きょうの社説 2010年8月11日

◎首長の退職手当 住民の理解得る努力が大事
 首長の退職手当の水準が適正かどうかは、判断の難しいテーマだが、任期ごとに支給さ れる仕組みや算定方式については、割り切れぬ思いを抱く人もいるだろう。国と同様、自治体の行財政改革にも焦点が当たるなか、首長の報酬も決して聖域ではない。税金で支払われる以上、住民の幅広い理解が必要である。

 金沢市の特別職報酬等審議会は、山出保市長の退職手当を実質10%引き下げるよう市 長に答申した。一方、石川県の特別職退職手当検討懇話会も、谷本正憲知事の退職手当を引き下げる方針で一致した。金沢市長は2752万円余と全国40の中核市の平均並みとなり、4期目は4056万円を支給された谷本知事も全国平均並みにする方向で議論が進んでいる。

 首長でも行政改革や地域振興で成果を挙げた人と、さしたる実績もないまま財政赤字ば かり膨らませた人では、本来は任期の評価は異なるはずである。選挙での洗礼とともに、任期中の実績で退職手当を判断する仕組みがあってもよさそうだが、そうした評価手法が整っていなければ、平均値を参考にするという均衡の論理に落ち着くのも無理からぬ面がある。

 他の首長以上に知事や金沢市長の退職手当に関心が向けられるのは、多選の宿命とも言 えるが、だからこそ、住民の理解を得る努力は一層大事になる。民間の状況や財政事情にも照らし、第三者機関に判断を委ねるのは当然である。

 近年の首長選では退職手当の不支給や減額を公約に当選するケースも増えてきた。これ は個人の政治信条であり、支給水準を議論する際には分けて考える動きかもしれないが、まったく無視するわけにもいかないだろう。

 首長の退職手当は、月給に在職月数、自治体独自の支給率を掛けて算定される。小泉純 一郎元首相がかつて「知事や市長の退職金は多すぎる」と批判し、同氏が5年半の首相在職期間で得た退職手当約660万円との比較で波紋を広げた。首相をやめても議員の身分が残る立場と首長では単純な比較はできないが、算定の仕組みなどについては知事会や市長会でも議論を深めてよいテーマである。

◎日韓併合首相談話 疑問残る「反省とおわび」
 国民への説明も、国会での論議もないままに、また謝罪が繰り返された。日韓併合10 0年に当たって発表された首相談話が、日韓関係の深化につながるとは思えない。政治的な配慮をしたところで両国間の歴史認識問題が解決しないことは、過去の河野談話や村山談話の経緯を見ても明らかだ。韓国と同じ立場に置かれた台湾からは「植民地支配」を指弾する声がほとんど聞かれないのに、なぜ韓国から当然のように謝罪を求める声が出て、それに唯々諾々と応えてしまうのか。

 首相談話については、国内世論や自民党の反発はもとより、民主党内にも異論があった 。そうした声に耳を貸さず、韓国側の意に沿う談話を出す理由が分らない。欧米諸国は旧植民地に対し、過去の植民地支配について一切謝罪していない。韓国にならって北朝鮮が謝罪を求めてきたら、政府は同じように謝罪するのだろうか。

 特に菅首相が日韓併合条約以降を、「植民地支配」と断定したことには疑問が残る。韓 国側は以前から日韓併合条約の違法・無効を主張している。強制的に条約を結ばされたと言いたいのだろうが、事実に反するばかりか、国際法に照らしても違法性は認められない。2001年に米国で開かれた国際学術会議では、韓国側の主張はことごとく欧米や日本の国際法学者らに退けられた。

 韓国併合を正当化するつもりはまったくないが、英国のインド統治のように、「植民地 」として一方的に収奪の対象としたのではない。朝鮮半島の近代化に投じられた資金は、常に日本側の持ち出しだったのであり、「日本のせいで塗炭の苦しみを味わった」という認識は一方的過ぎる。

 政府は、首相談話に合わせて朝鮮王朝時代の祭礼などを絵や文で記録した書物「朝鮮王 朝儀軌」を韓国に引き渡すという。日韓両国は65年の日韓基本条約締結時に結んだ関連協定に基づき、財産・請求権を互いに放棄している。朝鮮王室儀軌の引き渡しは事実上の特例措置になる。菅政権は、日韓関係をさらに複雑化するパンドラの箱をまた一つ開けてしまった。