これには、前原誠司国交相をはじめ、閣内、党内からも公然と反発する声が強まっている。
これで来年度予算は、自民党政権と同じように財務省主導で編成されることになった。むしろ、経済財政諮問会議が大きな役割を果たした小泉純一郎政権の方がはるかに政治主導であったではないか。
首相は「政治主導、官邸主導で予算を編成するという方針には、変わりありません。まったく心配ありません」と語っている。この弁明まで自民党首相と全く同じである。
参院選敗北が原因ではない
菅首相の重大な変節の理由
首相は、なぜまた大きな変節をしたのか。
新聞の論調は総じて、参院選の敗北によって、法案成立が困難になったからではないかと推察している。
本当にそうだろうか。
みんなの党をはじめ、同様の主張をしてきた野党もこの法案には協力するだろう。参院選の敗北を理由にすることはできないはずだ。
官僚は、今回の首相の決断を、「いい決断」として歓迎している。(7月17日朝日)
結局、「消費税10%発言」と同じように、官僚、特に財務官僚に“政治主導”でこびを売ったものと言わざるを得ない。
私はかねてから、官権政治から民権政治への転換を訴えてきた。菅首相は、長年、私と同じ意味で「官主政治から民主政治へ」と唱えてきた。しかし、それは政権獲りのための巧妙な偽装だったのか。その疑いが強まるばかりだ。
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