保ったってくらいにボロボロになっちゃいたが、寝床として使用する分には問題ない。
 ちゃんと掃除もしたしね…まだ使用する一角しか終わってないけど。
 やっぱり、ボロボロでもみすぼらしくても、帰る家があるというのは人間らしい心持にさせてくれるらしい…それがホームではなくハウスであっても。

 まぁ、住処としては上出来な方だろう。
 広いし、水場も近くにあったし、ちょっと探せば食べられる果物とかもある。
 …ただ、もうちょっと探すと食べられそうになる事もあるけど。
 単なるリスだと思っていたらサーベルタイガーみたいな牙が生えてたり、遠目に見た時は普通の兎だと思ったらそれは擬餌で、デカい虎みたいなナマモノに喰われそうになったり。
 この世界、食物連鎖の頂点は人間とは限らないからなぁ…。
 正直、こんなトコにディズィーを置いといて大丈夫なのかと思わなくもなかったが、まぁどっちにしろ外の世界にも行けないしな。


 とにもかくにも、何処だって住めば都とは言ったものだ。
 衣食住が確保されているとあれば…まあ、まだまだ不具合や手馴れてない作業も多いけど…後は何とかなるものである。

 さて、そんな森での生活なんだが………ぶっちゃけて言えば、ヒマである。
 なんつーか、時間がゆっくり流れていると言うかね。
 例えて言うなら、朝から晩まで必死こいて働かされて自分の時間を確保できなかったサラリーマンが、突然職を失って、次の日から「ああ、のんびりした時間っていいなぁ…」って思うのと似たような感じだ。
 まぁ、実際の所、お爺さん達と暮らしていた頃に比べてやる事が無い訳じゃない。
 むしろ増えたと言ってもいいだろう。
 料理一つにしても、食材の確保から始めなきゃいけないし、洗濯だって洗濯機なんかないから手洗いだ。
 なお、洗濯に関しては当番制ではなく、自分の分は自分で洗うという取決めになっている。
 それから掃除。
 元が屋外で100年以上放置されていただけあって、掃除しても掃除してもキリが無い。
 あくまで使う事になりそうな部分だけを、気力が無くならない程度に軽く掃除する程度である。

 生活面以外では、ナッシュは生身でインターネットを実現する為に色々と自分の機能やら法力的なプログラムやらを弄繰り回している。
 と言っても、傍目からはボケーッとしているようにしか見えないのだが。

 他にも、周囲の地形を知る為の探索やら、自分にもしもの事があったりした場合の為、ディズィーにお爺さん仕込みのサバイバル技術を教えたりと、やる事は色々。
 それでも時間が余っているように思えるのは、周囲の喧騒とは無縁の場所に居るからだろうか。
 落ち着くと言うか、強制的に落ち着かされる。
 ちょっとテンション上げて騒いだところで、周囲にあるのは木々だけだからなぁ…。
 人の気配が無いところで盛り上がるって難しいよ?



 まぁそれはそれとして…。
 とにもかくにも、この森に来てから時間を持て余している事だけ分かってくれればいい。
 一日が48時間になったんじゃないかと思う程に……ああ、仕事してた時に何度そうなればいいと思った事か…。
 でも本当にそうなったら、働く時間そのものも、要求される仕事量も倍増すんだろな……自分だけ48時間にならなきゃ意味ないわ。
 その為なら、俺は寿命が半分になってもおkッ!

 あー、んでな、その持て余した時間の中に、俺とディズィーが単独行動を取る時間がある。
 例えば、その、お花を摘みに行く時とか、或いは洗濯をしに行く時とか。
 後は食料を確保しに行く時は、日によって一緒だったり別々に行動したりもする。


 で、その一人の時間なんだけど……なんだかなぁ。
 妙に安らぐ。
 ディズィーと離れ過ぎると、また家出事件の時みたいに頭がザワザワしだすんだけど……これはこれでおかしいよな。
 この森は結構危険だから心配しちゃいるけど、ちょっと離れただけで不安が溢れだす程じゃない…背中の二人も居るから、物理的な危険に関しては全く心配していないくらいなのに。
 この感覚は、何なんだろうか?

 疑問は後々考察するとして…何せ時間は有り余っている…、ディズィーに近すぎず離れすぎずの距離を保っている時は、本当に心が静かになる。
 これがマイナスイオン効果か?
 それとも単なるプラシーボか。

 よくよく考えて見ると、この体に憑依してから、こんなに心が静かになる時間は初めてかもしれない。
 人里に居る時は、なんのかんの言ってもギアだって事をバラさないように気を使っていたし、いずれ襲ってくる面倒事をどうにかできないかと考えてばかりだったし、他の時間は全て妹自慢でフィーバーしてたし。
 …ひょっとしたら、疲れてたのかな、俺…。
 妹自慢でエネルギーは自給自足してても、それを受け入れる精神自体は全く休めていなかった、みたいな感じで。

 そうやって時間を持て余している内に、自然と自分の過去…と言うか言動を振り返る事になる。
 別に意識して思い返してる訳じゃない。
 暇を持て余した脳ミソが、情報の整理とかをやってるだけなんだろう。
 日課だった瞑想…まだ続けている…の本来の効果に、そういうのがあるって話だったが…。

 まぁ、何だ、そうやって自分の言動を思い返していく内に………色々と欝になりそうだったよ…。
 ディズィーに対する劣情とか、自分でももう見ちゃいられない。
 何でここまでテンパってるんだよ、俺…。
 そりゃ確かにディズィーは可愛いさ。
 できるならば嫁にしたいくらい可愛いさ!
 愛していますとも!
 が、その愛ってハッキリ言えば家族愛だった筈なんだよ。
 多少の男女間的な愛情が入っていたとしても、ああまで分かりやすく発情するとは思えないんだが…。
 そりゃあさ、愛情って意識して持つものじゃないし、自然とこう……それがラブであれパトスであれ、膨れ上がってしまう事はあるだろうけど。

 いい加減、ディズィーのボディも本気で育ってきたしな…。
 冗談抜きで手を出してしまうかもしれん…。
 こう考える辺り、家族愛じゃなくて完全に男女間での愛または欲望になっちゃってる。
 それも個人的には、育ってからなら構わないんだけどね。



 …まぁ、どうなるにせよ…今までの欲望一直線な自分と比べて、幾らかマシになるとは思う。
 て言うか思いたい。
 可愛いのは確か、成長してきたのを実感して時々ドキッとするのも確か。
 でも基本は家族愛。
 今までのように欲望を持っても、それを持て余すような……………待て。


 ひょっとしたら、コレか?
 劣情が異常なくらいに膨れ上がっていた原因。
 即ち、文字通りの。


 性 欲 を 持 て 余 す 。


 よくよく考えたら、もう一年半以上も性欲発散してねーじゃん!
 !付きで語るような事かと言われそうだが、考えてみりゃ物凄く重要だ。
 欲求が発散されずに抑えつけられたままじゃ、解放を求めて暴走するのも当然だ。
 …でも、最初に『ディズィー可愛いよ可愛いよマジで』状態になった時は、まだそこまで欲求不満になっては……いや、最初の切欠ではなかったにしても、これが俺の暴走を助長させる一因となっているのは確かだと思う。
 自覚したらこう、腰の辺りが…てーかタマキンがズヌッと重くなったよーな…。

 しかし、そうであるなら話は簡単。
 溜まっているなら発散させてしまえばいいのだ、自分で。
 幸い…と言うべきか、お爺さん達と暮らしていた家に比べて、場所は沢山ある。
 家の中だとデキる場所、一人になれる時はトイレに籠っている時くらいしかなかったが、この森の中なら…。

 …訂正、話は簡単じゃなかった。
 場所は簡単だけど、もっと切実な問題がある。
 みなさんご存じの、中華キャノンことロマン砲。
 コレどうにかしないと、多分俺は勃起できない。
 ぬぅうぅぅ、こりゃ本格的に股間のブツに向き合わなきゃならん日が来たのか…。
 出来れば一生目を逸らしていたかったもんだが。


「ナッシュー、まだ帰ってこないのー?」


 …でもディズィーが待ってるから後にするよ!
 ツラツラ考えてる間にも、妖しげなキノコとかちゃんと集めてたしね!
 さて、小難しい事はディズィーを心行くまで愛でてから考えるとしますかね!





アトガキ
ちょっとこれから芸風が変わるかも?
妹自慢より、日々の生活に意識が向きやすくなる…かもしれない。
投稿時PV 93966。



[17288] 16(妹自慢:中)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:bc760c40
Date: 2010/06/13 23:06
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 誰も居ない森の中で暮らしていると、時間の感覚がどうにかなりそうです。
 曜日や月日に縛られる必要が殆ど無い為、何時何分の感覚以外は鈍りがち。
 まぁ、内蔵されているデジタル時計のおかげで、意識すればちゃんと日時は把握できるんだけどね。

 さて、取りあえず近況報告を。
 森に住むようになった当初は落ち込みがちだったディズィーも、何とか立ち直ってきました。
 思ってたより神経が図太いと言うか、順応性が高いと言うか。
 ウチの妹はそーゆー所でもハイスペックだったよ!
 まぁ、落ち込まないのはいい事だ。

 それに、森で暮らすようになったのはデメリットばかりじゃない。
 ネクロとウンディーネが、人目を気にせず出て来れるようになったし、俺自身も角をヘアバンドだと偽る必要も無くなった。
 …覚えてるかなー、俺のヘアバンド…と言うかイチモツ並みに敏感な角。
 根元の所に、ヘアバンドを突き破ったのを隠す為の輪ゴムを付けてるからさー、なんかこう…ナニの根元をギュッとされてるような気分になるんだよ…。
 ヘンな趣味に目覚めたらどうするつもりだ。
 いい加減、角を消す機能を使えるようになりたいものなんだが、まぁ今から使えてもあんまり意味は無いやね。
 …いや、いずれ街にコッソリと物資を調達しに行くつもりだから、その時には必須の機能だな。
 ああ、その時にはお爺さん達に向けて手紙も出そう。
 …でも、引っ越しした先の住所知らないしな…。
 場合によっちゃ郵便屋さんが頑張って、引っ越した先にまで届けてくれるらしいけど、届いてるか確認する手段も無いんだよな。
 返信を待とうにも、こんな森の深くまで入ってきてくれるとは思えん。
 ポスティーノとかテガミバチにでも頼めば別だけども。
 うーん、やっぱり何処かの町に適当な名義で部屋を借りて、そこの郵便受けを時々チェックしに行く…くらいしか手はないかな?

 でもそんな金無いぞ。
 生身でインターネット計画が成就すれば、多分ハッキングとかもし放題になるから出所が怪しい金はナンボでも作れると思う…まぁ、相手は選ばなきゃいけないけど。 
 でもそれをやると、ツェップやジェリーフィッシュ快賊団に行った後がなぁ…。
 ジョニーんトコは元が裏稼業とは言え、そっち方面には手を伸ばして無かった筈。
 と言うか、マジで警察から追っかけられそうなので極力やりたくない。


 ま、後の事は後で考えるとして、だ。
 森での生活自体は、順調と言ってもいいレベル。
 食べられる果実の種類も分かってきたし、洗濯だって慣れてきた。
 火を起こすのも法力を使ったり、或いは原始人みたいに木を擦り合わせて火を起こす方法も覚えた…大抵は法力を使うけどね、煙も殆ど出ないし。
 遺跡の方も、俺達が使う一角だけは大分綺麗になってきた。
 問題があるとすれば、単純にヒマって事かな。
 時間を持て余してる時は、揃って日向ぼっこしてるか、ナデナデし合って惚けているかのどっちかだ。
 惚け過ぎて次の日の朝まで気が付かない事は何度もあったけどな!

 で、その持て余したヒマな時間で、俺は本格的に考えるべき問題に着手した。
 そう、前の思考ログの最後にもあったが…性欲の発散、即ち072を可能とするべく、相変わらずショボーンとしたままのナニを何とか勃起状態に持っていこうとしたのである!
 …ここ、ファンファーレ付きでね。
 アポロ計画よりも遠大で、男として重要な計画と言えるだろう。
 だが『はやぶさ』には勝てん……憑依直前に探査衛星の事を知ったんだが、無事に帰ってきてくれているといいんだが…。

 戯言はともかくとしても、実際重要なのは間違いないかった。
 先日、性的な欲求が溜まりに溜まっているのを自覚して以来、時々気が狂いそうになる事がある。
 特にディズィーとベタベタしている時に、ここ最近で急激に女性らしい丸みを帯びつつある体を感じたり、ちょっとずつ質が変わりつつある体臭に気が付いたり、俺の首筋や手を撫でるディズィーの仕草に妙に色気を感じたり。
 他にも、ネクロが触手っぽい手をウネウネさせていたり、ヒラヒラと揺れるローブの中がチラリズムを体現したかの如く一瞬だけ覗けそうになったり、羽型から人間型に変わる時に「肉感的なボデーにならないかなぁ」なんて妄想しつつジッと見つめてしまったり。
 更に、ウンディーネが「撫でてください」と寄って来た時に頭じゃなくて胸とか服(?)の下に手を突っ込みそうになったり、「口だけあればエロスには充分だよなぁ」なんて不埒な考えを持ってしまったり、寝ている時に「兄様…」なんて寝言を呟かれた時は、夢の世界に引きずり込んで凄まじい事をしてしまいたくなった。
 …改めて考えると、我ながら欲求不満もいい所である。

 だが断固として主張させてもらうが、これは俺がヘンタイな証拠と言う訳じゃない…いや確かにヤバい嗜好があるのは否定できないけども、それとは別次元の問題だ。
 誰だって禁欲生活がずっと続けば、多少方法に問題があってもそれを発散したくなるものだ。
 それが生物の三大欲求なら尚更である。
 分かりやすく言えば、呑まず食わずで3日も過ごせば多少カビてるパンでも御馳走に見える、という話だろう。
 ま、それが真実かどうか、人に受け入れてもらえる理論かどうかはさておいても、だ。
 いい加減ナニの反応が全く無しっていうのは男として本格的に問題だ。
 性欲発散の為にも、将来誰か嫁さん貰った時の為にも、コイツに真剣に取り組むべきだ。
 この……股間の浪漫砲に。
 ………股間の浪漫砲に真剣に取り組むって、なんつーか人聞きが悪いな…。

 ま、ジョーダンはともかくとして、だ。 
 実際どうやったら勃起するものやら。
 欲求不満な状態でディズィー達との濃密なスキンシップをあれだけ繰り返し、それでも無反応なんだから性的な刺激でどうにかできる事じゃあるまい。
 最終的にそこに持っていく事が目標だが、一足飛びにその方法を見つけ出せない以上は一つ一つ方法を探していくしかあるまい。
 朝立ちも復活してほしいしな!


 まず考察するのは、以前考えた事。
 即ち、浪漫砲が男の機能と連動していて、発射体勢に入らないと勃起もしないという可能性。
 考えるだけで欝になってくる話だが、現状これが一番説得力がある。
 仕込まれている所が所だからして、男の機能と無関係とはとても考えられない。
 せめてヘソの辺りからニョキニョキ生えてくる形式にしててくれりゃ良かったものを…。
 …顔も知らない設計者への愚痴は置いといて、もしもこの考察が当たっていた場合、どうすれば男としての機能を取り戻せるだろうか?

 取りあえず一発撃ってみる、というのも手ではある。
 だが普通に怖い。
 敏感かつ重要なところが、一発撃っただけで再起不能どころかグシャッと飛び散ってしまいそうな予感で一杯なのだ。
 物理的に弾けてしまいそうで洒落にならないのだ。

 とはいえ、まぁ発射に至らなければ問題無いと言えば問題ない。
 一応、途中で発動をキャンセルさせる機能は付いている事が確認されている。
 いかほど信頼できるかは、微妙なところだが。

 ディズィーはこの時間、水場で水浴びしてる頃だし………うっ、イカン、抑え込んだ筈の欲望が疼くッ…!
 邪気眼なんぞ目じゃないくらいに……眼なのに目じゃないとはこれいかに……疼く、いやマジで!
 早めにどうにかせんと、俺は本気で覗き魔と化してしまうやもしれん。
 この際、細かい不安は忘れてチャレンジ!


 …浪漫砲の発射=性欲の発散なんて図式が成り立ちませんよーに!
 発砲と射精は別物であってくれ!
 『精通は銃弾やレーザーと共に』、なんてどんだけイカレたキャッチフレーズになるんだよ。





 えー、場所は寝床からちょっと離れた森の中。
 周囲に動物の気配なし、ディズィーはまだ水浴び中(レーダーによって位置を確認しただけだ!覗いてないよ)。
 では、大きく息を吸って―。
 吐いて。
 吸ってー。
 吐いて。

 では、手順に則りチャレンジ!



 壱、 一撃必殺技準備・コマンド入力!
 おお、なんか体の周囲から赤い光が立ち上ったよーな気がしなくもない!


 弐、 右脇腹の浪漫回路フルドライブ!
 浪漫回路の動力源は心のトキメキ!
 即ち俺と妹達とのキャッキャウフフする日々の日常、それこそが我が最大のトキメキよ!
 これに煮えたぎる欲望と益荒男パゥワーを注ぎ込む!
 具体的にどんなモノかは口にしない。
 考えるな、(欲求を)感じろ!
 

 参、 浪漫砲こと中華キャノンに弐のエネルギーが全て注ぎ込み、フル充填させる!
 おお、おおおお!
 分かる、分かるぞ!
 俺の浪漫砲にエネルギーが注ぎ込まれるのが!
 なんとも心地よく、そして懐かしい熱さよ!
 今なら美味い物を食べた味皇様の気持ちがわかるかもしれん!

 これはアレだ、マジで射精寸前みたいな感覚だ!
 ……でも何か違う、と思ってよーく調べてみたら……中華キャノンのエネルギー貯蔵タンクにこそ、確かに力が注がれているものの…肝心のナニは、まだピクリともしてない。
 …なんか、悲しくなった。
 だがまだ諦めるには早い、本命の段階はこの後だ。


 死、 照準・トリガーのロック解除!
 む…?
 何かこう、腰の奥の辺りでカチッと何かが外れた感触があったような…。
 おお、これは本気で期待が持てるかも。
 …いや、期待つーても、本当に浪漫砲を使わないと勃起しないって事だったら、それはそれで大ショックなんだけども。


 伍、 中華キャノン充填で余ったエネルギーが注ぎ込まれッ………………!


 ボッ

 ボッ


 ぼぼぼぼ


 勃起!


 キターーーーーー!!!!


 よっしゃ、とにもかくにも立った!
 クララよりも立つのが難しかったナニが立った!
 浪漫砲を使わないと立たないという衝撃の事実が判明したとはいえ、立った事には変わりない!
 これは一般の人間にとっては小さな一歩であるが、俺にとっては偉大な飛躍である!

 よし、よしよし、ぃよーしよしよしよしよーし!

 この調子で、このまま威力とかを検証してやるぜ!
 なんかもうテンションがトップギアに入ってて、後の事なんか何も考えてないけども!
 ここまで来たんだし、止めるのも無粋ってモノよ!
 と言うかマジで射精寸前な気分で、ここで止めたら俺は絶対ディズィーに襲いかかる衝動を堪え切れなくなっちまう!

 とにかくブッ放してやるぁーーーーーー!!!!




































        v---ヘ           ∴_ ヘ∧/|_;;_′∵
      / /    ◎\         ∵ \ ど   /ξ∵
      |n|  ◎ム  |         ∴ <  が  > %
      \\   ∀ /          ∵∠   ん > ∂;;
        \二-/            //∨\| ";;;;∴
       -====''''''''=''''''''=====-       // ;;;;#"";;∴";;:ヾ
    ())》|||    Å   |||》     //   ∴∵
    // i...||  //||ヘヽ. ||\\ //
   //  |.. ||. // || ヘヽ||  //
   Oニ .ヽ||/   ||  ヽ|ミ" ミ
   \ヽ  ||======= ミ  ミ
     \ヘ ヘ( ⌒())/◎ミミ
      <  \ / /ヘ
 < 二二二 \/へ/\/二二 >
 0)⌒)             0)⌒)
  \\            //
    \\         //
   ( ((二0      ( ((二0
   [二二エ]     [エ二二]




























 死にたくなりました。

 ぐ、うごぉぉぉぉぉぉ……さ、先っちょマジ痛ェ……一撃必殺技かと思ったら自爆技かよ…。
 いや、ナニがブッ飛んだって事はないんだよ。
 ただ初めて使ったからなのか、無理やり回路がこじ開けられたような感じがして…ホント痛ェ…。
 多分だけど、次からはこの痛みは…無いとは言わないにしても、大分軽減されると思う……そう願う。

 威力については、アホみたいなレーザーが出て……と言うかアレ絶対ガンマレイだろ。
 まぁその、見てくれはともかくとして、威力はありそうだった。
 空に向けて放ったんで実際には何とも言えないけど、収束させて撃った為かディズィー達が使うガンマレイより貫通力は非常に高そうだった。
 …何で普通にガンマレイ使えないんだよ俺。
 いや、それはこの際いいんだよ。

 本当に死にたくなったのはさ…。
 射精はしてないにも関わらず、スッキリしちゃったんだよ…。
 今軽く賢者タイム中なんだよ…まぁ、溜まった性欲が全部発散されたかと言われると、まだまだ溜まってる分があるんだけどさ。
 それよりも、射精せずにスッキリした……でも砲撃はした。
 つまり、浪漫砲発射=性欲発散……恐れていた図式が、マジで現実になってしまった。
 くそぅ、単なる思い付きの可能性だった筈なのに、どうしてイヤな方面に限って全部ビンゴになってんだよ?
 と言うか、扱かずに発射だけしたから、なんか自分でシたって感じしねぇ…。

 それにね、とっても心臓に悪い事があったの。
 発射した直後にね、なんか股間から「ぱきーん」って音が聞こえたの。
 何かが砕けるような音だったのよ!
 その音が聞こえてから、ナニが脱力して、どう刺激しようが反応しないし、もう一回浪漫砲起動させようとしても全然反応無いし…。
 いやまぁ、実際出した直後だったから、ダラーンってなるのは仕方ないんだけどさ。
 ………聞こえてきた場所が場所だし、「あ、インポになる」って思っても仕方ないじゃん!?
 まさか一撃必殺技どころか、一生に一発限りのネタ技だったのか?と本気で不安になった。

 …が、よくよく考えてみたら、ゲーム的な説明は付く。
 何でって、一撃必殺技だから。
 アレって、一度使ったらテンションゲージが無くなって、そのラウンドまで使えないんだった。
 それと同じで、一度使ったら暫く使えないのかもしれない。
 …30分くらいで、復活してくれる事を祈るッ……!




 はー、しかし何だな、一応スッキリできたのは確かだ。
 不完全燃焼もいい所だけど、今までよりは冷静にディズィーとのスキンシップに励めると思う。
 とはいえ、所詮は一時しのぎにすぎないのも事実だ。
 と言うか、特に寝る時とかが本気でデンジャーなんだよなぁ。

 何でって、ディズィーが寝袋を気に入っちゃったからだよ。
 しかも本来の使用方法じゃなくて、森に入って最初にやった時みたいに、二人で一つの寝袋に入って寝るのが。
 密着感と言うか、ギュッとしあったまま寝るのがお気に召したらしい。
 …今はいいけど、夏には勘弁してほしい。
 流石に暑過ぎて汗疹とか出来そうだ。
 ……今までだったら、ここで「ディズィーの汗で濡れた肌とぴったり抱き合ってハァハァ」とか言ってたような気がするが、うん、今の俺は割と冷静だな。
 やはり(方法には目を瞑るとして)発散してよかった。
 が、本当にヤバいのは汗じゃない。
 ぶっちゃけて言うが、乳とかだ。
 成長期の体を、惜しげもなく絡みつかせてくるからな…。
 いやホント、抱きつくって言うよりは絡みつくって感じなんだよ。
 腕は当然、まだ短いシッポや足だって搦めてくるし。
 まぁ、寝袋を使ってなかった頃もそうだったし、いつもの事と言えばいつもの事なんだけど、狭い寝袋の中だから身動きが取れないし密着感が半端ない。
 おかげでディズィーのスリーサイズを体で覚えてしまったぜ。
 …ホント、日々ちょっとずつだけど胸のサイズが大きくなって………………いかん、性欲発散が足りなかったか…。


 もう2、3発ヤッておきたい所だが、まだ第一射から5分も経ってない。
 浪漫砲はまだ起動できないままだ。
 こんな代物を日に何発もぶっ放すのも何だし、とりあえず水浴びでもしてくるかな。
 まだヒリヒリするんだよ…。

 あー、でもディズィーの水浴びはもうちょっとかかるかな?
 乱入したら、ひ○た荘の管理人よろしくガンマレイでぶっ飛ばされ……ないだろうなぁ。
 ディズィー、まだ男女間の機微って物を理解できてないし。
 だからと言って、これ幸いと突っ込んでいくような事はしないよ!
 そんな事したら、ディズィーの情操教育の邪魔にしかならないからね。
 ネクロとウンディーネも、乱入してきたのが俺だったら何もしない気がする。
 …まぁ、流石に獣のような目でハァハァ言いつつナニを見せつけて襲いかかろうとすりゃ話は別だろうけど、誰だってそんなのが来たら悲鳴を上げて逃げようとするか撃退しようとするか怯んで一歩も動けないかだ。

 なんて事を考えていたら、ガサガサッと茂みが揺れる音がした。
 あー、ディズィーだなこの大きさ。 
 ここらには人間サイズの動物は居ない。
 小動物か、人間なんぞよりずっとデカいナマモノくらいだ。
 水浴び終わったのかな?
 …何か妙に急いでる気がするが……?


「兄さん!」


 ぬあ!?

 茂みから飛び出してきたのは、確かにディズィーだった。 
 ディズィーだったけれども……何故にバトルコスチュームですか!?
 しかも水浴びして体を拭いてないのか、濡れた肌にボンテージのような衣装が……な、なんか背徳的だ!
 おかげでテンションゲージがマックスになっちまった!
 ……おお、こりゃ浪漫砲も使えるようになってる。
 これもディズィーの可愛さとか自覚の無いエロさとかの賜物か。

 なんて言ってる場合じゃなくて。
 俺を兄さんと呼んでいるのは、それだけ慌てている証拠と言えよう。


「どうした!?
 何かに襲われたのか!?」


 こんなに急いで、体を拭きもせずに走ってくるとは…緊急事態か!?
 ウチのディズィーに手を出すのは何処のフランス人だ!?
 やっぱりKYなのか!?
 それとも賞金稼ぎか!?
 初っ端からデンジャラスなのは来てませんように!


「兄さんこそ!
 襲われたのは兄さんじゃない!?」


 …………え?
 俺?
 何で?
 別に何も無かったよな。


『兄様、一体何事ですか!?
 先程、兄様のエネルギー反応が急激に昂って放出されるのを感知しましたが』

『周囲に敵の反応は無い…。
 兄も特に襲撃を受けた様子は無いが……』


 ………………………あ゛。
 そ、そーいえばネクロとウンディーネはレーダーっぽい機能を持ってたような…。
 それで、俺がさっきぶっ放した浪漫砲を戦闘行為と認識してスッ飛んできた訳ね…。
 あ、あははははは………。
 俺考えなしと言うか迂闊だなぁ、村を出なきゃいけなくなった切欠だって俺の思慮不足みたいなもんだし、ちょっと迂闊すぎるぞ俺…。


『もしや…兄、ギアの戦闘衝動を抑えられなかったのか!?』

「! 兄さん、しっかりして!
 お婆ちゃんだって言ってたじゃない、その衝動に耐えないと…」


 うごおおおおおお!
 そ、その話に触れるのは勘弁してくれぇぇぇぇ!

 ……し、しかし事実を話す事もできないし…ディズィーには性欲云々を語ったって、まだ理解なんぞできないだろう。
 …いや、そろそろ体の方は目覚めてもいいかもしれんけど、ディズィーには知識やら情操ってものが全然足りてないし。
 ネクロやウンディーネは一応そういうのにも理解はあると思うが(ウンディーネは「フケツです兄様!」とか叫びそうだ)、いくら理解があったって浪漫砲発射=性衝動発散なんて狂った図式は打ち立てられないだろう。
 …………どうやって誤魔化そう…。
 











 取りあえず、何とか誤魔化す事はできた。
 どうやったかは聞くな!
 んで。


「そう……よかった……」

『うむ…』

『心配をかけさせないでくださいよ、兄様…』


 ネクロとウンディーネは、人型から羽型に戻った。
 …むぅ、折角人目が無いところで生活してるんだから、もっと出てくればいいのになぁ。
 でも羽の方がデフォルトの形で楽だって本人達が言ってたし、俺がどうこう言う事でもないか。

 俺が無事だと知って気が抜けたみたいで…ホントに優しい子達だねぇ…、ふぅ、と一息吐いて脱力する。
 そしてバトルコスチュームも解除された。









 ………… ディズィーは はだか だった !

 ………え、はい?


「? ナッシュ、どうし…………あ」


 でぃずぃー は はだか な ことに きが ついた!


「え、えっと…」


 …何やら迷うような仕草のディズィー。
 おっぱいも大事な所もモロ出しで隠そうとしない。



 ……なんだ、その………綺麗だった。
 煩悩とか欲望とか叩きつぶされるくらいに。
 …あれー、ディズィーの裸ってこんな感じだったっけ…?
 ロリボディを卒業して女性っぽくなりつつあるとは言っても、こんな風な…綺麗、なんて感想が出てくる程じゃなかったような…いや、そりゃディズィーは可愛いし大好きだしいいニオイするし愛してるしスベスベだし、そういう意味じゃ充分キレイなんだけど、今目の前に居るディズィーは何ちゅーか、芸術品みたいな綺麗さとゆーか…。
 今まで大抵一緒に風呂入ってたし、森に来てからも何度か水浴びに付き合わされたけど…こんなんだったっけ?
 それに、まだ賢者タイムが後を引いてて普段より幾分冷静になってっけども…何で俺、こんなに冷静なんだ?
 テンションゲージはマックスで固定されたままなのに、なんかこう…冷静な部分というか、醒めている部分があるような…。
 
 ………って、ちょっと待て。
 ディズィー、その…何を出してんの?
 その目も眩むよーな閃光は………ってネクロ!?
 いや、そりゃ確かに「こういう場合は吹っ飛ばす」ってらぶひなを題材にして教えたのは俺だけども!
 ちょっ、ガンマレイは駄目ェェェェェェェェ!!!!!









 死ぬかと思いました。
 ネクロ、確かにそーゆー方法で止めてくれって頼んだのも教え込んだのも俺だけどさぁ、もうちょっと手加減してくれよ…。
 ウンディーネ?
 ………蔑みの視線で見られましたよ。
 そりゃ確かに年端もいかない少女に思いっきり見とれちゃったけどさぁ、自分から見に行った訳じゃなくて事故みたいなもんなんだから、もうちょっと…いえ何でもないですごめんなさい。


 ちなみに今、俺は水浴び中です。
 ヤローの入浴シーンなんざ誰得…まぁ、阿部さんの同類なら興味もあるんだろうけども。
 え、何でディズィーの入浴シーンを見せないのかって?
 そりゃアンタ、俺がムカつくからに決まってるじゃない。
 一緒に水浴びしようって誘えばOKしてくれるだろうから『俺は』合法で見られるけど、何でそれを他人に晒さなきゃアカンのん?
 家族の入浴シーンを写真に撮って売りさばくような真似してたまるかい!
 …待て、今俺誰に向かって話しかけてる……これって単なる思考ログだぞ、それを誰が見るって言うんだ……本格的に何か受信し始めたのか?
 でもこーゆー事は前から結構あったしなぁ…。

 ま、それはともかくとして、何とか浪漫砲の痛みも治まってきました。
 そうして冷静な思考が戻ってくると、やっぱりこれからの事を考えてしまう。
 今後の方針とか人生とかの問題じゃなくて、性欲的な方面だけど。

 今回の一発である程度スッキリはしたものの、性欲なんて一日あればそれなりに溜まってしまうモノ。
 定期的に発散しないと、またディズィー達に性的な要素を求めるようになってしまいかねない。
 …他に対象が居ないからなぁ……まさか木のウロに欲情できる筈も無いし、もしそうなったら男として色々な意味で終わってしまう。
 『だったらハッサンすればいいじゃない』なんてモヒカンな事を…もとい、『発散すればいいじゃない』なんて身も蓋もない事を言うかもしれないが、それが問題なのだ。

 何が問題って、俺は現状では浪漫砲を使わないとスッキリできない。
 そして浪漫砲を使う為には多量のエネルギーが必要で、それを隠蔽する事はできない…少なくとも現状ではね。
 つまり、スッキリしようとする度に、それをディズィー達に知られてしまうって事なんだよ!
 いやディズィーはまだいいんだディズィーは。
 まだ性欲って物を理解してないし、ディズィー自身には高まったエネルギーを感知できるレーダー機能は無い。
 さっき駆け付けてきたのだって、ネクロ達が気付いて教えたかららしいしな。
 だからあの二人に『気付いても知らないフリをしてくれ』って言えば、ディズィーには知られないで済む訳だけど……代わりにネクロ&ウンディーネに知られる事には変わりないじゃんか!

 しかも、あの二人は『そういう事』を理解している。
 エネルギーが昂れば、『これから072しますよ』って宣言してるようなもの……いや、砲撃=性欲発散って事はまだバレてないんだし、『ギアの衝動を適当に発散してるだけ』って言っとけば誤魔化せるか?
 それをディズィーに知られないのも、心配させたくないからだって言い包めれば……しかしいつかはバレるよな。
 ディズィーには心配かけなくても、二人には心配かける事になるし。
 その時はフルボッコどころじゃ済まないぞ。
 覚醒必殺技のオンパレードくらい覚悟しておいた方がいい。
 当て身技じゃない『ネクロ怒った場合』が来る……そういやディズィーって一撃必殺技無かったよな。

 ん~、勃起準備OKになるのが、エネルギーが充填された後っていうのが痛いよな…。
 その辺の順番が違っていれば、小さなエネルギーだけで勃起まで持っていけるのに。
 やっぱり、こう…手で刺激しないと、気分出ないしな。
 現状でやるとするなら、エネルギーを充填してデカくなった状態で、浪漫砲発射寸前の状態で我慢しつつ、自分の手でヤるって方法になる。
 ……考えるだけでもスゲェ辛いわ。
 ぶっ放つ時のあのテンションは射精したくて堪らない時の感覚に近い。
 ぶっちゃけ、我慢しようにも我慢できない…精々、数秒程度だろう。
 本当に出すならPC筋だかその辺の筋肉を鍛えればどうにかなるだろうけど、これって砲撃だし。
 仮に我慢できたとしても、収束ガンマレイをいつ発射する事になるか分からない器官を手に握って刺激するなんて、危なっかしくてできやしない。
 ちょっと想像してみよう。
 シコシコやってる間に我慢の限界が来て、自分の手を吹き飛ばしながら砲撃と精液が同時に飛んでいく……… イ ヤ す ぎ る 。

 よくよく考えてみれば、発散の為に浪漫砲を連射してたら噂になっちまう。
 こう…例えば『悪魔の住む森から、日々立ち上る謎の閃光! これは噂されているギアの仕業なのか!?』みたいな感じで。
 その手の話題に喰いつくパパラッチがどれ程鬱陶しいかは、村を出る前に経験済みである。

 あークソ、こうなりゃ男の尊厳云々は置いといて、発散だけに要点を絞るか?
 ぶっちゃけた話、勃たなくても出す事はできる。
 中学の時に間違った072してた時の体験談だ。
 それなら、エネルギーを昂らせずに性欲発散が出来る。
 …非常に物悲しいけどな……。
 背に腹は代えられん。
 …どうでもいいが、背と腹ってどっちが重要って意味なんだ?
 背中と腹じゃ腹の方が重要に思えるんだがな…食欲的な意味で。
 

 うむ…これ以上考えても、現状ではどうしようもないな。
 何だかんだ言っても、今日はそれなりに進展があった一日だった。
 これ以上を望むのは贅沢ってものだろう。

 余計な事はもう考えずに、今日はさっさと水浴びを済ませて、ディズィーと抱き合って眠るとしよう。
 あんまり水浴びに時間をかけてると、様子を見に来ないとも限らないしね。
 今日はそれなりにスッキリしてる分、ディズィーと抱き合う事になっても性的な方面に思考が暴走する事はない…と思う。
 さっき見たディズィーの裸……つーか、芸術っぽくヌードって言った方がいい気がする……も、欲望の対象と感じるよりも『穢れないモノ』って感じだったし。

 ま、ゆっくり眠らせてもらうとしましょうか。
 …夢の中でディズィーの寝顔鑑賞は止めないけどな!






あとがき
おかえりなさいはやぶさああああああああ!!!!
ニコニコでプレミアム会員じゃないので、放送が見れません。
たまたま入れたんで、おかえりぃぃとだけ入れといたけどね! 
なのでこっちで叫んだよ!
裸で正座して待ってたよ!
PV99757



[17288] 17(妹自慢・中)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/06/20 21:37

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 賢者モード(偽)を習得してはや数日。
 幾分か冷静にディズィーと接する事ができるようになりました。
 出したのが一発だけとはいえ、それなりに発散できていたらしい。
 ま、男のゴールデンボールなんて、生物学的に言えば三日もありゃ満タンになって、それ以上我慢してても一日にヌけるのは3発程度だしね。
 単純な計算だけど、一回だけでも計算上では1/3は発散できた事になる。
 …ただ、そうやってスキンシップの間も比較的冷静なテンションを保っていたら、ディズィーに「調子でも悪いの?」って心配されてしまった。
 …妹よ、兄は心配してくれて嬉しいのと同時に、何て言えばいいのか分からないよ…。
 いや自分でも自覚はあったけどこれまでの行動がそれぐらいにアレだったって事か?
 …どうすりゃいいんだよ俺。
 「どんな顔をすればいいのか分からないの」って言われたら、俺は迷わず「笑うしかないと思うよ」って答えるぞ。

 まぁ、砲撃しないと発散できないとう難点は何れどうにかするとして。
 最近、ディズィーに対する感情がちょっと変化してきたような気がする。
 この前、裸のディズィーを見た辺りから…なのかな。

 一応ね、今まではディズィーを保護対象みたいに見てたのよ。
 欲望の対象にもなっちゃってたけど、そこは勘弁してほしい。
 俺だってヤリたい盛りの年頃なのだ。
 体は性を覚える14歳前後、中身は油ぎった…とまでは言わないけどオッサン一歩手前。
 いくら保護欲を掻き立てる可愛らしいディズィーが相手でも、性欲が抑圧され続けていればそーゆー視線の一つも向けてしまう事もある…ロリでもあってもな…。
 まぁ、何だ……納得できなかったら、妹でも女であると認識していた、って事にしてくれ。
 ただ、妹の方に重きを置いていたつもりだ。
 それが……なんかこう、女の方にちょっと天秤が傾いた気がする。
 ……ちょっと違うな。
 正直自分でもこういう表現はどうかと思うんだが……ズリネタに出来なくなった、って感じじゃないか?
 いや、今までもネタにはした事無いけどさ…だって物理的に出来なかったし。
 ああ、でも憑依前ではネタにした事あったな…三次元よりも二次元の方がネタにしやすいお年頃だったっけ……。
 何せ年齢的にアダルトサイトは見れないし、ビニ本だって買う勇気は無かったし、実物なんかお目にかかった事もなかったし……そのクセ、18禁って書いてあるエロゲは中学生でも買えたがな!
 ………今となっては黒歴史だ、「ひょっとしたらバレてないのかな?」とか思ってたのが特に。
 エロゲ自体には、あれから10年以上経った時も相変わらずお世話になってたけど。

 話が逸れた。

 えー、ディズィーに対する気持だけどね。
 ………なんて言えばいいんだろ、よくワカンネ。
 元々人付き合いも少なかったし、人に対する機微って物も鈍い俺。
 自分の気持ちも分からない。
 「ひょっとして、これが恋? 濃いとかシスコン魂じゃなくてマジで恋?」とか思いもしたけど、それはそれで違う気がする。
 なんつーか……今までみたいにブッ飛んで妹自慢に突っ込んでいくような感じじゃなくて、一歩離れて見守る…違うな、ちゃんとした対応……じゃない……。
 …そうだ、アレだ、「等身大で付き合えるようになった」というのがシックリ来る気がする。
 だったら今まではどう付き合ってたんだって聞かれると、ちょいと心苦しいが…幻想と付き合ってた訳でもないしね。 
 ただ、俺がいつの間にか作ってしまっていた、フィルターみたいなものが外れた感じはある。
 …いや、単に俺が見ないようにしていた部分、かな。
 欲求や欲望で暴走していた為に鼻に付かなかった、常識的な部分……まぁ、一般的にフェチとか倒錯的嗜好とか呼ばれる部分について、『汗臭いな』とか『足の指は舐める所じゃありません』とか思うようになったくらいだ。
 …と言っても、自分でもアレな趣味がある部分は自覚しているので、テンションが高くなってきてたらまたハァハァするだろうけどね。
 興奮してる時ならおしっこでも聖水、通常モードなら単なるおしっこ、と言う訳ですな。
 ま、ディズィー自慢をしている以上はテンション高くなりまくりだから、結局ハァハァするのには変わりないがな!

 んー、まぁ、何にしろ人間って変わって行く物だって言うし、俺のディズィーへの感情だって変わらない訳じゃないだろう。
 嫌うって事は無いにしても、いつまでも子供扱いできるもんじゃないしな。
 手のかかって仕方ない子供を見る目から、それなりの年頃の少女を見る視線になった、って事にしておこう。
 うん、肉体年齢からすると、反抗期もうすぐだしね……。
 ………俺、生きてられるかな…。

 …考えても仕方ないや。
 反抗期になったからって、いきなりぶっ飛ばされる訳でもないし………ないよね?
 とりあえず、加齢臭で嫌われる覚悟…はまだ早いか。
 なら寝床を別々にしようっていう提案が来るのは覚悟しておこう。





 さて、近況報告です。
 なにはともあれ、生活が安定してきたし、日々の暮らしにゆとりというヤツを感じられるようになってきた。
 それにディズィーの側に居るだけで暴走しかかるような事も無くなったしね。
 朝起きて、ナデナデして、昨晩から準備しておいた朝ご飯食べて、ナデナデして、水浴びして、ナデナデされて、洗濯して、ナデナデし合って、食料を探しに行って…。
 …そうやって行動の合間合間にナデナデが入ってるのは、まぁいつもの事として。

 やる事やったら、後はもうヒマな時間だ。
 村に居た頃のように、一緒に遊びに行く相手が居るでもなし、勉強するでもなし、パソコン使ってインターネットするでもなし。
 ぶっちゃけやる事が無い。
 食料探しは結構な時間を使うけど、一日全部を使う訳じゃない。
 この森、悪趣味な植物が山ほど生えてはいるけど、その分食材も豊富なのだ。
 見た目を気にしなければ、食べられる物は山ほどある。

 …とにかく、ヒマな時間を持て余している俺としては、生身でインターネット計画を進めたり、まだ理論の半分程度しか理解してない法力理論を確認して頭を捻ったり、ディズィーと日向ぼっこして過ごしている訳だ。
 基本的にも応用的にも平穏な日々。
 何れやってくる物騒極まりない方々について考える事もあるけど、そーゆー時は大抵日向ぼっこの最中なので、日差しの暖かさに負けて寝てしまうのが殆どだ。
 …正直、このまま人間社会に戻れないくらいに順応して堕落してしまいそうで、ちと怖い。
 よく考えたら、現状の俺ってニートだね!
 だからどうだって話だけど。



 …話は変わるけど、自己啓発か何かの方法に、以下のようなのがあると聞いた事がある。
 まず、何も無い四角い部屋で、角に向かって座る。
 音楽とかは何も無い、静かな状態が望ましい。
 そして一つ、考えるべき課題を与えられる。
 例えば『両親について』『今までの人生について』『償っていない失敗について』…まぁ、そんな感じの課題だったような気がする。
 後は丸一日ただずっと座っているだけ。
 そうしていると頭が退屈してきて、色々と考えだす訳だけど、それもすぐに飽きてしまう。
 そりゃそーだ、見えるのは何も無い部屋の、更に何も無い隅っこだけ。
 そうなると、脳ミソは与えられた『考えるべき課題』に意識が集中しだす…ヒマ潰しにね。
 結果、親孝行について延々と深ーく考えて、自分がどれだけ親不孝者だったか気が付いたりして涙まで出てくる、というお話である。
 …憑依前、塾に通ってた頃に一度聞いただけの話だから、大筋しか覚えてない。

 あー、何が言いたいのかと言うと、だ。
 俺も一つの課題を抱えているって事で、ヒマを持て余した為にそれについて延々と考え続けているんだ。
 …少々ウトウトしながらね。
 その課題が何かと言うと、ファウスト先生が前に言っていたアレ…『俺の愛情が何処からくるのか』という奴だ。
 ああそうそう、そのファウスト先生だけど、森に移ってからはまだ来ていない。
 今までの周期からすると、そろそろやってくる時期なんだけど…。
 ひょっとしたら、村の方で何かフォローでもしてくれているのかもしれない。
 …とはいえ、流石に一朝一夕でどうにかなる問題じゃないしな。
 出来たとしても、精々火種を抑えておくくらいか。
 それだけでも充分ありがたいけども…。

 さて、肝心の『俺の愛情が何処からくるのか』なんだが…。
 先日自覚した通り、溢れ返って余計な汁とか滲みでてしまうようなあの愛情は、幾らか欲求不満から来る部分があったのは確かだった。
 確かに、アレを自覚しないままじゃ、いずれ我慢が効かなくなって暴発し、ディズィーを傷つけていたかもしれない。
 そう思うと本当にゾッとする…。
 ファウスト先生は、これの事を言っていたんだろうか?
 でもなぁ……ちょっと違う気がすると言うか、ひっかかる部分はあるんだよ。
 『いずれ妹君は自分を不幸とも思わずに不幸になります。』と言っていた。
 …性欲の暴発でディズィーを傷つけてしまったら、少なくともそれはディズィーにとって不幸と感じられる事の筈。
 いや、実際に襲う事になっていたとしても、問答無用でいきなり奪うような事はせずに無知に付け込んで何かさせる、みたいな事になったと思うから…いやいや、方法の問題じゃない。
 とにかく、あの言葉の意味を、俺はまだ理解できていない気がする。
 じゃあ一体何が問題なんだ?
 何度も考えるけど、答えは出ない。
 ただ………こう、時々だけどちょっと引っかかるモノはある。
 『こんなにずっと考えて、どうして答えの片鱗すら見えて来ないのか』って事も、その引っかかるモノの一つだ。
 …まるで………そうだ、手掛かりや欠片は視界の中に転がってるのに、その部分だけ認識できてないみたいに…………。







 ふと気が付くと、もう夕方だった。
 沈む夕日に照らされて、森が赤い。
 夕焼け小焼けの赤とんぼ、なんて歌いだしたくなるね。
 …ディズィーも散歩から帰ってくる頃だし、俺も寝床に帰りましょーかね。
 今日の晩御飯はディズィーの当番。
 お婆さんから料理の基礎を習ってただけあって、俺より手際が良かったりする。
 …まぁ、俺も独り暮らしの時は自炊してたクチだけど、あの頃と違ってキッチンも冷蔵庫も無いしな…勝手が違うんだよ。
 サバイバル技術でも料理の手法は習ったけど、どーも味気なくなっちまう。
 やっぱり人が作ってくれた物の方が美味しいしね。
 それが自慢の妹の手による物なら尚更……………………………自慢?






 はぅあ!?

 今思いだした!
 俺、森で暮らすようになってから妹自慢やってねえ!

 道理でここ最近、スッキリした筈なのにケツの座り具合がよくないと思ったよ。
 超が付くシスコンの俺としては、一日一回妹自慢しないと精神の安定が保てないんだ!
 …割とマジで。
 なんか知らんけど、妹自慢をしなかったら苦しくなってくるんだよ。
 比喩抜きだ。
 呼吸がしにくくなったり、胸のあたりが妙に痛んだり、腹の中に鉛の塊でも入ってるんじゃないかと思うくらいにズーンと重くなったり…。
 いきなり足が竦んで、動けなくなる事すらあった。
 そんな時に妹自慢するとね、なんかこう…スーッとするんだよ。
 …改めて思うと何だな、俺本気で病気なんじゃないだろうか?
 心理的な意味じゃなくて、肉体的な意味で。
 喘息でも患ってるんだろうか……。

 まぁ、そんな事は後でいい!
 自覚したら尚更妹自慢がしたくなってきた!
 細かい事は後だ後、久々の妹自慢タイムでフィーバーするぜ!

 今日のお題は、森の中って事で……動物達と戯れる妹ズだ。
 いやもう流石はディズィーと言うべきか、その懐かれっぷりには感心する他無い。
 とは言え、流石に最初から懐かれてたわけじゃないんだけどね。
 ディズィーに懐いている動物達は、殆どが小動物だ。
 デカい牙が生えてるリスとか、やたら嘴の色がケバケバしい小鳥とか、メカメカしいモグラとか、ダンボと見紛うくらいに耳がデカいネズミとか、後は………なんか種類がサッパリわからない動物。
 実はUMAじゃないだろうか。
 まぁ、害は無さそうだから、何と戯れてても俺は止めるつもりはないが。
 慣れればむしろ可愛いもんだ。
 ただ、ディズィーにナデナデされているのを見ると言い知れぬ嫉妬を覚えてしまうがなッ!

 と言うか、この森食物連鎖ってどうなってるんだろうか?
 あの小動物達、実は肉食動物だったりするんだろうか…。
 まぁ、そうだったとしても問題があるとは思わない。
 ディズィーと戯れている最中に、よく服従のポーズしてるからな!
 ……傍目から見ている分では、何かあったようには見えなかったんだが………何故に服従のポーズ?
 殺気の類は全く感じなかったぞ。
 ひょっとしたらネクロとウンディーネかと思ったんだが、羽状態のまま出てきて無かったしな。

 ああそうそう、そのネクロとウンディーネだけど、戯れている時には人型にはならない。
 でもこう…触手型っつーか、長くて細い紐状になって、小動物達の前でプラプラ揺れていたりする。
 これがまた小動物達の興味を引くらしくて、ジャレる事ジャレる事。
 …こりゃーアレだよ、猫を相手にティッシュでジャレてるような感じだと思うよ?
 ……もっとも、ここの小動物達にはネクロでも傷付きそうな牙とかあるけどね!
 その緊張感がイイカンジ、とはウンディーネの談……ネクロじゃないぞ、ウンディーネだ。
 この子も意外と分からない…。
 まぁ、君達が傷付いたらディズィーも多少は痛みを感じるんだし、程程にしといてくれよー?

 はー、それにしても何だね、ホント絵画か写真みたいな光景だわ。
 人気のない森の中、天使なんざメじゃないくらいの美少女(言わずもがなディズィーだ)、しかも羽付きが可愛い動物達と戯れ、微笑む。
 これ、宗教で言ったら聖母降臨とかそーゆー解釈をされるレベルだよ?
 …でもディズィーを嫁にはやらん、従って聖女ではあるかもしれんが聖母ではない!
 ま、実際にはディズィーは聖女でもないけどね。
 ちょっと…いやかなーり心が広くて優しいだけの、普通の女の子である。
 だから尚更、いつか降りかかる災難をどうにかしてやりたくなるんだよ。
 とは言え、何も出来てないのが現状だけどな…。
 それどころか、むしろ…………いや、今考えるのは止そう。
 妹自慢の最中に考えるには無粋すぎる。
 ……ん、またちょっと何か引っ掛かったような……ああもう、後だ後!
 それより妹自慢!


 最初…森にやってきた直後はね、流石にディズィーもこんなに懐かれちゃいなかった。
 当然と言えば当然だね、何せ野性動物だ。
 知らないモノには警戒するのが当然でしょ。
 まぁ、野性の動物って意外と好奇心が強いらしいけど…それが生命力の秘訣かね?
 やってきた当初のディズィーは、動物達に話しかけようとして……誤字でもなければ比喩でも無い、本当に話しかけようとしていた……あっという間に逃げられ、落ち込んでいた。
 …まぁ、俺が動物達と戯れる夢を吹き込んだ直後だったしなぁ…。
 一目散に逃げられれば、そりゃ落ち込むか。
 肩を落としたディズィーを、ネクロとウンディーネが慰めていたのを良く覚えている。
 だがディズィーはそれでは諦めなかった。
 一見さんが駄目なら何度でも通えばいい、動物が相手なら餌付けすればいいと、後先考えずにただ只管に「おいでおいで」みたいな事を繰り返す日々。
 エサで釣って、玩具(その辺から見つけてきたネコジャラシ)で誘って、四つん這いになってニャーだのチューチューだの鳴き声で誘って(マジで鼻血が出た。気付かれない内にフイタ)みたり。
 不屈の努力を続けていた。
 最終的にはディズィーと俺の夕飯まで、誘う為のエサにしようとしてたんで、流石にそれは止めた。
 何でディズィーが作ってくれた夕飯を知らない畜生に食わせにゃならんのだ!


 っと、夕飯と言えば、一つ深刻な問題点がある。
 いや、別にO-157みたいなのがあるって訳じゃない。
 ちゃんと火を通して喰ってるし、そうでなくても俺達の体は特別製だ。
 ちょっとやそっとじゃ腹痛も起こさない…味覚的なショックで欝が入る事はあるが。
 えー、問題と言うのはアレだ、要するに調味料。
 味噌だ。
 砂糖だ。
 塩コショウだ。
 ソースだ。
 ソイ・ソースだ。
 料理酒だ。
 …こればっかりは、森の中じゃゲットできない。
 いや出来るのかもしれんが、そうするには非常に時間がかかるし、何より品質が悪い。
 生まれてからこれまで、その手の調味料に慣れた俺の舌は、それらが無いと満足できなくなっていた。
 …こっち来てから、味噌もソイ・ソースもとい醤油も一度も食ってないけど。

 ああ、自覚したらマジで喰いたくなってきた……ッ!
 母ちゃんが作ったものじゃなくてもいい、自分で作ったインスタントの奴でもいいから味噌汁飲みてぇッ!
 お母さ~~~ん!!!!
 あと熱いお茶飲みながら漬物も食いたい!
 焼き魚には大根おろしと醤油だろJK!

 今はディズィーが作ってくれる至上のご飯と言う事で我慢できちゃいるが、人は何れ慣れるモノ。
 それまでに何とかせねばなるまい。
 ディズィー自身も、調味料が減る一方だと言うのには渋い顔をしている。
 コイツは本格的に問題だ。

 日々の食事というのは、やはり美味である必要があるのは言うまでも無いだろう。
 食事と言うのは楽しむためにある。
 単に肉体的にエネルギー補給をするだけならカロリーメイトだろうがゼリーだろうがダイエット飲料だろうが構いはしないだろうが、食事は人の心を豊かにし、エネルギーと明日への活力を生み出してくれますここに速さは必要ありません味を堪能するために歯で噛み砕いて食べ物を胃へと流し込むそして………クーガー兄貴はこの後何を言おうとしたんだろうか?
 ま、とにもかくにも、やっぱり飯の味は重要だ。
 日々の食事に困るくらいに困窮している身ならともかく、曲がりなりにも飯には困らない環境に居るんだ。
 それなりに拘らない訳にはいかない。
 なんたって、この森の中じゃ飯の他には妹達を愛でるくらいしか楽しみがないからな。
 脳ミソが常温で溶けるくらいに退屈な日々になっちまう。

 とは言え、実際どうしたものだろう。
 森で手に入らない以上、何処かの村や町から手に入れるしかない訳だが、それには大きな障害が存在する。
 ぶっちゃけ、金がない。
 村から出る時、お爺さん達は荷物にお金を詰め込まなかった。
 まぁ慌ててたし、そもそも普通に考えれば森じゃ使わない代物だ。
 そんなに多くの貯えがあった訳じゃないし、文句を言える立場じゃない。
 人里に出て購入するにも、何かを金に変えなけりゃいかん。
 となると、換金できそうな物と言えば……サバイバルグッズか、さもなきゃこの辺で取れる珍しい…食材というか珍味?
 邪夢もこの辺の食材を目当てにやってきたんだし、いいモノ探せばそこそこ金になるかも?
 うん、今度探してみよう。

 ……え、何?
 ディズィーの写真を売れば金になるって………ブッコロスぞクソガキャアア!!!!
 そんなモン売るに売れないに決まってんだろ俺の良心的に考えて!
 そもそも値段を付けられるような代物じゃネェだろォォォォォ国宝級よりもっと価値があるぞゴルァァァァァ!!!!!


 さて、金の問題はこの方向でどうにかするとして、味噌と醤油はどうしたものか。
 憑依前の世界じゃ、フレンチとかで味噌を使うのも増えていたと聞くが…この世界じゃ、少なくともメジャーな食材ではないようだ。
 探すのであれば、中華関係が一番手っ取り早そうだ。
 ………その関係、どうやって辿って行けばいいんだろう。
 邪夢が来るまで待つのは却下だ。
 俺は今すぐミソが喰いたい。
 決して某漫画やら某アニメやら某AAストーリーの語りを思い出して衝動的に喰いたくなった訳ではない、俺は魂の底から味噌が欲しいんだ。
 クソッ、こんな事なら作り方を一度くらい調べておくんだった!
 食通でも何でもない、違いの分からない男とだった俺は、赤味噌と白味噌の違いも分からなかったし、作り方なんぞ銀河の果てのそのまた向こうの生物がどんな寝相をしてるのかってくらいにどうでもいい事としか思ってなかった。
 うぬぬぬ、我ながら桜と並ぶ日本人の魂を何だと思っていたのだろう。
 …うん、単に美味な物としか思ってなかったんですね間違ってはいないけど足りないモノだらけだよ。

 うーん、どうすっかなー、ディズィー達にも味噌食わせてやりたいしなぁ。
 ネクロなんかかなりハマると思うんだよね。
 味の濃いモノ好きな傾向があるし。
 …………何とかして法力で作り出せんものかな…。
 確か法力って、バックヤードとか言うよく分からない空間…これは俺の認識や理解が足りてないんじゃなくて、現状の理論では本当に解明されていない…に干渉して、空間からエネルギーを引き出すモノ。
 で、そのバックヤードというのは、実はこの世界の法則を決める空間な訳で。
 多分、実際には空間から力を引き出していると言うよりは、バックヤードの法則を僅かに歪めて、『エネルギーを生み出す法則』を作り出しているのだと思う。

 例えば、そうだなぁ…俺達が何かを殴り飛ばすとして、その場合の破壊力=体重×スピード×握力。
 …そこ、あくまで例えなんだから深く突っ込むな。
 ツッコミ入れるなら、この異常者だらけの世界からにしろ。
 とにかく、この場合『破壊力』とうのは体重×スピード×握力で生み出されるエネルギーだと言っていい訳やね。
 で、法力を使うと…この公式が、以下のように変換される。

 破壊力=体重×スピード×握力×2

 これで、エネルギー保存の法則やら質量保存の法則やら摩擦云々の法則を無視したエネルギーを生み出す事が出来る。
 極端な話でも何でもなく、静電気が生じるだけで終わる筈の物理現象を、ギガデイン級の雷が発生するくらいの現象に変える事ができる訳だ。
 空間からエネルギーを取り出しているように見えるのは、原子分子のぶつかり合いで生じるエネルギーを増幅しているから、そんな風に見えるだけなんだろう。
 さもなきゃ、俺が知らない現象がそこで生じていて、そのエネルギーを増幅させているか…。
 まぁ、法力学を中途半端に齧った状態の俺の考えだから、どれくらい的中してるかは怪しいもんだがね。
 そもそも頭の中に入っている法力学自体、『どうすれば思った通りのエネルギーを取り出せるか』はあっても、『どういう理屈出その現象が発生してるか』は未だに解明されていないんだし。
 …ドクターカオスでも引っ張ってこなきゃ、多分向こう100年は解明できないだろうなぁ…。
 さもなきゃ『あの男』に聞くかだね。
 俺はゴメンだけど。



 さて、ディズィーにいつかお袋の味を仕込む計画は置いといて…まぁ、ディズィーにとってのお袋の味は、お婆さんのアップルパイだけども。
 実際の所、ディズィーが動物達を手懐けたのは無駄な事じゃなかった。
 いや、可愛らしいとか癒されるとか愛らしいとか、その辺の意味じゃない。
 意外なメリットがあったのだ。

 動物っていうのは、俺達が思っているよりも案外義理堅いらしい。
 まぁ、喰う食われるの関係については基本サバイバルなので容赦無用の間柄なんだが、それ以外の場合はね。
 時々、木の実とか持ってきてくれるんだよ。
 ディズィーが餌付けしたお返しらしい。
 動物達が持ってくる木の実やら果物やらは、俺達がまだ知らない種類のモノが結構ある。
 毒入りの奴も時々持って来られるんだが、そういう時には必ず解毒効果のある薬草も一緒に持ってきてくれた。
 シュールとか何考えてるか分からないとかじゃなくて、純粋に生態の問題なんだろうな。
 憑依前の世界だって、毒のある実を食べて解毒効果のある葉っぱを食べて相殺する動物がいるって聞いたことあるし…なんでそんなもの食べるのかまでは知らなかったけど。
 他にも、知らなかった水場を教えてくれたり、ヤバいナマモノが近付いてきたら警告してくれたりと、計りしれんメリットと知恵を感じさせる。

 …特に、俺が腹を減らしてる時には近付いて来ない辺り、非常に賢いと言わざるを得ない。
 …いや、いくら俺でもディズィーの友達は食べないよ?
 でも食う食われるは別関係だしな……いやいやいや、ディズィーが泣くから肉系サバイバルは駄目だって。

 まぁ、腹減ってる時以外は、俺もそこそこ懐かれてる。
 ディズィーにナデナデされてるからって、動物相手にゃ殺意は抱かんよ…父心もとい嫉妬は湧くけど。
 白い覆面被る程じゃないがな!
 ………スッキリする前だったら、覆面の方からやってきていたかもしれない…。

 その代り、動物達をナデナデしてたらディズィーよりもネクロやウンディーネが嫉妬してくれるけどね!
 ディズィー自身は、動物達と戯れている最中でもナデナデできるし。
 ならネクロとウンディーネはと言うと、人型になれば怯えられ(何せ体が大きいし)、羽型だったら今一遊べず、微妙に疎外感を感じているらしい。
 おかげで、動物達と戯れた後は二人にナデナデをメッチャせがまれる。
 俺的にはフィーバータイムなんだが。
 結局最終的にはディズィーもナデナデに加わってくるし。


 ま、そんな訳で、日々ディズィーとネクロとウンディーネと動物達と、中々愉快な日々を送っています!
 
 




あとがき
今回はストーリー全然進みませんでした。
その分、幾つか伏線を仕込みましたけど。
現在書いてる最新話、データが消えました…。
ファイルのプロパティには20KBって出てるのに、いざ開いてみると一文たりとも書かれてない。
一日ヘタレて書き直し中です。
S子さんの呪いか!?

PV106571…おお、10万超えた。
皆さま、お付き合いありがとうございます!



[17288] 18(妹自慢:小)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/06/27 21:24


 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 ただ今、久方ぶりにファウスト先生がいらしています。
 相変わらず見かけがスゲー妖しいです。
 でも何故か動物達には懐かれてるんですよね…紙袋の上に小鳥が止まってたり。
 あの人は初見で懐かれ、俺達は餌付けしないと懐かれなかったという事実に、ちょっとorz。
 まぁ、俺とディズィーが居たから人型生物に幾らか馴れた、という下積みはあっただろうけどね。
 根っこが優しいし、動物達を傷つける必要もない人だし、よく分からん明鏡止水だか梵我一如だかの境地に達しているから仏と同じ要領で懐かれたのかもしれんね。

 まぁ、それはともかくとして。
 折角来てくれたんだし、何とか歓迎したいね。
 積もる話もある。
 …前に言っていた、あの『俺の愛情が何処からくるのか』についてももう少し聞きたいし(聞いても今まで教えてくれなかった)、村がどうなっているのかも気になる。
 それに、何だかんだ言っても慣れない環境で暮らし始めたばっかりだ。
 一度、本格的に身体測定とか健康診断をやってもらうのもいいだろう。
 自分では気付かないストレスだって溜まってるかもしれないし、それ以上に怖いのが栄養の偏りだ。
 思えば最近、肉食ってねぇ。
 魚肉は食ってるが。
 幾らディズィーの手料理とは言え、やっぱり満足な施設がないし、食材も量はともかく種類は豊富とは言えないから味付けは調味料任せにならざるを得ない。
 塩分過多になっていないか心配だ。
 俺はともかく、ディズィーの珠のお肌を劣化させる訳にゃいかんだろう。
 ちなみにネクロとウンディーネはと言うと、体の表面の摩擦をある程度なら自分で変えられるので塩分がどうのこうののレベルじゃなかったりする。
 それでも好き嫌いしないようにちゃんと躾けてるけども。

 …一応言っておくが、健康診断については俺がディズィーのスリーサイズを知りたいから、とかの下心は無い。
 ついでに言っておくと、以前妹自慢でスリーサイズについて触れたけど、あの時は「大きくなった」「細くなった」程度でしか知らなくて、具体的な数値はサッパリだったんだよ。
 え、何?
 俺から言い出すともっと説得力がないって?
 バカモノ、ファウスト先生にそういう下心を持っているなら健康診断そのものを頼まない。
 だって考えてみろ、もしそうだったら…相手が医者とは言え、ディズィーの膨らみができているオパーイとかを他人に晒す事になるんだぞ?
 そんな事するくらいなら、俺が直にメジャー持って……ゲフンゲフン
 幾らファウスト先生に下心が無いからって、天下無双のシスコンを目指すこの俺がそれを許容できると思うかよ………いや、天下無双のシスコンが妹に下心持ってる時点でアレだけども……いやさ、俺は本当にこの件に関しては下心無いって。
 …あ、ちゃんとディズィー達に言っておかないとな、『お医者さんに診察される場合は、肌を見せても問題ありません』って。
 じゃないとウンディーネ辺りが問答無用で吹っ飛ばすような気がする…その辺の事、教えてなかったし。
 ま、ファウスト先生の場合、吹っ飛ばしてもピンピンしてる所しか想像できんけどね!


「という訳でファウスト先生お願いします」

「はいはい、承りましたよ~。
 あ、診察料はパイナップルでお願いします。
 酢豚の材料集めてるんで」

「手榴弾ならありますが」

「何故」

「爆発に巻き込まれたらアフロになるかもしれませんね」

「是非ともわたくしに賜りますようお願い申し上げますナッシュ様」



 何故か知らんけど、お爺さんがくれた荷物の中に入ってたんだよ!
 モロにブラックテックじゃねーか!
 聖騎士団だってこんなモン持ってねーだろ…ツェップ辺りと繋がりでもあったのか、あのお爺さん。
 …いや待てよ、そう言えば確か拾われたばかりの頃…そうだ、俺に角があるって判明した時、鬼の事を話してくれた人が居たって言ってたような…その人の名前は…ツヨシ。
 ………まさかツヨシってあのツヨシか?
 しっかりしなさい!の人じゃなくて、チップの師匠のツヨシだったりするまいな?
 鬼の伝承を知っていた事からして、名前も考えるとまず間違いなくジャパニーズ。
 いや、時期的にジャパニーズはコロニーの外には殆ど居ない筈だし、可能性は高い…。
 この分だと、雲長博文にも会った事がありそうで怖い。

 …ま、まぁ深く考えると怖いからいいだろ。
 …ところでファウスト先生、そのバカデカい注射器は何ですか?
 ジャンプD?
 サモンナイトのインジェクスかと思いましたが。
 あれ回復にも使うんだよな…。


「何って…見ての通りの注射器です。
 初診ですし、ギアと人間のハーフという事もあり、いつもより多く回して…じゃなかった、検査しておかなければならないので…。
 サンプルとしての血液を、少し多めに取らせていただこうと思いまして」

「どう見ても致死量より多く採血するつもりです本当にありがとうございました。
 …というかそんなモン持ってディズィーに突っ込んで言ったら俺も妹達もフルパワーで抵抗すっからな!?
 いくらファウスト先生でもイヤなもんはイヤだぞ!」

「むう、しかし採血はやっておきませんと。
 血液から得られる健康状態は非常に重要です。
 それに、いざという時に輸血する場合のストックにもなります」


 …なるのか?
 それってつまり、採取した血液を冷凍保存か何かして、必要になったら解凍して輸血するって事だよな。
 取れ立て新鮮な血液じゃないといけないんじゃ…でも献血した分だって、保存とかして使うんだし…。
 時守がテキトーな事ブッこいてるだけなんじゃないか?
 それともファウスト先生なら可能な話なのか?
 …まぁいいか。


「大体、そんなバカでかい注射器使う必要があるんですか?」

「これなら一度で済みますから。
 小さな注射器(平均的サイズ~患者が蟻だった場合のサイズまで)もありますけど、それだと大した量が取れないので何度も注射する事になります。
 それだとイヤでしょ?」

「注射器っつーよりも普通に槍か攻城槌として使えそうな代物叩ッ込まれるよりマシだと思いますが…。
 んじゃアレは無いんですか、こう…献血する時に使うような、小さな注射器を一度刺して、そのまま固定して…そこから一滴一滴取って行くような」

「ある事はあるんですが、先の町で使ったばかりで手入れが終わってないんですよ。
 こちらには急ぎで来たもので…。
 ………まぁ、そう仰るのであれば、妹君からの採血は今回は見送りましょう。
 ですが、そうなるとナッシュさん…貴方から採血しなければなりません。
 無論、コレで」


 俺かよ!?
 ていうか普通の注射器無いのかよ!
 いやあるんだろ?
 平均サイズの奴が!


「ですから、それだと何度もプスプス刺さなきゃいけないんですってば。
 そうなると新しく仕入れる注射器の数も馬鹿になりません………モグリの医者は結構キツいんです、懐が。
 24時間カツカツなんです」

「…あー……」


 金積んででも診察してもらいたいレベルの技術持ってんのに、殆どが無料っぽいからな…感謝の気持ちとして贈られた物は受け取る人だけども。
 注射器にしたって、使い捨てでもかなりの値段になるだろうし……。
 ギャグかと思ったら、かなり深刻な理由があったのね。


「実際の所、妹君の場合はコレを使っても3回注射しなければいけないんですよ。
 一度はディズィーさんの、もう一度はウンディーネさんの、そしてネクロさんの。
 背中のお二方は寄生型ギアのようですし、最低限3人の繋がりがどうなっているのか知っておかねば、何方か一人に万が一の事態があった時、他の二人を巻き込みかねません」

「それはそうですが……」

「まぁ…暫くは、その『万が一の事態』になってしまう事もないと思いますがね。
 村の方は騒がしくなりつつあるとはいえ、貴方達がここに居る事は誰も知らない。
 …貴方が懸念している事態になるまで、今しばらくの猶予はある…」

「………」


 …分かっていた事だけどな…改めて言われると、またちょっと辛いモノがある。
 ん?
 何ですかファウスト先生、ジッと俺の顔を見て。


「…・ふむ、荒療治にはまだ早くても、経過は順調…と言った所ですか。
 ああいえいえ、こちらの話です。
 まあ、そういう訳なんで、まずは兄君の採血と分析からまいりましょう。
 妹君の血液と比較するにも、どっちにしろ分析はしないといけませんしね」

「ぐ……ぬぅ……。
 正直拒否したいけども、ここで拒めば再び妹達に矛先が向く事は歴然…。
 だがここで受け入れれば、ディズィー達には普通の注射器でやってやれる…。
 ええいクソ、OK覚悟決めたよ!
 何よりこのままイヤだイヤだとゴネてたら、マジでバトルまで発展しかねんからな!」


 そしたら刺激的絶命拳が飛んでくるかもしれない。
 それだけは御免被る。


「ふむ…マジバトル、ですか。
 それも診察の一環としてやりますよ?」

「………江゛?」

「身体能力の測定。
 アドレナリンの分泌具合。
 直ちょ……ゲフンゲフン、その他諸々…。
 ある程度追い込んだ方が、正確なデータが取れるんですよねぇ」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待て!
 普通そういうのって三段跳びとか懸垂の回数とかで測定するんじゃないのかよ!?
 あと直ちょって何だ!?
 まさか直腸検査とか言うまいなしかもそのデカいメス使って!」

「カンがいいですねぇ…。
 ああ、直腸検査は指とメスと舌のどれがいいですか!?」

「34おp5つjw:;lrykjんh8お2おあwp」gjd9sぴおl;mhとれ@w:ぴ2y、」


 舌!?
 舌と申したか今!
 確かにこのオッサン、ベロが異常に伸びるけども!
 まさかそれをケツに突っ込むと!?


「…気持いいですよ?
 軟体的に考えて。
 私はちょっと苦みを感じますが、それもデータに」

「喋るな!
 いやもういいから喋るなやるな!
 ディズィー達ならともかく、アンタにそんな事をされる趣味は無い!」

「私だって趣味じゃありませんよ、仕事ですから」

「つか今までの患者さんにもそんな事やったのか!?」

「やる時は全身麻酔で眠っている時だけです。
 そもそも、そこまで緻密なデータを必要とする患者は滅多にいませんので。
 ああ、兄君達の場合は必要とする相手ですので」


 うおおおお、想像するとスゲー犯罪くさい絵柄だ!
 いや犯罪通り越して原罪って感じすらする!
 ちなみに俺の想像の中で診察されてるのは、名前は出さないがとあるゲームの美少女キャラだ。
 それが誰なのかは、各自で補完してくれ。

 ど、どっちにしろ俺はヤられるのはゴメンだし、ディズィーにそんな狼藉をさせる訳にはいかぬ!
 マジバトルどころかガチ殺し合いも辞さない勢いで!
 俺は!
 この人を止める!


「死ねよやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「いきなり何ですか」


 …繰り出したパンチは冷静に捌かれた。
 だが止まらぬ、止まらぬよ!
 例え俺とファウスト先生との温度差が200度以上あろうとも、このまま座して(尊厳的な意味で)死を待つ訳にはいかん!
 今日と言う今日はアンタを超えるゥゥゥゥーーーーッ!


 …そして始まるガチバトル。
 この世界に来て二度目だね。
 ……………修羅の道に踏み込んででも負けねーからな……。



 と言う訳で、

HEAVEN OR HELL?

DUEL 

LET'S ROCK!







 とにもかくにも、先手必勝!
 小手先の技術や騙し合いでこの人に勝てる気がしないので、とにかくフルパワーを叩きつける事だけを考える。


「おっと」


 予想通り、走りながら振りかぶった拳をフェイントにして繰り出したローキックは軽く飛んで避けられる。
 空中に居る間に、間髪入れずに右ストレート。
 ガン、と鈍い手応えが返ってきた。
 ファウスト先生がメスで拳を防いだのだ。
 そのままラッシュ!
 呼吸を止めて左右の連打、時々足の位置を修正してリズムが単調にならないように。

 が、これまた予想通りと言うか何と言うか、見事に全て防がれてしまう。
 …ぬぅ、鋼鉄より頑丈なメスを思いっきりブン殴ったから拳が痛いぜ。


「今度はこちらから」


 ぬおぅ!?
 メ、メス思いっきり振ってきた!
 躊躇いなんか欠片も無いくらいの勢いで振ってきた!
 風切り音がマジで怖ッ!
 咄嗟に…ではなく、事前に予測ができていたので頭を下げて回避。
 こういう時、ギアの戦闘プログラムって便利だね。
 ちょっとアドレナリンとか出過ぎで余計な衝動が湧いてきたりもするけども。

 頭を下げたまま、足元を狙って手刀を振う。
 当たった…と思ったら普通に避けられた。
 が、これは牽制。
 本命は一気に密着しての体当たり&ショートアッパー!
 食らいやッ!


「ほほぅ、これはこれは…」


 …当たった事は当たった。
 でも手応えが無い。
 幻…でもないし、後ろに飛んで衝撃を逃がした訳でもない。
 流石はファウスト先生、謎の生命体もいいトコだ。

 正面からの攻撃は無効っぽい、なら側面背後上空から攻める。
 見た所、機動力自体は俺の方が上らしい。
 まぁ、こんなバカでかいメスを、しかも障害物の多い森の中で持ってるんだ。
 行動が阻害されるのも無理はないだろう。

 フェイントをかけながら、木々を蹴ってベクトルを調整してファウスト先生の背後に回る。
 …?
 なんかおかしいな、この人がこうまで簡単に背後を取らせるか…?
 迷ってても仕方ない、心理戦から技能まで差がありすぎるんだ。
 余計な事考えずに攻撃攻撃!
 じゃないといつケツ掘られるか分からねーしな!

 ファウスト先生の長身に向けてハイキック。
 と言っても、大きさが違いすぎるから脇腹にしか入らなかったけど。
 …手応えは…多少はある。
 前から攻めるよりは効果的なようだ。
 っと!


「ホイ! ホイ! ホイ!」


 今度は3連撃…と見せかけて、その実5回、しかも内2回は腕を避けても足に当たるようになってる。
 4発目を捌ききれずにガードして、バランスを崩されて5発目はモロ。
 …なんだが…あんまり痛くないな?
 痛くないし、ボディチェックをしてもダメージは皆無に等しい…。
 それだけじゃない、ファウスト先生はさっきから散発的な反撃しかしてこないし、俺の攻撃も殆ど避けないし受け流しもしない。
 むしろ力技でガードしているだけ。
 って事は、これは…ひょっとして?


「あの……これ、マジで診察なんですか…?」

「ええ、その通りですよ。
 最初に言ったじゃないですか。
 (おや、気付きましたか…煽った筈なのに、闘争本能に流される事も無い………存外冷静、と)
 お陰さまで、兄君の身体能力は大体測定できました。
 いやー、流石に良い体を持っていらっしゃる。
 柔軟性、筋力、歪みネェ骨格、肺活量…素晴らしい」

「そ、それじゃあ直腸は」

「それは本気です」

「滅べェェェェ!!!!!」





 …殺意の波動に目覚めそうなくらいに怒り狂って特攻したものの、結局一発しかクリーンヒットは無し。
 ファウスト先生からの攻撃はお粗末な物ばかりで、それでもギリギリで避けられる程度だった。
 つまるところ、思いっきり掌の上で踊らされたって訳だ。
 まぁ、一矢報いたと言えなくもないんだけども。

 …一度背後を取られて、刺激的絶命拳……ぶっちゃけた話、覚醒必殺技のカンチョーな……を叩き込まれそうになったんだが…そこで俺の秘密(にしておきたかった)兵器発動。
 股間の浪漫砲と対を成す、オナラキャノンをカウンターで叩き込んだ。
 一発だけのクリーンヒットって言うのはコレの事。
 ファウスト先生、糸が切れた凧みたいに吹っ飛んで行ったよ。
 んで、結局そのまま帰ってこなかった。
 ついでに言うと、俺も威力がデカすぎてオナラで空を飛ぶ所だった…と言うか2メートルくらい飛んだ。
 まぁ…あの人だったら大丈夫だろ、吹っ飛ばされる時にしっかりとカバンとか掻っ攫って行くくらい余裕あったし。
 …「診察しゅ~りょ~!」とか言ってたから、カンチョーは無しになったと思いたいが…油断は禁物だ。


 …つくづくどうなってんだろうなー、俺の体…。
 設計した奴は何を考えてるんだろうか。
 あと幾つステキ機能が眠っているのやら…体の機能を把握しようとしている時には、常に戦々恐々だ。
 どうせこの手の機能を付けるなら、十傑集張りのステキ走りでも付けてくれりゃよかろうに。

 …え、いつあんな機能ができたのかって?
 そりゃ…アレだよ、実は浪漫砲が目覚めた直後。
 6つ目のログの最後に、「今度はケツに何か目覚めるかもしれん」ってあっただろ?
 ……本当に目覚めちゃったのよ。
 コイツに関しては、本当にこんな機能が搭載されているってだけで物凄く欝になるという点を除けば問題はなかったんだけどね。
 別に一々使わないと排泄行為(大)ができないって訳じゃなかったし、黒歴史として封印してたんだよ。
 ぶっちゃけ、今回みたいにダイレクトにケツを狙われない限り、記憶からもデリートしてたしな…比喩的な意味じゃなく、プログラムとメモリー的な意味で。
 …ところで…まさかとは思うけど、実は出てないよな?
 ブッ放してからケツが熱いっつーかヒリつくっつーか、激辛料理食べてトイレに行った後の感覚を10倍にしたような感じが…。
 ABEさんに襲われた後はこんな感じなんだろうか?
 でもケツが開いてるような感じはしないけどな……


 しかし…改めて思うとこの世界、バケモンばっかだ。
 ファウスト先生は上から数えた方が様々な点で早いにしても、事実上パーフェクトで負けたに等しい。
 そこそこ自信はあったんだけどなぁ…。
 ギアの制御プログラムは確かに優秀だけど、それだけに頼ってどうにかなるほど甘くはないって事か。
 しかし、だからと言ってどうすりゃいいのやら。
 取りあえず闘いの記録を分析してるんだけど、結局のところ分析は分析、しかも一方はまともに闘う気が無い。
 参考文献にはなるかもしれんけど、それ以上のモノにはなりそうにない。
 ん~、体系立った技術を身に付けるか、実戦経験を積むか…。

 技術に関しては、こう言っちゃなんだけどそんじょそこらの武術家よりもレベルは高い。
 ギアを舐めるな、って話だ。
 精密作業はお手のモノだし、戦術に関してだって弱パンチと弾きオンリーでCPU相手(最強レベル)に無双できるくらいには先読みも誘導もできる…二次元ののゲームならね!
 でも所詮はそれだけ。
 俺自身にそれを活用できるスキルが無いし、それ以上に…何て言うの、俺に『芯』みたいなモノがない。

 闘うのは怖い。
 痛いのはゴメンだ。
 死ぬのは嫌だ。
 殴って反撃されないだろうか?
 蹴ったら避けられないだろうか?
 迂闊な事をして、相手を殺してしまわないだろうか?
 大怪我をさせたら、俺はどうすればいい?

 …どんなに怒りや処女喪失の恐怖で自分を煽り立てても、叩きつけられる闘気って奴が俺を縛り上げる。
 ファウスト先生との闘いだって、殺気は感じなかったけど…ともすればそこで立ち竦んでしまいそうで、何も考えずにただ只管攻めていたってのが正確なところだ。
 駆け引きなんか考えてる余裕も無かったよ。
 もっと……何かこう、闘いの場でも自分をしっかり持っておけるような、そんな『何か』が必要だ。
 一言で言えば、度胸みたいなものだな。
 ………パッと思いつくのは妹愛なんだけどね。
 何でだろうな…あの時、それが出て来なかった。
 別に、妹達への愛を闘いの道具にしたくない、なんて思ってる訳じゃない。
 そりゃしないに越した事はないけど、愛って即ちあらゆる意味で闘いだしね…この世界に限らず。
 

 ………ん?

「兄さん!」

「ディズィー?」


 突然、森の中からディズィーが飛び出してきた。
 おまけに、ナッシュではなくて兄と呼びながら。
 しかもバトルコスチューム。
 おうおう、森に住むようになって間もないのに、あっという間にふくよかに……じゃなくて。
 随分と慌ててるじゃないか。
 何かあったのか!?


「どうした、何かに襲われたのか!?」

「兄さんこそ何があったの!」


 …………え?
 俺?
 何がって…?


『兄よ、先程突然エネルギーが高まっただろう。
 明らかに本気での戦闘行為だ。
 しかも、ドクター・ファウストが猛烈な勢いで吹き飛ばされていくのが見えた。
 一体何があったのだ?』


 ……………あ。
 そ、そう言えばネクロもウンディーネも、そういうの感知できるんだっけ。
 結構離れた場所に居た筈だけど、それでも分かるくらいの高まりっつーたら……。

 …やっぱアレしかないよな。

 オナラキャノン。

 浪漫砲とタメ張れるくらいの破壊力なんだぜ?
 物理的にも、俺の精神に対しても。
 実際、森の一部がエラい事になっている。

 ………ついでに言っておこう。
 オナラキャノンと浪漫砲は、組み合わせると更にドエラい事になってしまう。
 何がどうなるかってーとだな。
 まずオナラキャノンを拡散型で放つ…ちなみにこれをオナラキャノンとは別の呼び方で、尻ボムと言う。
 ネーミングセンスについては、俺の責任じゃないので黙殺する。
 これ、ファウスト先生にやったように収束型で放てば直接攻撃になるんだけど、拡散させるとガス状になり…毒は無いんだ、臭くも無いガスだ…、その周辺に漂う事になる。
 んで、この漂ってるヤツに浪漫砲を打ち込むと………。

 …後は分かるな?
 俺も爆発に巻き込まれるけどね。
 威力は折り紙つき……らしい。
 なんか浪漫砲を撃てるようになった辺りで、ヘルプファイルが脳ミソの中に入ってるのに気が付いてさ…。
 その時にこの連携を知ってしまって、そこから先は読んでない。
 怖いもん。
 勿論、機能の名前はコイツで正式に名付けられていた。
 ちゃんとこういう名前で認識してないと、機能を作動させられないという最悪のオマケ付きで。

 ってか、ホント何考えて俺のボディ設計したんだよ何処のアメリカンか知らね~けどさ!
 もうちょっと常識とか良識とか公序良俗って物を考えてくれよ頼むから!
 二次元でやるならともかく、三次元でやるんだったら仮面ライダーとかあの辺にしてくれりゃまだマシだったものを…。


『兄様…ひょっとして、ファウスト先生は敵に襲われたのですか?
 あのファウスト先生を吹き飛ばすとは、かなりの手練…。
 くっ、もう追手がかかるとは…』

「あ、あーいやその、ね?
 アレはそういうんじゃなくて、その……身体測定に気合いが入りすぎて…」

『……身体測定、ですか?』


 首を傾げるウンディーネ。
 ……カワエェ。

 だが、どんなにカワエくても、アレをあのまま話す訳にはいかん。
 まぁ、文字通り体力測定とかも入ってたんだし、カンチョーの所だけ誤魔化して話せばいいか。

 実を言うとだ、カクカクシカジカ…。


『コレコレウマウマと言う訳だな、兄。
 ふむ……成程、生体兵器であるギアの能力を計るのであれば、戦闘に勝る方法は無い。
 理に叶っているな』


 …そうか?
 あれは戦闘云々のレベルじゃなかったが…。
 っと。


「…ディズィー、そんな顔をすんなって。
 別にギアであろうとなかろうと、必死の領域まで追い込まないと本当に必要なデータは取れないって先生言ってたからさ。
 ……えーと…」


 …イカン、フォローになってない。
 何を言えばいいのやら。
 妙に気にするのも、余計な事しか言えそうにないし…。


「……ね、ねぇナッシュ…。
 私も、ファウスト先生と闘わなきゃいけないの?」

「ん?
 んー、どうかなぁ…。
 俺と闘ったのは、何ちゅーかサンプルとか標準にするレベルが分からなかったから、より詳細なデータが欲しかったから…らしいし。
 だったら、ディズィーとは必要がないかも」

『兄様。
 サンプルや標準を考えるのであれば、兄様一人のデータでは、とてもではありませんが足りないでしょう。
 やはり、我々とも闘う必要があるのかもしれません』

「あー、確かに…。
 でも、断固嫌だと宣言すれば、あの人は無理強いはしないと思うよ。
 特にディズィー、ケンカは嫌いだろ?
 村に居た頃も、殴り合いする人見たら即座に泣きだしたし」


 そして俺が飛んで行ってナデナデして、その一方で殴り合ってた連中の延髄に蹴り……もとい強制的に沈黙させてたんだよな。
 エグエグと泣いてたディズィーに萌えつつ、罪悪感に悶えていたのはいい思い出だ。


「ま、それはそれとして……ディズィー、いつまでそのカッコで居るんだ?
 俺としては眼福なんだけど」

「え?
 ……あ、あぅ」


 自分の姿を見下ろして、バトルコスチュームだってようやく気が付いたみたいだ。
 ちょっと縮こまって、両腕で胸を隠そうとしてでも両脇から抑え込んでいるから結局谷間を強調するだけで、しかも内股……………何だと?

 ディズィーが。



 …・恥じらっている、だと?




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 …じゃなかった、ひょっとしてようやく情操教育の成果が出てきたか!?
 ついこの前まで、素っ裸見られてもディズィー本人は殆ど恥じらいとかリアクションが無かったのに!
 おじさん、危うく色々な意味での悦びのあまり地球を一周しちゃうところだったよ。


「に、兄さんのバカぁっ!!」

『兄様、見ないでくださいましっ!』

『よくわからんが、こうすればいいのだな』


 ドカーン!


 しかもラブコメのオチまで再現した!
 俺は今精神的にも物理的にも空高くFLY HIGH!

 ああ……成長したなぁ、ディズィー…既にDに手が届いているとは。
 Gまで達するのも遠くは……。


 その思考を最後に、俺は車田落ちして気絶した。









 その後、夢の中でこんなシーンが見えた。


「…ウンディーネ、本当にこれで良かったの?
 ナッシュを吹き飛ばすなんて…」

『いいのです。
 男性は女性の恥じらう姿に強い劣情と保護欲を感じると、家に居る間に蒐集した文献にありました。
 これで兄様の心は、グッとディズィーを女性として認識した筈です』

『うむ…よくは分からんが、あのように対処しろと常々兄自身が言っていたからな。
 少なくとも、ディズィーの株が下がる事はない。
 …それに、ディズィーが最後の動きをした後に兄の体温と心音の速さが急速に上昇した。
 少なからず、性的な興奮かそれに近い状態にあったかと思われる』

「そう…ふふっ、これでナッシュともっと仲良くなれるんだ…。
 それにしても、まさかファウスト先生を吹き飛ばしちゃうなんて」

『大分激しく争ったようですね。
 まぁ、だからこそ私達も大慌てで向かったのですが…。
 それにしても、バトルコスチュームになっている事に気付いた一瞬でよくあそこまで演技が出来たものです。
 未だに、兄様の言う情操教育は理解できてないのでしょう?』

「それは……確かにまだだけど。
 でも、ナッシュの教えてくれる事だもの。
 絶対に覚えるわ。
 ナッシュが教えてくれる事、与えてくれるもの、全部全部全部全部全部全部全部全部全部……」

『…ディズィー、まだ“やんでれ”に目覚めるには時期が早いですよ』

『む、兄が起きそうだ。
 この話題はここまでだな』


 …………夢だよね?





アトガキ
やっぱりAAがズレるなぁ…。
ロリと言われようが作者=オリ主がキモイと言われようが、芸風変えるなら自分の意思で。
じゃないと負けな気がする昨今。

投稿時PV112619。



[17288] 19(妹自慢:中)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/07/04 21:09

 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 今日も今日とて森の中。
 ナマモノ達と戯れつつ、ディズィーを愛でる日々を送っております。
 いや~、しかし人が居ないからこその安らぎってあるもんですね。
 ただでさえ低いコミュニケーション能力が、猛烈な勢いで更に低下しているような気がしてなりませんが。
 まぁ、動物達が何をしてほしがってるのか、何となくわかるようになってきたから…その辺の能力は向上してるのかな?
 最近じゃ、ディズィー達程じゃないにしても俺も懐かれてきた。
 空腹の時に距離を取られるのは相変わらずなんだけど、その距離が徐々に短くなってきてるんだよね。
 日によっては、朝に俺達を起こしに来てくれる事すらある。
 そういう時はお礼にご飯を分けてあげている。
 ま、ぶっちゃけなくても餌付けだね。

 そんなこんなで、ご近所さんとも仲良くなりつつある昨今。
 ファウスト先生も無事この隠れ家の場所を発見してくれたし、これで一応外との繋がりを確保できた事になる。
 …先日吹っ飛ばす前に、次に来る時に塩コショウとかを買ってきてほしいと頼んでおいたんだが…報酬、ちゃんと用意しとかないとな。
 通販みたいなものだから、ちゃんと代金は用意せんといかん。
 この森の植物で、薬草に使える物を幾つか教えてもらった。
 常備品として使う事もあるだろうから、ストックは数揃えている。

 ふむ…よくよく考えると、結構充実した生活送ってるよな。
 仕事に急かされる訳でも無し、飯は野菜中心でたんぱく質がちょっと足りないけど愛妹の手料理、食料集めで運動もしてる。
 ちょっとヒマな時間が多いのが難点だけど、憑依前の世界からすればむしろ贅沢な話だ。
 そもそも、ヒマだと言うなら法力理論の確認なり、生身インターネット計画なりを進めればいい…一応趣味の範疇って事だし、あんまり苦にもならないしね。
 …これで将来に不安が無かったら、冗談抜きで永遠にヒキコモリになっちまいそうだ。
 そう考えると、GGキャラ達の襲来も…………一利があっても百害あっちゃ意味ねーがな……。



 さて、それはそれとして、今日は近況報告がメインだ。
 残念ながら、妹自慢は二の次になっちまうぜ?
 …例によって、途中からそっち方面に流れて行くかも知れんがな。

 まぁ、コイツばっかは妹自慢よりも優先順位が高いのは仕方ない。
 何でって、お爺さんお婆さんに対する近況報告なんだからな!
 実を言うと、前にファウスト先生が来た時に、手紙書いて持って行ってもらおうとしてたんだけど…その前に俺がふっ飛ばしちゃったからなぁ。
 いや、正直誤算だった………アレは仕方ないと断言させてもらうがな!
 直腸検査はイヤじゃあああああああ!!!!!!
 


 と言う訳で、ディズィー達と一緒に文面を考えてます。
 無論、ネクロとウンディーネもそれぞれ紙とペンを片手に唸っている。
 しかし、ディズィーはこういう手紙を書くのは初めての経験だし、俺にしたってそう経験が多い訳じゃない。
 背中の二人に至っては、字は読めるけど書く時はよく間違えるという有様…。
 言語とかは一通りインストールされてる筈なんだが、何故に?

 ともあれ、友人同士家族同士で気楽に送れるメールとはワケが違う。
 手動で書かなきゃならんし、そもそも家族へ改まって出す手紙っていうのはな…。
 なんだ、その………正直照れくさい。
 何となく丁寧語になっちまうし、自分の心境を綴ろうとすると余計な方向にズレて行ってしまう。
 要するに照れ隠しばっかりなんだけど、またこっちはナンボでもツラツラツラツラ書けるから、伝えたい肝心な事は益々書けなくなるという悪循環。
 ん~、無理に書こうとするのもナンだな…。
 早い方がいいとはいえ、これもいつまでに出さなきゃいけないっていう期限は無いし。

 うん………そうだな、元気だって事をまず書いて、次に事務的な話。
 俺自身の感情を書くのは、その後でいいか。
 …俺って筆不精だったんだなぁ。
 ま、年賀状も中学の頃に出したのが最後だし、意外でも何でもないけど。



 そんじゃ、まずは辞世の句…じゃなかった、時節の挨拶から。
 …つーても、俺に詩的な表現が出来るとは思ってねーし、そもそもからしてこの森で時節って言われてもな…。
 季節を感じられるよーなモノなんぞ、丸でないぞ?
 そりゃ、動物達が発情期になって交尾してたのを見た時は「ああ春だなぁ」って思ったけどさ。
 でもこの森、ちょっとウロついてみると季節を無視して発情したり繁殖したりする動物昆虫、珍しくも無いんだよね。
 この前だって、もうすぐ夏だっていうのに冬眠(?)してる熊を見つけたし。
 …いや、これは季節を無視してるんじゃなくて、単に俺がこの森の生態について無知だってだけ…だよな?
 結構カオスな森だから、ちょっと自信がない…。
 何がどうカオスかって?
 …イイモデードが平然と繁殖してる時点で察してくれよ。
 正直、この森には異界への入り口があるんじゃないかと常々疑いを持っているんだが。
 具体的に言うと舞闘伝キタキタな世界への入り口が。
 ……あのファウスト先生とは別の意味合いで人間かどうか疑わしいオヤジを妹達に会わせるのは心底イヤだが、キタキタ踊りって美人さんがやると色っぽいらしいなぁ…。



 うーむ、それにしても、筆がサッパリ進まない。
 ………ディズィー達はどうしているんだろう?


「そっちはどうだ?」

「……うーん…」

『ぬぅ…』

『むぅ…』


 3人揃って、紙とペンを前にして首を傾けていた。
 …イイ構図だ。
 ここにカメラがあれば、激写して迷わず手紙と一緒に送るのに。

 ディズィーも不慣れな為か、やっぱりどう書けばいいのか思い浮かばないようだ。
 …うん、こういう時こそアピールチャンスだネ!
 無理に書こうと思わずに、まず文章構成から練り直そう。

 前提として…。


「なぁみんな、ちょっと聞きたいんだけど…。
 書く事が思い当たらないから、手紙を書けない?
 それとも書きたい事が多すぎて、どれを書いたらいいのか分からない?」

「……どっちかと言うと…2番目」

『私もです』

『俺も…そうではあるんだが、いざ書くとなるとな…急に思い浮かばなくなる』


 あー、あるある。
 日常生活なんて、特別な事でもないと愚痴ぐらいしか出て来ないしなぁ。


『兄はどうなのだ?』

「俺も…どっちかと言うと書く事が多すぎて、かな。
 (事務的な事も色々書かないといけない分な…)
 よし、ここは一つ分担して書こう。
 ディズィーが飯の事、俺が森の様子の事…みたいな感じで」

『私とネクロは?』

「すぐには思いつかないから、とにかく書きたい事をあるだけ吐き出して箇条書きにしてみよう。
 んで、その中の似通った話題を纏めて、それぞれがそのテーマで書く」

『成程、同類項で括るのだな。
 確かに、何に付いて書くのか決まっているのであれば、筆も進み易かろう』



 と言う訳で、それぞれ書きたい事、書けそうな事を片っ端から吐き出す事になった。
 …今更なんだけど、コイツら俺の決定とか提案に異を唱えた事って殆ど無い……大丈夫かな?

 ではまず第一に。

 俺  : 妹達の様子
 妹1 : ナッシュの様子
 妹2 : 兄の様子
 妹3 : 兄様の様子

 …うん、まぁ予想できた事ではあるよね。
 この森の中、一番目につく事だし、何より一番伝えたい所だし。
 …これについては、何も言わなくても、何か言ってもそれぞれが書くだろう。
 問題は、それだけでハガキが一枚全て埋まりかねないって事だけども。

 他には。

 森の中で見つけ、住処にしている遺跡の事。
 ファウスト先生がやってきてくれた事。(直腸未遂の事は黙っておこう)
 森の動物達と仲良くなった事。
 イイモデードの事……これ、俺が言い出したんだけど却下された。
 自然から採れる珍しい(と言うか森の外じゃ見た事も聞いた事も無かった珍妙な)果物の事。
 水場を泳いでいる魚の事。
 太陽の光が差し込んでくる、遺跡の前の広場の事。
 自炊をするようになってから、日に日にディズィーの料理の腕が上がっている事。
 毎日ナッシュが美味しそうにご飯を食べる事。
 余った時間でナデナデしてくれる兄様の手が、少し感触が変わってきた事。
 夜の寝袋で、兄の体が暖かい事。
 最近、妹達の肌の艶や羽の肌触りが滑らかになってきている事。
 ナッシュが声変わりし始めた事…あれ、俺自覚無かったよ?
 ディズィーもそうだけど、ウンディーネ達も最近勉強を頑張っている事。
 人目が無いから、ネクロが気紛れに人型になって奇行に走っている事。
 最近、シッポが長くなってきてスカートの下でフリフリ動いてるのが分かる事。
 ナッシュの角が、ちょっとずつ太くなってる事…マジ?
 ネクロのコミカルだったドクロ姿が、段々リアルっぽくなり、ウンディーネの顔つきもょぅι゛ょから少女へ、少女から女性へ変わりつつある事。


 …なんかもう、段々単なる集団惚気と化してきた。
 聞かされるお爺さん達が、糖分過多で糖尿病にならないか心配だ。
 ま、それだけ元気で仲がいいって事で安心してもらえるとは思うけどね。
 今回は仲の良さはともかくとして、居心地の良さを主点に置いて俺は手紙を書こうと思う。
 ノロケは他の皆に任せる。
 ………妹達が俺との惚気を語ってくれるって、なんかイイね!
 兄冥利に尽きるよ!
 と言う訳で、出来上がったら読ませて……そうですか、駄目ですか。
 むぅ、何書いてるかスッゲェ気になるが…ま、親しき仲にも礼儀ありって言うしな。

 さて。
 書く内容も大体決まったし。
 分担決めるとしますかね。


「料理の味とかに関しては、作ってるディズィーじゃなくて俺達の誰かの方がいいな」

『そうですね。
 自分では、上達しているかどうかも分かりにくいですし』

「じゃあ、寝袋の話は私が書く!」

『ぬ…狙っていたのだが、まぁいいか…。
 ならば、俺は兄が美味そうに飯を食う姿を…』

『私は…声変わりの話を書きましょうか』

「ん~、だったら俺はナデナデした時の手触りが変わってきてる事を…」


 …結局、書きたい事を好き勝手に書くのには違いないのね。
 ま、進んでなかった筆が動きだしたんだし、効果はあったか。
 3人は和気藹々としながら、それぞれの便箋に向かっている。
 そんじゃ、俺もそろそろ書くとしますかね。


 当初の予定通り、まずは時節の挨拶から…いや、やっぱ止めよう、なんか他人行儀だ。
 オイッス!くらいでいいよね、うん。
 ファウスト先生のおかげで、村でも流行してたし。

 えーと…。


『謹賀新年』


 …初っ端からボケてんじゃねえよ、俺…。
 消して消して。
 いっそ元気!!の一言だけでもいい気がしてきたけども、それ筆不精ってレベルじゃねーしな。
 獣の槍の使い手の年賀状じゃあるまいし。


『お爺さん、お婆さん、お元気でしょうか?
 俺達は元気です』


 ………・ちょっと自分で書くのは辛いけど、この一文は書いておかないとな。


『村を出る切欠になってしまった、邪気眼ごっこ』


 …邪気眼ごっこを消して。


『ギアの破壊衝動も、すっかりナリを潜めて顔を出しません。
 多分、はしかとか水疱瘡みたいに、一度克服したらもう掛からない類のモノなのかもしれません。
 もしそうであるなら、俺だけじゃなくディズィーやネクロやウンディーネも、普通の人間と同じように…いえ、同じ程度にケンカしながら過ごす事もできるでしょう。
 いつか、人の世界に紛れて生きていけるように……理想を言えば、紛れるのではなく共存できたらいい…と、オボロゲながらに思っています。

 さて、それはそれとして、森での生活は日々是好日。
 悩みと言えば、調味料が足りない事くらいです。
 最近ディズィーの料理の腕が上がってきているだけに、深刻な問題で……』




 ツラツラツラと、文章を綴る。
 一度筆が動きだしてしまえば、話題が尽きるまでそうそう躓くような事はない。
 なに、会社で書いてた書類やら始末書やらに書きこむ心も籠ってない文章に比べれば楽なもんだ。
 …ヘタに取繕おうとしなくていいからね。
 つーても、書いてる事は遠回しな仕送りの要求だ。
 お爺さん達だって、そう貯えがある訳じゃない筈なんだが…何とかして金ヅルもとい収入を確保しなきゃいけないな。
 最低限、俺達が人間社会に紛れて出られるようになるまで、お爺さん達には生きていてほしい。
 またアップルパイ食べたいし、何より親孝行ロクにしてないからな。
 …考えてみりゃ、憑依前の世界でも親孝行なんか考えてもみなかったんだよな……まだ歳が歳って事もあるだろうけど、自分で思ってるよりも親不孝者だったのかもしれない。

 ま、あんまり考え込んでも仕方ないわ。
 今の俺にできる親孝行は、お爺さん達を安心させる事だけ。
 憑依前の父さんや母さんへの親孝行は、元の世界への道が見つかってから考えよう。


『…と言う事ですので、いずれそちらの方にもファウスト先生が来訪されると思います。
 手紙はその時に渡してください。

 さて、話は変わりまして最近の妹達の様子ですが……とても……元気です…。
 森に住むようになった当初は、夜中に声を殺して泣く事もありましたが(俺が気付いている事は秘密にしてください)最近では逞しく日々を送っています。
 動物達と戯れる姿は、聖人か天使が降臨したんじゃないかと本気で思うくらいに綺麗な光景です。
 何れ人間社会に復帰した暁には、画家として名を上げ『聖母』とか『我が愛妹』とか、その辺のテーマであの光景を絵画にして永遠に残そうと思っています。
 今まで筆を握った事はありませんが、ギアボディの性能は半端ではありません。
 頭の中に鮮明に記憶されている映像を、そのままコピーできるくらいに手先が器用なのです。
 絵画というより、筆で作った写真みたいになるかもしれませんね。
 問題は絵に込められた感情でしょうけど、それこそ俺の愛情の前には一切の無問題です。
 妹達への愛情の前に、世のシスコン達は共感して涙し、シスコンじゃない者達は一斉に啓蒙される事でしょう。
 ひょっとしたら妙な宗教画として、メシア降臨の図に使われそうになるかもしれませんが、我が妹達を神だの天使だの如きと一緒くたにされるのは非常に不愉快なので、その場合は著作権とかを行使してその宗教をブッ潰します』


 ……ここまで何の疑問も無く書き連ねておいて、ふと我に返った。
 …掛け値なしの本音を綴ってはいるんだが…これ、お爺さん達が読んだら不安にならないか?
 俺がシスコンだって事自体はとっくにバレているというか周知の事実だったんだが、流石にここまでとは思われていなかった…多分。

 …まぁ、仮に不安に思われたとしても、まだ自分を無理に納得させる事はできるレベルでしょ。
 そもそも、他に喋れる人が居ない森の中、4人だけ…ネクロとウンディーネを一人と数えるかどうかは視点によって違うけど、そういう見方をすれば2人だけなのだ。
 人は居ない、周囲に遊ぶ物は殆ど無し、寂しさを紛らわせるのは、互いの存在のみ…と言っても、動物達と戯れてりゃそれなりに心の拠り所にはなる。
 でも、夜はやっぱり動物達は森に帰ってしまうし、寂しさを紛らわせるどころかむしろ強調されてしまう。
 そんな時、自分の側に居る誰か…。
 シスコンじゃなくても、好感度が上がるのは自然な成り行きだろう……元々仲が悪ければ、下がる一方かもしれんがな。


 …ん?
 今、何かちょっと引っかかったような…。
 以前から、何か時々引っかかるモノを感じてはいるんだけど、それが何なのかは相変わらず不明のまま。
 どうにも気持ち悪いモノを感じる。

 …いや、今は考えないでおこう。
 お爺さん達への手紙の方が重要だ。


 えーと、まぁ事務的な話はもう終わったとして。
 ここから先は妹自慢だ!
 お爺さん達には悪いけど、ディズィー達の成長を直に見れる特権をフル活用させてもら………いや待て待て待て、さっき『お爺さん達が呼んだら不安にならないか?』なんて思ったばっかりだろうが。
 いつもの妹自慢のノリで書いたら、それこそ別の意味で不安にさせてしまうわ。
 相変わらず仲良くやっている事を伝える程度に、しかし兄妹間の禁断の関係を匂わせない程度に、加減して…。
 それが一番難しいんだよな。
 書いてる間にメッチャテンション上がって暴走するのが目に見えてる。
 うむ…よし、ここは一つ、書きこむ行数を限定しよう。
 手紙に書きこめる残りが大体10行分ちょっとだから、ディズィーについて3行、ネクロについて3行、ウンディーネについて3行。
 これだけのスペースに俺の想いが治まるように凝縮した文章を書けばいいのだ。
 何、難しいが不可能じゃない。
 確か南極越冬隊で働く夫に対して、たった3文字…『あなた』という言葉に、言葉にしきれないほどに多く大きな想いを籠めた手紙というのがあった。
 それにくらべれば、3行ずつなど低いハードルだ。
 他にも、フランスで『レ・ミゼラブル』の売れ行きを出版社に尋ねるのに、『?』だけ書いて手紙を送り、帰って来たのは『!』の一言だったとか、そんなのもある。
 …まぁ、そのどちらも、行数に限度があったんじゃなくて、自主的にその一言に決めたんだろうけど。

 そんなトリビアはともかくとして。
 まずはディズィーについて書かないとな。
 料理の腕については、さっきの遠回しな仕送り要求で書いたからいいだろう…物足りないけど。
 ここは……よし、シッポの事を書こう!
 ある意味、ディズィーの体の中で一番のチャームポイントだ。
 オパーイとかヒップとかとは、全く別の方面へのアプローチだけども、実際これが無視できないんだよホント。
 ネコジャラシにジャレるネコの気持が良く分かる。

 そもそも、ディズィーの服装は毎日ほぼ同じ黒い服で、足元まで覆うロングスカート。
 なんだけど、持ってきた荷物の中にあったのは、急いでいて判別し損ねたのか、随分と小さくなってしまった服もあった。
 使っていた当時は長袖のロングスカートだったけど、サイズが小さくなった今着たら、ノースリーブのヘソ出しミニスカートという、何とも涼しげかつテンションが上がる仕様になってしまっている。
 …まぁ、流石にそのまま使うんじゃなくて、布をチョコチョコ切って調節する必要はあったけどね。
 それを着た姿については、またその内語るとして……問題はシッポなのよ。
 さっきも言った通り、ロングだったスカートはミニ…とまでは行かないまでも、膝から下は見える程度の長さになってしまっている。
 そのスカートの下で、こう……黒っぽいモノが、フラフラ揺れてるのよ。
 しかも、時々スカートを押し上げて動いてるのが見えるし……捲れないから一層気になる。
 あれは思わず掴みたくなるだろ、常識的に考えても非常識的に考えても。

 …いきなり掴んだら、ディズィーよりも背中の二人からカミナリが落ちるがな。
 あのシッポ、かなり敏感だから…筆を使ってナデナデする時はともかく、突然やられると半端なく驚くらしい。
 しかも、ナデナデの時に何度か直接、そっと触らせてもらったんだけど…なんともまぁ、いい弾力してるんだこれが。
 ゴムボールか?と思ったよ本気で。
 しかも、手触りが物凄くイイ。
 ギュッと掴んでグニグニしたくなるのは、生物として当然の本能だと主張したい。
 そもそもからして、シッポって気になるだろ?
 猫でも犬でも、ジャレてる間にシッポを軽く握ってみたくなった事くらい、誰だってある筈。

 さて、とにもかくにも書くとしようか。


『最近、ディズィーのシッポが長くなってきました。
 村に居た頃はせいぜい10センチ程度だったのが、森に出てきて一か月もしない内に足元まで届くようになっています。
 これも成長の証でしょう。
 村に居た頃の成長スピードと比べると、雲泥の差と言えます。
 村に居る間は、シッポが伸びると色々誤魔化せなくなるので、体が勝手にセーブをかけていたのかもしれません。
 そういう視点で考えると、村から出てきたのも悪い事ばかりではないような気がします。
 お爺さんお婆さんと離れる事になったのは痛恨でしたが、誰かに迷惑をかけたりおびえたりする心配もなく、延び延びと成長できているのは確かですから。

 さてこのシッポですが、物凄く手触りがいいです。
 敏感なのでディズィー達はあまり直には触って欲しくないようなのですが、ナデナデの際に何度か触らせてもらった結果、私はあのシッポの虜となってしまったよーです。
 こう、グニグニとした手触りと程良い弾力、そして絹のような手触りを併せ持ち、誘うようにクネクネピョコピョコ誘うシッポに、私の心が釘付けです。
 もしもアレと同じ触感を持ち、同じ動きをするシッポ型アクセサリーを開発できたら、ミリオンセラーどころかビリオンセラーだって余裕でしょう。
 生産量が追いつかずに、暴動が起きても私は不思議には想いません。
 いつかお爺さんとお婆さんにも触らせてあげたいと思います』


 …よし、ディズィーについてはこんなもんでいいか。
 次はネクロの番だね。
 さて、最近のネクロと言えば…顔の造形が、本格的にドクロになってきた。
 それに、何だか甘えん坊に拍車がかかってきているような気がする。
 具体的に言うと、毎晩の抱き合って眠る時とか、食事の時とか、あと昼寝してる時とか。
 何かと言うと、擦り寄って来るんだよ。
 何て言うか、ワンコと散歩する時、先へ先へと進もうとする筈のワンコが、何やら飼い主の足元でウロウロして、足に飛びついてジャレてくるような感じで。
 勿論、つぶらな瞳で見上げられるのもセットである。
 ネクロの場合は瞳が無いから、つぶらどころか虚ろなような気がしなくもないが、少なくとも俺にはつぶらな瞳に見えるんだ。
 これも愛の成せる業か?

 うーむ、しかしネクロが甘えん坊になるとは本気で予想外だったなぁ。
 どっちかと言うとウンディーネの方が甘えん坊なんじゃないかと思ってて、ついでにネクロは厨二病にかかるんじゃないかと心配してたんだが。
 とはいえ、甘えられて悪い気はしない…というかはっきりと嬉しい。
 擦り寄ってくれば撫でてやるし、そうでなくともこう……抱きつかれたり巻きつかれたりすると、肌触りがいいんだこれがまた。
 手紙に何を書くかを考えていた時にも言ったけど、最近ネクロもウンディーネも肌触りというか羽触りが良くなってきてる。
 ディズィーのシッポとは違うタイプの触感だけど、羽毛布団にしたら物凄く気持良さそうだなぁと思うくらいにはスベスベでフカフカでフモフモでモフモフでボン太君だ。
 温かい、気持いい、可愛いの3点を満たして言う事無し!
 …なお、触手プレイ的な事はやっていない事を断言しておく。

 他にも、食事の時は俺に食べさせてもらいたがったり、眠る時だってディズィーと俺の間に割り込んで来ようとする事があり、ちょっとばかり揉める事もある…大抵はジャンケンで決めているが。
 いやもう可愛いのなんのって。
 なんかもう、妹を愛でるというより孫を甘やかしているような気さえしてきた。
 うん、この可愛さを語るとしよう。


『ネクロも最近の成長は著しく、顔つきがグッと大人っぽく(つまりリアルドクロに)なってきています。
 ですが、その一方で甘えん坊っぷりが激化してきており、時折ディズィーと揉める事もある程です。
 個人的にはどちらも可愛いし、まとめてナデナデするのも吝かではないのですが、やはり独占欲のような物があるのでしょうか?
 それぐらいに好かれていると思うと、やはり嬉しいものです。
 ネクロは姿だけでなく、肌触りも大人っぽくなってきていて、幼児のようなプニプニお肌から、しっとりとしたサラサラお肌。
 どんなトリートメントだかボディシャンプーだかを使っているのか疑問に思いましたが、よくよく考えたら私も妹達も水浴びくらいしかしてないんですよね。
 世の女性に殺されそうな話です』


 トリートメントとシャンプーの区別もつかない俺だけど、水で洗い流すだけでケアが足りる筈が無いって事くらいは分かる。
 そのクセ、お肌はスベスベテカテカなんだから理不尽な話である。
 栄養バランスだって、お世辞にも良好とは言い難いしねぇ。
 食べるのは専ら魚肉と果物ばっかりで、たんぱく質が足りない。
 ウンディーネはその辺にも気を使っているようなんだけど、食べる量を調節したところで変化が出るのは精々体重くらい。
 しかも、ウンディーネが食べなければ他の二人がその分まで食べるから、トータルではプラスマイナスゼロという虚しさ。
 …結局、あの3人の胃袋は繋がってるっぽいね。
 えーっと、それから…。


『3人の妹達の中で、ネクロは何故か一人だけ動物達に距離を取られています。
 体の大きさから言えば確かに頭一つ分ほど大きいし、気性が荒い部分もあるのは確かなのですが、心優しい子なんですけどねぇ。
 羽になっている状態なら、動物達も普通に近寄ってきますし、気性の荒さよりも体の大きさで怯えられているんでしょう。
 何とかして距離を縮めてやりたいのと同時に、動物に逃げられてショボーンとしている姿が妙に可愛いと感じるのだから困ったものです』


 …よし、ネクロについてはこれくらいでいいだろう。
 最後にウンディーネだな。
 …ウンディーネなぁ……いい子だし、懐いてくれてもいるんだけど、ちょっと難しい子なんだよ。
 何て言うか、悪い意味じゃなくて……………乙女的に。

 こう言っちゃなんだけど、ディズィーよりも乙女乙女してるのよこの子。
 肌触りや髪型に拘ったりするし、何度か水浴びシーンでバッタリ顔を合わせた時も、ディズィーよりも先にウンディーネが声を上げたりビンタを飛ばしたりするし。
 しかもその後、水色の体をちょっと赤く染めて何かブツブツ言ってるし。
 最近じゃ、下着のバリエーションが欲しいとまでボヤいていたのを知っている……ウンディーネやネクロに下着は要るのか…?
 それとも単にディズィーの分が必要だと思っていただけなのか?
 聞いたら串刺しにされそうなんで聞いてない。

 さて、難しい年頃のこの子を、どう書けばいいものやら…。
 飾る必要はないからありのままに書けばいい、ウンディーネ本人に見せるモノじゃないと言われれば、確かにそうなんだけども。
 …………よし。


『ウンディーネは、精神的な成長が一人だけ早いようです。
 はやくも難しい年頃に差し掛かりつつあります。
 女性としての意識が強く出来あがってきています。
 或いは、一足早い反抗期がやってきたのか…。
 ナッシュは今から戦々恐々していますが、兄としても、親代わり…正確にはお爺さんとお婆さんの代役としても、その反抗期を受け止めんと鋭意努力する所存であります。
 とはいえ、何も不仲になっている訳ではないので心配ご無用。
 何かと撫でて欲しがったり、構って欲しがったりする性格は、今でも変わっていません。
 それでも素直に言えずに、私の傍でソワソワしているのを見ると、趣味が悪いと自分でも思いながらも、もうちょっと焦らしてみようかな…という気分になってしまいます』


 …これ、ウンディーネが読んだら張り倒されそうだな。
 んで、その後『分かっているなら、どうして素直に撫でてくれないんですか!』とか怒られて。
 その後自分が何を言ったか自覚して赤面すると。
 …妄想だって言われるかもしれないけど、似たような展開は何度かあったのだよ。

 ……こっち見てないよな?
 …………よし見てない。
 見てないけど………なんか、あっちは3人揃って顔を赤らめたり、イヤンイヤン(古いな我ながら)と体をクネクネさせたり、意味も無く地面に穴を穴を穿ったりと、奇行ばっかりなんですけど。
 …何書いてるのか不安になってきた…。
 ま、まぁ……信じよう、自慢の妹達なんだし。
 よしんば妙な事が書かれていたとしても、それはそれであの3人の状態を正確に知らせるのに役立つしね。
 無駄に検閲して、取繕ってちゃ手紙の意味が無いわー。
 …うん、そういう事にしておこう!


『ウンディーネは、ディズィーに対しても女性としての嗜みを教えようとしているようです。
 これは非常に助かっています。
 私もディズィーの情操教育を何とかしようと色々試してはいるんですが、やはり男の視点からの偏った知識しか教えられませんから、女性の先生役が居るのはとてもありがたいです。
 更に、ネクロに対しても同じように女性としての意識を教えようとしているようなのですが、当のネクロは何処吹く風です。
 まぁ、ネクロはあのままでいいと思うし、ウンディーネも今のままでいいと思います。
 言うなれば、ボーイッシュ・男勝りなネクロと、ちょっと口うるさいお姉さんなウンディーネ。
 見事な役割分担になっています』


 …ふぅ、ウンディーネについてはこんなもんかな。
 とはいえ…3人の事、全然書き足りないなぁ。
 予想できてた事だったとはいえ、不満タラタラ。
 ま、仕方ないか。
 まさか他の3人の手紙をブン取って続きを書く訳にもいかない。
 腹八分目で満足しときましょ。

 それじゃ、最後にシメの挨拶をして…と。


『とにもかくにも、4人で何とか生活しています。
 水や食料には困らないし、覚悟していた程悲惨ではない…どころか、のんびりと快適な日々を送っています。
 お爺さん達はどうでしょうか?
 引っ越して行った先の人達とは、仲良くできているでしょうか。
 いずれ、俺の角や、ネクロとウンディーネとシッポをうまく隠せるようになったら、一度そちらに顔を見せたいと思います。
 多分、そう遠くない内に実現できるでしょう。
 その時を楽しみにしていてください。
 できるなら、またお婆さんのアップルパイを食べさせてほしいと思っています。
 お爺さんにも、森で見つけたヘンテコな植物とかについて、サバイバル談義をしたいと思います』


 …多分、一年半以内には、シッポとかを隠せるようになる。
 ゲームと同じ展開なら、だけどね。
 まぁ、そうでなくても、ネクロとウンディーネの身体変化能力はかなり自由度が増してるからな。
 何となれば、下着みたいに薄くなってディズィーの体に巻きついていてもらってもいいだろう。
 シッポはロングスカートで隠せない事も無いし、俺の角だって村に居た頃と同じ方法で誤魔化せるだろう。
 2,3日程度の顔見せなら、多分今でも不可能じゃない。
 そうしないのは…まぁ、何だか何だ言っても、村から出てきて一か月も経ってないしなぁ。
 あれだけ劇的(?)な別れ方をしといてそれじゃ、ちょっとやるせないでしょ。


『その時まで、どうか健康に気を付けてお過ごしください』


 …これで、俺の手紙は終わりだな。
 『かしこ』とか『敬具』って、この地方じゃ使ったっけか…?
 ………使わないな、あれは日本独自の言葉だ。
 この辺の地方でなら、日本とは違う独自の単語を使うんだろう。
 …何も習ってないな。
 一般教養の範疇だけど、手紙を出すなんて考えもしてなかったからなー。
 お婆さんも、その辺の教育は後回しにするつもりだったんだろう。

 さて、後は今度ファウスト先生がやって来てくれるのを待つだけか。
 …他の3人はどうかな?
 …………奇行がパワーアップしていた。
 手紙の中身を検閲するべきか本気で悩むも、手紙に追伸を付けるに留める。


『P.S. 初めて手紙を書く為か、妹達のテンションが上がりまくっているようです。
      妙な事が書かれていても、生温かくスルーしてあげてください』


 …これで良し。

 



アトガキ
今回は山梨忌梨墜も梨。
さて、次回は祟りで完成直後に一話が消えたSSだぜ!
つまりあの人の登場だ。
分かるな?

投稿時PV118462。



[17288] 20(妹自慢:小)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/07/11 21:00


 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 先日書いた手紙ですが、結局中身は見せてもらえませんでした。
 何が書かれているのか、ちょっぴり不安です。

 手紙自体は、先日来訪されたファウスト先生に持って行ってもらいました。
 なお、ディズィーへの身体測定は、残念ながらというべきか幸いにと言うべきか、次回に持ち越しだそうです。
 何やら緊急事態だか何だかで、ちょっと遠い所まで行かねばならないのだとか何とか。
 流石は流浪の天才医師。
 その時に確認を取ってみましたが、ディズィーの身体測定は別に闘う必要はないそうです。
 『やる気』になってくれた方が色々な事が測定できるそうですが、ディズィー自身が闘いを嫌ってるからねぇ…。
 むしろ平均値よりも弱めのデータしか取れないんだってさ。
 俺だって好き好んで戦ったわけじゃないけど、まぁ今更どうこう言っても仕方ない。

 さて、そのディズィーですが、送った手紙の返事が待ち遠しいのか、毎日空を見上げています。
 うーん、絵になるねぇ。
 ネクロやウンディーネも待ち遠しいらしい。
 特にウンディーネは、『手紙と一緒に、アップルパイも送っていただけないでしょうか…』などと真顔で言っている。
 仕送りの催促した俺がどうこう言える立場じゃね~けどな。

 正直言って、俺も手紙がくるのが待ち遠しい。
 こればっかりは、メールじゃ味わいにくい感覚だよね。 
 このドキドキ感が雅なのよ。

 ま、流石に一日中そうしていられる筈も無い。
 日々、食う為に色々集めにゃならんのは変わりないんだ。
 今日も今日とて、俺達は森の中を食料集めに歩き回っている。
 こういう時、俺達は別行動するようになってきた。
 以前なら、ディズィーは俺にベッタリで離れたがらなかったし、俺もディズィーの姿が見えなくなるのを良しとしなかった。
 と言うか、姿が見えなくなると、それだけで不安になって精神的にorzしてしまう事すらあったくらいだ。
 幾らなんでもこりゃオカシイ…と思ってはいるものの、それに気付いた時にはファウスト先生は居なかったし、相談しようと思った時にはオナラキャノンでふっ飛ばしちゃったし、手紙持って行ってくれた時には緊急事態だったそうだし。
 取り立てて急ぐ事でも無いから、また今度にしましょうかね。

 しかし、こうやって一人で森を歩いていると、色々な物が目に付くね。
 自然もそうなんだけど、意外と人工物が多いんだよ、ここ。
 遺跡があったんだから、かつては人の手が入った所なんだろうって事は想像できたが…こりゃ予想以上だな。
 よくよく考えて見れば、そもそもからして生態系狂いまくってる森だ。
 こんなモンが自然に生まれる筈が………筈が……………筈……でもこの世界だしな…。

 ま、まぁ、森自体が人工物かどうかは分からんけどね、明らかに養殖物と分かる植物が結構生えてるんだよ。
 そんなの分かるのかって?
 …そりゃ、普通じゃワカンネーよ。
 この森が悪魔の森と呼ばれるようになって数十年以上が過ぎてるんだ。
 植物の種類にしたって、針葉樹に広葉樹が混ざってる程度で、特に不思議はない。
 ただなぁ………金属質の木って、どう考えても人工物だろ?
 世の中妙な所で奥が深いから、メタルリーフなんて呼ばれる鉄で出来た木があっても不思議じゃないけど、少なくともこの辺にはない。
 と言うか、あからさまに人工物…だって根元の辺りに字が刻んであるんだぜ?
 古代の文字らしくて読めないが…なんか、詩の類じゃなくて、こう…識別番号っぽい。
 よくよく考えてみたら、この森自体が何かの施設だったのかもしれんなぁ…。
 イイモデードもそうだし、デカい牙がついたリスとか、この世界の他の地域と比べても、異色の動植物がワラワラ居るんだ。
 ひょっとしたらギアの実験場だったんじゃないかとさえ思えてきた。


 とはいえ、それも所詮は昔の話。
 今のこの森は、ピリリとブラックジョークが効いた何気にデンジャラスなだけで、慣れればその辺の公園と大差ない。
 少なくとも俺にとってはね。
 まー何だ、そんな風に、日々場にそぐわない謎物体とか、昼寝に良さそうな日溜まりとかを発見しながら、食える物を拾い集めてる訳だ。
 ただ、時々判断に困る事もある。

 今日は、いつもに比べると食い物の収集率が低い。
 徘徊…もとい散策も兼ねて気紛れでルートを選んで探してるんだけども、そうなると当然、外れの時とアタリの時がある。
 今回は外れで、まぁこういう事もあるだろう。
 とは思う物の、仕方ないの一言で済ませていいものか。
 仮にも一家の大黒柱(自称)ともあろう者が、ちゃんした稼ぎも無いと言うのはな…。
 稼ぎっつーても、最初から安定してる訳じゃないけどさ。
 ディズィー達だって、ロクに収穫できない時はある。
 そういうときは、俺が干物にして溜め込んである食料を食っているし、まだまだ余裕はある。
 食料豊かな森で良かったね。
 仲良くなった小動物とか食べなくていいし。
 とはいえ、持って帰れるブツがあるなら、持って帰った方がいいのは自明の理。
 なら…それが、食べたくないモノだったらどうするよ?
 別に好き嫌いなんて言ってる訳じゃない。
 そういうレベルじゃねーもん。

 だって…。


「う……うぅ……」


 ………まさかうつ伏せで気絶している人間持って帰って「さあ喰おう」なんてナチュラルにカニバリズムする訳にもいかねーだろ。
 ある~日、(悪魔の)森の中、行き倒れに~出会った~ってか。
 ゴロ悪いな。

 うん、現実逃避はこれくらいにしとこう。
 しかしマジな話、カニバリズムじゃなくても、コイツ放っておいていいものか…?

 そもそも、コイツは何だ?
 俺達にはまだ懸賞金の類は懸ってない筈なんだが。
 一見すると中肉中背、特に目立った特徴は無いし、寸鉄を帯びている様子も無い。
 ついでに言うと、武装に限らず装備は殆ど無し…というか完全に丸腰。
 サバイバルグッズも無けりゃ、食い物も持ってないようだ。
 …こんな所まで、一般人が一日足らずで入って来れる筈が無い…と言う事は、最低限食料は持ってきている筈なんだが。
 マジで自殺志願者か?

 そもそもこの森、足場が悪いは見通しは真っ暗だわで、非常に歩き辛い。
 真っすぐ進むのも一苦労だ。 
 奥に入れば入る程、要求される身体能力や気力のハードルが高くなる。
 イイモデードなんぞまだマシな方なのだ。
 なのに、この倒れてる人の体付きは……貧弱ではないけど、ハッキリ言って鍛えているとは言いづらい。
 周囲に人が居る気配もない、連絡を取る為の『何か』を持っている様子も無い…単独で森に入って来たのか?
 装備、能力、その他諸々……見れば見る程場違いだ。
 本当に何なんだ、コイツ?

 いや、コイツの正体なんか、この際どうでもいいんだ。
 重要なのは、コイツが俺達の平穏を乱すか否かって事だけだ。
 さてさて、ではその観点から考えてみよう。

 まず、コイツが特に何の目的も無くこの森に迷い込んでいた場合の話だが。
 …森の外に放り出してオシマイ…にしたいのは山々だが、それには少々デメリットが付き纏う。
 この悪魔の森が俺達の住居に適しているのは、その生態系と得体の知れなさ故に人を拒むからに他ならない。
 たった一人とはいえ、そこから無事に生還してきた…しかも、気絶して気が付いたら森の外に居た、という事が広まったら?
 …杞憂と言えば杞憂かもしれん。
 一人だけがそんな風に騒いだって、すぐに忘れられるのがオチだ。

 だがそれ以上に厄介なのは、コイツ自身がフラフラとこの森にまた入ってくるんじゃないかって事。
 一度助かったんだから、もう一回大丈夫だ…なんて考えて。

 これは、目的があって森に入って来ていた場合も同じ事だな。
 と言うか、そっちの方がずっとタチが悪い。
 何か目的があるのなら、確実にもう一度この森に入ってくるだろう。
 しかも、今回の経験を踏まえて、それなり以上の準備をして…だ。
 ひょっとしたら、誰か仲間を…例えば近くの村の猟師とかを雇ってくるかもしれない。
 まぁ、近所の村の人間は、猟師であろうが山師であろうが、この森にはまず近付かないけどさ。
 それなりの経験と装備があれば、俺達の生活圏まで辿り着いてもおかしくない…と言うか、この場所だって生活圏ギリギリだ。
 これ以上入ってこられちゃ、何が起こるか…と言うか、ネクロが発見次第ドカンとやってしまいかねない。
 いやそれ自体は別にいいんだが、前科が残るような真似はなるべくしたくない。

 俺の良心の呵責でもそうだけど、後々の事を考えるとな。
 ただでさえ、ギアと人間の共存ないし棲み分けは絶望的なんだ。
 わざわざ火種を自分から作る理由もないだろう。
 ただし、この場合の火種とは、自分で手を下した事のみを示す。
 俺がここで見なかった事にすれば、こいつは誰にも知られずに消えてくれるだろう。
 後になって人間社会に出て何か言われても、知らぬ存ぜぬで通せば済む…少なくとも証拠はない。
 やらなかったという証拠もないけど、このだたっ広い森の中で偶然ハチ合わせする可能性は非常に低い……今現在まさにハチ合わせしてる訳だが。
 後は、俺がシラを切りとおせるか否か……これが一番不安な訳だが。

 結局のところ、今回の遭遇の問題点はこの一点に尽きる。
 このまま放置して自然に還るのを待つか、それとも森の外に放り出すか。
 遭遇や侵入者が多くなってくると話は違ってくるが…今現在問題なのは、これだけだ。
 せめて、コイツの情報がもっと多ければ行動の指針も明確に立てられるんだが…。
 仲間が居るかどうかだけでも分からないかな。

 …よくよく考えてみたら、俺、コイツの顔も拝んで無かったな。
 気絶したままだし起きる気配も無いし、どれ、いっちょ引っ繰り返してツラ見てみますかね。
 ツンツン………よし、やっぱり起きないな。
 よっこらしょっと…。


「…………………」


 なんか………あってはならないモノを見た気がする。
 いや、顔がね?
 怖いのよ。
 だって白目剥いてベロ~ンって舌が出てんだぜ?
 しかも、その状態でうつ伏せなんかになってたもんだから、土が付いて葉っぱが付いて泥が付いて、ついでに呼吸ができなかったのか顔色悪いし口の端からブクブク泡が出てるし…。
 正直、もう一回引っ繰り返して見なかった事にしようか、いっそ自然に還るのを期待するなんて言わずにそのまま埋めてしまおうかと本気で思った。

 でも、そうしなかったのはさ…。
 なーんだか見覚えのあるブツが見つかったからなんだ。


 顔の造作は至って普通。

 特に整っている訳でも、崩れている訳でも無い。
 特徴が無い故に整っているという、まぁ平凡だけど水準よりギリギリ上って所か。
 …問題なのは、コイツの格好だ。


 耳に付けられている、どんな福耳作る気だよと言いたくなる程デカいイヤリング。

 どう見ても邪魔だろコレ。
 ていうか耳が千切れてないのが不思議で仕方ない。
 見れば、幾つも木の枝が引っかかっている。
 …イヤリングに木が引っかかっても、気にせずそのまま走って来たのか…普通なら耳がビリッと行ってるぞ。



 次に、胡散臭さ全開の…いや、某白い悪魔の全力全壊よりもフルパゥワァーな、くらいに胡散臭い、額のサークレット。
 ただしハートの装飾有り。

 メチャ悪趣味だ。
 こんなモン、いい歳こいた大人が付けるアクセサリじゃねーだろ。
 せめて女性が付けてくれりゃいいものを。
 何を考えてこんなモン被ったのか、小一時間ほど問い詰めたくない聞きたくも無い。


 そして何より、全身タイツかと思うくらいにピチピチで白を基調とした服。
 胸元にでっかいハートマーク。
 ……殺されたいんだろうか、コイツ…。
 これはアレか、「僕のハートはここにあるんだ!」とかいうアッピィールか?
 だとしたらダーツか何かで狙われるのを期待しているとしか思えない。
 体の筋肉がゴツゴツしててハートがデコボコになっているのが、非常にムカつく。


 …ここまで言えば分かっただろ?


「…なんでザッパが、こんなトコで寝てるんだよ…」


 まだGGXの時期も過ぎてないのに、何でよりにもよってコイツに遭遇するんだよ。
 ある意味、対処に困る相手ナンバー1じゃねーか。
 いや、そりゃヤバい連中が来るよりマシよ?
 イノとかあの男とかおかーさんとか、ソルとかソルとかソルとか。
 しかしザッパに遭遇したからって、一体どうしろと言うのかね君は?

 ぶっちゃけ、コイツは放置しておいても何の問題も無い。
 本人の意思によらず、ルーレットで何故か当選してムリヤリ舞台に押し上げられた観客みたいなものだ。
 しかも、押し上げられただけで特別な役割がある訳じゃなし、舞台に上がったはいいものの話のタネもなく右往左往するだけという、ある意味物凄く可愛そうな役割。
 誰にも相手にされない、おどけても誰にも注目されない、哀れなピエロ。
 …まぁそれは言い過ぎかもしれないけど、少なくとも俺がコイツにしてやれる事なんか何も無い。
 だって除霊の方法なんか全く知らないしな。
 盛り塩でどうにかなる相手じゃねーだろ。

 S子さんの原作(と言うとS子さんに失礼だけど)と同じやり方でどうにかできるかもしれんけど、俺は原作見てないし。
 結局ダビングじゃ駄目だったんだっけ?
 それでS子さんがどうにかなったとしても、ラオウ様とかどうにもなんねーよ。
 ケンシロウ連れてこいケンシロウ。
 ユリアはS子さんな。

 さて、とにもかくにも、物騒な目的じゃないって事だけは確かになったな。
 ザッパはごくごく普通の一般人だ。
 話しかけただけでいきなりブチ切れて戦闘に突入するような事はない…………多分。
 S子さん達が出てきたなら話は別だろうけど、そこはそれ。
 『発作』の時以外は、ずっと安心である……と思う、いくらこの世界でも……うん、そう思おう。
 どっちにしろ、コイツはヤバい事に自分から首を突っ込むタイプじゃない…嫁さん候補に釣られたら話は別かもしれんけど。
 例え俺達に懸賞金が懸っていたのだとしても、わざわざ賞金稼ぎの真似事をするとも思えん。
 よしんばそんな事をするにしても、悪魔の森の、ギアなんてトンデモ危険物を相手にする理由もないだろ。

 となると、一体どうしてこんな所に居る?
 コイツの出身地とかがこの近所だった………可能性はある。
 んで、『発作』が起こってその間にあっちこっち飛び跳ね、気がついたら森の中…と。
 うーん、ちょっと無理がない事もない。
 発作が起こったのだとしても、何でわざわざこの森を目指すかな?
 偶然?
 無くも無い…か。
 しかし、その偶然の後に、偶然俺とカチ合う…ちょっと出来過ぎかな。
 この森に、何かS子さんを引き寄せるモノでもあんのかな…。

 とにかく、S子さん達はともかく、ザッパの目的は多分俺達じゃあない。
 コイツの目的は………・あ。


「ファウスト先生か…納得」


 そう言えばコイツ、『治療』してもらう為にファウスト先生を探してたんだっけ。
 んで、この森にはファウスト先生が定期的に通って来てくれる。
 近くの村…というか俺達が棲んでいた村にも、来てくれる。
 まぁ、あの村には重病人は居ないし健康的な人ばっかりだから、ありがたいけども今の所需要は低いんだよね。
 最近じゃ、他の所で自分の腕が必要とされているからって、村に通う頻度は下がっているらしい。
 それでも村に通ってきてくれているのは事実。
 ついでに言うと、ファウスト先生がこの森に通っているのも、公然の事になっているらしい。
 まぁ、空見上げてたらあの巨体が舞っているとか、普通に目立つしね……突然姿を消したギアらしい俺達を気にかけていたのも、村の皆なら知っている。
 その人柄からして、見捨てる筈が無い…という事も。

 ザッパは、ファウスト先生を追って来て、村について……先生が来るのを待つ事にしたのか、それとも通う頻度の多い森へ行こうとしたのか…。
 性格的には前者だろうな。
 後者だとしても、せいぜい森の様子見をするくらいのつもりだったか。
 で、そこで運悪く発作が起きて…気が付けばこんな森の奥、と。

 うん、これで状況の説明はついた。
 結論としては、さっさと外に放り出してヨシ!
 というか、目を覚ます前に外に出しておくべきだ。
 仮に自分の意思でこの森に入って来ていたのだとしても、命辛々生還した後、同じ轍を踏むタイプじゃない。
 危険は極力避けて通ろうとするタイプだろうし、もうこの森には入ってこないだろう。
 村で大人しくファウスト先生を待っててくれ。
 こっちに来たら、俺も村の辺りを探してみるように言っておくから……言っておいても、ファウスト先生でも無理だけどな!
 そのまま森だか山だかで闘病生活を送るにしても、よりにもよってこの森には来ないだろ、多分。
 うん、解決!

 S子さんはどうにもならんから、考慮外な。
 冷たいようだが、マジでどうにもならん。
 除霊するにせよ成仏させるにせよ、方法が本気で思い当たらない。
 まさか「代わりに俺に憑依しろ」なんて言えないしな。


 しっかし、見れば見る程悪趣味というか珍妙と言うか。
 どれが呪いのアイテムだ?
 開運(笑)アイテムよりも胡散臭いこんなブツ、何をどうすりゃ身につける気になるんだか。
 どっかの民族衣装なんてオチは無いよな?
 精々、酔った上での乱行か、さもなきゃ王様ゲームか何かの罰ゲーム辺りか。
 どっちにしろ相当な運の悪さだ。

 …ああ、そういやS子さんは、恨んでいる男に似ているからって理由で取り憑いたんだっけ?
 でもザッパって平凡な容姿で、似てる奴なんぞ探せばナンボでも居そうなもんだが。
 …いや、ひょっとしたら容姿というより趣味とか性格が似てたのか?
 つまりファッションセンスが悪くて、性格は意味も無く前向きとか。

 あー、でもファッションセンスは自分からこのアクセサリを身に付けたとは…いや、そうであったとしても、この格好のままあっちこっち歩き回ってるんだしな。
 呪われてるおかげで外す気にならないのかもしれんけど、羞恥を感じない程度には悪趣味である、と。
 性格は、病気にかかった状態でもめげずに闘病生活を支えてくれる嫁さんを探していると…聞いただけなら、性格はいいんだけどなぁ。
 ネガティブな状態から、ここまでポジティブな考え方ができる奴もそうそう居ないだろう。
 それでもディズィーに求婚するようならマジヌッコロすけど。

 ん、待てよ待てよ、ひょっとしたらこの怪しげな格好、全部が呪いのアイテムなんじゃないだろうか。
 よくよく考えて見れば、ザッパに宿っている幽霊は複数居る。
 ムカデ、犬、剣、三つ子、ラオウ様、そしてS子さん。
 これらがたった一つの呪いのアイテムに宿っているというのは、ちょっと考えづらくないだろうか?
 それよりは、各アクセサリに一体くらい宿っていると考えた方が自然だろう…幽霊自体が不自然極まりない気もするが。
 しかし、そうだとするとザッパの運の悪さは凄まじいモンがあるな。
 S子さんがアイテムによって取り憑いたのかは分からないけど、他の連中がそうだとしたら…?
 呪いのアイテムなんて、そうそう転がっちゃいないだろう、GS美神的な世界じゃないんだから。
 それが一堂に会して、しかもそれを全部身につけるってどんだけ運が悪いんだよ。
 いや、それとも何かキーがあるのか?
 最初はS子さんだけだったけど、その怨念だか妖気だか霊気だかが他の連中を呼び寄せたのか?
 どっちにしろ救いようが無いって事には変わりないな。


 さて、余計な事考えてないで、コイツをさっさと放り出してこよう。
 俺達の姿を見られないに越した事はない。
 目を覚まされちゃ余計な手間がかかるから、そのまま寝てろよ?
 
 ツンツン


 …よし、触ってもヤバい気配は無し。
 S子さんとかラオウ様とか出て来ないな。
 そんじゃ今の内に…。


「う………ううぅ……」

「……」


 起きるなっちっとろーが!


「ゴフッ!?」


 当て身一発。
 と言っても、どういう殴り方が当て身かなんて知らないから、思いっきり鳩尾に一発入れただけだけどね。
 気絶したから結果オーライさ。
 ちょっと口から白い泡が漏れてるけど、顔見た時から既に漏れてたから問題はない。
 気絶した、その結果が重要なのだよ。

 さって、こいつを…あまり触りたい相手でも無いから(別の呪われているからとかじゃなくて、泡吹いてるしやたらムキムキだし男だし)引き摺っていけばいいか。
 足持って、ズルズルと。
 …10メートルも進まない内に、手からガツゴツと色々ぶつかったり落下したりする感触が伝わってきたけど、まぁ大丈夫だろう。
 この世界の住人、頑丈だし。
 だってさー、よくよく考えてみなよ。
 ゲームの中では、ザッパってチップよりは頑丈だったんだよ?
 紙ニンジャと言われちゃいても、刀で切られてもピンピンしてるし、空中から…ハイジャンプした頂点(どう見ても5メートル以上飛んでます)から思いっきり叩き落とされても、ダメージだけで済むくらいだよ?
 ザッパは紙ニンジャよりは防御力が高かった筈だし、この程度じゃどうにもなんねーだろ。
 まかり間違って万が一の事があっても、俺にデメリットはないな…コイツに対して罪悪感が働く気がしない。
 …ま、流石にそれは冗談だ。
 ここはゲームのストーリーによく似た筋書きを辿る世界だけど、ゲームの中の世界じゃないしナンタラ補正なんか存在しない。
 一応、バイタルチェックはしてるしな。


 はー、それにしても何だな…今日の稼ぎが少なかったのはコイツのせい…じゃないか、別に。
 動物はコイツ…とか、S子さんやラオウ様の気配に怯えて逃げたかもしれないが、果物は別に逃げないよ。
 とはいえ、外に放り出して戻ってきたら、もう食料を探す時間は無いな。
 ま、余計なバトルに発展しなかっただけ………・ッ!?


 バイタルチェック、異常発見!
 心拍数、血圧、動悸、その他諸々に異常発生…ま、まさか!?


 背筋を猛烈に駆け抜ける悪寒。
 ギアの制御プログラムすら無視してしまいそうな程、強烈な恐怖、生物の本能。
 逃げ出してしまいそうになるのを何とか留まって、ザッパを手放して距離を取りつつ振り返る。


『………………』

「………………」

『………………』

「………………」


 …なんか……居ました。
 いらっしゃいました
 S子さン。


『………………』

「………………」

『………………』


 かみの あいだから のぞく めが あった!


「………………YA」

『………………………………………………YA………………』


 おお、挨拶したら返してくれた。
 かなり間があったけど、意思疎通可能?
 交渉できる?
 俺、生き残れる!?


「わ、ワタクシ、ナッシュと申します……お、お名前は…?」

『…………………………S子………トデモ…』

「ひょっとして、その……幽霊の方でしょうか?」

『……ヒョット、シナクテモ……ユウレイ…』


 おお……やはり意思疎通は可能だ!
 しかし、ここからどう出る?
 ヘタに事情を聞いて刺激したくないし、『ではさようなら』とばかりに逃げると、ザッパがこのまま死にそうだし、何より付いて来られるような気がするし。

 俺が対応に悩んでいる間にも、S子さんは何やら俯いて、ブツブツ逝っておられる…言って、の誤字だけど誤字でもない気がしてきた。
 何と言っているかまでは聞き取れない。
 というか聞き取りたくない。
 SAN値が削られそうだ。
 俯いているから表情も読めない。
 ついでに言うと、さっきから俺のレーダーとかで探りを入れてるんだけど、殆ど反応無し。
 幽霊だけあって物凄く高度なステルスだ。
 本人が嬉しいかは別として。

 ところでザッパが地面でビクンビクンと感じちゃったみたいに(オェ…)痙攣してんだけど、放っておいていいよね?
 触りたくないから、もう手も離してるし。

 …ん?
 S子さんの様子がヘンだぞ?
 なんかブツブツと…。
 相変わらず俯いてるんだけど、さっきから小刻みに震えてるような…。
 ダランとしていた両手が徐々に上がって来て、こっちに………はい?


 ちょ、ちょっと待て、これまさか『怖いよー』か!?
 一撃必殺技か!?
 柳の下でひぃぃぃぃぃぃ…なのか!?
 いつの間にバトルに…ああ、そういやS子さんって普通に怨霊だったし、出会い頭に祟られても全然おかしくねえ!

 ぬぅ、気が付けばなんか全身鳥肌立ってるし!
 あ、足が動かない……というか何かワサワサした感触が!
 くっ、金縛りで体が動かん…眼だけは動くか?
 この感触は一体……ああ、見ない方がいいと思うのに目が勝手に向かってしまう!


 ワサワサ
  ワサワサワサワサ


 …やっぱり居たよムカデさン!
 俺の足元を這い回る、バカみたいにでかいムカデが3匹…。

 いや、それだけじゃない。
 気が付けば、俺の頭にかかる影。
 上からのしかかるこの圧迫感は…血塗れの剣によるモノだった。

 ムームーと声にならない輪唱が聞こえると思ったら、俺の周りを3体の幽霊が飛びまわっている。
 顔にまともな表情が無いから、何考えてるかもわからねぇ…。
 俺を3体で囲んでグルグルと回っている。
 何の儀式だ。
 カゴメカゴメでもやってんのか?

 そして、俺から少し離れたところでウロウロしている犬。
 犬なんだけど、なんか輪郭がボンヤリしているというか…全体的に影っぽいボディをしていると言うか。
 良く見たら、影の中に骨が見える…。
 へー、犬の骨ってあんな風になってんだ。
 『グルグル』と声帯もないのに、どうやってか唸り声を上げている。
 唸るのは勝手だけど、俺を見て唸るな!
 そして獲物を狙っているかのよーにウロウロするな!
 ションベンもやめろぉぉぉぉ!
 …あ、何も出て来てないや。


『……カラ……』


 な、なんですかS子さン!?
 さっきからプルプル震えてましたが、何事ですかい!?


『チ……カラ……チカラガ、ミナギルゥゥゥゥゥ!!!!!!』


 う、うおおおおおお!?

 なんかS子さンの圧迫感が2倍くらいになったんですが!?
 髪の毛逆立って爪とか牙が尖ったような気がするんですが!?
 周囲の空気が一気に冷たくなって、木々のざわめきが急に不気味に聞こえ出す。

 そして。



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 こ、この効果音というか圧迫感……ッ!

 居るッ…!
 後ろに……間違いなくッ………!
 この……圧倒的な…覇気……ッ!
 駄目だ……逆らえないッ……逆らえる相手ではないッ……!


 俺が勝手に金縛りにあっている間にも、S子さンは物凄い勢いでハイテンションだった。
 なんか叫んでる叫んでる。
 金切声で叫んでる。
 それに釣られて、犬は吠えるはムカデは産卵するは三つ子は輪唱するわ剣がビュンビュン飛びまわるは、何より背後に感じるプレッシャーが無想転生を会得せんばかりの勢いで膨れ上がっている。
 どうすんだコレ、どうすんだよコレ!?
 俺は一体どんな末路を辿るんだ!?
 S子さンにR○NG的な末路に引きずり込まれるくらいなら、ラオウ様の拳で一思いに逝った方がきっとマシだぞ!


 なんて考えていたら。


「………あら?」


 いきなり皆居なくなった。

 …あるぇ~~~~……? ? ? ? ?

 どうなってんの…?
 おーい、みなさーん……?
 …気配無し。
 反応無し。
 プレッシャーも無し。
 レーダーにもやっぱり反応無し。
 ザッパ有り。

 ………???

 と、とりあえず…助かったって事なのか?
 ………不安要素は拭えないが…ここでこうしていても仕方ないな、うん。
 半ば現実逃避と分かってはいるけど、とにかくザッパを外に放り出そう。

 足先でちょこっと突っついてみるけど、反応無し。
 さっきビクンビクンして地面でのたうってたお陰で、見るも無残な事になってるけど…生憎同情できるくらいの精神的な余裕はない。
 とにかくコイツを担いで、森の外にさっさと放り出してこよう。
 それから一息ついて…話は全部、それからだ。


 …あ、結局食料、一つも見つけられなかったな…。





 さて、その夜、妹達が取って来た食料でディナータイム。
 ちなみに、一つも食料を見つけられなかったと言ったら、ネクロにデコピン食らいました。
 痛くは無かったけど、兄の威厳が…。

 ザッパはとっくに森の外。
 結局目を覚まさなかったし、発作が起こる事もなく、実にスムーズに森の外に捨ててくる事ができました。
 夜は少々冷えるけど、もう大分温かくなってきてるし…朝まで目を覚まさなかったとしても、風邪を引く程度で済むだろう。
 ま、それはどうでもいい。
 S子さンも、あれから全然姿が見えない。
 ひょっとしたら俺に取り憑いてるんじゃないかとも思ったけど、肩が重いとかの兆候は一切無し。
 一応念仏唱えてもみたけど……どこまで効果があるかも怪しいしなぁ。

 …ふむ。


「…ネクロ、ウンディーネ、ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいか?」

「…ナッシュ、私はいいの?」

「別に仲間外れにしてる訳じゃないから、剥れるなって…。
 ギア的な知識の事なんだよ」

「むぅ」


 ギア的な知識の事になると、ディズィーはてんで無知だからなぁ…俺もあんまり人の事言えないけど。
 蚊帳の外って訳でもないんだから、勘弁してくれ。


『それで、何だ兄?』

「あー…単刀直入に聞くけど、幽霊って『分かる』?」

「…幽霊って……オバケ?」


 ディズィーがキョトンとしている。
 ちなみにこの子、幽霊そのものは怖がらない。
 ただし、怪談の類には割と弱い…というかトラウマを持っている。
 村に居る時になぁ、ネクロもウンディーネも居ないくらいに幼かった頃なんだけど……お爺さんが怪談始めてさ…その演出がまた…。
 その後は、まぁ言うまでもないだろう。
 ディズィーがベッドに染を作ったとだけ言っておく。
 …ま、それがトラウマになってるみたいなんで、怖い話し方をするとガクガク震えだすんだよ。
 どっちかというと、お爺さんに制裁だと叩き込まれたお婆さんの絶技の数々こそがトラウマになってるんじゃないかって気もするけどね。


『…「分かる」か、なのだな?
 「居るのか」でも、「居ると思うか」でもなく?』

「ああ」

『…はっきり言えば、私達には霊魂の類に関する事は分かりません。
 幾つかの資料はありますが、それも精々都市伝説やコジツケの領域を出ない程度…。
 ですから、はっきりと『居る』『居ない』を断言する事もできませんし、『分かる』とも言えません。
 感知する事ができるかすら怪しいですね』

『だが、少し視点を変えると話は違ってくる』

「視点…?」

『うむ…幽霊を人間の「亜種」と考えた場合だ』


 亜種って…ああ、スレイヤーみたいな吸血鬼とかか。
 成程…幽霊を、霊魂がどうの死者がどうのをすっ飛ばして、『そういう生物』として考える、と。
 そういう考え方なら、十中八九存在すると判断できるね。


「亜種……って何なの?」

『人に近く、人と違う者…と言えばいいのでしょうか。
 実際のところ、彼らの生態については殆ど分かっていません。
 世間一般でも、信じられてもいないでしょう…余程迷信深い者でなければ』

「ギアとは違うの?」

『違う。
 ギアは生物兵器として聖戦の少し前に人為的に生み出された存在だが、亜種は…自然に存在した種族だと考えられている。
 言わば天然物だな。
 遥か昔より、ヒトの傍に存在し、時に恐怖として語り継がれ、或いは尊いモノとして崇められ、だが決して公にはその姿を現さなかった者達だ。
 ああ、別にヒトとは違うだけには止まらず、その辺にいる動物に似ているが違うモノも亜種に含まれる。
 要は人間が「公式に」存在を認めているモノに良く似ているが違う存在、だ。
 いつから居たのか、何処から現れたのか、現在何処にいるかも一切不明。
 …ただ、聖戦時に何度かギアと接触した記録はある。
 詳しい記録は知らんがな』


 え、そうなの?
 それは意外…。
 しかし、考えて見れば聖戦は世界規模でドンパチやってたんだしな。
 異空間にでも逃れる能力でも持ってない限り、亜種だって戦火からは逃れられないだろう。
 闘いに巻き込まれてしまえば、その能力をフル活用して対抗しようとしてもおかしくない…というかそうでないとおかしい。


『そうだな…ディズィーや兄でも知っている亜種と言えば……吸血鬼、狼男、ゴブリン、ペガサス、メドーサ…この辺りか。
 尤も、接触例があるのは、前者二つくらいだがな』


 成程ねぇ…。
 亜種に幽霊が含まれると考えると、ある意味じゃ最も人間に近い亜種かもな。


『で、幽霊がどうしたのです、兄様?
 いきなり怪談がしたくなった訳でもないでしょう』

「いや~、それがさぁ…」


 ディズィーはまだ亜種について聞きたそうだったが、悪いけど後にしてもらおう。
 何処まで話が広がって行くか、分かったもんじゃない。

 昼間に遭遇した遭難者と、その時にカチ合った幽霊達について話す。
 妹達がエライ慌てた。
 そして身体検査とか物凄い勢いでされた。
 …股間だけは何とか守り抜いたよ!
 正直、明け渡してしまいたくなったけどもねッ!

 んで。


「ふーん……それで、そのS子さんは、何処かに行っちゃったんだ?」

『その上で、遭難者は森の外に放り出してきた、と』

「そう言う事だ…何か不都合、あったか?」

『いや、上々だろう。
 その男、我々の害になる行動をするとも思えんからな。
 ドクター・ファウストが来た時に一言言っておけば、もう関わる事もあるまい。
 加えて言うなら、我々がこの森に居て、そしてその男を放り出した事を黙っていてもらうくらいか』


 ザッパだしね。
 ファウスト先生にも治療が出来なかったとしても、俺達には関係ない。
 出来る事もなし、してやれる事もなし。
 無理して出来る事を挙げるなら、闘病生活を支える嫁さんにディズィーを、なんて言われたら速攻で生き地獄に叩き込むぐらいだ。


「で、結局S子さんがどうなってたのか、分かるか?」

『…推測でよければ』

「頼む」

『はい。
 以前にも話した通り、兄様は旗艦型ギアです。
 その能力は、直接接触していないギアに対しても影響を及ぼします。
 分かりやすく言えば、兄様から放射されるエネルギーを、私達が受け取る…太陽と植物の関係だと思えばいいでしょう』


 …太陽と太陽電池、くらいに考えておけばいいか。
 それで?


『この放射されるエネルギーですが、様々な形式での放射になります。
 先の例で言うなら、太陽から発せられる熱を受け取る植物、紫外線を受け取る植物、光を受け取る植物など…様々な植物があります。
 一つの方法でしかエネルギーを受け渡しできないのでは、それを邪魔されると途端に効率が悪くなりますからね』


 ほうほう、戦略的には当然の発想だな。
 一つの作戦やシステム運行を妨害された時、次善の策を用意しておくのは当然の事……少なくとも日本じゃそうだった。
 俺自身も、幾つもの方式でエネルギーを駄々漏れさせている訳だ。
 それでそれで?


『そして、放射されるエネルギーの形式ですが…ギア以外にも影響を及ぼすと考えられます。
 実際、受け取る側に同じような機能さえあれば、ギアでなくてもその恩恵を受けますからね。
 ここからが重要なのですが……兄様の体から放射されるエネルギーの形式は、半分以上が未知のモノ…。
 私達の知識にある規格に合わない物となっているのです。
 恐らく、ハーフギアとなった為に、その機能に何らかの変調が起きたのでしょう』

『生まれてくる際に、何らかのトラブルがあったか、或いは生命の神秘か…だな。
 恐らくは後者だろう。
 大した根拠はないが、トラブルによるものだとすると、兄から放たれるエネルギーの波長は整い過ぎている。
 何より、後から修復の為にいじられた形跡も無い。
 …話を戻すが、その変調を来たしたエネルギー放射が、そのS子とかいう幽霊に何らかの力を与えたのではないか…と考えられる』

「…確かに、力が漲るとか言ってたな…」

『あくまで推測ですけどね。
 検証のしようもありません』


 もうどっか行っちゃったしな。
 …しかし、左様な事なら…ひょっとして、S子さンを引き寄せたのって俺?
 ザッパに発作が起きた時に、俺のエネルギーに釣られてこっちに寄って来たとか?
 …あまり嬉しくない推測だな。
 そうなると、その内ザッパが再来襲してくる可能性がある。
 というか、S子さンみたいな怨霊に力を与えるってヤバくねえ?
 ………アカン、どうしようもない。



 それにしても、ディズィーの反応がちょっと予想外だった。
 話をしている間、あんまり興味無さそうに木の実を突いていたし、S子さンもそうだけど、ザッパをさっさと森の外に出してしまった事を残念がるかと思ってたんだけど。
 俺にとっては色々な意味で、まぁ対処できる範囲の危険人物だけど、ディズィーにとっては何よりも好奇心の対象になり得る存在だ。
 森に閉じこもって、人との触れ合いがまるでない生活だからな…俺が居る分まだマシとはいえ、寂しさは禁じえない。
 外の事だって知りたいだろうし、この子は幽霊に対する恐怖を殆ど感じない。
 だから、仲良くなりたかった、とか言い出すかと思ったんだけど…。

 ディズィーは俺の予想とは逆に、幾分ホッとしたような表情すら見せていた。
 …何故に?
 やっぱり、一般人に会ったら怖がられると思っているんだろうか。
 うーん、微妙な問題だよなぁ…それは違うとはとても言いきれないのが特に。
 ギアってだけで生き辛い世の中だ。
 アレだな、敗戦国の人間ってこんな気分なんだろうか?


「それより…ウンディーネ、ネクロ。
 その…亜種?の事について、もっと聞かせてくれない?
 ……仲良く、できるかな…」

『どうでしょうね。
 仲良くする以前に、会う事自体が非常に難しいですから。
 ただ、もしも会う事ができたのなら、人間よりは友好的な接触が見込めますね』

『うむ。
 齢を重ねて、強大な力を持つに至った亜種であれば尚更な。
 人の世界に紛れて生きる事があるとはいえ、奴らは人間程群れる事を重視せん。
 むしろ、強い力を持てば持つ程に、個として完結する傾向があり、同じように対する者を個として考える傾向がある。
 暇潰し他者に人間を必要とする事は滅多にない。
 よって、過去にギアとの交戦経験があったとしても、ディズィーや兄とは別のギアと考え、純粋な興味の対象として接する事が予測される。
 …あくまで、数少ない接触例から割り出した、大雑把な傾向だがな』


 へぇ…それは知らなかった。
 スレイヤーもそういうタイプなんだろうか?
 確かに、アレは興味や好奇心で動くタイプだと思うし、人間を観察する事を趣味にしていたっけ。
 俗世に出ていたのも、そう長い期間じゃなかったようだし。
 
 


 …今日はそのまま、亜種についての話を聞きながら寝袋に潜り込んだ。
 で、その時ディズィーが「一緒に寝ていい? ……ええと、怖いから?」なんて疑問符付きで聞いてきたんだが……いつも一緒に寝てるやないけ。
 そもそも幽霊も亜種も怖がってなかったし。
 気になったんでちょっと誘導尋問してみたら、至極アッサリとボロを出した。
 …ウンディーネに、「こういう仕草が男性に好まれるそうです」と吹き込まれたらしい。

 まーウンディーネにも悪意とかは無いし、面白がってるんじゃないんだろうけど……ディズィーに演技は無理ですな、あっはっは!
 『これでいいの?』って視線でウンディーネに問いかけたり、抱きついて「ほふぅ………(忘我)………はぅ!?」なんて感じで我に帰ってから必死で演技を取りつくろう様に、笑いを堪えるのが大変だったぜ。
 演技…役割や感情を演じていると言うよりは、喜んでくれるのが自分にとっても嬉しいから、「こういう格好が好きなの?」って感じで自主的にグラビアポーズをとって見せてくれてるようなもんか。
 何が違うのかって?
 んー、簡単に言っちゃうと、所詮は素人のポーズで、営業スマイルや別人の仮面を被れていないって事かな。
 ポーズはとるけどディズィーのままで、ディズィー以外になれない。

 うん、やっぱり前の時のヤンデレディズィーは夢だな。
 本当にディズィーが演技してるんだったら、あっという間にボロを出すのが目に見えてるわ。
 まぁ、多少の演技(笑)してでも仲良くなりたいって想われてるのは確かだし、兄冥利に尽きるね。

 とはいえ、何か様子がおかしいんだよな…。
 先日のアレが夢だと断定したからには、情操教育だってある程度は効果を上げている。
 実際、水浴びしに行く時には覗きに来ないように言ってくるし、ギュッとする時も、時々ではあるけど躊躇いみたいなものを感じる。
 今現在は……一緒に寝てるけど、これ自体には抵抗はないようだ…まぁ、今までずっとそうだったしな。
 うーん、羞恥心かどうかはともかくとして、同じ行為をしていても躊躇いを感じる時と感じない時があるんだよな…どうなってんだろ?


 ……そんな事を考えていた俺は。
 ディズィーに起きていた、重大な変化を見逃していた事に……未だに気付いていなかった。 


アトガキ
完成直後、謎のエラーでファイルが開けなくなってしまった曰くつきの話でした。
プロパティとか見ると、ちゃんと20KBってあるのに…開いてみたら白オンリー。
久しぶりに泣いた。

投稿時PV・123870



[17288] 21(妹自慢:大)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/07/18 21:17
 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 ここ最近、ディズィーの成長が目覚ましいですマジで。
 森で暮らすようになってから、成長速度が増している。
 今まで全然気付かなかった俺もいい加減オバカさんだけど、ちょっとショックだ。
 何でかって、ディズィーに身長で抜かれちゃったんだぜ?
 本気で敗北感を噛みしめたよ。

 森に来る前は、精々2カ月程度で一年分の成長が平均だったんだが…森に来てからそれ以上に成長速度が速くなった。
 俺よりも10センチくらい背が高いんだぞ?
 何で気付かなかったんだ俺…。
 ちなみに俺は、現在15歳前後。
 それに対して、ディズィーは既に17歳って所だ。
 ディズィーの身長は…大体160センチ前後。
 ゲームの設定では、確か167センチになっていた筈。
 日本人として考えると大分大きいけど、住んでる地域を見るとそう大きくも無い……これが遺伝子の差か? 
 いやそれよりも、15歳ボディの俺が160センチって、身長が低い日本人としても小柄な方…伸び盛りはこれからとはいえ…。
 …どうしてこうなった♪
 どうしてこうなった♪
 どうしたこうなったマジで!!




 ちなみに、ネクロとウンディーネは今までの成長速度のまま。
 現在、ネクロはコミカルとリアルの中間くらいの姿形をしていて、非常にシュールだ。
 ウンディーネは…何て言えばいいんだろーなー、アレ……思春期に入ったっつーか、潔癖な時期と言うか…『少女』の中間期くらいだろうか?
 お姉さんなディズィー、妹なウンディーネ、ボーイッシュなネクロ…バラエティーに富んでるね。
 何でディズィーだけいきなり育ったんだろ…。

 ウンディーネに聞いてみた事があるけど、何やら含み笑いされて、『乙女の秘密ですよ、兄様』と言われただけ。
 ネクロに聞いたら、『女性ホルモンの分泌が云々』で、サッパリ分からないと言ったら…割と洒落にならない説明が出てきた。
 曰く、『人工進化だ』との事。
 オイオイ、大丈夫なのかソレ?
 人工進化っつったらアレだ、デビルガンダム……じゃねーよ、アレは自己進化だ。
 …聞いてる限りじゃ、この場合は大して変わらなかったみたいだが………妹達が自己増殖するって、なんか…それなんてヘヴン状態!?
 …いやいや、トリップしてられる状況じゃないよ。
 確かGGの闇慈ルートでアレだ、ソルにギアの事を問い詰める時に出た単語だよ。
 つまりギアの根幹的な何かに関わっていると言う事で………それが分かった所で、何もできんが。

 とはいえ、もうちょっと突っ込んで聞いてみた所、ナデナデ30分の取引で色々答えてくれた。
 人工進化と言っても、そう大した事ではないらしい。
 一言で言ってしまえば、二次性徴だそうな。
 ……どんな二次性徴だよ…。
 ちなみに生理は来ていないらしい。

 あー、とにかくだね。
 進化したと言うより、精神の成長…或いは変化に引きずられて肉体的にも成長したのだとか何とか。
 ま、正確に言うと、精神の成長と言うより…願望かな?
 早く大人になりたいと言うか、背伸びしたがるお年頃と言うか。
 普通の人間だったらそういう願望を抱いたところでどうにもならないんだろうけども、幸か不幸かハーフギア。
 体の方がその願いに反応してしまったらしい。
 …だったら何で俺の背は伸びないんだと聞いてみた所、『イメージや執念が足りない』という回答が返ってきた。
 …まぁ、確かにそこまで深刻に思い悩んでいる訳でもないけど…という事は、ディズィーの願望は肉体が反応するくらいに強いって事か?
 何でまた…。
 背伸びしたいとかお姉さんぶりたいって願望でどうにかなるレベルじゃないだろ、一般人よりハードルが低いとは言え…。

 首を捻っていると、またウンディーネから『乙女の秘密ですよ、兄様』と笑いながら言われた。

 まさかと思って好きな男でも居るのかと冗談めかして聞いてみたが、首を傾げられただけで終わった。
 うん、この反応は本気だ。
 誤魔化してる訳じゃない。
 気になる人は居るか、とも聞いてみたけど、やっぱり反応は同じ。
 「ナッシュが一番気になる。二番目はお爺さんとお婆さん」という家族愛溢れるセリフには感涙しかけた。
 ただ、俺が一番気になるっていうのも、異性的な意味じゃない。
 ギャルゲの主人公的なニブさを発揮している訳じゃないぞ…俺が自己申告しても信じられんかもしれんが。
 そもそも、ディズィーはまだ男と女の違いが良く分かってないからなッ!
 だっつーのに体だけでっかくなるとか…。


 まぁ、別に悪い事じゃない…よな?
 少なくとも、これで俺はロリコン呼ばわりされる事はない訳だ肉体的には。
 17歳だべ?
 若干青い果実よりではあるけども、充分大人だ……しかしこーいう言い方すると、性癖云々以前に悪役っぽいな。
 精神的な方は…どうだろうなー、時間的には3歳未満であるのは事実にしても、ディズィーのどこが3歳児に見えると。
 そもそも寿命からして人間とは違うんだし、ここは人格的知能的なレベルで精神年齢を評価すべきじゃなかろうか。
 それを言ったら、世の中にはいい歳こいて分別のついてない、5,6歳のガキ大将みたいなジジイもいるけども。
 何れにせよ、難しい時期に入って来てるのは間違いないな…。

 でもなぁ…ディズィーがでっかくなってきてから、スキンシップが激しくなってきててさぁ…でも水浴びには誘われなくなった、というか前回ログの時点で近付かないように言われるようになってた。
 撫でてる時もペタペタ擦り寄って来て抱きついてくるし、添い寝してる時はギュッと抱きしめて来て、立派に育ったデッパイに顔が埋まってヘブンアンドヘブンアンドヘブンオアヘルだし…窒息死的な意味で。
 俺、いつまで理性が保つかなぁ…。
 股間のイチモツが浪漫砲無しで屹立するんだったら、俺は絶対に当の昔にディズィーを襲っているだろう。
 そうでなくても、寝てる時にディズィーは足を俺の腰に搦めてくるから、大事な所同士が布越しに当たって…。
 入れられなくてもいいから弄りたいって、何度実行しかけた事か!

 はやく来てくれテスタメント!
 いややっぱ来てほしくないけど!
 とにかく誰か第3者が居れば、俺の気も紛れるかもしれない! 
 





 え、ディズィーの胸?
 ……まぁ、何だ…ゲームではかなりの大きさで、所によってはギアっつー事でGカップとか言われた事もあったけどさ…。
 現在、既にEです。
 多分来月にはFに突入します。
 いや、あくまで見た目と感触なんだけどね?
 俺、カップサイズがどういう風に分けられてるのか知らないから。
 あと感触っつっても、直に触った感触じゃなくて添い寝の時に抱きつかれた時の感触だと明言しておく。
 それと、そういう時にちょっと目を下に動かすと、深~い谷間と俺に押しつけられて歪んだポヨポヨがね…ある意味視覚的な暴力だと主張したい。

 つーか、よくよく考えたら…考えなくても、ディズィーの胸って将来垂れる事なさそうだよな。
 百年経っても俺達の体は若いままだし、胸を支える筋肉だって普通の人間に比べてずっと強いし劣化退化もしにくい。
 でっかい胸も、垂れるんじゃなくて…こう、ロケット型?にしては形がちょっと丸すぎるな…とにかく、下に向かって伸びてるんじゃなくて、球形のボールが二つくっついてるみたいに形を保ってるし。
 …イカン、俺もそろそろ性欲が溜まって来ているようだ。
 結局浪漫砲を一発使ってから、全然発散できてないしな…。


 ま、それはそれとしてだね。
 成長の弊害、全く無い訳じゃないんだ。
 俺の男としてのプライドとか理性とかは…うん、一端脇に退けておいて。
 その…ディズィーの方がね?
 肉体が急激に成長したからか、その……ぶっちゃけ、性欲に対する対処法を知らないみたいなんだよ!

 それに気付いた時、ようやく今まで感じていた疑問が氷解した。
 ほら、ディズィーがスキンシップの時に微妙に躊躇いを見せていた事があるって前回ログの最後にあっただろ?
 コレが原因だったんだよ……羞恥心よりも性欲が先に目覚めちまった。
 ……え、ならどうして裸を見られるのは駄目で、抱き合うのはOKなのかって?
 さぁ……そっちは分からん。
 推測でよければ……状況理解・感情・本能などが、上手く結び付いていないのだろう。
 だから、裸を見られて反応する事もあれば、ナデナデで際どい所に触れられても「くすぐったくて気持ちいい」で済む場合もある。
 アンバランスに育ってしまった知識・肉体・欲望、そして精神……それこそが、時折顔を覗かせたり覗かせなかったりする羞恥心の正体だ。
 しかし、多少なりとも性欲を実感できているなら、これからの情操教育はより理解しやすくなる…と思いたいね。
 
 無理も無い事ではあるんだよなー。
 結局、何だかんだでディズィーには性教育ってモノを全くやってこなかったし。
 精々が男女の見分け方くらいだ。
 生理なんて言葉も知りもしないし、赤ん坊はコウノトリがキャベツ畑に高度300メートルくらいから投下していくんだと無邪気に信じている子だ。
 村に居た頃、インターネットとかで色々調べていた事はあったけど、その辺の事はウンディーネが上手くボカしていたらしい。
 それが今になって仇になるとは………いや、むしろ幸運なのか?
 もしもディズィーがその手の知識を持ってしまっていたら、俺はどう対処すりゃいいのだ。
 隠れてコッソリ発散するならまぁいいさ、覗きたい襲いたいという誘惑に俺が負けなけりゃいいだけの話だ。
 が、もしも万が一、溜まった性欲を手近な標的…つまり俺に向かってぶつける事を考え付いてしまったら?
 ………迫られた結果、俺がイ○ポ呼ばわりされる事になりかねない。
 うん、複数の意味で普通に自殺モノだ。

 とにかくだな…。
 何がキツいって、寝る時が一番キツいんだよ。
 今まではスキンシップの領域に(辛うじて)治まっていた(と思い込もうとしている自覚はある…)のが、ジリジリと『一線』に迫って来ている。
 具体的に言うと、アレだ。

 例えば吐息。

 今でも毎晩一緒に寝てて、抱き枕にされるのはいつもの事なんだけど…何日かに一回くらいの割合で、普段とディズィーの呼吸が違う事がある。
 熱が籠ってるんだよ熱が!
 心なしか物理的な温度湿度も高いような気がするし、錯覚だと分かっているけど何だか息一つとっても甘い香りがするし!
 …ああ、村に居た頃はディズィーのスメルならどんなモノでもフロォォォオラルに感じられていた俺だけど、妙に落ち着きが出てきてしまったなぁ…。
 しかもね、前までは俺とディズィーってほぼ同サイズだったから、こう…抱きついて添い寝するにしても、顔はそんなに近付かなかったのよ。
 ディズィーは俺を横抱きにする事が多いから、肩の分だけ顔の間に距離ができるしな。
 近いと言うなら、むしろウンディーネが体を伸ばしてくる事の方が多いし。
 ネクロは専ら俺の腕か肩に巻きついてスヤスヤ眠るし。

 でも、最初に言ったようにサイズがでっかくなっちゃった。
 それで俺を抱き枕にするんだから…こう…上手い具合にズレてね?
 抱き心地がいいようにってディズィーが試行錯誤した結果がまた…。
 丁度俺の肩から顔の辺りにディズィーのEカップが来る。
 ふにょんとした柔らかさが顔面に来るんで、パフパフされてる気分になりそうだ。
 ただ、強く抱きつかれてる時とか窒息死するかと思ったけども、これはこれでロマンだよね!

 ま、これだけだったら今までも似たようなモノだったし、耐えられない事もないんだよ。
 でもなー、新機軸の刺激が入ってきちゃって……それが吐息な訳よ。
 さっきも言ったように、肩から顔の下半分は丁度ディズィーの胸の辺りに埋もれる事になる。
 じゃあ、ディズィーの口はどの辺りに来ると思う?



 ……俺の耳元でFA。


 毎晩毎晩さぁ、そうやって抱きつかれて、乳圧しつけられて、あまつさえ耳元に「スゥー……フゥ……」って息吹きかけられるんだぞ!?
 穏やかな寝息がアルファ波を発しつつも、何処か甘いカホリを伴った暖かい息が、一呼吸毎に耳に向かって吹きかけられるんだぞ!?
 しかも時々ネボケて「なっしゅ…」とか呟くし、やっぱりネボケて耳たぶを甘噛みしてくる事もあるし!
 「んっ……はぁ…」なんて声を囁かれたらさぁ!
 これなんてエロゲ!?
 声だけで聞けば、充分お姉さまヴォイスで通るレベルなんだよ!

 しかもね、声だけじゃないんだ。
 『動き』も伴ってるんだよそういう時に限って!
 ディズィー自身は眠ってるし、ネクロとウンディーネもスヤスヤ熟睡。
 ただ俺だけが眠れない、そんな状況で。
 俺を3人がかりでギュッと抱きしめた状態で。
 こう…圧しつけた体をクネクネと……ッ!
 わかるだろ?
 わかるよな、どうなるのか!
 乳圧しつけられた状態でそんな動きしたらどうなるのか!

 擬音で表すにも困るくらいにフニョンフニョンなんだぞ!!
 こう……ぐにっ、むにゅ、ふにゅん、むみむみ……みたいな感じで。
 俺が体を捻って逃げようとしても、流石に3人の拘束は振り解けずに、逆に俺の動きのおかげでディズィーの乳を堪能できてしまう始末。
 ああ、せめて寝る前に一発(←文字通り→)発射して賢者タイムになれていたなら!

 しかもだぞ、圧しつけて動くのは上半身だけじゃないんだよ!
 下半身もなんだよ!
 いい感じにムチムチ(死語)になった太股とかが、俺の脚に絡みついてくるし!
 それ以上に腰の動きがエロいし!
 前から同じような寝相はあったんだけど、ディズィーも欲求不満になりかけているのか、モゾモゾとした動きに明らかに性的なニュアンスが混じりだしているんだ。
 俺が心の中でうろ覚えの般若心経唱えて自分の体を動かないように制御プログラムでロックしていた時なんか、もうね…冗談抜きでエロゲイベントだった。
 腰…というより股間を俺の腰骨辺りに擦りつけてくるんだよ!
 
 もうこの際だからオブラートに包まずキッパリ言うぞ。
 寝ている間に無意識にとはいえ、ディズィーが俺の体でオナニーするんだよ!
 アレだ、エロゲとかエロ漫画とかである、机の角に大事な所を押しつけて~っていうのと同じ感じだ!
 実際湿り気まで感じるんだよ!
 幸い朝までには乾いてるけど…もしもディズィーが夜中にトイレに行きたくなったりしたら、お漏らししたと勘違いするんじゃなかろうか。

 そういう動きを感じて我慢してると、段々ディズィーの体温が高くなってくるし、声も艶っぽくなってくるし、汗も滲んで肌の質が変わってくるし…。
 正直、ナニが使えなくてもいいから襲ってしまえと何度思った事か。 
 一回だけだけど、「んんっ…!」って小さく呻いてブルブルッと震えた事があった。
 …イッたんだと気が付いた時は冗談抜きで鼻血が出たぜ。
 制御プログラムで体を抑えてるのを解くと、そのまま襲っちまいそうだったから血を拭けなかった。
 朝起きた妹達には、寝返りを打とうとしたら鼻をぶつけたらしいと言っておいたけど。

 育っちまったのが、ある意味致命的だったかもなぁ…。
 見た目ロリじゃなくなったと言うかむしろ年上になっちゃったし、元日本人の俺から見るとディズィーは既に成人しているようにさえ見える。
 主に身長と発育的な理由で。
 だから、俺にとっては合意さえ得られれば禁忌でも何でもないんだよなぁ…。
 あ、でも妹だったっけ。
 しかし、最近は妹っつーよりも女って感じの方が強いんだよ。
 …そもそも、最初から本当に妹として見ていたのかどうか…。
 今となっては顔付きが非常に似通っている事もあって、双子だって言う事は疑ってないんだけど、お爺さん達に拾われた当初は単なる兄妹かと思ってたし、そもそも血の繋がりがあるのかも状況証拠でしかなかったしな。
 妹じゃなくて、単純に被保護者と考えていた節もあったな…それがいつの間にやら本当に妹扱いしてたけど。

 しかし、実際どうしたものだろうか。
 結局、お婆さんがどのくらい性教育を施したのか…。
 と言っても、男女の差が明確に理解できてない時点でダウトでしかないが。
 せめて、村に居た頃に妊婦さんでも居れば実例を挙げて説明できるんだけどなぁ。
 結婚式をあげる予定の人は居たけど、妊娠はして……たのかもしれないけど、少なくともお腹は目立ってなかった。
 そう言えば、ディズィーって結婚の事知ってるのか?
 近所であった結婚式にも、結局出なかったし。
 俺は元々出るつもりはなかったし(堅苦しいからね)、正装するとなったら角を隠す為のヘアバンドをどうにかしないといけなかったしね。
 俺が出ないなら私も出ない、とか言ってディズィーも出席しなかった。
 …ま、あの頃はまだ人見知りしがちだったし、出席しても理解できなかっただろうけどね。

 いやいや、この際妊娠云々結婚云々はどうでもいい。
 どっちにしろ結婚は当分阻止する構えだしな。
 どうにかしてディズィーを発散させなきゃイカン。
 やっぱりアレだ……俺が教えるしかないんだよな…いや待て、ネクロとウンディーネはどうだ?
 重荷を押しつけるようで気が重いが、あの二人ならちゃんとした知識を持っている筈…多分。
 異性である俺が教えるよりも、二人に頼んだ方がいいかもしれん。
 うん、これは候補①な。

 二つ目の方法としては、別のやり方で性欲を発散させる。
 具体的には運動、スポーツ。
 体を動かす事で、性欲を発散させる事ができると聞いた事があるような無いような。
 …しかし、この森でスポーツったってなぁ…。
 広場はあるけどボールも無いし、たった二人で道具も無しにできる運動…しかも健全な奴。
 何かあるか?
 格闘技関係は却下。
 ディズィーは闘うのキライだし、ヘタに暴れて闘争本能に火が付いたらネクロの矢でフルボッコにされてしまう。
 あと組み技系…レスリングとかやったら、俺の理性がヤバいわ。
 技知らんし。
 たった二人で鬼ごっこなんて虚しいからイヤだしな…「捕まえてごらんなさ~い」は勘弁だ。
 う~ん、腹筋とか腕立て伏せでどうにか出来るかな…?
 しかし一時凌ぎならそれでいいとして、あまり歪な発散方法を教えていいものか…いや、今でも充分歪なんだけどね?

 ……そうだ!
 お婆さんに頼んで、その手の情報が書いてある保体の教科書とかレディコミとかを送ってもらうのはどうだ!?
 ……やっぱ駄目だ。
 ディズィーが妙な形で世間ズレしちまう。
 ああいうのは…保体の教科書もレディコミもロクに読んだ事ないけど、それなりの下地が無いとちゃんと理解できないだろう。 
 それ以前に不倫云々なんてディズィーにはまだ早い……いや遅いのか?
 どっちにしろ本だけ押しつけて投げっぱなしじゃ話にならん。
 そもそも、お婆さんみたいなシワシワの婆ちゃんが、その手の雑誌の事が分かるもんなのだろーか?
 これは俺の偏見だけど、もうちょっと若いオバチャンとかOLが読むモノだと思うんだけど…少なくとも、村にはその手の雑誌は無かったから少なくとも愛読者じゃあるまい。

 でも、雑誌を送ってもらうのはいいアイデアかもなー。
 暇潰しようの本が出来るのは嬉しい。
 新聞も無いから、元活字中毒の俺としては時々発作を起こしそうになるんだよね。
 とはいえ、老後の蓄えをあんまり削り取る訳にもいかんから、時々頼む程度かな…さもなきゃ毎日の新聞を取っておいてもらって、ファウスト先生に持ってきてもらうかだ。
 新聞紙ならゴミ捨てにも使えるし情報収集も多少は出来るしハリセンだって作れるし、言う事無しだね!
 でも焚火の燃料にはしないよ、法力で充分だから。

 …話が逸れてたな。
 うーむ、俺が自慰を覚えた時ってどんなんだったっけ?
 ………確か、中学の時に買ってきたエロ小説(何処ぞのエロゲのノベルだった)を見てカルチャーショックを受けたんだよなー。
 性的な接触なんて、精々キスと胸を触るくらいの知識しか無かったから。
 股間を弄ってどうこうなんて思いもしなかったし、凸と凹を組み合わせて腰を振るなんて想像もしなかった。
 セクロスしている描写を見て、弄ったら何かなるのかなー…と思ってベッドの中で試してみたら、妙に気持ち良くなって、んでいきなり何か出た。
 慌ててトイレに駆け込んで、白いのがパンツに付いてるのを見て何事かと思ったんだよね。
 皆、思春期の男の子が夜中、足音も殺さずにトイレに駆け込んでいくような事があったら、精通したんだと察して生温かい目で(気付かれないように)見守ってあげてね!

 …うん、要するにちょっとした知識と切欠だけあれば、本能が後はどうにかしてくれる…と。
 上手く行くかどうか、スッゲー不安だなぁ。
 しかし何から何まで俺の意思と手でどうにか出来る話でもないんだよなぁ……。
 取りあえず、その手の知識をそれとなく与えると同時に、「そういう事」は人に見られると非常に恥ずかしい事だと言うのも教えなきゃならんな。
 ………妹達を相手に、ワイ談でもするか?
 人として兄として駄目駄目な考えだけど、これが一番確実なような気がしてきた。
 後は背中の二人に何とか誘導してもらえば…。

 よし、この方向で行こう!
 悩むだけ悩んだし、これ以上考えても時間の無駄だ。
 俺のモラルが完全に擦り切れてしまう前に、ディズィーをなんとか…………いや待て、考えても時間の無駄と断じた直後に何だが……そういう事を教えて、解決するか?
 どっちにしろ、あのお姉さんのワガママボディで抱き枕にされるのは変わりないんだぞ?
 ……うん、取りあえずあの腰の動きとかが無くなればそれでいいや。


 よし、そうと決まれば、話題の材料になるような本をファウスト先生に頼んでみるか。
 そうだな、医学書でいいだろ。
 勉強になるし、モザイクとかかかってないから下手なエロ本よりエロいって聞いた事がある。
 話題のタネには充分だろう。

 あー、でも最善はやっぱり第三者の女性がいる事だよな。
 それも、信頼がおける年上の女性。
 それなりに経験があると嬉しい…いや俺が嬉しいんじゃなくて、頼り甲斐の有無的な話でね?

 次善の策としては……やっぱり俺の意識をどうにかした方がいいな。
 自覚できるくらいにタマって来てるから、何とかして一発ヌいておかないと。
 しかし、例によって(と言ってもまだ1回しかやってないが)浪漫砲を発射しないといけないんだが、言い訳はどうしよう…。
 ギアの戦闘衝動云々は心配をかけそうだから最後の手段。
 となると、やはり立てずにヌく方向か…。
 ん~、しかし出来るかな~?
 覚えたての中学生の頃ならともかく、今は適当に弄るだけでも……………そうだったね、立たなかったね。
 なら適当にグニュグニュ弄ってりゃ何とかなるか。
 皮が伸びそうだからやりたくないんだけどな…。

 いや、それ以上に問題なのは…どうやってそういうコトをする時間を作るか、だよな。
 一人になる時間はそれなりに有るとはいえ、それはほぼ全て昼間の話。
 食料探しに出ている時や、掃除を分担している時、後は精々トイレと水浴びに行く時くらいだ。
 それ以外の時は、ほぼ全て一緒にいる。
 特に夜はその傾向が大きい。
 …やっぱり、月明りが強いとは言っても、暗い森の中に一人で居るのは辛いんだろう。
 一人っつーても、ネクロとウンディーネは居るけど…どうもあの3人、意識は別々であっても、ある意味では『3人で1人』或いは『3人は一人』と考えてる節があるし…この辺は寄生種特有の意識なのかもしれないね。
 水浴びする時だって、あんまり時間をかけてると心配して見に来る始末だ。
 新月で普段よりも森が暗い時なんか、トイレに行くのも連れ立って行こうとする事さえある。
 …この状況で、どうやって一人になれと?
 チャンスがあるとするなら、ディズィー達が水浴びに行っている間だけか…。
 女の子の本能なのか、俺よりもずっと長い時間をかけるからな。
 それでもいつ戻ってくるか分からない恐怖はある…それをスリルと言い切れるほどには、俺の変態度数は高くない。
 ついでに言うと、そういう場面を妹達に見られたいと思うよーな素質も無い。

 いっその事、寝ているディズィーをネタにしてグニグニ弄ってみようかと………駄目だ、本気で俺は駄目だ…。
 いくらディズィーが成長してお姉さまボディになっているとは言え、そんな寝込みを襲うような事考えるなよ…。
 でも、ぶっかけにちょっと惹かれたのは秘密。
 

 …一度、この辺(プライベートな時間・性癖・その他諸々)の事も含めてファウスト先生に相談してみるか。
 上手くすりゃ、浪漫砲もどうにかしてくれるかもしれない。
 恥を晒すようで気分が悪いが、相手は医者だ。
 診察だと思えばどうという事はない…という事にしておこう。




 ところでふと気になったんだけど、ディズィーってブラジャーはどうしてるんだろうな?
 村に居た頃は、必要になるほど大きくなってはいなかったし。
 洗濯物として干してある所も見た事が無い。
 それは森で暮らすようになってからも同じ事だ。
 ひょっとして…ひょっとしなくても、ノーブラ?
 パンツは猫さんパンツと犬さんパンツがあったけど。
 ぐ、ぐぬぅ……これは由々しき問題だ!
 俺は全裸よりも下着を付けている方が……じゃない、これからどんどん暑くなるんだし、このままだと胸の先っちょが服の下からでも見えてしまうではないか。
 それに、下着というのは体型を矯正する効果もある、と聞いた事があるような無いような。
 胸の形に関しては放っておいても大丈夫だとは思うが、これは確認する必要があるな…。
 洗濯物を干している最中に、ブラが無いか確認しとけばいいか。
 無かったら………お婆さんに頼んで、その辺の物も送ってもらうかな。

 ちなみに、俺の下着は専らトランクスだ。
 カイ辺りはブリーフ使ってそうだよな。
 闇慈はきっとフンドシ、チップは………ツヨシがどうしてたか分からんからノーコメントで。


 う゛~む、こうして考えると、やっぱり俺とディズィー達だけっていうのは少々不便だな。
 誰か女性としての経験や知識を持った人が居ないと、何かと気が回らない。
 俺、元々粗忽者だしね。
 とはいえ、その辺の村から適当に攫ってくる訳にもいかないし、じゃあ自分からこの森に来てくれる女性は…と言うと、GGキャラぐらいだろう。
 あの連中に女性としての常識を教わるのは、物凄く危険な気がする。
 鰤にでも頼んだ方が、まだ知識に偏りが無い気がする……ヤローだからディズィーには近づけたくないけどな!

 誰か居ないかなー、良識を持っていて危険じゃない女性で、ここで暮らしても問題ない人。
 …候補として挙げるなら、スレイヤーの奥方のシャロンさんが筆頭。
 ただし確実にスレイヤーが一緒についてくる…ディズィーに色目を使ったらシャロンさんにブッコロされると思うけど。
 戦力的な意味でも非常に魅力的な案だが、実現の可能性も手段も殆ど無いのがネックだな。
 ああ、それとシャロンさんってシナリオでも全然喋らなかったから、キャラが掴めないってのもあるか。

 次点に来るのは…そうだな、小説の方に出てくるマリーナさんと、大統領が居た孤児院の院長が同率かな。
 ただマリーナさんは下半身不随だから森での生活は苦しいだろう。
 院長にしたって、随分な御老体だし森での生活に耐えられる可能性は非常に低い。
 そもそも二人とも養っている人が沢山いるだろうし、連れてくるのは至難の業。
 実現の可能性はゼロに近い。

 更に次点を考えると………邪夢、かな?
 3位にようやく原作メインキャラというのもどうかと思うが。
 それ以前に他の連中とどっこいどっこいではあるんだが。
 じゃあどうして邪夢なのかと言うと、女性としての意識が一番強そうだからだ。
 あの我儘な性格がディズィーに伝染したらと思うとちょっと目眩がしそうになるが、ディズィーは逆に少々我儘になった方がいいと思う。
 俺はこのままでもいいんだけど、なんつーか、そっちの方が楽しく生きていけるんじゃないだろうか。
 それに実現の可能性が一番高いのも大きい。
 ここに住んで、とまでは行かないが、手紙くらいなら…………あれ?

 よくよく考えたら、必要としている第三者がここで暮らしている必要はないんだよな?
 俺のストッパー的な意味での第三者はここに居ないといけないけど、それが女性だったらストッパーどころか捌け口にしてしまうんじゃないかという不安はあるが。
 うん………そうだな、文通って手があったか。
 頻繁に手紙のやり取りはできないけど、それでも森の外との繋がりを作れる。
 ディズィーに色々な知識を教えてくれる人を作れる。
 ついでに言うと、相手が男でもディズィーにちょっかいを出しにくい。
 うん、誰か紹介してくれるように頼んで見るかな。
 ついでに俺も文通したい。
 いい加減、俺だって人恋しいと思うようになってきてるんだ。

 よし、この方針で行くぜ!
 でもその前に……。


「う……んん……」


 …俺を抱きしめて眠っているディズィーが声を上げる。
 吐息が耳にかかって、胸がぐにゅっと圧しつけられて!
 今日も今日とて眠れねえええええええ!!!!!!







 さて、この数日後。
 事態は予想外の展開を迎える事となる。
 まさか、こんな経緯で初めての「第三者」が出来るとは……御釈迦様でも分からなかっただろう。




アトガキ

はい、と言う訳でディズィーのボディが正式にダイナマイトな領域に突入しました!
これでロリ云々と抜かすなら、SSをちゃんと読んでないと判断します…ただし精神的にロリだと言われると反論のしようが無い件。

投稿時PV 129024



[17288] 22(妹自慢:小)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/07/25 20:21


 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 唐突ですが、森の空気が最悪です。
 何がヤヴァイって、ディズィーがヤヴァイ。
 物スゲー勢いで闘気が振りまかれています。
 幸いというか何と言うか、それは俺に向けられたモノじゃない……多分。
 うん、多分。
 でもそうだとしたら、直接闘気を向けられていないのにこの威圧感…。
 うん、洒落になってねェッす。

 そして、その闘気を受けて、ビビるどころかむしろ心地よいとばかりに平然としている…お客さん。
 
 ピリピリしてるのはディズィーだけじゃない。
 ネクロとウンディーネなんか、一目見た瞬間にガンマレイを叩き込もうとした。
 流石にそれはヤバかろうと慌てて止めたが、正直止めた方がヤバかったような気がしてきた。

 別に、とうとう俺達に賞金がかかって、それを狙って団体さんがやってきた訳じゃない。
 と言うか、物理的にぶっ飛ばせばいい分、そっちの方が楽だったかもしれない。
 ファウスト先生の健康診断だって、何だかんだ言っても力でカタは付く。
 でも、今回の相手は……力っつーか、物理的な手段が通じない相手っぽい。
 そのクセ、あっちからの攻撃は通じるんだから…どうしろってーのよ?
 しかも敵意を向けてくる訳じゃないから、あんまり無碍にできないし…。







 さて、ちょっと時間は巻き戻る。
 『お客さん』がやって来た頃から話を始めよう。
 その日は、普段と大して変りの無いありふれた日だった。
 ただ、雨が降っていたから食料の調達には出かけなかったくらいで。
 雨って言っても、そんなに酷い雨じゃない。
 こう、しとしと降る程度で、ちょっと涼しく感じられる程度の雨。
 時間によっては、雲の切れ間から太陽が覗く事もあったな。

 ま、そんな訳で、今日は外に出かけずに遺跡の中であれやこれやと話しこんだり、新しい食事のレシピとかを考えていた訳だ。
 ちなみに、こんな雨の日は大抵そうやって過ごす。
 何日も雨が続くと、退屈と湿気でカビそうになるけどね。
 あと水場まで行くだけで体が冷えるから、体を洗えない事もある。
 あんまりそれが長く続くと、ディズィーの体臭で俺の理性が飛……もとい、色々と不快になって…いや全く不快じゃないんだけど……衛生面でアレなので、雨をシャワー代わりにする事もあった。
 この世界の雨、場所によっては酸性雨どころか硫酸雨みたいになる事もあるらしいんだけど、この森についてはえらく綺麗な雨なのだ。
 ま、産廃とか全然無い地域だからね。
 聖戦の100年で、良くも悪くもその手のモノは破壊しつくされた。
 汚染されていた大地も、100年の間に浄化(?)されたとか何とか。
 人体に有害な物をギアが取って来て、武器として扱った例もあったとか無かったとか…。
 ま、一番大きいのは、法力という自然に負担をかけない技術の恩恵だと思うけど、それは置いといて。

 とにもかくにも、そんな風に静かな時間を過ごしていた訳だ。
 他にもネクロと胡桃の殻を使ったオセロをやったり、ウンディーネとその辺の瓦礫を使ったジェンガやったり、ディズィーにナデナデをせがまれてお姉ちゃんを甘やかす弟な気分を味わったり。
 …ちなみにオセロは全敗だったがな。

 で……夕方くらいだったかな?
 そろそろ飯の準備かな、って時間帯。
 保存してある食料を取りだしてきて、皮を剥いたり切ったりしていた時に。
 急に………何と言うか、ヌルッと来た。
 空気が変わった、ってああいうのを言うんだね。
 どう変わったかって、こう……重くなったと言うか、水の底に沈められたように息苦しくなったと言うか。
 本当に水の底に沈んだら息苦しいなんてレベルじゃないけど、それは置いといて。

 それを感じたのは、俺だけじゃなかった。
 ディズィーは戸惑ったように周囲を見回していたし、ネクロとウンディーネは見知らぬ変化=危険の方程式で動いてるから周囲を警戒しているし。
 明らかに気のせいじゃない。
 でも、誰も異常の原因を見つけられない。
 周囲を見回そうが、レーダーを頼りに探そうが、全く反応なし。

 状況は理解できないが、取りあえずヤバいのが近くに居る事は確か。
 そしてそれを発見できない。
 …ギアの本能なのか、混乱していた頭がクリアになって、戦術的な思考回路に切り替わったのが分かる。


「…ディズィー、俺と背中合わせになってくれ。
 後ろの警戒を頼む」

「う、うん、わか……!?」

『兄、後ろだ!』

『兄様に手を出すなら…!』

「なぁ!?」


 …断言する。
 俺の後ろには、何も居なかった筈だ。
 こういう時に背後または頭上は絶対的に死角になる。
 それを承知しているなら、視線は向けられなくても重点的に注意を払うのは当然だ。
 実際、注意を払っているつもりだったのだが……。

 飛び退いてディズィーを庇うように立ち、振り返った俺の目に、さっきまでは明らかに存在しなかったモノが飛び込んできた。
 …正直に言おう。
 俺はソレが何なのか知っていた。
 知っているのは名前と姿くらいだったけど、それでも知ってはいた。
 ついでに言うと、一度だけだが見た事もあった。
 画面の中で、という事なら何度も見た。
 だけど、俺はソレをソレだと認識できなかった。

 何故かって?
 …ケタが違ったからだよ。
 迫力が、纏う空気がまるで違った。
 この、周囲に漂う異質な空気…これの源はコイツだと、問答無用で確信出来る。

 ソイツは、ただ茫洋と立っている。
 ただ真っすぐ立って、俺に視線を向けてきている。
 それだけで、体が竦んで動けない。
 ウンディーネだけは人型から大きな狼(?)っぽい姿になり、ガンマレイの光を輝かせていた。

 …ソイツが、ゆっくりと手を挙げた。


『…………………YA……』

「………YA…」

「え、えっと……や?」

『………』

『むぅ……』


 ソイツ……S子さんは、以前俺と会った時にやった手をちょっとあげる挨拶をしてきた。






 …さて、その状態で…十分くらいかな?
 感覚がマヒしてるから良く分からん…。
 そのまま睨みあったままだった。

 なーんでこのヒトがここに居る訳?
 一緒にザッパも居るのか?
 正直、ディズィーにアレを近づけたくはないんだが…。
 いやでも、周囲に反応は無かったよな?
 …ますますどうなってるんだろうか…。

 …S子さんは、特に何もする気はないようだ。
 何か目的があってここに来たのかもしれないが、当面敵対する気はない……ように思われる。
 …そう考えると、急に気が抜けてきたな。
 必要最低限の警戒はしないといけんけど…。


 グゥ~~~ キュルル…………


『……兄様…この緊迫した状態で何を…』


 …ゴメンナサイ。
 取りあえず大丈夫と判断したら、気が抜けて腹の虫まで鳴きました。 
 S子さんは何か反応……?

 指差している。
 俺じゃなくて、地面に落ちた食料を。
 …何が言いたいんだ…?


『……タベ……ナイノ……?』


 …はい?
 タベ、ナイノ?
 食べないの?

 …ええ~~~?
 S子さん、どういう事ッスか?
 いや、そりゃ食べますけども。

 戸惑う俺とディズィー。
 ネクロとウンディーネは、まだ警戒を解かない。


『…お客人がいらしているのに、対応せずに食事をする訳にもいかないでしょう。
 真似れざる客人ならば、尚の事です』

『…ジャア………ワタシ…モ……タベル……』

『………(何故そうなる…思考回路が破綻しているのか…?)』


 …いや、ホントに何でそうなるの?
 図々しい性格なのか、それとも幽霊になって一般常識みたいなモノを忘れちゃったのか。


「……ナッシュ、どうするの?」

「ん~…………ま、まぁ…いいんじゃないの?」

『兄様!
 正気ですか!?』


 あ、やっぱそう言われるよね?


「確かに……。
 幽霊って物食えるのかな」

『そういう意味ではないぞ兄よ!
 この状況でボケに走るな。
 …で、実際のところ、どういうつもりだ?』

「無駄に刺激したくない、の一言に尽きるな。
 相手は幽霊、人間と違って物理攻撃が効くかどうかも分からないし、敵意があるかも微妙なところ…」

「…ねえナッシュ、幽霊って?」

「……ああ、そういや一見しただけじゃ分からないかな。
 この人、先日森で会った幽霊のS子さん」

『………コンゴ……トモ、ニ……ヨロシク……』


 どこぞの悪魔みたいな話し方するね、S子さんってば。
 にしても、意外とフレンドリーだ。

 相手が幽霊と分かり、背中の二人の警戒心は……差し引きゼロって所だな。
 少なくとも今は人間じゃないと分かって多少警戒が和らいで、相手の事が分からないから警戒する。

 ディズィーは戸惑っていたようだが、積極的に闘いたがる子でもないし、基本的に俺の方針に従う子だからね……この状況でまで異論も唱えず従うというのはちょっと問題がある気がしないでもないが。
 ネクロとウンディーネは……取りあえずは従っておくって感じだな。
 俺が言うからって理由以上に、S子さんを観察する目的もあるのだろう。
 闘うのであれば、情報収集は必須だ。
 何せ幽霊の事はこの二人にも分からない。
 うん、この二人はそれくらいでいい。
 元々俺の方針に異を唱えないのは、兄としての好意を持っているから以上のものじゃない。
 二人の役割はディズィーの守護で、それは俺の意思よりも優先される事。
 必要だと思ったら、この二人は独断ででも動くだろう。
 実に頼もしいね?

 さて、取りあえず飯だ飯。 





 …まぁ、このような訳で、冒頭のシーンに繋がる訳だ。
 ディズィーが…ネクロでもウンディーネでもなく、ディズィー本人がどうしてこんなに闘気をバラ撒いてるのかは、サッパリわからない。
 少なくとも、S子さんは何もしてない筈なんだが。
 と言うか、出現してからS子さんは俺としか口を効いてない。

 理由?
 そんなの俺に聞くなよ。
 まぁ、俺も含めて、何て話しかければいいのか全く分からなかったのは確かだけど。

 とにもかくにも、腹が減ってはなんとやら。
 頭の回転も鈍るし暗い考えしか出て来なくなるから、S子さんを気にしつつ…俺の場合は、他の連中も居るんじゃないかと周囲を警戒しながら、食事の用意をしていた訳だ。
 食べられるのかどうかは知らないが、S子さんの分もちゃんと用意した。
 ……んだけど……。
 なんか……普段よりも、料理が手荒というか雑になっていないですか、ディズィーさん?

 作ってる最中も、ふと気が付けば何やらオーラを纏っていた。
 何がどうなってんのと背中の二人組に視線で問いかけるも、S子さんを警戒していて全然気付かれない。
 いやホント、どうなってんの?
 ディズィーは自分から闘いを望むような子じゃない。
 競技的な意味でなら、そこそこ好戦的ではあるんだけども、そんな相手じゃないし、何よりこのオーラは本気のオーラだだ。
 何がどう本気かは分からないけど、ディズィーはマジだ。
 少なくとも、最初は警戒こそしていたものの、敵意は持っていなかった筈。
 幽霊が怖い訳でもない。
 驚きこそしたものの、怯えた様子はなかった。
 料理にしても、S子さんの分も作ろうと言ってきたのはディズィーの方。
 ……一体何が琴線に触れて、こんな闘気を放出しとんのだ…?

 しかし、その闘気を向けられているS子さんは平然としている。
 その視線は、S子さんの前に置かれた皿に向けられていた。
 ぬぅ……表情がまるで読めん。
 髪で顔が隠れてる上に、唯一覗く目はギョロリとしていて人間味を殆ど感じさせない。
 せめて表情が読めりゃあな……。
 でもこの人に向かって『髪を切ってください』とか『髪型変えてください』なんて言えるか?
 下手したら俺は生命の危機、S子さんは存在意義的な意味で危機じゃないか。
 どうすりゃいいんだ…。

 微妙に緊張感を、多大に不穏な空気を孕んだまま、俺達は向かい合って座る。
 何はともあれ、飯である。
 折角ディズィーが作ってくれたんだし、食べないという選択肢は無い。

 それでは、頂きます。

 …うーむ、やっぱり普段と比べると、ちょっと雑になってるな。
 木の実の切り口が荒いし、調味料も丼計算で使ったような感じがする。
 別段グルメじゃない俺としては、食えればいい訳だけどもね。
 ディズィーの手料理なんだし……だからこそ、落ち着いて味わいたいんだけど。

 ディズィー達も、自分で作った物だからか、普段との違いが一層理解できているようだ。
 ちょっと眉をしかめてる。

 ではS子さんはと言うと………?
 ……相変わらず、じっと料理を見つめていました。
 それこそ、視線で射殺さんばかりに見詰めている。
 …一体何なんだ?
 やっぱり幽霊だから食べられないのか?
 それともピーマンに恨みでもあるのか?
 …どこのガキンチョだよと言いたくなるが、この人の場合意外と有りそうで困るな。
 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いを地で行きそうな人だし。
 うーん、このまま放置しとくのもな…。
 折角作ってくれたんだし、温かいうちに食べるのが礼儀だろ。
 このまま放置して引っ繰り返されたりした日にゃ、ディズィーが悲しんで、戦闘開始と判断したネクロとウンディーネがガンマレイぶっ放しかねん。
 食べないようなら、俺が……。

 ……お?


「………………」


 S子さんが、料理に手を伸ばした。
 あ、ちゃんと言っておくけどフォーク使ってるからね。
 で、程良く焼けてる木の実を刺して口元に運んで……ここまでは問題ない、ポルターガイスト現象でも何でもいいから、フォークを動かせばいいだけなんだから。
 ……さあ、幽霊は物を食えるのか!?
 何か世紀の一瞬に立ち会っている気がしてきた。

 ……あれ待てよ、もしもこれで食べられなかったら……え、S子さんの怒りと悲しみが爆発するのではッ…!?
 クッ、しかしここまで来たらもう干渉は出来んぞ!
 どうだ……!?


『………オイ…シ………イ』


 食ーーべた~~~~!
 幽霊でも食えるのか!
 これは世紀の大発見…それともディズィーの手料理だからか!?
 …ふぅ、とにかくいきなりドンパチにはならなかったな。
 心なしか、S子さんの纏う空気も柔らかくなったように感じる。

 …でも、ディズィーが放つ空気は悪化する一方なんだよね。
 何だっていつもα波を放っているこの子が、こんなに毒々しい空気を放つんだ?

 何とも異に悪い空気の中、無言で食事が進む。
 …数分経過。


『…ゴチソ……サマ…』


 食事終了。
 ちなみに、俺もディズィーもとっくに食べ終わっている。
 いつもだったら、これから食器を洗いに水場まで行くんだけど…それが出来る空気じゃないな。
 何とかディズィー達とS子さんの間を取り持っておかないと、洗いに行って帰ってきたら俺の知らない世界が広がっていたなんて事になりかねない。

 とにかく、会話の切り口は………よし、先日会った時の事を話そう。


「あ、あーその……S子さん、先日はどうも…」

『…………』


 S子さん、無言で俺を見つめている。
 ディズィー達、無言でピリピリしている。


「あの時はいきなり居なくなりましたけど……何か失礼な事でもしてしま…………い……?」


 …あの、S子さん近いんですけど?
 何でジリジリと近寄ってくるんですかい!?
 ディズィーも!
 何かジト目で距離を詰めてきてるんですが!


『………………………………ア………………タタカイ…』


 た、闘い?
 …じゃない、暖かい?
 ちょっ!
 何で手を伸ばしてくるんです!?
 こわいよー、ですか、こわいよーなのですか?!
 ああ、でも防御できない!
 一撃必殺技を喰らう……!?

 グイッ!

 ぬお!?

「…………」

「…で、でぃずぃ?」


 S子さんが俺に触れるまで、あと2ミリ…のところで、俺は突然横から引っ張られた。
 引っ張ったのは、当然ディズィー。
 ここには他に誰も居ないし、当然っちゃ当然か。
 …しかし、どーしてそんな風に俺をギューッと抱きしめておられるので?
 しかもいつもの抱き方とは違って、ベタベタする感じじゃなくてこう…懐に抱きこんで離さないと言わんばかりに。
 色々気持いい感触はあるんだけど、正直言ってそれどころじゃない。
 ディズィーがS子さんを見る目が、物凄くヤバい。
 完全に敵を見る目になっている。
 なんでこんな風になってんの!?
 そりゃ、確かにS子さんはずっと俺だけを見てて、ディズィーには目もくれなかったけども、それでディズィーがこうまで敵愾心を燃やすとは思えんのですが。

 …とにかく宥めよう。
 ほら、ウンディーネとネクロも、ディズィーが暴走しそうだから何とか抑えて!


(そう言われましても、我々もディズィーの感情にちょっと引き摺られていると言いますか…。
 正直、この方を排除してしまいたいのですが。
 それが危険な行為であるとは予想できるのですけど…)


 それでも止めてぇぇぇ!
 ナデナデでもハグハグでも何でもするからぁぁぁぁ!


(うむ…何とかやってみよう。
 ディズィー、そのままでもいいから落ち着け。
 交渉事は兄に任せるのだ。
 心配せずとも、兄は何処かに行くような事はせん)

「…………」

(あまり独占欲を見せると、兄様に引かれますよ。
 どうも男女の仲に発展しているような方ではないようですし、言葉一つ交わさせないよりも、上手いタイミングで会話に切り込み、妨害と兄様へのアピールを同時にこなす方がよいでしょう)

「…………むぅ…」


 …何かウンディーネがよく分からん事を言ってるが…いや、言ってる意味は分かるんだけどもね。
 ディズィーは不満顔。
 取りあえず、手を伸ばして軽く頭を撫でてやるも、いつもと違って懐柔できない。
 …どうしたものか。


『………・フ…………フフフ……』


 …あれ?
 今、S子さん笑った?
 S子さんが笑ったの?
 しかも、ヒステリックな笑いじゃないぞ……どっちかと言うと、庭で遊ぶ孫を見て微笑むような、そんな穏やかな笑み…のような気がする。
 相手がこの人だから分からんが。

 S子さんは、俺に手を伸ばすのを止めて、その代り少し距離を詰めて俺の正面に座った。
 …特に意味はないが、俺も正座する。


『セン……ジ……ツ……ハ、ドウモ……』

「あ……ああいえいえ、こちらこそご無礼を働いたようで…」

『イイエ………アナタノ……ソバ……ニ居タラ……力………ガ、漲ッテ……。
 呪イニ………行ッタダケ………ナノ……』


 はーい物騒な単語出ましたー!
 呪いに行った?
 呪いに行ったって!?
 誰を誰を誰を!?
 S子さんが呪う相手なんて、真っ先に思い浮かぶのは…やっぱり井戸に突き落とした人もとい、生前の悲恋のお相手か?
 いやでもこの人が恨んでるのって、殆ど世界の全てだよな。
 特に女性を泣かせる男。
 …大部分は呪われて逝ってヨシな連中だけど、『女性を泣かせる男』の中には自分が女だってだけで免罪符を得られると思ってるビッチを相手にした男も含まれるんだろうか?
 具体的に言うと、ギャルゲのヒロイン(笑)みたいな連中を相手にしてる人とか。
 だとしたらちょっと複雑…。

 いや、それはどうでもいいとして。
 だって俺には関係ないしどうにも出来んし。
 以前幽霊について話した時に聞かされた推測。
 『俺の旗艦型ギアの能力が、幽霊にも作用したのではないか』と言うヤツ。
 アレ、ドンピシャだったっぽいな。

 …とゆー事は、俺とS子さんが出会ってしまったが為に、名前も知らない何処かの誰かさんが呪われて(多分)あの世行きになってしまったと…。
 ………なんだかなぁ。
 ヤバいとは思うんだけど、実感が湧かん。 

 …この際、その問題については置いておこう。
 それよりも、これからどうするかだ。


「S子さんは………その、これからも誰か呪うんですか?」


 だとしたら、流石に止めねばなるまい。
 名前も知らない何処かの誰か(イケメン)が死のうと知ったこっちゃないが、その原因が間接的にでも俺にあるなら、流石に黙っている訳にもいかない。
 とはいえ、S子さんを説得なんかできるのか…?
 この人の呪いとか恨みとか、相当強力だろう。
 それをどうにかするなんて……俺の口先だけの言葉じゃどうにもなるまい。
 どうすりゃいいんだ……?


『……………』


 なーんて俺は考えてたんだけど、S子さんの返答は予想外のものだった。
 何と首を横に振ったのだ。
 ……え、呪わないの?
 マジで?
 怨霊のS子さんが呪わないって…それ存在意義とかの危機では?
 一体何故………?

 疑問の視線を投げると、S子さんは僅かに笑ったように見えた。
 と言っても、髪で隠れた口元が、にぃ……と歪むのが見えただけだからどっちかと言うと『嗤う』『哂う』の方が正しい気がするけど。


『イイ……モウ、イイ……。
 ウラハ………ハラシ……タ…。
 アナタ…デ、ミタサレル………』


「……What’s?」


 …え。
 俺で?
 満たされる?
 それって………ひょっとしなくても、抹殺宣言!?
 生前の恨みは晴らしたから、今度は俺を殺すと……!?
 何故!?
 俺何かやったか!?


「…ナッシュ?
 ナッシュ!?」


 ディズィーが俺の耳元で名前を呼んでいる。
 今自覚したけど、俺の体は総毛立っていたようだ。
 ああ、俺を抱きしめてくれるディズィーの体が温かい、本当に温かい。
 これが命の温もりか!


『ぬ、しっかりしろ兄よ!
 何が合ったか知らんが、攻撃の類は受けておらん。
 自滅するような事はするな!』

『兄様、しっかりしてくださいまし!
 ほら、手を握っていますから、お気を確かに…』


 …しっちゃかめっちゃかになりつつある俺達。
 でも俺の目はS子さんから離れない……眼を逸らしたら、次の瞬間には接触してそうで怖い。

 しかし、S子さんは何やら一人で語り始めた。
 …初対面の時から思ってたけど、何か鬱病の人見たいだな…陽気な怨霊なんて、想像も………いや結構いるか。
 いや、S子さんは欝じゃあなくって、どっちかと言うと……何と言うか、思考回路が鈍くなってるような感じがする。
 極度の疲労や空腹で、周囲の状況を把握できなくなったり、論理的に筋道立てて考える事ができなくなっているような…。
 少なくとも、言語機能は大分マヒしてるよな。
 片言でしか喋れないし。


 …じゃなくて!
 せめて、何を言っているのか聞き取って、交渉の余地を…!
 でもちょっとこわい。

 抱きしめてくれてる妹達の体温を心の拠り所にして、抱きしめ返してディズィーのオパーイをちょっと楽しみつつ、耳を澄ます。
 え~~と、なになに?


 …S子さんの喋り方はカタコトで読みにくいだろうから、思考ログの方には聞き取った事を纏めて記すよ!
 まず結論から言うと、俺を取り殺そうとしているというのは、単なる勘違いだった。
 むしろ好意的に接されていたようだ。
 S子さんは女性を泣かせる男が大嫌い…どころか憎悪していて、実際そういうのを見かけたら呪ったりザッパの体を使って物騒な事をやっていたようだが、本当に呪ってやりたかったのは生前の悲恋のお相手だったらしい。
 だがその相手を見つけ出す事が出来ず、代償行為として呪いを振りまいていたそうだ。
 …物騒と言うか迷惑極まりない話だが、俺から何か言う気はない。
 下手な事言って呪われたくないしね。

 …そうやって物騒な呪いを振りまいていたS子さんだが、この森の近くを通りかかった時、何やら心地よいオーラだか波動だかを感じたのだと言う。
 怨霊である自分の心を温める程に、心地よいオーラだったらしい。
 そしてザッパを乗っ取って、この森に突入。
 しかし途中で力尽きてザッパの体を動かせなくなり、倒れた所で俺に遭遇。
 …で、その時にどうなったかと言うと…俺の近くに居た事で、やはり霊的なエネルギーが猛烈な勢いで補填されていったらしい。
 それこそ、ヨリシロから離れて単独行動できるくらいに。
 なので、集まっていた怨霊達…ワンコとかラオウ様とか三つ子とか…を引き連れ、S子さんは恨みを晴らしに行ったのだと言う。
 …どんな風に恨みを晴らしたかは聞かないでくれ。
 本家本元のリ○グより怖かった……下手人が目の前でブツブツ言ってるだけに。

 えー、それで恨みを晴らしたは良かったものの(本当にいいのか…?)、今度はやる事が無くなってどうしたものかと悩んだらしい。
 一緒に居た怨霊達も、S子さんの恨みの念が晴れてしまった為か、それぞれ何処かに行ってしまったのだとか。
 一人になってしまったS子さん。
 成仏する方法も分からず、これまでのように女性を泣かせる男を呪いに行くのも気が乗らず、結局この森に戻って来てしまったのだとか。

 …何故に?
 と聞いたら、俺のオーラが恋しくなったとか何とか。
 …ま、まぁ怨霊になってから初めて感じた暖かさ……のようだから、ある意味無理もないっちゃ無理も無いのかもしれんが。
 んで今に至る、と。


 うん、細かい所はともかくとして、一応把握した。
 しかしどうすりゃいいんだよコレ。
 俺の近くに居るだけでエネルギーが補填される…。
 先日遭遇した時の時間から考えて、エネルギー回復の速度はかなりのものと予想される。
 ザッパの体を動かす事もできない状態から、何処に居るのかも分からない恨みの相手を探し出し、そこまで行って呪えるくらいに回復した…接触していた時間は、10分足らずだぞ?
 今日、S子さんがここに現れてからは、既に一時間以上も経っている。
 満タン…かどうかは知らんけど、単純計算で6倍以上のエネルギーが有る事になる。
 故に、力技で排除は却下。
 折角恨みを晴らしたのに、また拒絶されて怨霊に逆戻り…なんて事になったら目も当てられんしな。
 厄介払い的な意味でも本人の為的な意味でも、成仏してもらうのが一番だと思うんだが…お経でどうにかなるかな?
 でも…成仏して天国なり地獄なりがあったとしたら、やっぱり地獄行きっぽいよな……生前の行為がどうあれ、怨霊なんてやってたんだし。



「あ、あの………S子…さん?
 貴方は結局、これからどうするつもりなんですか?」


 ディズィーが何とか敵対心を抑え込んで問いかける。
 ナイスだディズィー。
 俺から話しかける勇気はちょっと無かったよ。

 S子さんはブツブツ呟いていたのをピタッと止めると、おもむろに俺を指差した。
 ……な、何ですカイ?


『アナタ……ノ……ソバ、ニ……イタイ……』



 ………ぷろぽぉず?
 ぷろぽぉずなんですかコレ!?
 顔を合わせたの2度目にしていきなり求婚ですか!?
 S子さんってば生前の経験で恋愛沙汰はもうコリゴリな人だと思ってたんですけど、俺の勝手な先入観でしたか!?


『……チ、ガウ……タダ………ソバニ……イルト………アタタカイ…』


 ?
 ………ああ、恋愛沙汰とは全く別の方向でって事か。
 性欲じゃなくて食欲。
 考えてみれば、怨霊のS子さんが恨みを晴らしちゃったから、幽霊として存在する為のエネルギー源って無くなったに等しい状態なんじゃないか?
 代わりのエネルギー源になるモノっつーたら、俺から送られるエネルギー波。
 …ま、よくよく考えてみりゃ、エネルギーを貰えるって点を差し引いても、俺がヒトメボレされる筈が無かったね……いや、憑依後の体の顔付は結構美形だと思うよ、一応ディズィーの双子なんだしさ。

 ふむ………しかし、そういう事なら………。


「……そう言う事なら、俺は別に問題ないですな」

「ナッシュ!?」

『ちょ、兄様本気ですか!?』

『…いや、確かに問題はないな』

「ネクロまで!」

『S子とやらは、結局兄の側に居たいと言っているだけで、何か要求している訳ではないだろう。
 強いて言うなら、食料の減りが一人分多くなる程度…それも、恐らくは兄のエネルギー供給を受け続けていれば食べる必要はないだろう。
 単に趣味嗜好の領域だな。
 幽霊…死者故に、現世の人間どもの損得勘定は殆ど通じん。
 襲撃を受けた際によい戦力となるだろう』

『うっ……た、確かにそうですが…』

「う~………でも、私は……」


 …ディズィーが予想外に渋るな?
 何故に?
 いや、予想は付くんですけどね。


「…ディズィー、心配せんでもS子さんは家族仲を引き裂くような事はしないって。
 それに、これはディズィーにとってもいい切欠になると思うんだよ」

「…私に?」


 首を傾げるディズィー。
 抱きしめてきていた腕から抜け出して、正面から向き合う。


「ちょっと特殊な人だけど、S子さんは森の外の人だからな。
 見分を広めるにせよ、女性としての嗜みを学ぶにせよ、俺達だけじゃどうにもならなかっただろう?
 世の中の事を色々聞けるし、アレだ……その、ディズィーだって俺には話せない悩みの一つ二つあるだろ?
 そういうのをS子さんに相談するっていうのもアリだと思うんだよ」

「…………う、ん………」


 考え込んではいるものの、不満顔のままのディズィー。
 なんかいつになく粘るな…。
 何がそんなに不満なんだ?
 平和を好んで、仲良くするのがいいというディズィーらしくもない。
 幽霊に偏見や恐怖心を持っている訳でも無し…。
 理由はどうあれ、ディズィーが本気で嫌だと言うなら、俺としては無理強いはしたくない。
 S子さんには申し訳ないと思うが、何とか妥協点を見つけるくらいの譲歩はしたいと思う。
 例えば、一日の内に適当な時間を作って、S子さんに会いに行ってエネルギー補給、その他の時間は森の外に居てもらう…とか。
 俺にとっては、S子さんの願望及び脅威より、ディズィーの意思の方が重要なんだ。

 ネクロとウンディーネに顔を向けてみる。
 この二人は、俺よりもダイレクトにディズィーの心境が分かる筈だ。
 ネクロはさっき、俺の意見の味方をしてくれたし、説得の手伝いをしてくれると思う。


『…兄様……その…』

「うん?」

『兄様は、S子さんから私達が女性の嗜み…というのを習うと、嬉しいですか?』

「嬉しい…し、助かるな。
 俺じゃ教えたくても教えられない事も沢山あるから。
 (でもS子さん的常識を教えてもらうのは、ちょっと不安…)」

『ふむ…ならば兄よ、S子にかまけて我々を蔑ろにするような事も無いな?』

「ああ、そりゃ無いね。
 俺にとって一番重要なのはディズィー達だよ」


 …ああ、ひょっとしてこれを不安がってたのか?
 何だかんだ言っても、お互いを独占できていた生活に闖入者が出てきたんだ。
 自分の半身が取られてしまうんじゃないかって不安に思っても無理はない。


「…………うん、わかった…。
 私も、S子さんに聞きたい事、沢山あるし…」


 …まだ不満は燻っているものの、妥協はOK…ってトコか。
 この辺の不満を解消するのは、俺の後々の役割だな。


「えー、そう言う訳で妹達からもOKが出ましたんで。
 S子さん、ようこそこの森………に………」


 …S子さんは、明後日の方向を向いて何やら虚空に向かって呟いていた。
 ………前途は大いに多難である。




 ………ん?
 S子さんがここに居るって事は………ザッパ、もう『病気』治ってるんじゃね?
 リタイア?
 ……ま、別に誰も困らないね!



 追記
 S子さん曰く、他の怨霊達もその内俺を目当てにこの森にやってくるだろう、との事だった。
 …どないせいと言うねん。



アトガキ
こーゆー訳なんで、同居人としてイロモノが集ってくるかもしれません。
投稿時PV 134626



[17288] 23(妹自慢:小)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/08/01 21:19





 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 S子さんが森に居付いてから、数日が過ぎました。
 最初はやや険悪だったディズィー達との間も、俺がどうこうする暇も無く軟化の一途を辿っています。
 結構な事なんですけど、ちょっと寂しい…。

 と言うのも、S子さんが自分の立ち位置をハッキリ示したからでしょう。
 付かず離れず、と言うか…基本的に、ある程度以上接近してこないんだよね。
 要するに、「貴方達の間に割り込む気はない」と示した訳だ。
 それでディズィーも安心したのだろう。
 人が増えて、かつ自分達の…プライベートスペースとかが侵害されない。
 理想の隣人だね?

 S子さんは、日中は大抵姿を消しているか、そうでなければその辺の日溜まりでボケーーッと突っ立っている事が殆どだ。
 怨霊として後者はどうかと思うが、まぁ半分以上はもう怨霊じゃないしな。

 ついでに言うと、S子さんは徐々に性格が変わり始めている。
 …と言うより、アレは生前の、悲恋で絶望する前の性格に戻りつつあるのかね?
 ちょっとずつだけど、喋り方が流暢になってきて、雰囲気が若干……いや本当に蟻の触覚ほどにだけど、明るくなってきた気がする。
 ウンディーネとは比較的仲が良く、何やら話し込んでいるのを何度か見かけた。
 その時、ディズィーが何やらうんうんと頷いていたのが印象的だった。
 …直後、ヒステリックな叫びが上がって本気でビビったけど…。

 思うに、今までのS子さんは、極度の飢餓状態に近かったのではないだろうか。
 生前、自殺する時もそうだが、追いつめられた精神と体が正常な思考を蝕み、それが怨念を加速させた。
 ところが、今は恨みを一応晴らし、そして俺と言う食料…と言うかエネルギー供給源も居る為、心に聊かの余裕ができた。
 ちょっとずつだが、ちゃんと頭が動くようになりつつある……んじゃないだろうか?
 油断は禁物だけど。


 ……ふと思いついて、こんな事言ってみた。


「S子さん、マコトって聞いてどんな言葉が浮かぶ?」

『………マコトシネ』


 ……呪いの領域に達して残っているよーです。
 S子さんはマコトなる人物を知らなかったようですが、ひょっとしたら怨霊として呪った相手の中に居たかもね!
 名前が同じだけだろうけど。
 ま、俺はスクールデイズ見てなかったけどね!
 欝展開は勘弁なのだよ。




 さて、それはそれとして。
 S子さんは思ったより常識人だった。
 ディズィーに女性の嗜みを教えてほしい、と頼んだら、二つ返事でOKしてくれました。
 でも微妙に不安だったので、聞き耳立ててみたり、OHANASHIが終わった後にディズィーに色々聞いてみたりしたんだけど、あんまり偏った知識は無かった。
 と言うより、まだ偏れる程教えられてないって事なのかな。
 自分から頼んでおいてなんだけど、『浮気する男は地獄に突き落として当然、寝取る女は腹を鋸で引き裂いても良い』なんて事を教え込むんじゃないかと本気で心配していた。
 んじゃ何を教えているのかと言うと、まぁその……生々しい話と言うか…………ぶっちゃけ、生理とかに関する事デス。
 最初に聞き耳立ててた時に聞いて、物凄く気まずい思いをしてしまった。
 ディズィーにはまだ来てないんだよネー。
 俺やネクロやウンディーネじゃ、教えようにも教えられなかった事だし、助かってはいるんだけど。

 ディズィーも、何れ自分にも(多分)来るであろう肉体の変化に興味津々…と言うより、対策を覚えておいて損はないって顔だったな。
 ただ、肉体年齢から考えればとっくに訪れてもいい筈の初潮が、未だに自分には訪れない…という点が気になってはいるらしい。
 元々、自分がハーフギアであり、周囲の人間とは違う事にコンプレックスを感じていた節があるディズィー。
 やっぱり自分は周囲とは違うんだろうか、と悩む節があった。
 とはいえ、こればっかりはな…。
 対処法としてだが、相談された時に(微妙な顔を隠しつつ)次のような事を言っておいた。


「生理な…多分、ディズィーにも来るよ。
 ディズィーが、何と言うかその………『この人の子供を産みたい』って思えるようになった時にね。
 ほら、ディズィーの体だって、『早く大人になりたい』って思ってたら成長しただろ?
 それと同じで、俺達の体は普通の人間よりちょっとばかり便利にできてるらしい。
 まー得したと思っておこう。
 S子さんに聞いたなら分かるだろうけど、生理って痛いらしいぞ?」


 と、こんな感じの事を。
 …ああそうそう、生理の事は教えられても、それを人に言うのが恥ずかしい事だってところまでは理解できなかったらしい。
 そうでなけりゃ、こんな事まで相談されんわな。

 ちなみに、上記の事をディズィーに言ってみたら、何故か俺の顔を穴が空くほど凝視していた。
 …デリカシーが無いって思われたかな…。
 あと、このセリフを聞いたS子さんに『ジョセイニ…ムケテ、ナニヲ……イッテルノ…』とチョップを食らった。
 冷たい感触が頭に残って、カキ氷一気食いした時みたいにガンガンした。



 …ディズィーの悩みについては、これからじっくり付き合っていくとして…。
 俺が『教えておいて欲しい』って思った事には、未だにノータッチ。
 『教えておいて欲しい事』って何かって?
 ……前々回のログにもあったろ……ディズィーが性欲持て余してるみたいなんで……その発散方法を教えておいてほしいって話だよ…。

 いやまぁ、仕方のない事ではあるんですけどね?
 出会って数日しか経ってない相手に、しかも性的な知識が精々小学生並みの相手に、いきなりワイ談始める人が居るものか。
 居たらフツーに考えて痴女だろう。
 いや、世の中にはそういう方面に奔放な地域もあるだろうけど、少なくともこの辺は違う。

 かと言って、俺からS子さんに「ディズィーにオ○ニーを教えてあげてください」なんて言える筈も無い。
 そんな事言ったら、俺がS子さんから直々に祟られてしまうのが目に見えている。
 と言うか、妹……今では見た目が姉になってしまったけど……にエロい事を教えてあげてくださいって、どう考えてもエロゲの鬼畜キャラだろう。

 こっちとしてはかなり切実な問題なんだけどね。
 いや、S子さんがこの森で暮らすようになってから、添い寝する時のディズィーの締め付けが強くなっててさ…。
 ウンディーネ曰く、『やはりS子さんの存在が不安なのではないでしょうか? 自分が寝ている間に、兄様が取られてしまうのではないか…と思ってしまうのでしょう』との事。
 うーん、兄冥利に尽きる事ではあるし、問題だとは思うんだが……それ以上に、あのワガママに現在進行形で育っているボディに包まれて眠るに眠れない俺の事も考えてくれい!
 ああもう、本気で俺がオ○ニー教えてしまおうか!?
 ……どっちにしろS子さんに祟られますね。

 S子さんも、ディズィーが大分気にいってるみたいだからなぁ。
 流石はディズィー、怨霊だって一撃必殺の可愛さだぜ!

 ま、実際の所、S子さんとしてはディズィーの外見が気にいってるんじゃないんだろう。
 むしろ美形は男女問わずに嫌いと言うか、呪いの対象候補だったみたいだしね。
 じゃあ純粋な性格が気にいってるのかと言うと、これもちょっと違うようだ。
 純粋の一言で表すには、ディズィーは純粋がちょいとばかり『過ぎる』。
 水清ければ魚棲まず……違うな、『穢れを知らない』と言うのは逆を言えば『穢れを知るだけで汚れる』と言う事であり、つまる所そう言う事を知らないだけで、貴重ではあっても尊い物ではない。
 結局は単なる無知である。
 そんなモン、S子さんから見ればダメダメのダメである。
 むしろ何も知らずにお花畑をフラフラしてるよーな方々は、パルパルパルパルである。

 が、ディズィーの場合は…『穢れを知らない』んじゃなくて、『穢れがある事を知っていて、それを他人事だと思っていないのに汚れていない』…くらいかな?
 ま、あくまで俺の主観から見た感想だけども。


 ……話が逸れたな。
 さて、実際どうしたものか…。
 S子さんに任せておけば、その内自慰行為も覚えるとは思う。
 思うんだけど、一抹の不安もあるよな…。
 『自分でするくらいなら、まず実践して覚えるのよ!』『他人に取られるのが嫌なら、既成事実で雁字搦めに…』とか言い出して俺が逆夜這いされ…………あれ、問題ない…?
 いやあった、倫理観の問題は今更だからさて置いて、俺未だに浪漫砲使わなきゃ立たないんだよ。
 イ○ポ呼ばわりはリアルで死ねる。
 それに、ディズィーが来るんじゃなくてS子さんが来る可能性もあるね。
 …可能性だけで言えば、だよ本当に来るとは思ってないよ。

 うん、詰まらん妄想は置いといて、マジでどうしたものか。
 ………いっそ一度森の外の村までダッシュして、顔を隠してエロ本でも買ってくるか?
 んで、ディズィーが食料集めに通りそうなルートにそっと配置しておく。
 何故そんなモンが森の中にあるのかはしらばっくれて、それをディズィーが読んでくれれば………………でも丁度いい教科書代わりになるエロ本ってあるかなぁ?
 いきなり本番とかしてるシーンを見せてもな…。
 理解できるかにも不安があるし、それ以上に純粋なディズィーが穢れ……いや、これは俺の我儘や偏見だな。
 …うん、エロ本は止めて、文字通りの保体の教科書にでもしよう。
 さもなきゃ、ちょっとだけそういう描写のあるライトノベルの類か。
 …金が無いから、お爺さん達に送ってもらうか、ファウスト先生に直に頼みこまなきゃどうにもならんが。

 …ん、待てよ?
 その程度のライトノベルでいいなら、俺自身の手で執筆するのも手じゃないか?
 別に本格的なクオリティを求める訳じゃないし、ディズィーに「そういう行為がある」と教えておけばいいだけだ。
 女性の『そういう行為』の詳細は分からないけど、ぶっちゃけモヤモヤした気持を持て余した時とかに、股間の辺りを弄ると気持良くなってスッキリする、そしてその行為を人に見せるのは恥ずかしくハシタナイ事だと認識させりゃいい。
 切欠さえあれば、後はウンディーネやS子さんに相談するだろうから、そこから先は任せればいい。
 うん、いいねコレ。

 書きあげた奴は、さっき計画したみたいに森に落ちてたって事にしておいて。
 紙と鉛筆くらいなら、まだ手元に残ってるし。
 よし、そうと決まれば草案だけでも練ってみるか。
 何せこちとら欲求不満だからな、その手の妄想なら軽々と湧きあがってくるZE!
 むしろ暴走しないようにリミッターが必要なくらいだ!
 …書きあげた後、時間を置いて読み直ししないとな…。

 ………やっぱり兄と妹の近親相姦系にして………いやいやいや、いきなり洗脳に走るような事考えてんじゃねえよ!
 一般常識から教えるんだろ一般常識から、常識的に考えてえぇぇぇぇ!
 そうなったら本当に嬉しいけどさ!

 大体、わざわざ兄妹にしなくたって、どっちにしろこの森に男は俺しかいないんだ。
 そういう関係になるだけの好意を互いに持っているなら、洗脳しようがすまいが自然とそういう関係に落ち着いて行くだろ。
 仮にそういう関係になるとしたら俺は拒まないけど、ディズィーにはちゃんと選択肢と言うか、それが世間一般では正常ではない関係だと認識しておいて貰わんと。
 …まぁ、ギアの俺達に世間一般の常識なんて意味が無い気もするが、いずれは人と交わって生きる事もあるだろうしな。
 じゃあ、ストーリー的には……男一人女一人…に、男でも女でもいいからオブザーバーが一人。
 女性の行為を教える為の教科書代わりなんだから、視点は女性の側からで、そうなるとやっぱりオブザーバーも女性が好ましいか。
 よし決めた、この路線で行く。

 となると、次に問題になってくるのは執筆の為の時間と場所だ。
 何せ、寝床にしている遺跡に居る間、俺とディズィー達は離れて行動すると言う事が殆ど無い。
 必ず互いの姿が視認できる位置に居る。
 S子さんがやってきたここ数日でも、それは変わらない。
 書いてる姿を見られたら計画頓挫な上に、妹のすぐ傍でエロ小説を書く男なる称号を頂いてしまうではないか。
 妹達から軽蔑されるのも怖いし、S子さんが何してくるか分かったものじゃない。

 一人になる時間と言えば、食料集めの時間と水浴びの時間、あとトイレの時間。
 食料集めの時間は短くしたくないな…充分な食料が手に入らないのは死活問題だ。
 トイレの時間は短すぎる。
 となると、いつ戻ってくるか分からない水浴びの時間、か…。
 レーダーで居場所だけ感知しておけば、そう慌てる必要も無いか。
 あとはS子さんだけど、ディズィーと一緒に水場に行く場合と、残って俺の近くでボケッとしてる場合が半々程度だから、ディズィーの方に行ってる時に書くとしますか。
 よし、決定!

 そんじゃ、今日は考え事するのはこの辺にして、そろそろ食料集めから戻るとしますかね。
 ………お?


 …ただでさえ暗い森の一角。
 そこに、異様な暗さを見せる暗がりがあった。
 …明らかに、普通の暗さじゃない。
 陽の光が差し込まないとか、そんなレベルじゃない。
 あそこは『影』じゃない。
 あれは『闇』だ。

 『闇』が、俺の行く道筋を閉ざしている。

 だが、俺は恐れなかった。
 平常心を失ったら負けだと、俺の経験が囁いている。
 『闇』を出迎えるように姿勢を正す。

 その時、『闇』がドロリと渦を巻いた。
 暗い『闇』の底から、『何か』が出てくる。
 青白く、細く、見ているだけでも冷たい気配を感じさせるソレ。

 ソレが、人の腕だと俺は直感的に悟った。
 ボロキレを纏った腕は、『闇』の中から俺に向かって伸びてくる。
 そして、俺を『闇』の中へと呼び込もうとするかのように、おいでおいでとゆっくり上下に揺れた。

 そして、『闇』の中からその腕の主が現れる。
 ギョロリとした瞳、ザンバラの髪の毛、青と白で不健康極まりない色彩に仕立て上げられた肌。
 『ソレ』は俺が感じている戦慄にも構わず、口を開いた。


『ゴハンダヨ………』

「あ、S子さんお出迎えありがとー」


 …ま、そういう事だった。
 S子さんが登場する時の演出って、大抵こんな感じなんだよね。
 エネルギー補給の為に俺の側に現れる時、何処ぞに散歩(?)しに行ってから帰ってきた時、朝一番におはようの挨拶をする時。
 森の一角を暗黒空間に染めて、極めてフレンドリーかつ滑舌悪く登場する。
 おかげで、ホラーな雰囲気には慣れっこになってしまった。
 たった数日の付き合いでも、ホイホイ同じような登場の仕方ばっかりしてれば誰だって慣れるわな。
 もっと別のシチュエーションで、連携かけて出て来られたらそれは怖いだろうけども。


 …ところで、前から気になってはいたんだが…S子さんが生前自殺する原因になったという『悲恋』って、いったいどういう話だったんだろうな?
 こうして接している分には、S子さんは追いつめられてヒステリックになっているものの、割といい人で、情が深いと言うか、懐に入った相手には優しく接するタイプみたいだ。
 まぁ、情が深い人間でなければ、命を絶つくらいに思いつめる恋愛は出来んだろうな。
 しかし、だからと言って道理とか倫理に沿っているかとうと話は別で。
 むしろ思いつめた挙句に暴走したのかもしれない。

 『悲恋』と言われていても、本人にとってはその通りでも、一方的に思っていただけとか、ハタから見ると単なる言い掛かりや八つ当たりに過ぎないって事例は山ほどある訳で。
 ……まぁ、S子さんもその類なんじゃないの?なんて言える勇気は無いけどね!
 むしろ聞くだけでも怖すぎるわ。
 下手な事聞いて発狂、怨霊に立ち戻られたんじゃ堪ったもんじゃない。

 でも気にはなるなぁ…聞かんけど。
 ディズィーがその辺の話に興味を持つ事もあるだろうし、ヘタに聞かないように釘刺しといたほうがいいかな。
 …いや、ウンディーネ……は微妙に不安だけど、ネクロがフォローしてくれるか。

 誰にだって、話したくない事の10や20あるわな…シリアスな奴から、黒歴史まで。
 それを話す事が、ある意味信頼の条件だとは思うんだが。
 ………俺も……俺もいつか、話すんだろうか?
 俺が、『ナッシュ』になる前から生きていた事。
 ディズィーを2次元のキャラとして捉えていた事がある事とか、な…。

 なーんて事を考えながら、ダークゾーンを纏って森の中を進むS子さんに付いて行く。


「今日のご飯は何?」

『…………ムニエル……』


 おお、魚がメインか。
 イイね。

 S子さんが来てくれて、助かってる事の一つがコレ。
 ご飯のメニューが増えたんだよ。
 今までは、魚は専ら焼き魚、木の実は焼いて食べるくらいしか無かったからなぁ。
 食生活に彩りがあるっていいよね、ホント。

 S子さん、生前はメシウマ嫁だったようだな。
 …嫁じゃないか。
 他にも家事一般はディズィーより上手だった。
 ディズィーはS子さんに弟子入りする事も考えてるみたいだな。

 と言うか、本当にS子さんは母親ポジションに付きつつあると思う。
 飯に限らず家事やってくれるし、妹達には色々教えてくれるし、ダラけていたら時々小言まで言ってくる。
 宿題しなさい、って言われても宿題無いよ……いや、課題っつーかファウスト先生の言葉についてとか、生身インターネット計画とか色々あるっちゃあるけどさ。

 ん~、悪い気分じゃないな。
 憑依前の世界の母さんは母さんで、憑依後の世界には母はジャスティスだけど会った事無いし、お婆さんは…お母さんじゃなくてお婆さんだし……なんか変な言い回しになったな。
 んー………デフォルトの親=憑依前の母さん、産みの親=ジャスティス、育ての親=お婆さん、そして新しい義母=S子さん、かな。
 そうなると俺のポジションは長男かぁ…外見から見られると、今はディズィーの方が姉に見られるんだよね。
 中々成長しないんだよな、俺の体…。
 なんか途中で成長が止まっているというか阻害されているというか、そんな感じさえする。
 ディズィーの成長が願いや願望、精神性の表れだって言うなら、俺の体も多少なりとも精神の影響を受けていると考えられるんだが…体の成長を止める影響ねぇ…。
 うーん、ピーターパン症候群くらいしか思い当たる節が無いなぁ。
 後は……元ネタ知らないけど、停滞とか?

 …あ、待てよ。
 俺、ひょっとしたら長男じゃなくて父親ポジションにあるんじゃなかろうか?
 S子さんがお母さんポジションって事は、必然的に俺とは夫婦仲という設定になる訳で。


「……………」

『…………?』


 …苦労しそうだな。
 いや、付き合い方さえ分かれば、実にいい人なんだけどね。
 メシウマだし。

 ま、S子さんとしては、俺をそんな対象に見るって事は有り得ないだろうけどね。
 特別な感情を持たれている様子は一切ないし、仮にそういう感情を持つにしても、怨霊状態から完全に抜け出してからだろう。
 今でもS子さんの心は、色恋沙汰を嫌い嫉む一面を強く残しているようなのだ。
 ぶっちゃけ、手痛い失恋をしたから人を好きになるのは当分勘弁ってトコだろう。
 俺自身、S子さんをそういう風に見るのは無理っぽいから、そっちの方が助かるね。


 と、遺跡についた。


「ただいまー」

『……タダイマ…』

「おかえりなさーい」

『待ちかねたぞ、兄、S子』

『ネクロ、ですからS子さんと呼びなさいと言っているでしょう』

『構わんではないか。
 呼び捨ては親愛の表現だと聞いたが』

『それでも目上に対して呼び捨てにするは失礼にあたるのです』


 …うんうん、S子さんも大分受け入れられたなぁ。
 幽霊って事忘れてるんじゃないか、こいつら…忘れてても何ら問題はないけど。


「おーい、漫才はいいから飯にしようぜ。
 腹へってんだよ」

「ナッシュ…今まで待たせてた人のセリフじゃないよ、もう。
 ま、いいか…。
 ところでナッシュ、今日は何で遅くなったの?
 S子さんに探しに行ってもらったんだからね」

「あー、悪い悪い。
 ちょっと考え事しててさ。
 ほら、前に話した生身インターネット計画、どうにかできないかと思って」

『あら…何か進展があったのですか?
 出来るようになったのであれば、是非とも私達も使いたいのですけど』

「使うって……ナッシュの頭の中で、インターネットに接続するんでしょ?
 私達がどうやって使うの?」


 …本当にどうやって使うんだろう。
 ひょっとして、俺の頭に回線か何かをザクッと接続するんだろうか。
 想像すると怖いな。
 痛そうだし、何より考えてる事が駄々漏れになりそうだ。
 どうせ妹達の事しか考えてないだろうけどね!
 あ、でも迸る煩悩が伝わって行ってしまったら………嫌われるか色ボケになっちまうか、どっちだ?
 どっちにしろ駄目だな。


『理屈と理論さえ分かれば、多分私達の中でも再現可能でしょう。
 極論ですが、兄様にできて私達にできないという理由はありませんから。
 通信の送受信や計算能力など、必要な条件は一通りそろっている…筈です』

『しかしそうなると、S子だけ使えなくなってしまうな…』

『……オカマイナク……』


 んー、S子さんはあんまり興味なさげだな。
 まぁ、日がな一日ボケッとしているのが好きらしいし、趣味を押しつける事もないか。


「…ところで話は変わるけど…S子さんって、家族が居たんだよね?」

『………カゾク……?』


 …あ、ヤバいかも。
 ディズィーの質問で、S子さんの声色が変わった。
 地雷だったか?
 生前の悲恋の時に、助けてくれなかったとかで恨みに思ってるんだろうか?
 この分だと、家族やお相手だった男に限らず、生前の人間関係は全てタブーだと思った方がいい……なんて分析してる場合じゃないし!


『カ、ゾク……ナン………テェ……!』


 ヤバイヤバイ!
 ラップ音とか鳴りだした!
 JOJOな感じで擬音語が飛び交う!

 でもディズィーは首を傾げるだけで動じなかった。
 妹よ、空気を読め。
 …まぁ、対人関係の経験が少ないから無理も無いかもしれないが。


「ほら、ナッシュと最初に会った時に一緒に居たって言う…。
 犬さんとかムカデさんとか」

『………アア……カ…ゾク…………アノコタチガ…?』

「…違うの?」


 …あれ、何か治まった。
 ナ、ナイスだディズィー!
 マッチポンプだったけど。

 …しかし、あの連中が家族ね…。
 確かに、父がラオウ様、母がS子さん、子供の三つ子にペットの犬、剣とムカデは良く分からんが…そんな風に見えない事もない。


「…家族かどうかはともかくとして…確かに気になるな。
 あの連中、何処に行ったんだ?」

『……シラナイ…。
 ミンナ……モクテキ……ハタシニ、イッタ……』


 目的…?
 どういう事だ?


『ふむ…つまるところ、S子と同じと言う事だな?
 兄からの力の供給を受け、生前の未練を晴らしに、それぞれ好き勝手に出て行ってしまった、と…』


 …S子さんは黙って肯いた。
 ………それヤバくねえ?
 他の連中の未練がどんなモノかは分からないけど、怨霊になるくらいだから恨みとか妄執とか、そう言った所謂マイナスの思念である事は想像に難くない。
 それを解き放っちゃうって……。
 ひょっとしなくても、俺、虎を野に放った…?


『デモ……』


 ん?


『ミンナ、タブン…モドッテクル…』


 …え?
 戻ってくるって……S子さんの所に?
 何で?
 そう言えば、確かに前回のログの最後でそんな事言ってたけど。


『…成程、幾らエネルギーを供給されたと言っても、所詮は有限。
 そのエネルギーが尽きそうになれば、自然と足はこの場所に…兄様からエネルギーを受け取りに戻ってくる、という訳ですか』

『ピンポン………』


 え、マジ!?
 って事は何よ、その連中もS子さんみたいにこの森に住みつく可能性が高いって事か!?


「……また……人が増えるの…?」


 …ディズィーなんでそんな怒ったような 顔デスカ?
 断固として言うが、俺のせいじゃないぞ…俺に原因があるのは確かだが。
 …にしても、ディズィーは何だか家族が増えるのをイヤがってるような節があるな…何でだ?
 いや、問題なのはそこじゃない。
 S子さんはまだ良かったさ。
 三つ子は煩そうだが、逆を言えばそれだけだ。
 犬もいいとしよう。
 ムカデは……まぁ、見た目気持悪いけど、慣れれば平気と信じる。

 …剣とラオウ様がヤバいだろ。
 何にヤバイって、教育にヤバイ。
 非常によろしくない。
 だってさ、あの剣見てみろよ。
 見るからに呪いの一品だろ?
 剣に意思や未練があるとも思えないから、多分大量殺人か何かに使われた曰くつきの一品。
 剣自身というよりも、染みついた怨念こそが怨霊になった理由。
 そんな物、ディズィーの近くに置いといてみろ。
 発せられる怨念に感化されて、ディズィーが黒くなって………・あれ?
 それよりもNiceでBoatな展開が怖いと思い浮かぶのは何でだろうか?
 …と、とにかくヤバいって方向で。

 んで、ラオウ様だけど…この人のヤバさは完全に別方向だなぁ。
 ある意味教育にいい人ではある。
 あの鋼の意思は、片鱗でもいいから見習っておくべきだ。
 優柔不断な日本人なら特に………この世界で俺が知ってるジャパニーズに、優柔不断な奴とか居ないけどなッ!
 が、反面あの人は覇王だからなぁ…乱世の肝雄って奴?
 いや、この世界のラオウ様が北斗な感じの拳王様だと決まった訳じゃないんだが。
 悲しみを知らず、立ちはだかるモノ全てを薙ぎ払って進むのは、暴力の荒野だからこそ是とされる行為。
 曲がりなりにも平穏があり、法が施行されているこの世界では、とてもではないが肯定できる行為ではない。
 後に引けない所だけ、あの鋼の意思を押し出して、後は今のディズィーのまま柔和に…というのが理想なんだろうけども、ラオウ様と付き合ってるとそんな中途半端な事はできそうにない。
 いや、ラオウ様がラオウ様たる所以は、拳の強弱よりもあの覇気にあると、個人的には想うのだけども。

 うーむ……取引材料にできそうな物と言えば、俺から発せられるエネルギーくらいだし…。
 しかし、取引材料として使おうと思ったら、自分の意思でスイッチのオンオフを切り替えられるようにならんと。
 多分、その辺は時間をかければ問題はないと思うが。
 理屈的に言えば、旗艦型にステルス機能が付いてない筈が無いんだよな。
 戦闘能力が低い方だと言うなら尚更だ。
 エネルギーを常に放射していると言う事は、常に自分はここに居ると叫びをあげているようなものだ。
 何らかの方法でそのエネルギーを察知されれば、あっという間に見つかって殲滅されるのがオチだろう。

 ………ん?
 待てよ。
 ちょっと思ったんだけど、そもそも俺と会う前って、エネルギー源はどうしてたんだろうか?
 物を食べる訳でもないし、何処かからエネルギー波を受け取っている訳でもない。
 それでも平気で存在して、休み休みとはいえ活動してたんだから、何かしらの方法で自家発電していたと考えるのが妥当か。
 …ま、怨霊のエネルギー源っつーたら、やっぱ恨みとか未練だよな。
 ん~、でもそれだけでエネルギーを得られるんだったら、わざわざ俺のエネルギーに拘る理由もない気がするな。
 S子さんの恨みの念なら、それだけで充分すぎるくらいの力を生み出せそうなもんだ。
 それとも、S子さんを以てしても、恨みだけじゃ力が足りないんだろうか。
 或いは、そのエネルギーの質の問題かもしれない…恨みの念から作ったエネルギーなら、それが温かいとは思えないしな。
 冷たいか、身を焦がすような毒々しい炎か、或いは水面に波紋も立たないようなドロドロした底なし沼か…。

 ……エネルギーの質の問題だったら、ラオウ様は帰ってこない気がするな。
 と言うか、そもそもラオウ様の未練って一体何だろうか。
 やっぱり天か、天なのか?
 我が生涯に一片の悔いを残してしまったのか?
 見た所、ラオウ様が死んだのは聖戦が終結するより前だろう。
 少なくとも、戦争の中で生きていたのは間違いないと思われる。
 あれだけの力があるんだし、スカウトされない筈が無い…受けたかどうかは別として。
 ラオウ様が幽霊になる程の未練ねぇ………。
 愛?
 ユリア?
 やっぱり最強の座?
 聞いてみん事にはどうにもならんね。


『…………』

「……ナッシュ?
 食べないの?
 お腹空いてるんでしょ」

「ん?
 あ、ああ悪い悪い。
 ちょっと魂が空に旅立ってた」

『本当に旅立っていたなら、私達と一緒に空を飛べますね』

『S子、お前は飛べるか?』

『………タブン…』


 うん、飯の最中なんだし、考え事はこれくらいにしとこうか。
 後はなるようになるさぁ。




 ふと思いついた。


「なぁ、ディズィー。
 兄さんって読んでくれる?」

「え……そ、その、ちょっと……恥ずかしい…」


 ……血反吐吐きそうになって、ディズィーの前で吐く訳にはいかないので無理矢理飲み干しました。
 性的な恥ずかしさじゃなくて、面と向かって改めて呼ぶ気恥ずかしさかな…。
 これはきっと演技でも夢でもないよね!
 慌ててる時しか、兄さんって呼んでくれないしね!




アトガキ
色々と忠告を頂いたので、01の冒頭に注意書きを付けました。
これで多少なりとも効果が出るといいんですが…。

投稿時PV 140092。



[17288] 謝罪文です。あまりに軽率な言動、重ね重ね申し訳ありませんでした。
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 ID:e7c3c889
Date: 2010/08/03 22:04
日頃からのご愛読、真にありがとうございます。

この度は私が軽率に書いた一文で、多くの方々に非常に不愉快な思いをさせてしまった事と、謝罪すらせず暫く放置していた事を、伏してお詫び申し上げます。
あのような読者の皆様を貶める事を二度と口にしないよう、常に文章を推敲し、またこの反省と後悔を何度も思い返してこの身に刻んでいきます。

また、『前書き』ではなく『注意事項』で悪ふざけが過ぎた事、穿ちすぎと感じるかもしれませんが、まるで読者の方を二次元三次元の区別がついてないような描写をした事、真に申し訳ありませんでした。

後になって文句を受け付けない、と言うのも、ちょっと書き方を変えて『そういう感想を持たれても、読み進めた事自体はご本人の決断の結果です』と書いておくべきでした。

「もう二度と顔を出すな」とお思いの方も多くいらっしゃると存じますが、恥を忍んでここにお願い申し上げます。
この場を借りて、拙作を公開する事をお許しください。
許さない、と言われる方には、また頭を下げながら謝罪させていただくしかありません。

できる事ならば、寛大な御心で今後もお付き合いをしていただきたいと願っています。
まことに申し訳ありませんでした。



[17288] 24(妹自慢:中)
Name: 時守 暦◆dc9bdb52 HOME ID:e7c3c889
Date: 2010/08/04 21:24


 どーもどーも先日ぶり、ナッシュです。
 空を自由に飛びたいです。
 ただし薬物禁止。

 …何でいきなり青狸OP的な事を言いだしたのかと言うとね。
 すぐ側に、文字通り空を自由に飛べる子が居るからなんだよね。
 言うまでも無くディズィーだよ。
 あと最近来てないけどファウスト先生。

 生身で空を飛べるっていうのは、全人類の夢で、なおかつ生活において強烈なアドバンテージになり得る。
 具体的に言うと、道に迷っても空を進めば問題ない。
 一直線に帰れるし、何より移動速度が速い。
 あと、肉食獣とかに襲われた時に逃げやすい……ただし、高度を得てスピードに乗るまでは非常に不安定かつ無防備だが。

 とにもかくにも、空を飛びたい。
 ディズィーと一緒に空を飛びたい。
 そしてスカートの中……いやいやいや何でも無いって。
 とにかくディズィーと一緒に空を飛ぶなんて、そんなステキ体験できたら一週間くらい食事しなくても大丈夫な気がする。



「と言う訳で、どうにかできんかな」

『現状では無理です』

『兄は難しい』


 ……妹達に相談したら、速攻でコレだよ!

 orzしたら、ディズィーがオロオロしながら背中をナデナデしてくれた。
 ううっ、いつもすまないねぇ……。
 ちなみにS子さんは、俺の右斜め後方3メートルくらいの場所で空を見上げて微動だにしていなかった。


「…でも、どうして難しいの?
 私だって…私達だって飛べるのに」

『我々だって飛べる、と言うより我々だからこそ飛べる、と言うべきだな。
 …そもそも、空を飛ぶギアというのはそう多くない』


 え、そうなの?
 何で?
 空を飛べるって事は、戦術的にみると多大な優位性を齎す筈。
 ただでさえ頭上は死角だし、充分な高度を保った状態から石ころでも落とせば、それだけでヤワな体の人間には脅威になる。
 飛ばない理由が無いと思うんだけど。


『端的に言えば、法力で空を飛ぶのは難しい…と言う事です。
 法力とは、高度な数学的知識、計算を元にバックヤードから力を引き出し、それを扱う物です。
 力を使うだけでも複雑な計算をせねばなりません。
 更に、引きだした力をどのように制御し、操るか。
 これをどうにかするのが、術者の力量な訳ですが…』

『人間は元々地上で生きる生物だ。
 空中に浮かぶだけならまだしも、そこから「飛んで移動する」という「感覚」が非常に掴み辛い。
 航空機のような、システムだけで飛ぶ代物でもない…鉄や木で出来た船体と違って、生身の体は同じコンディションを保つのが難しいし、計器の類も無い。
 足元に地面が無いというだけで、不安を感じる人間も多いしな。
 心理的な動揺、空を飛ぶという慣れない行為を再現する為の計算などが重なり、その難易度を跳ねあげているのだ』

「…でも、それって人間の話なんだろ?
 ギアはそうじゃないのか?
 例えば鳥型のギアとか…。
 あ、でも元が飛べるならわざわざ法力を使う事も………いや、変質した体を飛ばすのに補助が要るか」


 ギア細胞を、元々空を飛べる生物に埋め込んだらどうだろう?
 鳥、虫、スカイフィッシュ……は実在するか知らんからパス。


『所詮、法力は人間の頭で考えたもの。
 相応の脳ミソが無いと理解できん。
 ギア細胞も、流石にそこまでの変質は可能ではなかったと言う事だ。
 解明された部分はあっても、脳の半分以上は前人未到の領域だからな…』

『トリ頭のギアに理論を構築させるのは不可能に近いです』


 …ギアになっても直らないのか、三歩歩けば忘却病…。
 しかし、分からなくもない理由だな。
 法力には、主に炎や雷を操るようなものが多い。
 そういうのが多いのは、ある程度は感覚的に理解できるものだから…なのかもしれない。
 空間操作系ついては…良く分からん。
 気に至っては完全に感覚の領域っぽいし。


「…じゃあ、どうして私達は空を飛べるの?」

『簡単な話です。
 3人がかりで飛んでいるから、ですよ』

「…成程、寄生種故の力って事か?
 3人がかりで必要な計算をこなして、寄生種であるが故の…何て言うんだ、自己同一性?
 3人で1人な感じの意識があるから、連携もスムーズに行くって訳?」

『そういう事です、兄様。
 ああ、流石は兄様…たったこれだけの説明で、私達の事をこうも理解してくれるなんて…!
 これはきっと私達の弱点も喜ぶところも全て把握されていて、まさにまな板の上の鯉をさぁこれから調理するぞと言わんばかりの…』


 ウンディーネのスイッチ入っちゃいましたー。
 たまにこんな風になるんだが、こうなると当分戻って来んな。
 ナデナデしてもむしろ悪化するだけだし。
 ううむ、外見が美女に近付いてきているだけに、恍惚とした表情でクネクネしてるのは妙に煽情的なよーな、そうでもないよーな。
 と言うか、ひょっとしてウンディーネも欲求不満な感じになってるんだろうか?


『…この阿呆は放置しておいて、話を続けるぞ。
 要するに、ディズィーが飛べるのは我々が補助を担当しているからだ。
 逆に言えば、補助さえあれば兄が空を飛ぶ事も不可能ではない。
 例えば、ドクター・ファウストがそうしているようにな』

「あれは…ひょっとしてあの傘が補助器具?」

『だとは思うのだが、断言はできん。
 ドクター・ファウストは、ギアのレベルで計っても相当なレベルの法力の使い手だ。
 恐らく、やろうと思えば補助器具無しで空も飛べるだろう。
 …我々とは別の意味で人間離れしているからな』


 いやはや全くですな。
 何処まで達しているのか、知りたいような知りたくないような。


『例えば…そうだな、ジャスティス…というギアが居た』


 ちょっ、よりにもよってその人を例に出してきますか!?
 有名どころなんてレベルじゃねーよ。
 むしろ俺達のおかーさんですよ。
 いや、確かに分かりやすいけどね。


『人類に反旗を翻した、全てのギアを統括する司令型ギアだ。
 当然、人類側からすれば何よりも優先すべき抹殺対象であり、ギアの側からすれば総大将の位置に当たる』

「…………」


 ディズィーは何やら、神妙に聞き入っている。
 ジャスティスの名に、聞き覚えでもあるんだろうか?
 生まれる前かもしれんが、そのジャスティスことおかーさんに接していた記憶があるのかもしれない。

 ウンディーネはクネクネを通り越してローリングしていた。
 S子さんは口から白っぽく輝く何かを出していた。


『このギアは、聖戦が始まった時には最新型、聖戦が終わる頃には旧型…とは言わないまでも、旧い方から数えた方が早くなっていた。
 ああ、だからと言って戦闘力や破壊力が低くなった訳ではないぞ。
 使われていた技術が古くなっていったと言うだけだ。
 より効率のいい技術を使ったギアが幾つも生み出されたと言うだけだ』

「…話の腰を折って悪いが…効率のいいギアの方が強いんじゃないのか?」

『いや…そもそも、ジャスティス程の破壊力を持ったギアは、聖戦の中ではとても作れなかったらしい。
 それに、ジャスティス程のスペックを持たせるよりも、ある程度のスペックで数を揃えた方が有効だったというのもあるだろう。
 効率がいい、というのは純粋にエネルギー運用効率の事を指している。

 …話が逸れたが、そのジャスティスでさえ空を飛ぶ機能はなかった。
 いや、無かったと言うより…空を飛ぶのではなく、大跳躍する機能を選んだのだ』


 跳躍?
 空を飛んでいると錯覚するほどの大ジャンプか。
 背中のブースターで2段ジャンプとか空中ダ