菅直人首相は、日韓併合条約発効100年にあたっての首相談話を10日に閣議決定し、同日発表する。過去の植民地支配への痛切な反省を改めて表明するとともに、未来志向の日韓関係を構築することなどを盛り込む。韓国側の要望に配慮して、日本の宮内庁が保管している古文書「朝鮮王室儀軌(ぎき)」を韓国側に引き渡す方針を表明する。
談話では、1995年の「村山談話」を踏襲し、韓国への植民地支配に対して「多大な損害と苦痛に対して、改めて痛切な反省とおわびを申し上げる」と表明する。村山談話は「アジア諸国の人々」を対象としており、韓国のみを対象とする談話は今回が初めてとなる。
また、韓国側の心情に配慮し、「併合された側、痛みを覚える側の気持ちを決して忘れてはいけない」「(併合は)韓国の人々にとって、国を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられたことだった」といった表現も盛り込む。
「朝鮮王室儀軌」は、朝鮮王朝時代の王室の公式記録で、韓国が日本に返還を求めてきた文化財の一つ。韓国国会も06年、返還要求決議を採択していた。「返還要求が際限なく広がる」との日本国内の懸念に配慮して、首相談話は、文書への韓国の所有権を認める「返還」ではなく、善意に基づく「引き渡し」という位置づけにする。
一方、談話では日韓両国が21世紀に東アジア地域の平和・繁栄のために協力するパートナーであることを確認。節目の年を両国関係をより深めるきっかけにしたいという菅内閣の意向が強くにじむ。
ただ、二国間関係について首相談話を出すのは異例なだけに、与野党から慎重な対応を求める声も出ている。菅政権は9日、首相経験者や与党幹部らに談話について説明。新たな補償問題につながるような表現は盛り込まないことなどに理解を求めたが、「談話を出すこと自体が問題」(自民党の首相経験者)という声も上がった。
菅首相は9日、自民党の谷垣禎一総裁に談話について電話で説明。谷垣氏が歴史認識や補償問題などで自民党政権当時の方針をふまえた内容とするよう求めたのに対し、首相は未来志向の談話になるとの見通しを明かした。