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【日韓併合首相談話】アジア外交の障害に 戦後補償問題再燃も
日韓併合100年にあわせた菅直人首相の首相談話を閣議決定したことについて、政府は「未来志向の新しい関係の障害になるようなものを取り除く努力」(仙谷由人官房長官)の一環と位置付けている。日韓関係の強化を通じて、東アジア共同体の構築につなげる狙いを強調しているが、戦後補償問題の再燃で、首相談話がかえって「障害」となりかねない。
首相談話では、これまで返還要求に応じてこなかった儀典書「朝鮮王室儀軌」などの文化財の韓国側への引き渡しを表明した。ただ、昭和40(1965)年の日韓基本条約と付属文書で双方の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と明記されている。
しかし、民主党は野党時代、元慰安婦に国が謝罪と金銭支給を行う「戦時性的強制被害者問題の解決促進法案」を提出し続けた。これを主導した仙谷氏は今月4日の記者会見で「日韓基本条約も1つのけじめだが、市民レベル、庶民レベル、民族レベルでいろいろなものが残る」と語り、補償問題はなお残っているとの認識を表明。今回の首相談話を受け、韓国側の賠償要求がエスカレートする可能性もある。
今回の首相談話はアジア諸国を対象にした平成7年の「村山談話」と異なり、韓国を特定して、植民地支配に対する「痛切な反省と心からのおわび」を表明した。そのため中国や北朝鮮などから韓国と同様の対応を求められる事態も想定され、今後のアジア外交に禍根を残すことになりそうだ。(加納宏幸)