[最賃引き上げ]格差社会見直す契機に

2010年8月8日 09時53分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 厚生労働省の中央最低賃金審議会は本年度の最低賃金を沖縄で10円引き上げるなどの目安を決めた。中小企業が多い沖縄には高いハードルだが、県民所得の底上げは必要であり、労使双方で知恵を出し合ってもらいたい。

 全国平均では15円程度引き上げ、時給728円程度になる見込みだ。現在時給629円の沖縄、佐賀、長崎などで例年より高い目安にしたことが大きな特徴だ。

 民主党が昨年の衆院選で「全国最低800円」をマニフェストに盛り込み、今年6月の労使代表らによる雇用戦略対話で「できるだけ早期に全国平均800円以上、2020年までに全国平均1000円」にする目標を掲げた。

 労働側は3年で最低800円を求めている。しかし沖縄で達成するには171円の引き上げが必要となり、今回の目安で示された10円アップを17年も続けることになる。過去5年の引き上げ幅が平均約4円だったことを考えれば実現性は薄い。

 中央審議会で使用者側は「引き上げる環境にない。数値目標だけで議論するのは適当ではない」と政治の介入を嫌った。デフレが続き景気が上向かないだけに、使用者側の抵抗は強い。

 ただ経済状況が厳しいとはいえ、沖縄では時給800円未満の労働者の割合が全体の約32%を占め全国で最多だ。次いで宮崎県約24%、青森県約23%、長崎県約22%などと続くが、沖縄の低賃金は突出している。

 賃金の格差是正は避けて通れない課題だ。

 県民所得は全国平均の約7割にとどまり、失業率が最高で、貯蓄残高は平均の半分以下。国民年金保険料の納付率は全国最低で、現在だけでなく将来にも不安を抱える状況だ。

 戦後復興の遅れが大きな要因だったにしても、いつまでもワースト1の諸統計に甘んじるわけにもいくまい。

 パートなど短時間勤務者の7割以上が時給800円未満という高い割合も全国で群を抜く。ワーキングプア(働いても貧困な人々)が生まれる原因を社会全体で直視する必要がある。なぜなら沖縄は所得配分の不平等さを示すジニ係数が国内最悪で、格差の大きい階層社会である側面も見逃せないからだ。

 今回の最賃10円アップは現実的でない目標かもしれないが、沖縄の産業、経済、そして所得階層を根本から見直すきっかけにしてはどうだろうか。

 従来の給与モデルは初任給は少なくても年功賃金で一定年数を勤務すれば家族を持って生活できる設計だった。しかし1990年代後半から賃金が下降傾向となり、何年働いても昇給しにくい非正規社員が増えてきた。

 この傾向は今後も続きそうで、内需の冷え込みがデフレを長期化させる。

 内需を誘発する「賃金引き上げ」がひとつの答えかもしれない。同時に企業の体力強化も大きな課題だ。

 地方の中小零細への支援を含め、総合的な対策が欠かせない。

« 最新のニュースを読む

写真と動画でみるニュース [一覧する]