私が脚本を務め、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』も、海外で最初に興味を示したのはフランスのプロデューサーだったと聞きました。
日本では『おくりびと』に関して、納棺師が主人公であることから、日本の様式美や伝統文化の珍しさに注目が集まったようにいわれます。ですが、じつはそれ以上に、作品のなかに流れる「親子愛」や「夫婦愛」といった、ほのかな優しさが評価されたというのが実感です。邦画には、人間の機微に触れるもの、優しさや感動、情を表現した作品が多く、日本人が観て面白いものや感動するものに、海外の人も同じく感動しているのです。
少し前、ケニアの環境保護活動家、ワンガリ・マータイさんが提唱した「MOTTAINAI(モッタイナイ)」という言葉が、海外ではやりました。「捨てるのがもったいない」という日本独特の考え方が、環境問題とうまく結びついたからでしょう。そのような日本人が当たり前にもっている思想には、海外で受け入れられる要素が十分にあるのです。
東京をポップカルチャーの都に
しかし、そのようなクール・ジャパン現象をみていて心配なこともあります。これがたんなる「ブーム」として、一時的な関心で終わってしまうのではないか、ということです。
たとえばいま、中国経済の台頭には著しいものがありますが、同時に、中国から新しいアーティストや文化が登場し、世界の関心がそちらに移ってしまうことは、十分考えられます。
というのは、日本文化が海外で注目を集めた要因の一つは、村上隆さんをはじめ、海外で活躍するポップアーティストの存在が大きかったからです。ルイ・ヴィトンとのコラボレーションが有名ですが、ルイ・ヴィトンが村上さんに白羽の矢を立てたのは、おそらく日本という巨大マーケットを意識した部分があるのでしょう。日本人アーティストを起用することで、ヴィトンへの親近感を深めてもらおう、というわけです。
同じように今後、急成長する中国マーケットを見越して、中国人アーティストとのコラボレーションを考える高級ブランドが出るかもしれません。デフレでマーケットが萎んでいる日本のアーティストを使うより効果的というわけで、そこから中国の著名アーティストが誕生し、それに伴って、日本文化への関心が薄れるということも、ありえない話ではないと思います。
クール・ジャパン現象を一過性で終わらせないためには、日本から文化を発信するというだけでなく、人びとが新しい文化を求めて日本に集まってくる仕掛けをつくる必要があるのではないか。そう私は考えています。
麻生前政権時代、日本のマンガやアニメなどを一堂に集める“アニメの殿堂”構想がありました。当時は、「マンガ好きの麻生首相は漢字が苦手である」といったニュースや、「ムダ遣いの典型」との批判で、悪いイメージばかりが重なって、廃案になってしまいました。
人類の歴史は常に「危険への挑戦」の連続であった。それを一つ一つ真摯に受け止め、一歩一歩確実に克服してきたからこそ今日のような豊かで多様な文化があり…
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