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注目記事

 この構想自体、私は悪くないものだと思っていました。せっかくマンガやアニメという大きなソフトが日本にはあるのだから、それを活かす方法をもっと前向きに考えればいいのでは、と。いっそ、マンガやアニメのみならず、映画や映像、ポップアートなどを含めた「総合エンターテインメントの殿堂」をつくってもよいと思います。いわばMoMA(ニューヨーク近代美術館)のエンターテインメント版です。

 そこでは、日本の名作をはじめ、世界中のコンテンツをみられるようにする。絵画などのミュージアムは世界中にあまたあれど、エンターテインメントに特化したミュージアムはどこにもありません。日本が率先してそのようなミュージアムをつくれば、世界中から人や情報が集まり、日本のブランディングにも大きなプラスとなるのではないでしょうか。

 アニメについてはいま秋葉原が牽引しており、すでに一部のポップカルチャーの中心になっていて、世界から人が集まりはじめています。同じように青山・原宿はファッションの街、西麻布はクラブシーンの街といった具合に、街ごとにカルチャー色を強く打ち出すのも面白いでしょう。

 あるいは、ロケ地としての日本をアピールするのも手です。映画のエキストラを募集すれば1万人ぐらいすぐに集まる、となれば、日本で撮影したがる映画監督は増えるにちがいありません。京都の映画村も、そのような可能性を秘めているように思います。

 ただしそのためには、日本の街はもっと「融通がきく」ようにしたほうがいい。ニューヨークがロケ地として好まれるのは、2ブロックぐらいなら道路使用の許可が簡単に出るからです。東京都の石原知事は頭が柔軟なほうですが、それでもまだ日本は、ニューヨークの柔軟さに敵いません。

 たとえば首都高を舞台にするため、1日封鎖するとなれば、多くの人が反対するでしょう。しかし面白い映画を撮るためなら喜んで協力する、といった意識を日本人がもてば、東京は柔軟な街になります。そして日本を舞台にした映画や映像が増えれば、「韓流ブーム」で韓国を訪れる日本人が増えたように、日本に関心を示す人もさらに増えることでしょう。

 街と文化の関係が密接になって、それを束ねる場所が東京のどこかにあり、そこからいろんなものが発信されていけば、東京はニューヨークやロンドンに並ぶ、ポップカルチャーの中心地になれるように思います。ハリウッドが映画の都であるならば、東京がポップカルチャーの都になればいい。

 新しい文化を創り出すということに関して、まだまだ日本人は消極的です。デフレでマーケットが収縮している、といいましたが、政府も企業も国民も、みながお金を切り詰めて、必要最小限しかものを消費しない、という風潮になっているのは残念なことです。

 しかし、文化が生まれる背景には「ムダ遣い」があることを忘れてはなりません。中世ヨーロッパでは、メディチ家が考えられないような「ムダ遣い」をしたからこそ、ルネッサンスが花開きました。

 そのような「ムダ遣い」を、日本企業にも求めたい。ユニクロのような勢いのある企業は、儲けたお金を自分たちの成長に使うだけではなく、ファッションなど日本文化のレベルを上げたり、面白いものにするためにも活用してはどうでしょう。いわばお金を出す大人と、出させる若者という、パトロンと才能の関係です。お金持ちがお金を上手に「ムダ遣い」したとき、そこに新しい文化が生まれるのです。

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