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封切り日7月3日、私の現場報告
写真追加あり
(一)
私は電車の中で、ビデオカメラを持参するか迷っていました。途中下車して友人からカメラを借りても、西村修平の妨害街宣予告時刻12:00には間に合います。しかし私は、立ち寄りをせずに渋谷イメージフォーラムに直行することにしました。
一つは、早く現場に着いて、10:00から第1回上映が始まる横浜の様子を、友人に電話して聞きたかったからです。もう一つは、ビデオよりも肉眼の観察をきちんとしたほうがいい、と判断したからです。
私が地下鉄表参道駅についたのは9時40分でした。国連大学の前では "Farmers market" が開かれており、のどかな土曜日の朝でした。
映画館に着いたのは9時50分でした。すでに13~4人ほどの人が列を作っていました。上映開始は13:00からですが、10:30から整理券がもらえるからです。そのとき現場にいた報道関係者は5人ほど。まだ警察官の姿はどこにもありません。
10時過ぎ、横浜と連絡がとれました。「何の妨害も無く上映は始まった」とのこと、安堵しました。横浜ニューセントラルは全国で一番早い上映開始だったのです。
http://blog.livedoor.jp/movie_fun_yokohama/archives/1422591.html
※後からの情報では、1台のクルマでやってきたものの、警備の様子をビデオカメラで撮影するだけで帰っていったそうです。
(二)
私は白いビニール傘をもってきたことを思い出しました。整理券待ちの間に、「上映妨害はNG」と書きました。その様子を毎日新聞の女性カメラマンに撮影されてしまったようです。
(毎日新聞梅田記者撮影)
10:30になり整理券の列が60人ほどになった時、その交付がはじまりました。上映第2回15:00を希望した私は、その2番をゲットしました。
写真はその後も整理券を求める列です。
横浜も渋谷も、きょうは平和に進みそうだな。なにしろ「100メートル以内の大声街宣禁止」の仮処分決定も下されていることだし。斜向いのスタバでカプチーノを喫しました。
11:00頃青山通りを見ると、機動隊のバス2台が何時の間にか到着していました。
しかし制服警官達は、映画館前にはきたものの配置するわけでもなく、バスに帰っていきました。下見をしただけでした。わたしも何年ぶりかの「子供の城」の玄関先を見に行ったりして時間を潰しました。
11:15頃、映画館前に戻ってみると、警備仕切りの三角ポストが並べられていました。しかし、それが示す制止線は私の希望的観測とは異なっていました。映画館からわずか2メートルです。ええ?これでは 「100メートル以内の街宣禁止」ではなくて、「2メートル以内の街宣禁止」にしかならないではありませんか。
私は、この前西村修平が使った映画館向かいの空き地に陣取ることにしました。その空き地には報道陣も集まってきました。ここに大勢居れば、仮処分の下では、まさか排除までしてここにはこないだろうと思って。
すると、警察官がまだ誰一人として配置されていない11:24です。西村修平の街宣車がスルスルと映画館前を横切り、館から4メートルしか離れてないところに横付けしました。
(映画館向かいの空き地から主権会街宣車「修平号」を見る。手前に立つ男は修平専属カメラマン(氏名不詳)、もっとも凶暴な挑発者の一人で、横浜ニューテアトル支配人の老父や老母もカメラで執拗に追廻して脅迫した。茶色のTシャツがトレードマークだ。)
警備の警察官はそのあとからやってきたのですが、街宣車を遠ざけさせようという「警告」も「指導」も見られませんでした。私は向かいの空き地に陣取り続けました。
※後々思うに、警備配置の前に西村修平がやってきてしまう、というのがシナリオだったら納得しやすいです。警備配置された後に西村がやってきても、「帰れコール」でも起これば警察も連中を報道陣の前で自由にさせられなかったはずです。
(三)
「西村修平らの一群に入り込んだ、一般市民もいた」
と私のことを説明する人がいますが、それは間違いです。
私がいた場所に、あとから西村修平らの一群が不法にやってきた。そして、私がそこを立ち退こうとしなかっただけのことです。
空き地には、修平側の動員、マスコミ、カウンターそれぞれまだ同数ぐらいです。西村修平は車の中から一歩もでません。
修平ボデーガードの紫藤益男が横断幕を空き地側に持ってきたのは、12:00の5分ぐらい前だったでしょうか。同時に、修平によるアジテーションが始まりました。私は傘を広げました。私の隣には、女性がひとり、「ザ・コーヴ」のパンフレットを持って立ってくれました。
散らばっていた修平側動員連中が、私の前に2列に並びました。ですから私は3列目で「上映妨害はNG」という、連中とは真逆の傘を掲げることとなりました。そして何時の間にか、私と女性の両側には、ピッタリと公安部の私服刑事が張り付きました。ここに、奇妙な局地平衡状態が誕生したのです。
(写真は西村一味による。西村キャプションは西村サイトを参照してください)
西村修平の「大声街宣」は12:00ごろから始まったのですが、最初の10分は、「我々を妨害するあの男(私のこと)をどかさなさいと、街宣を始めてやらないぞ~」といった、意味不明のどうしようもないものですが、これが渋谷署の警備責任者に向っての言葉だとすれば、渋谷署は予め、西村修平いいなりの「許可」を与えていたことになります。
東京地裁の仮処分決定が出ていますから、渋谷署は正式の街宣許可、道路使用許可を与えられるはずがありません。しかし、渋谷署は匙加減で、正式ではない許可を与えてしまったようです。どこか「上から」の特別指示なのでしょうか?
(四)
私は、両側にピッタリと貼り付いた私服刑事から再三勧められました。「そろそろ向こうへ行きましょうよ?」、と。
私はそのたびに同じ答えをしました。
「私はもともとここに居たんです。仮処分決定に違反する連中の為に、立ち退くつもりはありません」、と。
いつのまにか女性は排除されてしまいました。
(写真は
自称8ミリ監督居田伊佐雄(写真中)は私の左耳に向って怒鳴りつづけました、鼓膜を破こうという勢いですから言ってることは分かりません。右耳への攻撃者はメガ姐こと松田由美(写真右)です。松田由美は私を右側からガードしていた刑事に自分達のプラカードを押し付け、「おい、こっち側に立ってるならコレ持てよ!」と挑発します。しかし、私と刑事2人は連中の挑発に全く動じることなく、無視したまま、立ち位置を微動だにしませんでした。
正面からみると、連中のプラカードが立ち並ぶ中に、「上映妨害はNG」というコンビニ傘がある。いったい何で? 混乱にしかみえなかったでしょうが、私には私の意地があったのです。修平の脅迫街宣が終るまで、そこを一歩も動かないつもりでした。私のいた50センチ四方の微小領域だけが、守るべき「仮処分決定」が僅かながらでも有効であった地域だったからです。
平衡状態が崩れたのは、鈴木邦男さんが談判を仕掛けたときです。右側の私服氏がそちらに気がとられて離れた瞬間です。私は連中にまず取り囲まれ、圧迫され、躓いてしまいました。しりもちをついたあと、こんどは制服警官に取り囲まれました。制服の隊長は立ち直った私に罵声を浴びせました。「さっさと離れろ!」。この言葉を私は忘れません。責任を明確にしてもらいたいものです。
(五)
わたしは、その場を離れ、街路を1周して映画館に戻ろうとしました。その間も1人の制服警官がつきまとい、「さっさと帰りなさい」と偉そうに命令口調です。いったい何時から渋谷警察署は、西村修平というヤクザ者の乾分に成り下がったのでしょうか?
一部始終から、「東京地裁仮処分決定」の実効性を進んで反故にしようと渋谷警察署が企てた、ということが明確に理解できました。もしそうした警察の謀りごとを、配給者側が事前に諒としていたなら、これはゆゆしきことです。
あれだけの報道陣の眼前で、「東京地裁仮処分決定」が無効であることを既成事実化してしまったのですから。脅迫街宣に立ち向かう一手段を、広くマスコミの前で、渋谷警察署が力で押しつぶしてしまったのですから。民事不介入どころではなく明確な警察の介入です。
「仮処分決定って、いがいと効果ないんだなあ」
妙に納得する前に、識者は渋谷警察署には抗議の声をあげるべきです。仮処分決定すら守ろうとする声をあげなければ、実効力が生れないのですから。
襲撃街宣右翼にまた1つのフリーパスを与えたことは、「ザ・コーブ」問題を超えて、あらゆる問題事において、
「右翼がきたらメンドイなあ」、
モノが云いにくくなる社会病理が、いっそう深く進行するでしょう。
西村修平は12:30頃、「これからGoogle日本支社に行く」といって立ち去りましたが、この日の街宣では、いつもは前面に立って虚勢を張る修平が、人の陰に隠れてマイクを握っていました。
「何か起こったら責任者のオマエを逮捕するぞ、そのかわりxx分だけなら街宣認めてやる」、とでも裏取引されたのでしょうか? 全くの想像ですから真相は渋谷署の弁明を待ちたいと思います。
(六)
食事をして15:00からの「ザ・コーヴ」上映を見ました。中野ゼロホール以来2回目でしたが、映画館のスクリーンでみると、1回目には見過ごした新しい発見がありました。エンドロールが過ぎて明るくなったとき、私は思わずスクリーン脇に立つ若いガードマン氏に御礼のお辞儀をしてしまいました。
映画館を出ると、昼のひととき私の脇で、私と共に微動だにしなかった私服刑事氏が、目の前でまだ警備をしていました。視線をあわせて目礼としたのですが、彼は追いかけてきました。
刑事 「映画をみたんですか?」
私 「はいそうですけど」
刑事 「どうでしたか?」
私 「あなたがお父さんで、お子さんが中学生以上だったら、非番の時にでも、ご一緒に見たらいかがですか」
刑事 「そうですか、やっぱり見たほうがいいですかね」
私 「もちろん、外人のものの考えと日本人のそれは大分違いますけどね」
刑事 「ヤッパリ違いますか?」
私 「違うから、ご家族でみて話し合ったほうがいいんです」
刑事 「じゃあ見ることにしましょうかね。で、これからどちらへ?」
私 「家へ帰りますよ」
刑事 「お気をつけて」
私 「あなたこそ、ありがとう。」
その私服刑事氏は私より10歳ぐらい若かったでしょうか。渋谷警察署としては酷すぎる対応でしたが、彼個人的には不思議な縁でした。裁判所命令が警察によって反故にされた記念日の。
この日の映画館、渋谷イメージフォーラムは全回満席でした。
(以上)
by mi1000
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