エスカレートする北の挑発行為(下)
北朝鮮の統一戦線部(対南工作を総括)で勤務していたある脱北者は、「北朝鮮の対南戦術は、数年後を見据えて行われる。北朝鮮は、李明博政権の任期中に南北関係を最大限硬直させ、韓国の国民が次の選挙で宥和政策論者に投票するよう仕向ける戦略をとっているようだ」と述べた。
北朝鮮は今後、しばらくは挑発を続ける可能性が高いとの見方もある。西海での砲撃をとってみても、今年1月には砲弾がNLLを越えることはなかったが、今回はNLLの南側4-5キロの地点にまで到達した。また1月には航行禁止区域を設定するという事前予告が行われたが、今回はそれもなかった。これについて統一研究院の鄭永泰(チョン・ヨンテ)博士は、「NLLで本格的な軍事脅迫を行うための事前の行動だ」と分析している。北朝鮮の海軍が昨年12月に一方的に宣布した「平時海上射撃区域」は、NLLよりもかなり南側に設定されている。今後も北朝鮮はNLLの南側にねらいを定めて何度か砲撃を行なうか、あるいは短距離ミサイルなどがNLL周辺に飛来してくる可能性もあるということだ。高麗大学の柳浩烈(ユ・ホヨル)教授は「北朝鮮が韓国の領海に砲撃を行ったのであるから、こちらからも何らかの対応をしなければならない。しかしそうなると北朝鮮は“待ってました”とばかりに、挑発を強めてくるだろう」と述べた。
とりわけ安保関連部処の当局者は「北朝鮮が米国の関心を引きつけるために、“核実験”という火遊びをしないか心配だ」と語る。この日の労働新聞は「核抑止力に基づいた報復聖戦」という表現を使い、朝鮮総連機関紙の朝鮮新報も先月26日付けで、3回目の核実験を示唆する記事を掲載した。核実験の具体的な兆候は今のところ見られないが、漁船の拿捕や砲撃などといった挑発が韓国と北朝鮮国内を念頭に置いたものであれば、核実験や長距離ミサイルの発射は米国を念頭に置いたものとなってくる。北朝鮮は挑発を同時多発的に行う傾向がある。
アン・ヨンヒョン記者
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