この助産師はホメオパシーという代替療法の信奉者で、ホメオパスという資格をもち、その団体「ホメオパシージャパン」で用いられているレメディをビタミンK2として与えていました。
私自身はすでに開業をやめ、日本助産師会の会員でもないのですが、この問題は助産師全体の問題として受け止めており、東京都助産師会(この4月から法人化して、「日本助産師会東京都支部」から独立した組織となった)のトップにある人と、この間、意見交換をしてきました。
彼女も、ホメオパシーJPNの由井寅子会長の言動には以前より疑念を抱いていた人ですが、それでも私たちは、K2の代替薬が存在していることは知らず、ましてや、それを実際に使っている助産師がいることなど想像もしていませんでした。
助産師会の会員だったとき、私は東京都の委託講習会を企画する委員会にいて、先月の初め亡くなった、ホメオパシーJPNが経営する学校の副校長をしているS助産師とは、よく顔を合わせていました。とても影響力のある人で、定例会では、ホメオパシーの話題に加わらないのは、私一人だったと思います。
マタニティ期にある人たちからしょっちゅう電話がかかってきて、切迫流産と思われる出血にレメディを処方している声が聞こえていました。
生れてきた赤ちゃんが呼吸しないとき嗅がせる、気付け薬のようなレメディを紹介したときには、自分も開業したら使いたいという声が、何人かの委員から上がっていました。
インフルエンザに効くレメディがないかという質問に答えていたときの様子は、実は、このブログですでに書いています(ホメオパシーということばを使いませんでしたが、代替療法と書いたものは、すべてホメオパシーのことです)。
私は一年目に、この会議で、一般的な予防接種の講演会を提案して却下されました。
二年目には少し工夫を凝らして、午前と午後で、予防接種の賛成派・反対派両方の意見を聞く企画案を提出したのですが、これも却下されていました。
そこで、別の場を設けて、日本助産師会東京都支部ではじめて、一般的な予防接種の講演会を実現させました(このことについてもブログに書いています)。これが私の助産師会における唯一の貢献だと思っています(この企画には、ホメオパシーJPNのレメディを使用している助産師、ホメオパシーJPN以外のホメオパシー団体に所属する助産師も加わっていたことは確認しておきたいと思います)。
先日、日本助産師会で、臨時の理事会が開かれたそうです。上層部の何人かが、ホメオパシーJPNの由井会長を訪ねると、「ホメオパシーつぶしだから相手にしない」とものすごい剣幕で、肝腎なところでは黙秘権の行使だったようです。
しかし問題は、日本助産師会の態度だろうと思います。少なくとも、日本助産師会で、総務理事・安全対策委員という要職についているホメオパシーJPNのK助産師の解任または辞任は常識だろうと思うのですが、そんな話はまったく出なかったそうです(K助産師は、「ビタミンK2の使用は、法律で定められていないから、使わなくてもいい」と話しているとか)。
東京都助産師会の対応は、少し異なっています。K助産師は、東京都助産師会ではヒラの会員なので解任等はありませんが、安全対策委員会にかけることを考慮中だといいます。
私が知る範囲内でも、ホメオパシーを使っている会員は多いですが、K2を投与しなかったのは、故S助産師・K助産師のごく周辺にいる人たちに限られていると思います。
東京都助産師会は、昨年の新型インフルエンザ流行のときも、会員にきちんとした対応を呼びかけていました(ほんとうは、会のサイトに「ホメオパシーはインフルエンザには効きません」という一言を載せることを提案していたのですが、それは果たせませんでした)。少しずつですが、いい方向に変えていこうとしている動きがあります。
しかし日本助産師会は、このままではダメになるような気がします。
指導層が、会としての弁明どころか、何の判断も示すことができず、何の見解も発表できずにいます。けっきょく厚労省か行政が指導に入るしかないのだと思いますが、むしろ、それがいちばんいい方法のように思えます。
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