しかも、「新しい政治をしたい」が本心なら、消費税率10%をあらためて掲げて、民主党の代表選に臨めばいい。「首相は消費税から逃げるな」(8月3日『読売』社説)と財務省を側面支援するメディアからも褒めて貰えるだろう。
本心では消費税率を上げようと思っているが、代表選挙ではそれを隠すというのでは、人は菅直人氏の何を信じて投票したらいいのか分からない。政治家としては終わりだ。
無気力予算をリセットせよ
覇気のない首相の弊害が最も端的に表れているのは来年度予算だ。
一部の例外を除いて、各省庁の概算要求に前年比1割減のシーリングを掛け、別枠として、約1兆円の「元気な日本復活特別枠」を設け、これに公開の「政策コンテスト」で配分する政治ショーを付加したのが、民主党政権が一から関わって作る来年度予算の概要だ。
大まかに言えば、政治は、1兆円しか予算に関わることが出来ないということだ。政権交代直後の昨年は、財務省が「事業仕分け」を用意して、政治ショーを演出すると共に、民主党がマニフェストに掲げた財政支出のムダ削減を一定の枠に閉じこめたが、今回も同様に予算に対する政治の関わりを限定する仕掛けが、メディア対策付きで仕組まれている。
そもそも、政治家の側が予算を主導するということであれば、省庁別の概算要求枠についてメリハリがついていなければおかしい。端的に言って、これは与党の怠慢であり、参院選はあるとしても、予算の時期は分かっていたのだから、政権党として政策を詰めてこなかった不作為によるものだ。
本来、この作業は、十分なスタッフと法的な位置づけを持つ「国家戦略局」が担うはずだったが、民主党はなぜか国家戦略局の設立を後回しにして、ついには、菅首相が国家戦略局に関して「予算編成への直接的な関与は想定していない」と8月2日の予算委員会で述べるに至った。振り返ると、菅氏は、当初は国家戦略担当の副首相で、後に財務相、そして首相だから、予算に関する政治主導を官僚のサボタージュに協力することで一貫して潰してきた張本人だと言える。