2010-08-05 11:26:41
医療の「手段」からホメオパシーであること自体が「目的」に。
テーマ:ブログ
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【参考資料】
朝日新聞 「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が事態調査 2010年8月5日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008040482.html
朝日新聞・朝日新聞東京本社朝刊be 問われる真偽 ホメオパシー療法 2010年7月31日
http://www.asahi.com/health/feature/homeopathy.html
朝日新聞 ホメオパシー療法、信じる前に疑いを
https://aspara.asahi.com/blog/kochiraapital/entry/kNKQFuNbTK
--------------
(当ブログでは、身近に起きた深刻な問題をきっかけに、ホメオパシーの問題点や危うさを取り上げてきました。これらは「ブログ内検索」欄に「ホメオパシー」と入力し検索後、表示された該当するエントリーをお読みください)
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現在、どのような救急法の解説を読んでも、ヤケドをしたらまず患部を冷たい水で十分に冷やすとされています。きっと皆さんもそうしていることと思います。
水で冷やすことによって苦痛が和らげられ、治癒が早く良好なものにすることは実証されています。
なぜ冷やすことによって治癒が早く良好なものになるかというと、
今月のトピックス「やけど」 医療法人 恵友会
http://www.keiyuukai.or.jp/topikkusu/yakedo.htm
「やけどは受傷後もしばらくの間はじわじわと受傷部が拡がって行きますので、徹底的に冷やすことが大事です」
このような理由からだそうです。
一方で、ヤケドをしたら熱を加えろと主張する人たちがいます。
蒸気を当てるのがよいそうです。
嘘だと思うなら、こちらの掲示板をご参照ください。
(諸方で紹介されているので、ご存知のかたも多そうですが)
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=3405&reno=no&oya=3405&mode=msgview&page=0
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=3416&reno=3413&oya=3405&mode=msgview&page=0
揚げ物をしていてピチッと油が跳ねた程度のヤケドならともかく、重度のヤケド、広範囲にヤケドを負った場合こんなことをしたら治るものも治らないどころか、死すらあり得ます。
ヤケドに熱・蒸気を当てるとする処置は同種療法(疾病は、同じ症状をもたらす毒で制する)であるホメオパシーの思想に則っていて、ホメオパシーでは200年前から“常道”とされていたものです(http://www.homeoint.org/site/deepak/organon.htm)。熱には熱を、とされているわけです。
ホメオパシーが提唱された1800年代は現代とは比べものにならないくらい医学のレベルが低く、衛生概念もないに等しい時代でした。したがって、ヤケドの箇所に不潔な水を触れさせることは化膿を引き起こす原因になっていたのかもしれません。また薬らしい薬がなく、あっても効き目がないものや、治癒の邪魔をするもの、毒の作用しかないため治癒するどころかかえって悪化させるケースもすくなくなかったようです。
当時既に体系立てられていた(現在の名称で)中医学や(日本で改良された)漢方のほうが、よっぽど効果があったのではないかと想像されます。
現代でも危険度の高い重度のヤケドは当時何をしても手の施しようがなく、さほど重くないヤケドだけが治療の対象だったでしょうから、汚染の可能性がある水や余計な薬より、荒唐無稽の感はありますがヤケドに蒸気等を当てていたほうが治りがよいと考える人がいても当然だったかもしれません。
なにせ病気になったら悪い血を出せば治るとされ、やみくもに血管を切っていたような時代です。1800年代に「ヤケドには熱を」と提唱されてもしかたなかった状況があったのではないでしょうか。
医療の歴史を太古から振り返ると試行錯誤の繰り返しでした。
うまく行くこともあれば、うまく行かないこともあり、これらが精査され現在に至っています。そして現在でも、試行錯誤が研究というかたちで続けられています。
1800年代にホメオパシーが提唱されたことは、当時の時代と医療事情を背景にしていたわけで、どうしたら病気を治癒させることができるか真面目に取り組んだひとつの答えだったと言えるでしょう。
その時代にこのような取り組みが行われたことまで否定しようとは思いません。我々人間が築いてきた医療の進歩の階段の一段であったのですから。
しかし、「ヤケドには熱」が無意味なだけでなく、患者に苦痛を与え、しかもよい結果を何ももたらさないとわかり、よほど不潔な水を使わないかぎり感染症を怖れる必要がなくなった現代でも、ホメオパシー側が考えを改めないのはなぜでしょうか。
水で冷やすという行為は、ホメオパシー推進団体や導入者が忌み嫌う現代医学の新薬や予防接種と異なるはずで、副作用はどう考えてもあり得ません。
医療の手段として試行錯誤の中から考案されたホメオパシーは、現代医学に地位を取って変わられたときから、医療の「手段」からホメオパシーであること自体が「目的」になったように思います。
ホメオパシーに間違いがあっても「恥」でもなんでもなく、それは現代の医療においても試行錯誤があるのと同じことであるはずなのに、自らを省みることがなくなりました。
1800年代に完成したものが完璧であるという立場に固執しすぎているのです。
「ヤケドには熱」の例のように教典を絶対視(信仰?)して、実際の現象を検証する気がまったくないのです。
したがって、まるでネズミ車をくるくる回しているだけのハムスターのように、独自の(独善的な?)「思想」の出口がない迷路の中をさまよい続ける結果になったと言えます。
ビタミンK2欠乏症死事件の前、ホメオパシー団体はK2シロップの代わりに同様の効果があるというレメディを使用するように指導していました。同様の効果があるというレメディがビタミンK2欠乏症にどのように作用し、どれくらい効くのか治験も行わずにです。
原典となる思想がどうであれ、これでは人体実験を行ったも等しい行為です。
そもそもホメオパシーが提唱された1800年代に乳児のビタミンK2欠乏症死は解明されておらず、ホメオパシーの原典とされるサームエル・ハーネマンの著書『オルガノン』(http://www.homeoint.org/site/deepak/organon.htm)には、ビタミンK2欠乏症死の記述はありません。
K2シロップと同様の効果があるというレメディは、近年になって現代の医学に対抗する必要上、それの使用がどのような結果をもたらすか実証されないまま、教典で示された「同種療法」の原理を盲信してつくられたと言えるでしょう。
現代の医学に対抗する必要上──まさに医療の「手段」からホメオパシーであること自体が「目的」になっている端的な例と言えるでしょう。
※K2シロップと同等の効果があるされるレメディ等、新規につくられるレメディは、真に求める人がいるからつくられていると反論されるかたもいらっしゃるでしょう。
こういった側面を完全に否定できるものではないかもしれませんが、当ブログで連載した「不安と煽り」で記述したように、現代的で科学的な医療の危険性を過剰に喧伝するところからはじまり、不安を生じさせ、解決策としてホメオパシーを提示するというやりかたがあることは事実ではないでしょうか。
当ブログのコメントに、「自然界にあるビタミン(K2)というもの、食品でも摂取されているものまで、なぜ否定し、レメディとして提供するのだろうか?」という疑問を頂きました。
【参考資料】
朝日新聞 「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が事態調査 2010年8月5日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008040482.html
朝日新聞・朝日新聞東京本社朝刊be 問われる真偽 ホメオパシー療法 2010年7月31日
http://www.asahi.com/health/feature/homeopathy.html
朝日新聞 ホメオパシー療法、信じる前に疑いを
https://aspara.asahi.com/blog/kochiraapital/entry/kNKQFuNbTK
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(当ブログでは、身近に起きた深刻な問題をきっかけに、ホメオパシーの問題点や危うさを取り上げてきました。これらは「ブログ内検索」欄に「ホメオパシー」と入力し検索後、表示された該当するエントリーをお読みください)
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現在、どのような救急法の解説を読んでも、ヤケドをしたらまず患部を冷たい水で十分に冷やすとされています。きっと皆さんもそうしていることと思います。
水で冷やすことによって苦痛が和らげられ、治癒が早く良好なものにすることは実証されています。
なぜ冷やすことによって治癒が早く良好なものになるかというと、
今月のトピックス「やけど」 医療法人 恵友会
http://www.keiyuukai.or.jp/topikkusu/yakedo.htm
「やけどは受傷後もしばらくの間はじわじわと受傷部が拡がって行きますので、徹底的に冷やすことが大事です」
このような理由からだそうです。
一方で、ヤケドをしたら熱を加えろと主張する人たちがいます。
蒸気を当てるのがよいそうです。
嘘だと思うなら、こちらの掲示板をご参照ください。
(諸方で紹介されているので、ご存知のかたも多そうですが)
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=3405&reno=no&oya=3405&mode=msgview&page=0
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=3416&reno=3413&oya=3405&mode=msgview&page=0
揚げ物をしていてピチッと油が跳ねた程度のヤケドならともかく、重度のヤケド、広範囲にヤケドを負った場合こんなことをしたら治るものも治らないどころか、死すらあり得ます。
ヤケドに熱・蒸気を当てるとする処置は同種療法(疾病は、同じ症状をもたらす毒で制する)であるホメオパシーの思想に則っていて、ホメオパシーでは200年前から“常道”とされていたものです(http://www.homeoint.org/site/deepak/organon.htm)。熱には熱を、とされているわけです。
ホメオパシーが提唱された1800年代は現代とは比べものにならないくらい医学のレベルが低く、衛生概念もないに等しい時代でした。したがって、ヤケドの箇所に不潔な水を触れさせることは化膿を引き起こす原因になっていたのかもしれません。また薬らしい薬がなく、あっても効き目がないものや、治癒の邪魔をするもの、毒の作用しかないため治癒するどころかかえって悪化させるケースもすくなくなかったようです。
当時既に体系立てられていた(現在の名称で)中医学や(日本で改良された)漢方のほうが、よっぽど効果があったのではないかと想像されます。
現代でも危険度の高い重度のヤケドは当時何をしても手の施しようがなく、さほど重くないヤケドだけが治療の対象だったでしょうから、汚染の可能性がある水や余計な薬より、荒唐無稽の感はありますがヤケドに蒸気等を当てていたほうが治りがよいと考える人がいても当然だったかもしれません。
なにせ病気になったら悪い血を出せば治るとされ、やみくもに血管を切っていたような時代です。1800年代に「ヤケドには熱を」と提唱されてもしかたなかった状況があったのではないでしょうか。
医療の歴史を太古から振り返ると試行錯誤の繰り返しでした。
うまく行くこともあれば、うまく行かないこともあり、これらが精査され現在に至っています。そして現在でも、試行錯誤が研究というかたちで続けられています。
1800年代にホメオパシーが提唱されたことは、当時の時代と医療事情を背景にしていたわけで、どうしたら病気を治癒させることができるか真面目に取り組んだひとつの答えだったと言えるでしょう。
その時代にこのような取り組みが行われたことまで否定しようとは思いません。我々人間が築いてきた医療の進歩の階段の一段であったのですから。
しかし、「ヤケドには熱」が無意味なだけでなく、患者に苦痛を与え、しかもよい結果を何ももたらさないとわかり、よほど不潔な水を使わないかぎり感染症を怖れる必要がなくなった現代でも、ホメオパシー側が考えを改めないのはなぜでしょうか。
水で冷やすという行為は、ホメオパシー推進団体や導入者が忌み嫌う現代医学の新薬や予防接種と異なるはずで、副作用はどう考えてもあり得ません。
医療の手段として試行錯誤の中から考案されたホメオパシーは、現代医学に地位を取って変わられたときから、医療の「手段」からホメオパシーであること自体が「目的」になったように思います。
ホメオパシーに間違いがあっても「恥」でもなんでもなく、それは現代の医療においても試行錯誤があるのと同じことであるはずなのに、自らを省みることがなくなりました。
1800年代に完成したものが完璧であるという立場に固執しすぎているのです。
「ヤケドには熱」の例のように教典を絶対視(信仰?)して、実際の現象を検証する気がまったくないのです。
したがって、まるでネズミ車をくるくる回しているだけのハムスターのように、独自の(独善的な?)「思想」の出口がない迷路の中をさまよい続ける結果になったと言えます。
ビタミンK2欠乏症死事件の前、ホメオパシー団体はK2シロップの代わりに同様の効果があるというレメディを使用するように指導していました。同様の効果があるというレメディがビタミンK2欠乏症にどのように作用し、どれくらい効くのか治験も行わずにです。
原典となる思想がどうであれ、これでは人体実験を行ったも等しい行為です。
そもそもホメオパシーが提唱された1800年代に乳児のビタミンK2欠乏症死は解明されておらず、ホメオパシーの原典とされるサームエル・ハーネマンの著書『オルガノン』(http://www.homeoint.org/site/deepak/organon.htm)には、ビタミンK2欠乏症死の記述はありません。
K2シロップと同様の効果があるというレメディは、近年になって現代の医学に対抗する必要上、それの使用がどのような結果をもたらすか実証されないまま、教典で示された「同種療法」の原理を盲信してつくられたと言えるでしょう。
現代の医学に対抗する必要上──まさに医療の「手段」からホメオパシーであること自体が「目的」になっている端的な例と言えるでしょう。
※K2シロップと同等の効果があるされるレメディ等、新規につくられるレメディは、真に求める人がいるからつくられていると反論されるかたもいらっしゃるでしょう。
こういった側面を完全に否定できるものではないかもしれませんが、当ブログで連載した「不安と煽り」で記述したように、現代的で科学的な医療の危険性を過剰に喧伝するところからはじまり、不安を生じさせ、解決策としてホメオパシーを提示するというやりかたがあることは事実ではないでしょうか。
当ブログのコメントに、「自然界にあるビタミン(K2)というもの、食品でも摂取されているものまで、なぜ否定し、レメディとして提供するのだろうか?」という疑問を頂きました。