「総合エンターテインメントの殿堂」をつくれ
小山薫堂(放送作家/脚本家)
(VOICE 2010年6月21日掲載) 2010年6月26日(土)配信
そもそもクール・ジャパンのさきがけとなったマンガやアニメは、ストーリー性にしても描写にしても、海外のもの(ディズニー作品は別として)に比べて一つひとつが繊細で細かくつくられている。同じようなイメージが、テレビ番組についても抱かれているわけです。
実際、アメリカをはじめ海外の映像作品は、全体的に“大味”で“単純”です。お金は掛けていても、編集が荒い。視聴者に対するサービス精神もあまり感じられません。一方、日本のテレビ番組は、数秒みただけで興味を惹きつけるような編集をしたり、誰にでもわかるようにテロップを入れるなど、細かい配慮がなされています。
この「サービス精神」は、日本人の「企画力」にも結びついています。海外の人からみて、日本は企画やアイデアがあふれている国のようにみえる。実際、いまハリウッドに行けば、多くのアメリカ人から「ハリウッドにはアイデアがない。日本にはたくさんあるので、それがほしい」という声が掛かります。
「企画力」のポイントは、人を喜ばせたり、楽しませたり、感動させたりすることで、これはまさに世界のなかで日本人が秀でている能力といえるでしょう。日本では、お客さまを丁重にもてなし、見送るときは相手がみえなくなるまでお辞儀をするといった文化があります。相手をなによりも尊重する文化が根づいている日本人は、自然と観る人が喜ぶ企画を生みやすいのです。
ヨーロッパの場合、日本への関心が高いのはテレビよりも映画です。フランス芸術文化勲章であるコマンドール章を受章した北野武さんが監督を務めた『アウトレイジ』が、カンヌ国際映画祭に出品され、話題となりましたが、とくにフランスでは、日本人監督の作品には注目が集まります。
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