財政再建 借金862兆円、待ったなし
2010/06/30 10:06更新
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7月11日投開票の参院選では、多くの政党が消費税率引き上げの重要性を訴えるなど、財政再建は争点のひとつに浮上している。政府は財政健全化目標を掲げた「財政運営戦略」を決定し、歳出抑制を通じた財政立て直しを目指す構えだ。増大する社会保障費の財源に充てることを念頭に消費税率の10%への引き上げに言及した菅直人首相だが、思惑通りに進むかどうかは不透明だ。(橋本亮)
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記事本文の続き 「最重要課題は財政再建だ」。新内閣発足にあたって、菅首相は財政再建に最優先で取り組む姿勢を強調した。
日本の財政が危機的な状況に陥ったのは、少子高齢化に伴う社会保障費の増加に加えて、バブル崩壊以降、公共事業や減税をはじめとする景気対策の財源に充てるための国債発行を繰り返したためだ。
この結果、借金は雪だるま式に膨れあがり、平成22年度末の国・地方の公的債務残高は約862兆円。国内総生産(GDP)の181%に拡大する見込みだ。
この数字は財政危機に陥ったギリシャの約115%を上回り、先進国の中でも最悪となる。社会保障費は今後も自然増だけで年間1兆円以上増え続けるのは間違いなく、財務省の試算では31年度末に968兆円に達するという。
財政運営戦略で、政府は財政健全化の指標となる国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を32年度に黒字化させる目標を掲げた。PBが黒字化すれば借金の元利払いを除く単年度の支出を、新たな借金に頼らず税収などでまかなえる。借金の増加に歯止めをかけることを狙った措置だ。
黒字化を実現するための第一歩として政府は23年度から3年間、国債の利払い費などを除く歳出を22年度並みの毎年71兆円以下に抑制する方針を打ち出した。しかし、分野別の歳出抑制枠の設定といった具体的な歳出削減策は示されず、実現への道筋は不透明だ。
内閣府の試算によると、黒字化を達成するには32年度で21兆7千億円を上回る税収増か歳出削減が必要という。事業仕分けなどを通じた無駄削減を実行したとしても「消費税率の引き上げは避けられない」(財務省)との見方が強い。
もっとも、不足する財源のすべてを消費税率引き上げでまかなった場合、8%超の増税が必要で、消費税率を13%超まで跳ね上げる必要がある。菅首相が引き上げ幅の参考としている10%では足りないわけだ。
このまま日本が財政危機に陥れば、増税や通貨暴落による物価上昇、それらに伴う景気悪化によって、国民生活は大きな打撃を受ける。ギリシャ危機に伴う金融市場の混乱の再発防止の観点からも、日本の財政状況に対する視線は厳しさを増すことが予想される。増税を含めた具体策の早急な提示が求められるゆえんだ。
■歴代政権、挫折の連続
これまで政府の取り組んできた財政再建の歩みを振り返ると、挫折の歴史でもあることがわかる。
平成9年、橋本政権下で制定された「財政構造改革法」は赤字国債の新規発行ゼロの目標を掲げたが、景気悪化による不良債権問題などによる金融不安を背景に、わずか1年で目標を断念した。
小泉政権が18年の「骨太の方針」で目指した23年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化も事実上、骨抜きとなった。リーマン・ショック後の急激な景気悪化で麻生内閣が「景気最優先」を掲げた予算編成に舵(かじ)を切ったからだ。
菅直人首相は、消費税を含む税制の抜本改革や財政再建に関する超党派での議論を呼びかけている。
与野党ともに早急な財政再建が必要との点で異論はないものの、「増税に踏み切るか」「無駄の削減を優先させるか」で各党の方向性に色合いの違いがある。いかに財政再建が難題であるかの証左でもある。
財政再建の進捗(しんちょく)は景気に大きく左右される不確実性を伴う。「財政運営戦略」で描いた通りに進むかどうかが今後を占う試金石となる。
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